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賢人との会談

俺はここに来た理由とその前にヤングドの所に行って同じようなお願いをしてきたことをマルドに伝える。

あとセブンはここに来る途中で拾ったことにしておく。

魔力がない子供が捨てられていることなんておかしくはないし、それを俺が拾って育てたとしても特に不思議には思わないだろう。

俺は魔法よりも体術の方が得意だからな。


セブンの親がヤングドだというのはマルド本人だけになら言ってもいいのかもしれないが、個人的な会談とはいえ、周囲には人がいる。

お茶やお菓子の用意をする人や、護衛の人達だ。

その人達にセブンの親のことが知れると何かと面倒になる可能性がある。


(こういう面倒なこと考えるの苦手なんだけどな・・・)


そんなことを思いながら西方のお菓子であるケーキを食べながら紅茶を飲む。

うむ。うまい。

このチョコレイトケーキはすごくおいしいね。

なんだろう。

甘みの中にほのかな苦みがある大人の味わいだ。


「どうやら気に入ってもらえたようだね。」


俺の表情を見て感情を読み取ったのだろうマルドがにこやかな笑顔を向けてくる。


「ああ、すごくおいしいよ。」


俺もその笑顔に答えるために満面の笑みを浮かべて返す。


「あむあむ・・・ムフ~!」


隣でセブンが差し出されたお菓子を食べながら幸せそうな顔をしている。

おいおい、俺の料理を食べた時はそんな顔しなかったじゃないか。

全くこの子は・・・

俺の料理人としての自信を奪っていくな・・・


「さて、それじゃ。君の依頼についての返答をしようか。」


ケーキを食べ終え、紅茶を飲んでからマルドはゆっくりとした仕草でこちらを向いた。


「難しい話は苦手だろうから、単刀直入に言おうか。君の依頼を報酬次第で引き受けよう。もっとも開発には時間がかかるし、確実に新魔法ができる保証はない。それでもかまわないのなら、だけどね。」


さすがはマルド。

俺の性格をしっかりと把握して回りくどいことをしてこないので助かる。


「ああ、その条件で構わないよ。ヤングドにも報酬は払うことになっているしね。」


俺が了承するとマルドはゆっくりと頷いた。


「そうか。なら、問題はこっちの出す条件だけど・・・ ヤングドがどんな条件を出したのか聞いてもいいかな?」


マルドは出す条件を何にするか考えているのか。少しだけ視線を外して窓の外を見ると何かを思い出したかのようにヤングドの出した条件に付いて尋ねてきた。


「う~ん。答えたくないかな。同じ条件にされるとなんだか面倒な気がするし・・・」


俺はマルドの質問をあっさりと否定する。

だって、教えたくないしね。

あの魔剣のことはできるだけ秘密にしたいんだ。

世界の情勢に関わる重大案件だしね。


「そうか。なら、二つ条件をだそう。できればどっちも了承してくれるとありがたいんだけどね。」


そう言って彼は優しく微笑む。

こっちは一つしか依頼を出していないのだが、引き受ける条件が二つ出るのか。

面倒だな。

何かと理由をつけて断る方向に持って行きたいけど、彼は言葉がうまいからなぁ・・・

うまく言いくるめられそうで怖いな・・・


あ、セブン。俺の服で口を拭おうとしないでくれませんか?

はいはい。今口拭いてあげるからね。

俺はハンカチを出してセブンの口元を拭う。

この子は俺の服を汚して良いと思っているのか。

何かあると俺に近寄ってきて、服を汚しに来るんだ。


「まず一つ目の条件はこれだね。」


セブンの口を拭っているとマルドはどこから取り出したのか。

一枚の紙を取り出した。

紙には『国際交流会 開催の依頼状』という題名が書かれている。

その下には、読むのが面倒臭い難しい文面が並んでいる。


「西方の同盟もおそらくは東方にあるヤングドの国もそろそろ落ち着いてきたころだと思ってね。ここで、一つ大きな国際交流の場が欲しいんだよ。」


そう言うとマルドは一口紅茶に口をつけると話の続きを始める。


「国際的な交流の場を作るにあたって君の人脈を借りたい。最低でも僕のいる西方の諸国同盟。ヤングドが東方で治める国と三大国家の五つは最低限招集したいと思っている。」


「はぁ・・・」


マルドが言いたいことは分かる。

でも、そこでなぜ俺の力を借りたいのだろうか?

西方諸国をまとめ上げる同盟の盟主が開催を持ちかければ、三大国家の国王も頷くのではないだろうか。


「僕はまだ26歳の小僧だし、この同盟もヤングドの国もまだ若い。大きさ的にはすでに大国と呼ばれてもおかしくない大きさだけど。三大国家に比べれば歴史も浅い赤子同然の国だ。そんなところが国際交流を持ちかけたところで、一蹴されるのは目に見えているよ。逆に三大国家が招集をかけてくれると集まらざるを得ない状況なんだけどね。彼らは僕らに興味がないのか。こっちには直接アプローチをかけて来てくれないんだ。」


「なるほど。まぁ確かに俺は一応。三大国家の国王と顔なじみだからな。話し位は聞いてくれるかもしれないな。わかった。名前を貸そう。」


「そうかい?助かるよ。ああ、二つ目の条件なんだけどね・・・」


こうして、俺は国際交流の会議を開くための依頼状にマルドと連名して名前を書くのだった。

ああ、二つ目の条件は邪神が現れた時に手を貸して欲しいというものだった。

俺は「邪神が暴れ回るなら止めるのに手を貸すよ」とだけ答えておいた。

俺の回答にマルドは「助かるよ」とニッコリ笑って答えていた。



マルドは国際交流の場を設けるための条件をわかりやすく噛み砕いて入るのだが、コーフィには半分程度しか理解できていません。

コーフィが理解できたのは西方の同盟と東方の国がまだ若いこと。

その二つが中央にいる三大国家に話を持ちかけても通じないことと、逆に三大国家から話が持ち上がった場合は馳せ参じなければならないことぐらいです。


では、上のマルドのこのセリフで何を受け取らなければならなかったのか?


「僕はまだ26歳の小僧だし、この同盟もヤングドの国もまだ若い。大きさ的にはすでに大国と呼ばれてもおかしくない大きさだけど。三大国家に比べれば歴史も浅い赤子同然の国だ。そんなところが国際交流を持ちかけたところで、一蹴されるのは目に見えているよ。逆に三大国家が招集をかけてくれると集まらざるを得ない状況なんだけどね。彼らは僕らに興味がないのか。こっちには直接アプローチをかけて来てくれないんだ。」


重要なのは最後に出て来たこの言葉。

『直接アプローチ』です。

これはつまり、間接的なアプローチはされているということです。

しかし、その間接的なアプローチを使ってマルドが三大国家に接触しないのはその方法があまりいい手段ではないからです。

まぁ政治の黒い部分ですね。

内容はご想像にお任せします。


そして、マルドが国際交流を開く真の目的はその間接的なアプローチを間接的にやめさせるためです。

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