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西方の地

セブンの世話があったため、6日ほどかかって西方の地にやってきた。

そこでヤングドから聞いていたマルドがいると思われる同盟都市にやってきた。

この同盟都市は西方で最大規模を誇る勢力で、いくつもの国が同盟によって結ばれ、盟主と呼ばれる一人の男が頂点に立つ議会によって運営されている。

その盟主が何を隠そう我が師オールド=ヴィルターの一番弟子であるマルド=ヴィルターその人である。


「すごいな・・・」


大陸の中央部と違い、東と西は国力が低く技術も魔術も未発達。

そんな印象が強い。

しかし、近年は東方では魔法王が台頭し、西方には賢人が出現した。

これにより、東方には今や世界最高峰の魔法大国が形を成しつつあり、西方では文化、技術、魔術とあらゆる分野が進歩していくつもの小国同士が手に手を取り合い急速に発展を遂げている。

この2つはまだ発展途上でありしっかりとした基盤ができていないために三大国家よりは不安定ではあるが、その発展速度にはまだ陰りは見えない。


寧ろ、地に足をつけるために発展をわざと遅らせている節すらある。

にもかかわらず、最近できたはずの同盟の中心地たる同盟都市は今まで見たことのない発展を遂げていた。

大きさこそ三大国家の首都には劣るものの、建築技術は目を見張るものがあるし、発展を見据えた街の形状は見事としか言いようがない。

これからの発展に十分な期待が持てる見事な都市だ。


都市に足を踏み入れれば、人が右へ左へ上へ下へと大忙しに移動している。

まだまだ発展途上というか。絶賛増築中なので建築物資を運ぶ人が多くいるのが目に入るが、普通の一般人や商人もいるところを見るとすでに完成した家には人が入っている様子だ。


「さて、まずは何か食べようかな・・・」


せっかくこんな大きな街までやってきたんだ。

まずは腹ごしらえをしてそれから城に向かうことにしよう。


「う~う~・・・」


おっと、セブンが攻撃態勢に入った。

しかたがない。

その前にオシメを替えようかな。

そう思って適当なお店でトイレを借りてオシメを替える。

といっても、おしっこをするタイミングでオシメを外してさせるのでそれほど汚れないんだけどね。


「きゃっきゃ!」


おお、不快感を感じることなくおしっこできたことがうれしいのか。

セブンもご機嫌だ。

その後、入ったお店で食べ物を注文する。


「お子様用のメニューになります。」


そう言って店員さんがセブンでも食べられそうなメニューを出してきた。

おお、なんということだ。

普通のお店にはこういう子供用のメニューが存在するのか・・・!

これは、同じ飲食店として俺も負けていられない。

帰ったら早速、子供用メニューを考案しなければならない。


すでにここに来るまでに、セブン用に作った試作がいくつもある。

それを元に作れば、きっとおいしい料理ができることだろう。

セブンも最近では食べてくれるようになったしな!!


などと考えながら食事を済ませて店を出ると店の前に立派な馬車が止まっていた。


(すごい立派な馬車だなぁ。三大国家の国王でも乗ってそうだなぁ。)


