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極秘命令 コーフィ=チープ討伐指令

コーフィ=チープが中央に戻り、国際交流会開催に向けて動き出した頃。

ギルドの最高権力者達が一堂に会し、ギルドの最高戦力たる守護天将を招集していた。


守護天将。

ギルドに所属する冒険者の中で、最強たる軍団級の実力があり、なおかつ、二つ名がつくほどの実績のある者達の中からギルドの最高権力者達が選んだ選りすぐりの戦士。

所属した物には、ギルド側から様々な援助や権利を得る代わりに、危険区域から魔獣が出現した場合。

これを優先的に対処する義務を負った者達。


守護天将はギルドの顔であり、最高戦力。

故に、冒険者の誰もが憧れる。

最終目標である。

現在、守護天将に選ばれた者達は全部で8人。

その内に6人がこの場に集まっている。


それは、これからギルドが行おうとしていることがそれだけ重要であると同時に、危険であることを示している。


「で? こんな人数集めて何の話だ?」


集められた顔ぶれとギルドの最高権力者たちの顔を見ながらめんどくさそうに≪暴君≫は話を切り出した。

冒険者内で最強と目されるこの男も、当然ながら守護天将に所属しているのだ。


「ええ、実はこの度は三大国家のとある重鎮達からの依頼を受けていただこうかと思いまして、皆さまを招集いたしました。」


≪暴君≫の言葉を受けてギルドの最高権力者の1人が話を始める。

だが、その言葉を聞いて≪暴君≫は眉を顰めた。

なぜならば、本来、ギルドは国家に属さない自由組織であるため。三大国家の王と言えども、個人的な依頼をしてもそれをギルドが人を集めて解決に動くことはない。

しかし、今回は三大国家からの依頼だろ云うことが彼の気に障ったのだった。


守護天将は名前の通り『将に天下の守護者』を略したものであり、天下に住まう人々を強大な魔獣から守護するために存在する。

故に、魔獣の大群やそれに比類する強大な魔獣が出現しない限りは行動に制限もなく、依頼を受ける受けないも自由意思によってのみ支配される。

例え三大国家の国王であろうが、依頼内容が気にくわない場合は拒否権もある。


とはいえ、『ギルドが国家に所属しない自由組織』ということや『三大国家の国王達に対してまで拒否権』があるのは建前であり、実際にそんなことをすれば立場が危うくなるので滅多な事ではしないし、そもそもギルドの最高権力者達は三大国家の人間なので、立場上、そんなことはできない。

他の守護天将はそのことを十分に理解しているので特に何も思わないのだが、≪暴君≫たる彼だけはそれが気にくわなかった。

もっとも、そんな彼だからこそ≪暴君≫という2つ名を冠している。


「ガイ=ドラグーン様には不快かもしれませんが、ギルドが国家間を超えて活動するためにもなにとぞ。ご容赦ください。」


ギルドの最高権力者が頭を下げる。

その姿を見て≪暴君≫たる彼は「仕方がない」とでも言いたげに話を聞く姿勢に椅子に座り直した。

それを見てからギルドの最高権力者は話を進める。


「今回の依頼は史上最高の難易度を誇る。故に失敗しても問題ない。守護天将の何傷はつかないし、除名も行わない。もっとも、失敗して生きていられればの話だがね。」


そう前置きしてからギルドの最高権力者は息を大きく吸い込んで今回の依頼の内容を述べた。

それは、元守護天将であるとある人物の抹殺依頼だったのだ。


ダーーーン!


「お前ら、俺に喧嘩を売っているのか?」


その依頼を聞いた瞬間。

ガイ=ドラグーンは目の前に置かれた机を叩き砕いた。

そして、周囲にいる者達を射殺さんばかりの殺気を放った。


それもそうだろう。

先程、討伐の依頼があった人物は彼の大恩人であり、師であり、友であるのだから。

その者に喧嘩を売るのなら、まず自分が相手になる。それほどの覚悟と意志を持ってガイ=ドラグーンは周囲を睨みつける。

しかし、この場に者達は飄々としている者が多い。


同じ守護天将である彼らはもちろん。

三大国家の指示でギルドの長を務めるギルドの最高権力者達3人もまた、それなりの修羅場をくぐってきた戦士である。

例え、最強の冒険者たる彼と戦っても負けないだけの自信はあるのだ。


「ガイ=ドラグーン。此度の依頼はここにいる誰かが受けてくれれば問題はない。別に君が受ける必要は・・・」


「あ?」


そう言おうとして、最高権力者は押し黙った。

≪暴君≫の眼にはそれだけの迫力と眼力が込められていた。


「落ち着きたまえ、ガイ。彼を討つことなどここにいる誰にもできはしない。三大国家の誰がどのような理由でそんなことを言い出したのかは知らないが、適当な理由で失敗したことにすれば問題ない。」


そう言って≪暴君≫を黙らせたのは≪黒狼≫の2つ名を持つギルドの古株であった。

その言葉にそこにいる別の守護天将達も大きく頷いた。

ただ一人の若者を覗いて・・・


「なんだ。皆さん受けないんですか?なら、この依頼。≪業火の魔術師≫である僕が受けてもいいですか?」


そう言って名乗り出たのは、つい最近、守護天将に選ばれた15歳の少年魔術師であるクラウだった。


「あ? 何言ってんだクソ餓鬼。 死にたいのか?」


当然、そんなクラウの発言を大人しく見守るほど≪暴君≫は優しくはない。


「なんですか?僕と戦って勝てるとでも?旧世代の方はいい加減身の程を知ったらいかがですか?」


そんな≪暴君≫の発言を意にも介さず、クラウは挑発的に言葉を述べる。


「なるほど、どうやら身の程を知らない馬鹿らしい。最年少で守護天将になった己を力を過信しているようだな。仕方ない。俺が現実を教えてやろう。」


そう言って≪暴君≫は愛刀を抜く。

だが、その言葉遣いとは裏腹にその表情と眼力は鋭く、先程より殺気が遥かに増しているにも関わらず、その顔には笑みを浮かべている。

その表情は悪魔と呼ぶにふさわしいほどに不吉な笑みを浮かべてる。


「良いでしょう。旧世代の老害に時代の違いを教えてあげましょう。ついでに、先日手に入れたこの≪槍≫の性能もテストできますしね。」


そう言ってクラウが取り出したのは一本の槍。

それを見た瞬間、≪暴君≫の表情は一転する。

先程までの笑みは消えうせ、緊張が走る。

それは、その場にいる誰もが同じだった。

なぜならば、クラウが手に持つ槍はコーフィ=チープが世にばら撒いた50本の魔剣のうちの一本。

≪プロミネンス≫なのだから・・・


その力は≪暴君≫たるガイ=ドラグーンの持つ魔剣≪シグムント≫と同程度の威力を有している。


「チッ・・・ 面倒だな・・・」


≪暴君≫たる男は眉間に皺を寄せて愚痴をつぶやいた。


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