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西方の独裁国家オブリュ

会談の途中で侵入してきたマゼランとかいう男を蹴り飛ばしたせいで、俺は今大変忙しい。

セブンのお世話をマルドの部下である侍女さんに任せてしまうほどに忙しい。

そのおかげで、10日ほど俺はこの国に拘束されいて自由な時間があまりない。

ああ、早く我が家に帰りたい。

あと何日ぐらいこの拘束は続くのだろうか。と、窓の外を眺めて思う今日この頃。


なんでも、彼は西方最大の勢力を誇る国家である独裁国家オブリュと言うところの外交大使らしい。

もっとも、現在では諸国同盟の方が大きな組織な上に経済力、軍事力、技術力の面で上なので正面から戦えば負けはしない筈なのだが、残念ながらそうなるかどうかは微妙らしい。


なにせ、こちらは国ではない。

諸国同盟は盟主であるマルドを中心に発足した国家間の協調により技術や産業を発達させようと云う目的の下に結束されている。

マルドのもたらした魔法技術によって軍事力は格段に強化されているが、兵士にも国家にも戦争の意志はない。

寧ろ、そういう国同士を集めたので仕方がないことだがこういった場合は力にならない。

魔物や魔獣の討伐や邪神の降誕ならともかくとして、国家間での争いは皆極力避けたいのだ。


それに、先程も言ったがオブリュは西方最大の国家だ。

その力は国力が強いだけではなく情報網や他国の貴族達とのつながりも深い。

そう言ったところから手をつけられれば内乱になる可能性もある。


「おまけに、彼らは野心家でね。同盟に入って技術や人材盗もうとしている節がある。そう言った危険性があるので同盟に入れたくないんだけどね。同盟に参加している国の中には脅されて賛成している勢力があるんだ。まぁ、うちに入るためには同盟国の了承が必要だからね。それが下りない限りは入れないだろうさ。」


彼はそう言って「やれやれ」という感じの動作を取る。


「最近では、僕の所に来て同盟に参加するのに反対している国を説得するか。僕の力で強引に参加を認めて欲しいと言い出してね。僕はあくまでも同盟内での決め事や交渉ごとの折衝役であって決定権はないんだけどね。まぁすでに決定している案件についてはある程度の権利は貰ってるけどね。」


そのある程度の案件の一つに今回の国際交流会の開催があるそうだ。


(まぁ、最近は三大国家が裏で手引きしてオブリュが強引な方法で同盟入りを狙ってたからな。今回の国際交流会の開催で僕やヤングドがコーフィと繋がっているとアピールできれば三大国家も下手なことはできないだろう。)


なんだか、マルドが優しげに笑っている。

何かよからぬことでも考えているのだろうか。

まさか、またお説教コースかな?

どうしよう・・・

用件を済ませて早く帰りたいんだけど・・・


残念ながら俺はそう簡単に帰れなくされてしまったのだ。

先程のオブリュの外交大使であるマゼランを蹴り飛ばしたことによる謝罪のために国際交流会の開催を俺指導で行うことになってしまったのだ。

当然、足蹴にしてしまったオブリュの国も招待しなければならないし、開催場所やそれに伴う警備の手配なども行わなければならない。


「開催場所は東方にいるヤングドや三大国家のことも考えて中央で行いたいんだけど。三大国家のどこかで行うと主催者の1人である僕とその国との関係が内通していると思われるんだよね・・・ コネもないのにそんな誤解を受けたくないんだけど。どこかいい場所はないかい?」


マルドは苦笑交じりにこちらを見つめてくる。


「ううん。知り合いに三大国家の中心にある国に城を持ってる人がいるからその人に頼もうかな。護衛の件は冒険者ギルドに頼んで昔の仲間と協会にいる彼女の力を借りることができそうだよ。」


俺は場所を借りられるか知人に手紙を書きつつ、今度開く交流会のための護衛をギルドと協会にいる昔の仲間に依頼した手紙の返事を読み上げる。

仲間への依頼は二つ返事でOKだ。

これなら、同窓会的な感じで昔の仲間達が一堂に会する機会が得られるかもしれない。


「そうか。三大国家やヤングドから場所の選定と警備についてはこちらに任せるという了承の手紙は貰ったし、他の国も問題ない。さすがは≪無敗の防壁≫だね。」


マルドが素直に俺を褒めている。

ここは素直に喜んでおくべきなんだろうか。それとも、何か裏があると警戒するべきなんだろうか。


「コーフィは昔から顔に出やすいよね。」


あ、なんかマルドの笑顔が怖い。

キラキラと輝く王子様の様な笑顔をしている。


「そ、そんなことないんじゃないかな?!」


とりあえず、俺は笑って誤魔化すことにした。

こうして、マルドの執務室には微笑み合う二人の男と言う微妙な空間が生まれるのだった。

まぁ、片方はキラキラスマイルで片方は苦笑なんだけどね・・・


(ああ、早く帰りたい。)


などと思いながらもこれからの予定を詰めていく。

場所の選定は恐らく問題なく終わるだろう。

問題は準備期間と人が集まる日時だ。

1~2月では準備期間が少ないし、何より西方や東方の地から中央に集まる場合は告知や護衛の選定、移動に時間がかかる。


正直言って俺なら西から東に大陸を横断しても6日で済むが、他の人だと2カ月以上はかかる。

馬を乗り継いだとしても護衛を引き連れての大人数での移動となれば、それはもう大変だ。

往復の移動で2か月かかる上に交流会が何日かおこなわれるのであれば、それ以上の期間を開けなければならない。


「うう~ん。現実的に考えて半年後ぐらいかな?」


「そうだね。それくらいは必要だね。」


というわけで、半年後ぐらいに交流会が開くことが決まった。


(これで俺も半年間はゆっくりとお店の経営に戻れるかな・・・)


などという甘い考えを抱いていた時期が俺にもあった。


「じゃ、準備よろしくね。僕は向こうに行くための準備で忙しいから頑張ってね。」


な~んて・・・

マルドがにこやかに言って来るんだ。

ああ、こんなことならセブンが泣きじゃくった方が楽だったかもしれない・・・


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