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営業再開

臨時休業を取って街に出た俺は喫茶店のマスターをやめようと思っていた。

だが、それはいけないととある喫茶店のマスターの無言の励ましを受けて営業を再開することにした。


「さて、今日は何をするかな・・・」


三日間の間に積もった埃等は店に戻ってきた翌日を休業にして一日がかりで掃除をしたので営業は再開できる。

賞味期限の切れた食材も捨てたし、街から仕入れてきた物もある。

昨日の内に魔の森で取れる食材なども既に入れて来て今の俺に隙はない。

例え他の店よりもコーヒーやハーブティーの味が多少落ちたとしても魔の森でしか取れない特殊な食材を使ったデザートに軽食、さらにハーブティーまですでに考案済みだ。


あの喫茶店のマスターである老人のように『例え何かが悪くても他に美点があれば!』の精神で頑張っていこうと思う。


(でもなぁ~・・・ もし元気づけるためにわざとおいしくないコーヒーを淹れたのだとしたら・・・)


俺は道化かも知れない。

もしくは狐か狸に化かされた哀れな童だろうか・・・


そんなことを思いながら街で仕入れてきた鈴を取りだし店のドアに取り付ける。

どんな物がいいかと思い街中を虱潰しに探した結果、東方の珍しい鈴を手に入れた。


チリンチリ~ン


と手で降ると綺麗な音がなるのだ。

普通の喫茶店にある鈴と違い真鍮しんちゅうではなくガラスでできた珍しい鈴だ。

売っていた店の主人はフウリンと呼んでいた。

音色と様々な模様が描いてある面白い逸品なので購入したのだ。


「フフン」


店のドアにつけられたフウリンを見て俺は満足げに鼻を鳴らした。

ついでに東方の珍しいお菓子も仕入れたので暇なので食べてみよう。

おいしかったら店で出すのもありだろうなにせうちは変わった物を出す珍しい喫茶店に路線変更したのだ異国の文化は取り入れなければ!

まぁ、今度いつ交易に来るのかわからないので数量限定にはなるだろう。


「まずは主食からだな。」


そう言って俺はオモチなる物を取り出す。

なんでも、東方で主食の食材を元にできているらしい。

こっちの方では主食は麦で主にパンにして食べるのできっとそれと同じものだろう。

俺はオモチを取り出すとまな板の上に置いてコンコンと叩く。

非常に硬い・・・


(おかしいな・・・)


店の主人が「一口どうだい?」といって出してくれたオモチはモチモチしてやわらかかった。

なぜこんなに硬いのだろうか・・・


(パンの様に外はカリカリ、中はふっくらな感じなのだろうか?)


だが、触った感触からして外はカリカリではなくカチカチだ。

このまま食べることはできそうにない。

なので、とりあえず切ってみた。


ザシャ・・・ グググ・・・ ズダン!


包丁で切るとなんと中も硬い。

外側を切るでだけであとは柔らかいと思ったらものすごく硬い。

おかげで、包丁が途中で止まってしまい力を入れて無理やり切るとまな板まで少し切ってしまった。


(な、中まで硬いだと・・・)


予想に反してオモチは中まで硬かった。

なんだろう。

もしかしてパン同様に作ってから時間が経つと固くパサパサしてくるのと同じだろうか。

オモチは出来立てでないとあの柔らかさがなくなり硬くなってしまうのだろうか・・・


(そんな・・・)


硬くなりもう食べられなくなったオモチを見て俺は絶望に浸る。


(そんなこと一言も行ってなったじゃないか・・・)


俺は交易に来ていた異国の店主を深く恨んだ。

食えない物を買わされたのだ誰だってそう思うだろう。


東方の商人は信用できない。

そう思いつつドアにかかったフウリンを揺らして鈴の音に耳を傾けながら「良い買い物もした」と自分に言い聞かせるのだった。

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