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セブン

移動中のセブンのお話。

ボクの名前はセブン。

お父さまとお母さまと2人の兄に姉と最近できた妹がいるんだ。

お兄ちゃんたちの話だと他にも親戚とか祖父母とかがいるらしいけどあったことがない。


というか、僕はずっと部屋の一室から出たことがない。

部屋の外に出るとなんでか大人たちがボクを止めるんだ。

一度、お母さまにそのことを尋ねたら「お外は危ないのよ。もっと大きくなったらね」と言われた。

お外はよっぽど危険なのか。

お母さまは悲しそうに目に涙を溜めていた。


そっか。

危ないからもっと大きくならないとダメなのか。

そういえば、お兄ちゃんたちもお姉ちゃんも僕よりおっきいもんね。

心配しないでお母さま。

ボク、もっとご飯を食べて大きくなるよ!


あれ?

でも、妹はボクより小さいけどお部屋の外に出てるよ?

不思議だね。


そんなボクは日がな一日お部屋の中で遊んでいる。

最近は積み木を高く積んでそれを崩すことが楽しくて仕方がない。

最近ようやくうまく立てるようになったからより大きく積み木を積むことができるようになったんだ。

それに飛び込むのはとても楽しい。

いつか、このお部屋の壁も壊してみせるよ。


そしたら、お外に出ても危なくないよね?


そんなことを思っていたある日。

僕の下に変な男がやってきた。

そいつは、お父さまやお母さまとだけでなくボクの家族皆とたまに遊びに来るヴァリスお兄さんを連れてやってきた。


わ~い!


こんなに賑やかなのは初めてでボクは皆と遊ぶことに必死になる。

なのに、皆は入ってきた男と何かを話して僕のことを見ようとしない。


くそう!

こうなったら、今までで一番高く積み木を積み上げて驚かせてやるんだからな!


ううん。

こんなものかな。

そうして、積み木を組み上げていくと今までで最高の物ができた。

これ以上の高さは類を見ない。

いや、これ以上の高さになんて組めはしないだろう。


「そんなのやってみないとわからないだろう!」


そうして、ボクが組み上げた積み木を見て頷いていると一番上のお兄ちゃんが怒鳴りだした。

うわ~ん!

怒らないでよ!

もっと高く積むからさ!

こうして、ボクはさらなる高さへの挑戦を続けるのだ!


しかし、相手はすでに歴代最高の高さに達した積み木達だ。

これの上に積み木を積むのは大変な苦労を要する。


でも負けない!

やってみないとわからない!

うんしょ!

どっこいしょ!


・・・

無理かもしれない・・・


さすがは、歴代最高なだけはある。

どう頑張っても高く積むことができない。

いったいどうすれば・・・


「初めまして。明日から君の世話をする。コーフィ=チープだ。」


そんなことを考えていると後ろから声をかけられた。

うるさい!ボクは忙しいんだ!

ボクは振り返って男に手に持っていた積み木を投げつけると組み上げて積み木に突撃した。


ふふふ

やっぱり楽しい♪





それからしばらくして、ボクはなぜか以前部屋にやってきた男におんぶされて部屋から出ることになった。

だ、大丈夫?!

ボクまだそこまで大きくなってないよ?!

ボクの不安を余所に男はドンドン進んでいく。


それに伴い景色が流れる様に変わっていく。

おお・・・!

これがお外か!

ボクは大興奮でキャッキャッと騒いでしまう。


そんなボクを余所に男はズンズン進み。

遂にお部屋のお外だけでなく、ボクの住んですお家の外にまで出てしまった。

うわ~すごいや!

お家の中と違って眩しいぐらいに明るいよ!!


「元気でね。強くなるのよ。」


おっと、お外に出たことで喜んでいるとお母さまが涙を流しながらそんなことを言ってきた。

よくわからないけど、ボクは元気だよ!と伝えるためにキャッキャッとはしゃぐ。

そして、お母さまが僕から離れると男は一目散に駆け出した。

うわ~!すごく早い!楽しい!!

思わず笑みが零れてくる。

良くわからないけど、この男の人はいい人だ!!面白いし!




そんなことを思っている時期が僕にもあった。

最初は、そりゃ楽しかったさ。

初めてのお外の景色に、ものすごく早く駆ける男の背中にいるのは楽しかった。


でも、この男はまるでボクのことを理解していない。

おしっこやうんこの対処はなっていないし、作るご飯は味が濃い。

ボクはもっと薄味がいいんだい!

なので、差し出されたご飯の匂いがすごいんだ。

見た目もなんだかこってりしてそうだし・・・


食べる気になんないよ!!

仕方なく、何度も料理をつき返していると男はすごく顔を青くしている。

そして、唐突に自分だけ食事を始めたんだ。


「あ~ぶ!! あ~ぶ!!」(ボクもお腹減ったよ~!)


と訴えると男はその果実をすりおろしてくれた。

ああ、これこれ。

この素材の味をそのままいただけるこういう料理が食べたかったんだよ。


うん!おいしい!


ボクがようやく出された食事に喜んでいると目の前の男はなぜか涙を流していた。

きっとボクが美味しそうにご飯を食べているのがうれしいのだろう。

さっきも楽しそうにご飯を作っていたしね。


しかし、ご飯はまぁともかくとして・・・

毎日、移動ばっかりで飽きてくるな。

暇つぶしに髪の毛を引っ張る。


「ぎゃぁ~!!」


おお!なんという楽しい反応!

いつもボクの近くにいた人たちはボクが何かしても丁寧な口調で「おやめください」っていうだけだったのに・・・!

面白い!!


「やめなさい!こら!」


男はとても面白い反応を返してくれるのでいつも新鮮で楽しい。

今日はどこを引っ張って遊ぼうかな・・・


あ、なんか変な動物が近づいてきた。

ボクと遊びたいのだろうか?

でも、残念ながら遊ばせてくれないんだよね。

なんでだろう?


ふぅ、それよりもなんだかおしっこがしたい気分だじぇ。


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