帰還? いえ、解放です
お久しぶりです。
永いこと読み専になってました。
今日からまた頑張って行こうと思いますが、更新は不定期で、何を更新するかは気分しだいになります。
永い永い拘束期間が終了し、俺は今日晴れて自由の身になった。
「う~う~!!」
「うう、セブンちゃん・・・」
背中に背負ったセブンがお世話をしてくれたお姉さんとの別れを惜しんで呻く。
お姉さんも、セブンと離れるのが嫌なのか。
ハンカチで目元を拭いながらこちらに手を振っている。
(俺のいない間に一体何が・・・)
未だセブンとの間に溝を感じる俺にとってこの光景は羨ましく輝いて見えた。
「それじゃ、コーフィ。例の件。しっかり三大国家の王達に依頼しておいてくれよ。」
そう言ってマルドが俺に『交流会開催の依頼』についての念押しをしてきた。
そう、俺は今から自分の家に帰るのではなく、三大国家にお使いに行ってくるのだ。
「わかってるよ。」
俺は溜息をつきつつもこちらが依頼した件についての報酬なので拒否するわけにもいかず、仕方なく三大国家の王達の下に向かう為に出かけるのだった。
お金で解決するのならば、三大国家経由でいくらでも引き出せるんだけどな・・・。
そんなことを思いながらも来た道を帰る。
三大国家の王達に会わなければならないので全く同じ道ではないが、西から東に向かってひた走る。
途中でどこにいるのかわからなくなったら、ジャンプして上から見ればだいたいの方向が判る。
曇ってると遠くが見えなくなるから少し困る。
このジャンプは雨の時にも有用だ。
雲よりも上に出て雲の上を走れば雨に濡れることもないし、セブンのおしっこも雲の上から落とせば雨に紛れて分からない。
そんなことを考えながらひた走ること丸二日。
机にかじりついての仕事が多かったために、外に出て久々に走るのが気持ちいい。
そうして、俺は皇帝の待つ帝都にやってきた。
本当は三大国家で一番近いゲネシック興国の国王に会いに行くべきなんだろうが、事前の打ち合わせを行った結果、今度開催される国際会議に参加予定の国家の重鎮が帝都に集まるというので、そこで話をすることになった。
残念ながら三大国家の国王の内で皇帝以外の人はいないことになるが、この件を一任された国家の代表が来るそうなので問題ないそうだ。
「はぁ・・・ それにしても面倒だな・・・」
帝都に辿り着いた俺は、案内を受けながら城内を歩く。
背中にいるセブンは城内の様子が珍しいのか。
忙しなく首を振り城内の様子を眺めている。
そして、気になる物があると俺の髪の毛を引っ張って何なのかを聞こうとして来るが、今は急ぎの用事があるので無視することにした。
「こちらでございます。」
そう言って案内人が立ち止まるので、俺はとある扉の前で立ち止まった。
そして、立ち止まると同時に、目の前にある巨大な扉が開かれる。
開かれた扉の先には、巨大なテーブルに50脚以上の椅子が用意され、その席には各国の代表達が腰かけていた。
「やぁ、久しぶり。」
俺は入室時にそういうと最も近くにある席に着席する。
その席は、先程開かれた扉の真正面でありその反対側には巨大なテーブルを挿んで三大国家の代表達がこちらを見据えている。
「久しいな。コーフィ。早速だが、此度の国際交流会の件。ここにいる中央諸国はすべて参加させてもらうこととにする。」
席に着くなり、この会談にいる中で最も格上の存在たるアボレア帝国、皇帝のグラッツ爺さんが言葉を述べた。
三大国家同士に序列はないが、今回の会談は、場所が帝国と言うこともあり、三大国家の国王は帝国の皇帝であるグラッツ爺さんしかいない。
残りの二か国は代表としてそれぞれの国の宰相が来ているようだ。
「話が早くて助かるよ。じゃ、開催の期日と警備体制と開催場所について話を詰めようか。」
「いや、その前にお主にはいくつか聞いておきたいことがある。」
一番最初にやらなければならない筈の『国際交流会開催の依頼』についてはすでにクリアしている様なので早速俺は次の議題に映ろうとした。
しかし、グラッツの言葉によりその話は一旦ストップすることになった。
「何かな?」
何を聞かれるのか全く見当がつかないので普通に聞き返す。
「お主と≪西方の賢人≫≪東方の魔法王≫との関係。そして、お主が何を考えてこの『国際交流会』の開催を主催することになったのか。その理由が知りたい。」
「?」
グラッツの言葉に、コーフィの頭には疑問符しか浮かばなかった。
しかし、彼にとっては『なぜ、そのようなことを聞くのか?』程度の事であっても、三大国家とその周辺国にとっては捨て置ける事態ではない。
なぜなら、これを機に西方と東方が協力し中央を挟撃し、さらにそこにコーフィ=チープが加わるとなれば中央の国家群は消滅することになるからだ。
三大国家からすれば西と東の勢力は『厄介な存在』ではあっても、『脅威』ではない。
しかし、そこにコーフィ=チープが加わるのであればそれはもはや、『災厄』以外の何物でもない。
故に、開催の理由と西方と東方の主である二名との関係性をはっきりすることは、三大国家とその周辺国にとってはもっとも重要な事柄であったのだ。
「ええっと。兄弟弟子かな?」
真剣な面持ちで、固唾を飲んで答えを待つ、各国の代表達を前にしてコーフィは飄々としながらも、とりあえず、2人との関係性を簡潔に述べた。
そして、なるべく順序立てて今回の『国際交流会開催』に関わることになった経緯を説明する。
説明が進むにつれ、各国の代表達からは険しい眉間の皺が消え、少しずつではあるが、安堵の表情が垣間見えることになるのだった。
しかし、その理由をコーフィ=チープが気づくことは全くなかった。
(この人達は何でこんなに開催の目的や2人との関係を知りたがるのだろうか?)
寧ろ、なぜ自分が問い詰められているのかをただただ悩むことになるのだった。