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結局、こうなるのか。

《獅子皇帝》の馬鹿共がフォレストビッグフットとジャック王ランタンに向かって駆けて行って数秒。

俺達は自分たちの安全を確保するために移動した。

≪雑魚狩り≫が先陣を切って安全なところに移動する。

そのあとに続きつつ、背後での戦いを見守る俺。


8人の少年少女達はこの無謀な突撃でその命を散らすことになるだろう。

その雄姿を誰も知らないのはいくら何でも寂しすぎる。


(ここに来るまでの数日。ほんの短い間だったが、まぁ筋は悪くなかったぜ。俺ほどじゃなかったがな!)


「何、勝ち誇った顔してるんですか。さっさと助けに行きますよ。」


「え?! 行くの?!」


突如として背後からかけられた言葉に素で返してしまった。

そんな俺を見て≪雑魚狩り≫の奴が蔑むような眼で俺を見ている。

いや、お前が真っ先に見放したんじゃなかったのかよ!


「ここはあなたの仲間達に任せましょう。救援には私と≪暴君≫。それから、私の部下の救護班とルビーさんにお願いしましょうかね。」


≪雑魚狩り≫の奴がみんなに指示を出す。

全員がそれに素直に従っているのはいいんだが、ちょっと待て!

その人員選択って俺とお前しか戦闘要員がいないじゃないか!

相手はこの辺の最強種2体だぞ?

わかってるのか?!


「なんです? 1人1体で問題ないでしょう?」


≪雑魚狩り≫は、俺の表情を読み取って平然とそう返してきた。


言い分けないだろう?!

たった2人で勝てると思っているのか!?

この辺の最強種だぞ?!

お前はまだいいよ!

でも、俺は・・・!


「相手は《獅子皇帝》の連中に気を取られていてこちらには気づいていない。今がチャンスですよ。」


俺の意思を全く無視して≪雑魚狩り≫は話を続ける。

まるで、俺の意思など関係ないと言わんばかりの自己中心的な意見に逆に清々するね!

この糞野郎が!!


「それに。この程度の相手に勝てないようでは≪散歩に行こう≫のメンバー失格ですよ?」


俺の怒りの表情を見ることなく、言い放たれたその言葉に俺が抱いたのは激情だった。

《散歩に行こう》のメンバーじゃない。

それは俺にとっての・・・

いや、元《散歩に行こう》メンバーへの侮辱でしかない。


確かに俺は弱い。

コーフィ=チープという男の前に立つのも、横に立つのも相応しくはないのかもしれない。

だが、それとこれとは話が別だ。

同じ時を過ごした戦友として、魔法と闘氣法の師としてあいつを尊敬しているし、仲間をして信頼している。それをただ強いからと言って何も知らない奴に否定されるなどあってはならない。


「テメェ。ふざけるのもいい加減にしろよ?」


怒気と殺気を孕んだ俺の言葉に、周囲にいた仲間たちは一触即発の空気を感じたのか。

皆、距離を取り恐怖と不安に顔を歪める。

ただ1人。

俺の怒りを爆発させた張本人を除いて・・・


「フフフ。冗談ですよ。では、行きましょうか。」


≪雑魚狩り≫は俺のことを一瞥すると、微笑みを浮かべて先行していった。

奴の狙いはジャック王ランタンのようだ。

なら、俺の相手はフォレストビッグフットか。


「楽勝だぜ!」


俺は背後にいる救護班とルビーを置いて先行した。

≪雑魚狩り≫の言う通り。

今は《獅子皇帝》の連中が敵の気を引いている形に放っているようだ。

圧倒的不利な状況というよりも、ほぼ詰みの状態だがな!

ただ、確かに速攻で倒すならば今しかない。


「起きろ! シグムント!!」


俺は木々の上を駆けながら、全身の魔力を愛刀たる≪シグムント≫に集結させ、その力を叩き起こす。


ガシュン


俺の魔力からやる気を感じ取った≪シグムント≫は即座に本来の形態に変形を果たし、その魔力を開放する。

《獅子皇帝》の馬鹿共では出せない。

チープクラスの魔剣の本気に、大気は震え周囲に魔力の衝撃波が走る。


「フガ!」


俺の接近に気づいたフォレストビッグフットが両手に持った《獅子皇帝》の馬鹿2人を手放して回避行動を取るが、もう遅い。

俺はすでにフォレストビッグフットの頭上に移動している。


「フファガ?!」


俺を見上げて回避しようと地を蹴るフォレストビッグフット。

だが、奴の両足は空しく空を蹴るのみ。

俺の相棒たる《シグムント》は衝撃波を発生させる能力と重力を操る能力を持つ。

いや、正しくは重力を操るのではなく、強力な重力を発生させる魔剣なのだ。


フォレストビッグフットの巨躯が、《シグムント》の発生させた重力に吸い寄せられるかのように体を宙に浮かせる。

こうなってしまえば、あとは蛇に睨まれた蛙。釈迦の上の猿。檻の中の死刑囚。

末路は残酷なまでの死。


「ドラグーンインパクト!」


全魔力を剣に込め、最大火力の一撃を全力を持ってただ振るう。

当たるか当たらないかは考えなくていい。

なぜならば、敵はすでに《シグムント》の重力に捕まっている。


俺の振り下ろした全力の一撃にフォレストビッグフットはまるで吸い寄せられるように引き寄せられ。

頭部を潰れたトマトのように弾けさせ、シグムントの放った衝撃波が首から下の胴体を破砕し、血と肉片の雨を降らせる。

五体はバラバラとなり、手足だけがいびつに歪みながらもその原型を留めて地面に落ちた。

頭部と胴体はもはやどれがどのパーツかもわからないほどに粉々になり、山となって積み重なる。


「ふぅ。血生臭ちなまぐせぇな。」


肉片の山の上に降り立って俺はそう呟いた。

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