と思わせるほどに大きくて立派な馬車だった。

馬も六頭で引いている。

これほどの大きさは三大国家の国王しか乗ることはないだろう。

東方最大の王であるヤングドの乗っていた馬車ですら四頭引きの三大国家では上位貴族しか乗らない様な馬車だった。


それ故に、三大国家の国王が乗っているのかと思ったが、その馬車からは俺のよく知る人物が下りてきた。

周囲にいる護衛であろう騎士達の長と思わしき人物がゆっくりと馬車の戸を開きかしずく様に頭を垂れて中から出てくる人物に敬意を表した。


「やぁ、コーフィ。久しぶりだね。」


中から降りてきた人物は白銀の髪をなびかせながら涼しげな表情で地面に降り立った。


「あれ?マルドじゃないか。この立派な馬車は君のなのかい?」


そう、そこに降り立ったのは白い髪に紅い瞳を持つ我らが一番弟子。

≪西方の賢人≫と謳われるマルド=ヴィルターその人であった。


「ああ、三大国家の国王が乗る物を真似て作らせてみたんだが・・・ やはり駄目だな。外見はともかく中身は今一つだ。」


彼はそう言って不満を口にしながらもその眼はどこか誇らしげで、口角はわずかに上がっている。

内心では満足のいくできなのだろう。


「それにしても、こんなところでどうしたんだい?」


「おいおい、それはこっちのセリフだ。おまえこそ、こんなところでどうしたんだ?噂では、冒険者をしながら人を鍛えているという話だろう?」


俺の質問に、マルドは苦笑しながら疑問を返してきた。

確かに彼の言う通り、西方で同盟の盟主をしている彼がここにいるのは何の不思議でもない。

逆に、中央で主に活動している俺の方が場違いだろう。


ちなみに、俺が冒険者をしながら人を鍛えているという話をマルドが知っているのは俺が彼宛てに手紙を書いたからだ。

いや、正確には書かされたんだけどね。

マルドはヤングドと違い生真面目と言うかなんというか・・・

毎月のように手紙を出して近況を聞きに来るのだ。


師匠の下を離れて最初のころは3人で冒険者をして旅に必要な物資を確保するためにお金を稼いだ。

その後に、俺達は分かれた。

別れた後、ヤングドは一切こっちに干渉してくることはなかったのだが、マルドはギルドを通じて手紙を出してくるのだ。

面倒くさいので俺は年に一回しか返事を書かなかったのに・・・

実にまめな男である。


「僕は未だに毎月手紙を書いているのに・・・ 君はここ2年ほど。手紙を返さなくなったね。ヤングドでさえ、半年に一度は返事をくれるのに・・・」


やれやれといった風に首を振りながら文句を言うその姿は年齢よりも幼く見える。

というか、本当に同い年なのだろうか?と疑うレベルで彼は若く見える。

あと、俺が冒険者をやめたあとも手紙出してたのか。

ギルドには換金にしかいかないから手紙受け取ってないから気づかなかったよ。


「ハハハ。実は冒険者を一年ほど前に引退してね。というか。そう言った内容の手紙を最後に出した覚えがあるんだけど届いてないのか?」


「そうなのか?来ていないと思うが・・・ 最近は忙しかったからな。あとでギルドに確認をとってみるか。まぁ乗りたまえよ。久しぶりにゆっくり話そう。」


マルドのお誘いに乗って馬車に乗り込む。

馬車の中は見た目通り広く、かなり豪華な作りとなっていた。

寧ろ、これだけ豪華なのに内装のどの辺が三大国家に負けているのだろうか・・・

セブンも中のキラキラとした内装が気になるのか。目を輝かせている。

あ、内装に噛み付こうとしている。

食べ物じゃないのでやめなさい!


俺はセブンの様子を窺いながらマルドと他愛の無い会話を続ける。

これまでの事や、今何をしているのかとか。

どうやって俺の居場所を突き止めたりだとかだな。

ああ、あとはこんな豪華な内装の馬車の何が悪いのか聞いてみるとマルド曰く「豪華にしすぎて落ち着かない」のが欠点らしい。

確かに、豪華絢爛過ぎて長時間の使用は目が疲れてしまうな。

三大国家の馬車内はもっと落ち着きのある上品な感じだった。

近況の説明のついでに、マルドにも喫茶店のサービス券と場所を書いた地図を渡すと彼は「うん。僕も忙しいからね・・・」と馬車の外を見ながら遠い目をしてヤングドと同じようなことを言われた。


(なかなかお客さんになってくれないなぁ・・・)


などと思いつつも、昔話に華を咲かせているといつの間にやら城についてしまった。

ここは同盟都市の中心に立てられた同盟の盟主であるマルドの城だ。

同盟の象徴であり、同盟国の国王や国王代理が訪れる場所なため西方最大規模の城らしい。


そうして、俺は客室に通されると彼は早速と言わんばかりに用件を告げてきた。


「ここにはどんな用事で来たんだい?」


あれ?

ヤングドと違って忙しくないのかな?

と思いつつも俺はここに来た内容を彼に告げるのだった。


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