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来訪者

「ふぅ・・・ 久しぶりの我が家だな。」


俺はついに自分の家である喫茶店オアシスへの帰還を果たした。

食料の長期保存における新技術の開発のために東から西への大移動。

さらには、よくわからない国際会議を開くために奔走した。

結果、一か月ほど留守にしてしまった。


まだまだ国際会議までにやることはあるけれど、一応の区切りはついたので一度、家に帰ることにしたのだ。

なんたって一カ月近くも放置していたのだ。

これは帰ってからかなり気合を入れて掃除をせねばならんだろう。

今から腕がなるぜ!


「あ~う~・・・」


延々と森を進むからかセブンが暇そうにしているが気にしない。

これからは今までの華やかな街からは離れこの魔の森で過ごすことになるのだ。

いずれは慣れてもらわなければならない。

それにしても、久方ぶりの我が家はどうなっているだろうか。


結界のおかげで侵入者はいないとは思うが、ここは魔の森でもかなり危険な場所だ。

もしかしたら、俺の結界を破るほどの強者がいる可能性がある。


「もし、家が無かったら作り直さないとなぁ・・・」


などとぼやきながら歩いているとちょうど家のある方角から何かが聞こえてきた。


「なんで開かないのよ!!」


「お嬢! まずいですってここは普通の店じゃないんですよ?!」


「扉を壊したりしたら何をされるかわかりませんぜ?!」


どうやら、我が家の前に誰かがいるらしい。

聞こえてくる声は女性が1名に男性が2名といったところだろうか。

何をしているのか気の陰から覗いてみるとそこには声を荒げる女性が我が家のドアを苛立たしげに蹴りを入れている。

それを後ろにいる2人の男性が諌めているようだ。


見たところ3名の来訪者は魔族の様だ。

というか、後ろにいる男性の大きな方は以前にお店に来た獅子の獣人じゃないのか?


(は・・・! もしや、俺の店を気に入ってまた来てくれたのか?!)


もしそうだとすれば、すぐにでも出て行ってお客様をおもてなししなければ?!


「ああもう! なんでこのあたくしがこんな目に! それもこれも全てあのココアとかいう奴のせいだわ!」


すぐにでも彼らの前に出て行こうとした俺の脚が女性の一言によって止まる。

今、彼女は何と言った?


「でも、あのおっかない女もさすがに魔の森のこんなところまでは来ないでしょう。」


「その通りです。」


獅子の男の言葉に隣にいる小さな背に角の生えた男が相槌を打つ。


「あたくしもそう思うけど・・・ あのココアとかいう女。人間だって噂もあるじゃない。こっちに来ても不思議じゃないわ。」


そんな2人の言葉を聞いて肯定しつつも女性が心配げに否定する。


「いや、まぁ確かに人間っぽいですけど。さすがに来ないんじゃないですか?なんたって魔王を従える大魔王になろうって人ですよ?」


「・・・そ、それもそうね。」


小さな男の言葉に女性は少し考えて納得する。

いや、表情を見る限りは無理やりに納得したというところだろう。

それにしても、先程から名前が出ているココアって・・・

もしかして、あの人の事じゃないよね?

同名なだけだよね?

ココアなんてよくある名前だもんね・・・


「それにしても、この家の扉は全然開かないわね。ガルム。本当にここなのね?襲ってこない人間の男が経営しているお店って。」


一行に開かない扉に、諦めたのか。女性が距離を取って獅子の男に尋ねる。


「間違いありません。以前来た時と同じ出で立ちですからね。クローズと掛札がかけてありますし、今日はやってないのかもしれません。出直しになりますか?」


女性の質問に獅子の男は頷きながらも答えを返した。

どうやら、以前に来た男で間違いないらしい。

ふっふっふ。

どうやら俺の店の素晴らしさをあの女性に伝えてくれたらしい。

よくやった獅子の男!

君にはコーヒーとケーキセットを御馳走しようじゃないか!

しかし、俺のそんな思いも次に放った女性の言葉で打ち壊される。


「出直すってあなた。あたし達にはもう帰る場所はもうないのよ。こうなったらここの主を倒してこの店を乗っ取ってやるわ!」


鼻息荒く女性は拳を握ってそう宣言した。

どうやら、客としてではなく強盗としてきたようだ。

帰る場所がないって家出か何かなのだろうか?

まぁ、いつまでもこうして彼女達を見ていても仕方がない。

そろそろ姿を現すか。


「うちの店に何か用でしょうか?」


俺はニッコリを笑顔を浮かべて彼らの前に姿を現した。


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