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私、急成長してます。

「ふっふっふ。」


不敵ない笑みを浮かべるのはどこからどう見ても美人で可憐な王女。

世の中の負け組女性は写真写りが悪いだの良いだのと言っているが私はどこから写真を撮られてもその気品と美貌を損なわない。完全無欠の存在。


あ、カメラマンさん。写真は45度から撮ってね。

え?写真写りは気にしないんじゃないかって?

ええ、もちろん気にしないわ。

でもね。私の可愛さが120%発揮される場所と80%しか発揮されない場所が存在するの。

理由は光の加減やカメラマンの腕といった私とは何ら関係ない場所よ。

ええ、いくら私が完全無欠でも周囲の人間の無能さまでは補えないわ。

だから、そう。

仕方なく、仕方なくカメラの位置を調整するの。


そんな完全無欠な私の名はリリアナ・フォン・アンダーリップ。

世界で最も可憐で美しく謙虚で慎ましい乙女。

そう、それは世界にとって至高と言って過言ではない存在。


そんな私(わたくし)はなぜか誰も来ない辺鄙な森の中の喫茶店で働かされているわ。

いったい全体どうして私がこんな目に合うのか理解できないわ。


「いや、お嬢。どう考えてもあんたが賭けに負けて借金を作ったからじゃないですかね?」


「おだまり!」


余計な口を挿んだバーンズに私は軽くボディブローを入れて黙らせる。

最近、師匠から教えて貰った闘氣法に魔族の持つ固有魔術をプラスした私独自の新技を無駄に鍛えさせられたこの私の肉体から放たれた拳は軽く音速の域に到達するわ。

未だに能力は全快には程遠いはずなのにこの速度が出せるだなんて、完全に能力が戻ればあの男・・・

いえ、師匠にも勝てそうだわ。


ドス


「ゲフ・・・」


私の軽く放った一撃でバーンズは数メートル吹き飛んで木に激突して止まったわ。

全く乙女のか弱い拳であんなに吹き飛んで殿方としての矜持(プライド)はないのかしら?

彼も師匠に鍛えられているはずなのになんでこんなにも弱いのかしら?

バーンズが余計な口を挿むから私の可憐さで繊細な手が汚れてしまったわ。


「ガルム。何か拭く物を持っていない?」


「バーンズ!死ぬなー!!」


私の質問にガルムは見向きもせずにバーンズに回復魔法をかけているわ。

何よ。少しボディブローで黙らせただけじゃない。

それよりも、バーンズが吐血したせいで服が汚れてしまったし、(バーンズの)腹部から少し血が出たみたいだから私の美しい白魚の様な手が汚れてしまったわ。

しょうがないわね。

丁度、タオルが干してあるからそれで手を拭きましょう。


「お、お嬢様! それはベッドのシーツです! おやめください!」


私が手を拭いているところで今更ながらにガルムが話しかけて来たわ。

でも、困ったわね。

こんな汚いボロボロの布がベッドのシーツだっただなんて・・・

この店、本当に貧乏なのね。


「ああ・・・! 何てことだ。 この前、買い替えたばかりだというのに・・・」


ガルムがもうすでに済んでしまった事態を悔やんでいるわ。

そんなことよりも新しいのを用意して貰える様に師匠にお願いに行きなさい。

私は日課の散歩に出かけるわ。


「お嬢様! また逃げるおつもりですか! 失敗の後始末を私に押し付けるのわ。おやめください!」


ガルムが訳の分からないことを叫んでいるけど、私には関係ないわ。

だって、私は単に日課の散歩に出かけるだけだもの。

オホホホホ。

さらば!!


全力で走ればガルム程度は置き去りにできるわ。

私は闘氣法の習得が3人の中で一番早かったので一番効率的に行える。

さらに今では私の一族の固有魔術と融合させたハイブリットな魔術によってその威力は格段に上がっている。

能力の制限が解けていない現状では師匠には敵わないけれど。

解除されたその時は、必ずその命を貰い受ける!


「リリアナさん。出かけるならついでに呼び込みお願いします。あ、これ。チラシです。」


全力で駆ける私の隣をいつの間にか師匠がにこやかな笑顔で走っていた。

私は速度を落としてチラシを受け取る。

チラシの上にはメモ用紙が置いてあり、『罰としてお客様を連れてくるまで帰ってきてはいけません。』と書かれていた。


「あの・・・」


「では、お願いしますね。」


私の声を遮って師匠は「仕事は終わった」と言いたげに去って行った。

去って行ったというか、私の前から消えた。

相変わらずどういう魔術なのか不明だが、私の知覚能力を超えて移動している。

転移に近い魔術ではないかと思うのだが、空間の揺らぎを感じない。

いったいどんな超技術を保有しているのか。

教えて欲しいとお願いしたことがあるのだけど。


「頑張って走ってるだけだよ」


と言って誤魔化されてしまった。

あの時のとてもいい笑顔のせいでそれ以上の追及はできなかった。

有無を言わさないあの笑顔は反則だ。

修行の合間も幾度となく笑顔で「え?できない?ははは。冗談言ってると死ぬよ?」と幾度となく生死の境を彷徨うことになった。


「誰もいないなぁ~・・・」


などと人を探すフリをしているが、本当に人間を見つける気はない。

なにせ、私は可憐で儚い深窓の令嬢だ。

私の様なか弱い乙女が単独で危険極まりない獰猛で野蛮な人間に出会うなどあってはならない。

だから・・・

そう、だから・・・


「私がお客様を連れて来れないのは仕方がないことなのよ。」


私は手に持ったチラシをペタペタと適当にその辺の木に貼り付けていく。

きっとこのチラシの後を追ってお客さんが来てくれる。はず・・・

名づけて『ヘンゼルとグレーテル作戦』よ!


「~♪~~♪」


鼻歌交じりにチラシを張り付けて帰路につく私。

もちろん。

師匠のご機嫌を取るために適当に薬草や果物、魔獣を狩猟して帰る。

我が師はああ見えて意外とチョロイので物で釣れば大抵どうにかなる。

まぁ、駄目でもガルムが頑張って頭を下げてくれるから問題ないでしょう。










この時の私は知らなかった。

私の後をつけてくる魔獣の陰に・・・

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