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どいつもこいつも・・・

コーフィの店に向かって魔の森を進行して十数日が経過した。

本来ならばすでにコーフィの店についているはずなのだが、魔の森の魔獣の実力を勘違いしている《獅子皇帝》の連中のせいでなかなか時間がかかっている。


「すみません。早く目的地に着くはずの予定だったんですが・・・」


隣からすまなそうに頭を下げる≪雑魚狩り≫。

そう、こいつが気を利かせて周りの魔獣を間引きしてくれていたのだが、どうやらそのことに気づいているのは俺たちだけのようだ。

俺のパーティメンバーも「今回の探索は楽だなぁ~」などと呑気なことを言っている。

いや、こんなに簡単に進むのは『おかしい』のだから違和感を持てと言いたい。


だが、今回の任務はあくまでも『コーフィ=チープの討伐』。その手助けである道案内だけだ。

道中が楽なのはいいことだ。

だが、そのせいで《獅子皇帝》の連中が調子に乗っているのが気に食わない。

奴らは自分達が優れているから道中が楽なのだと勘違いしているが、実際は違う。


だが、それを言葉に出していっても面倒だし、だからと言って≪雑魚狩り≫に間引きをやめてもらうと面倒ごとが降り注ぐのは目に見えている。

今は我慢の時だ。


あいつらがコーフィにさえ会えば現状がすべて変わる。

それが三大国家の狙い通りに行くのか行かないのかは知らないが、とりあえずは、この馬鹿どもの鼻っ柱は折れるはずだ。

ま、心や体が先に折れる可能性もあるがな。


どちらが折れようと俺の知ったことではない。

全てはあいつらの自己責任だ。


そんなことを思いつつ、歩く道中で不穏な気配を感じた。

その正体はすぐにわかることになる。

周囲を警戒していた仲間から近くで大型の魔物同士が接敵して戦闘が始まるらしい。


魔物はジャック王ランタンとフォレストビッグフット。

どちらもこの界隈では最強を誇る大型モンスターだ。

正直言って戦いたくない。

二体は互いに相手の位置を把握しているのか。すでに臨戦態勢に入っている。

こうなると、下手に≪雑魚狩り≫が間引こうとするとこちらに敵意を向けられる。

ここは、遠回りをして戦闘は回避すべきだ。

少しばかり時間はかかるが、何もしなければあいつらはこちらに気づかずにいるだろう。


「丁度いい。雑魚ばかりで退屈していたところだ。総員、戦闘態勢! 突撃するぞ!」


そう思っていたはずが、なぜか馬鹿共が騒ぎ出した。

正気とは思えない。

自殺行為だ。

こいつらの実力では勝つことなどできない。


そんなことは今までの戦闘で・・・


わかるわけがないか。

ここまでの接待・・・

いや、効率的に道中を進んできたツケがここにきて来たようだ。


(最悪だな。どうする?)


頭を掻きながら≪雑魚狩り≫の方を見れば、あの野郎。

こっちを見ずにどこか遠いところを見ていやがる。

この状況に陥った原因はお前だろうに・・・

だが、道中を順調に進むために何も言わずにここまで来た俺にも非はある。

ここは何とか説得してみるか。


「いやいや、そんな無理に戦わなくてもいいじゃないですか!」


「そうですよ。今回は立会人の人達もいるんですから危険な行動はよしましょうよ!」


俺が説得する前にすでに仲間たちが声をかけていた。

どうやら、あいつらも同意見らしい。

というか、《獅子皇帝》の奴らが異常なのだ。

まず、あのコーフィ=チープに挑むのになぜここで力を消費するんだ?

魔力が減った状態で勝てるとでも思っているのか?


いや、そもそもこいつらコーフィの実力を知らないのか。

知ってたらあんな無謀なクエストを受けたりしないだろうしな。


「はぁ・・・」


一つ溜息を吐き、「とりあえず、俺も止めに行くか」と思いつつゆっくりと歩み出した俺だったが、その判断が仇となった。


「問題ない。僕たちなら瞬殺できる。」


その一言を残して《獅子皇帝》の連中は一直線に大型モンスター二体の下に駆けていった。

俺の仲間たちの忠告を一切無視しての独断専行。

ここまでの道中で調子に乗せてしまったのが運の尽きか・・・。

こうなったら≪雑魚狩り≫に無理やりにでも止めてもらうか。

俺一人ではあいつらを捕まえきれないし、俺の仲間たちではあいつらを抑えるのは難しい。

下手に抑えに行けば戦闘になりかねない。


大型モンスターに気づかれないようにしなければならない現状でそれは悪手だ。

《獅子皇帝》の奴らの実力はここまでの道中で見たが一人一人は俺より弱い。

俺一人ではどうにもならないが、《ゴコウテイ》の一角を担う≪雑魚狩り≫ならば簡単に何とかできるだろう。


「おい!」


そう思って≪雑魚狩り≫に声をかけたのだが、返事はなかった。

それどころか、振り返った先には誰もいなかった。


「全力で退避しましょうね~。」


周囲を見渡せば≪雑魚狩り≫の奴は《獅子皇帝》以外の連中を連れてとんずらこいてやがった。


「・・・」


少し呆然としてから俺も≪雑魚狩り≫の後を追った。

《獅子皇帝》の奴らはコーフィに会う前に全滅するかもしれないな。

まぁ、俺には関係のないことだけどな。

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