立会人探し
僕は仲間と合流すると証人探しを開始した。
いや、正確には証人ではなく俺とコーフィ=チープの戦いを見守る立会人か。
これは発言力のある人物が第一条件だが、それ以外にもう一つ条件がある。
それは魔の森を突破するだけの実力があることだ。
魔の森は世界最大の大森林にして最高クラスの危険度を誇る危険区域でもある。
生半可な実力の者は足手まといになる。
いくら俺の仲間達が強くとも世界最高峰の危険地帯に足手纏いを連れて行くのは自殺行為でしかない。
それに僕達は魔の森に潜った経験がない。
コーフィ=チープのいる正確な場所も分かっていないので案内人も必要になる。
何だってコーフィ=チープがそんなところにいるのかは分からない。
いや、こうして三大国家に命を狙われているのだ。
世界最大の危険地帯に逃げ込むのはかえって普通なのかもしれない。
まぁ、そんなことは考えても仕方がないので今は考えないでおこう。
今重要なのは奴を倒した後に「卑怯な手を使って勝った」などということを言われないためにも立会人は実力がありながらも、コーフィ=チープのことを知る知り合いが望ましい。
そうすれば、周囲も僕達の言葉を認めざるを得ないだろう。
できれば≪暴君≫をその立会人にしたかったが、会議での様子を見る限り連れて行けば間違いなく妨害してくることは目に見えている。
残念ながら諦めて他の者にするか。
そう思い僕は討伐対象者であるコーフィ=チープの昔の仲間を立会人にしようと思ったのだが・・・
『元《散歩に行こう》メンバーに今回の依頼のことを漏らすべからず』
という内容の文面が依頼書がに書いてあるので残念ながらできない。
出来ればこの機にあの有名な≪救世主≫には会っておきたかったのだが、またの機会にすることにしよう。
「で? いったい誰に頼むんだ?」
立会人を誰にするのかをシェリルが聞いて来た。
こいつは俺のパーティ内で唯一、俺以外で二つ名を持つ女だ。
二つ名は≪白銀≫
《散歩に行こう》が発見した世界最高峰の魔剣の一本である。
全身鎧型の魔剣、≪スノーホワイト≫を着ている。
普段からずっと着てるから俺も顔を見ることはほとんどない。
「そうだな。僕の知り合いで頼めそうなのは・・・ 元帝国近衛部隊大隊長を務めたジョーンズさんかな」
「なるほど。あの人か。確か今は仕事を辞めて冒険者になったんだったか?」
彼女も知っている人物なので納得したように頷く。
ジョーンズさんは元帝国近衛部隊の大隊長を務めた男だ。
《散歩に行こう》のメンバーは三大国家の国王達と面識があったようだから、きっと彼もコーフィ=チープとは知り合いだろう。
そうでなくとも、顔ぐらいは知っているはずだ。
僕達もそれほど仲がいいというわけでもないし、実力があって発言力もありそうな人物としては打ってつけだろう。
そう思い、僕達は彼の下に向かった。
「おう。どうした。なんかようか?」
ギルドにジョーンズさんの居場所を聞き会いに来ると彼はお酒の入ったジョッキを片手に問いかけてきた。
「お久しぶりです。実はジョーンズさんに折り入ってお願いと言うか。依頼がありまして・・・」
僕は挨拶もそこそこに今回の依頼の件を彼に述べた。
「コーフィ=チープと戦う・・・?」
「はい。それでジョーンズさんにはその時に立会人を・・・」
「ヒィイイイイイイイ!!!! 無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ! 俺はまだ死にたくない! というか。お前も考え直せ!! あんな人外の化け物に挑むだなんて自殺行為だ!!!」
僕の話を聞き終わったジョーンズさんにもう一度話を振った所、急に怯えたように顔を青ざめさせてそう倍した後、僕の肩を掴んで大きく揺さぶりながら急告してきた。
「おいおい、どうしたんだ? たかが冒険者一人に・・・ 元帝国の近衛騎士様が何を怯えているんだ?」
その様子に僕の仲間であるグレッシが疑問を投げかける。
「お前らみたいな若い世代は知らないだろうがな。俺達みたいなのからすると≪不敗の防壁≫は手出し禁止のアンタッチャブルなんだよ!手を出せば間違いなく死が訪れる!悪いことは言わん。その依頼は却下しろ!!」
「は!所詮は帝国の近衛騎士をやめた腰抜けか。たかが元ガードナーの男1人に大袈裟だな。旧世代の雑魚なんて新世代の俺達からすれば雑魚同然よ!」
今度はブルーノが盛大にジョーンズさんを小馬鹿にする。
「あんまり馬鹿にするのはよしなさい。こうした時代の移り変わりを世に知らしめるのが私達の役目なんだから。」
そんなブルーノをカトラが諌める。
彼女は実直で真面目なためそう言った行為はあまり好きではない。
だが、師匠から教わった新魔術式と闘氣法の力を世界に知らしめ様とする意志は僕達の中で一番強い。
「うるせー!お前ら見たいな命知らずになんてかかわってられるか!俺は絶対にいかんぞ!」
僕達の言葉が気にくわなかったのか。
ジョーンズさんはそう言うと席を立ちズカズカと立ち去って行ってしまった。
「しかたがない。他を当たろうか。」
こうして、僕達は仕方がなく次の立会人候補の下に向かうのだった。




