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≪雑魚狩り≫

≪暴君≫ガイ=ドラグーンと≪業火の魔術師≫クラウが互いに魔剣を手に取り対峙した。

冒険者の中でも最強の力を持つとされる守護天将が、世界最高峰の武具を手に取り対峙する。

その危険度はそこにいる全員が理解できた。

この戦いに巻き込まれれば同じ守護天将である自分達の命も危うい。


だが、止めるすべが彼らにはない。

この戦いにどちらが勝ち、どちらが負けようと人類にとって有益なことは何もなく、双方が相打てばただただ損失が増えるばかりであるために何とかして止める必要性はある。

しかし、自分たちが参加したからと言って2人が止まるとは思えない。


おそらくは被害が拡大するだけだろう。


この2人の大戦力を止めることができるのはおそらくは2人。

≪無敗の防壁≫と≪救世主≫のみだろう。

その他の戦力では被害を拡大させるだけだ。


しかし、件の≪無敗の防壁≫は暗殺対象であるためにここに来ることはない。

≪救世主≫はその性格上、現在の事態を知ったら止めるどころか確実に『死』を生む未来しか見えない。


「はぁ」


誰かが現在の状況に溜息をつく。

それは、そこにいる皆の総意でもあった。


参加することも、止めることも、逃げることすら難しい。

何が理由で、この一触即発の状況が動くか分からない。

そんな状況で、そいつはやってきた。


ガチャリ


静まりきった部屋の中にその音だけが大きくはっきりと皆の耳に届いた。


「な~にやってんの?」


扉を開けて入ってきた男は眠そうな表情で、片手で目を擦りながら問いかけてくる。

その眼の下にはクマがあり、顔色も少し悪いことはその男を凝視して誰もが思った感想だった。

しかし、そんな感想そっちのけでまず一番に思ったことは「誰?」という疑問だった。


「≪雑魚狩り≫。なんでお前がここに?」


そんな皆の疑問を代弁するかのように口を開いたのは誰であろう≪暴君≫だった。


「ああ、ちょっとした依頼でね。で?なに?もしかして、新人虐め?そうだとしたらガイ君。大人げなさ過ぎでしょ。」


現状を見て何をどう思ったのか。

男はそう言って≪暴君≫の方に歩いていく。


「ちげ~よ。これはだな・・・」


「まぁ、いいや。僕の仕事はこの場で起こる揉め事を未然に防ぐことだ。ガイ君。君が引かないなら僕が相手になるけど?」


男はそう言うと腰に差している剣を抜き≪暴君≫に向ける。

男の実力がどの程度なのかはわからないが、その行為は≪暴君≫の逆鱗に触れかねない危険な行為だ。

周りの者達が息を飲む中、口を開いたのはクラウだった。


「おじさん。誰だか知らないけど。勝手に入ってこないでくれる?これは世代交代の一環みたいなもんなんだよ。」


「ん?そうなのか?悪い。揉め事じゃないならかかわるのは筋違いだな。」


クラウの言葉を信じたのか。

男は剣を腰の鞘に戻して普通に謝るとその辺の椅子に腰かけた。

その動作に、そこにいる全員が呆気に取られてしまう。

明らかに、そう言う雰囲気ではなかった。


寧ろ、明らかにこれから揉め事が起きようとしているのに、それを止めに来たと言う男は一切関与しないとでも言いたげに椅子に腰かけて欠伸をしだした。


「はぁ、アホらしい。どうせ、俺が手を下さなくても問題はないしな。」


そういうと≪暴君≫は剣を鞘に戻すとめんどくさそうに椅子に腰かけた。


「あれ?やめちゃうの?残念だな。冒険者の中で最強って称号が欲しかったのに・・・」


≪暴君≫の態度にクラウは残念そうに手に持った槍をしまうと口を尖らせて残念そうにつぶやいた。


(テメー如きに俺が負けるかよ・・・)


それを聞いて≪暴君≫は額に青筋を立てるがそれ以上の事はしなかった。

周りの者達はそんな≪暴君≫の態度に冷や汗を流しながらチラチラと視線を向ける。


「じゃ、僕はこれで失礼しますね。」


そんな空気をものともせずに、そう言ってクラウは部屋から出ていく。

こうして、短いようで長かった一触即発の空気は終わりを告げたのだった。


「今日も平和だねぇ~。」


部屋に乱入してきた男はいつの間に淹れたのか。お茶を飲みながらほのぼのと呟いた。


「で?≪雑魚狩り≫何しに来たんだ?」


そんな男の態度を意にも介さず≪暴君≫が話しかける。


「だから、揉め事の処理だって。それ以上でもそれ以下でもないよ。それよりも、聞かせて欲しいな。コレ、どういうことなのかな?」


そう言って男が取り出した資料には、『コーフィ=チープ討伐計画』と書かれていた。


「それについては、さっきの奴が請けおったぜ。」


それを見て≪暴君≫が平然と答えた。


「さっきの? ・・・子供には無理だと思うけど・・・」


「大人でも無理だっての。」


男の呟きに≪暴君≫が答え、それを聞いて周囲の者達が頷く。


「まぁこの計画はただのカモフラージュですからね。本当の目的は別にありますから問題ありません。」


最後に今まで口を閉ざしていて最高権力者の1人がそう言った。


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