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魔法王との会談 駆け引き

俺には今、最大のチャンスが到来している。

古き友人でもあり、弟弟子おとうとでしでもあるコーフィ=チープが訪ねてきたのだ。

最初は、兵を差し向けたことで国家の危機かと焦ったが・・・

そんなことにはならなかった。

まぁ、よく考えればあの男だからな。


例え世界中の国々が敵に回っても飄々としていることだろう。

寧ろ、「俺何か悪いことしたかな?」と平然と尋ねてくる可能性すらある。


それはさておき、最初に言った通り俺には最大ともいえるチャンスが巡ってきている。

俺の下にやってきたコーフィが何と『新魔法開発の依頼』を持ってやってきたのだ。

新魔法の開発だなんて早々できるものではない。

それを行うには長い年月と人材や様々な物品が必要になることは言うまでもない。

俺やコーフィの師匠であるオールド=ヴィルター先生も新魔法術式を作るのに一生をかけた。


そんな師匠に魔法を教わったコーフィは新魔法以外の魔法を習っていない。

俺や兄弟子のマルドは現在の魔法技術の水準を知るために調べて使える様になっているがこいつには必要ないので、おそらく今も使えないだろう。

つまり、こいつの依頼を受けるということは本当に一から魔法を作る覚悟で挑まなければならない。


「受けても構わないが・・・ 時間がかかるぞ?」


新魔法の開発には時間がかかる。

そのことについて尋ねるとコーフィは「わかってる。でも、お願いしたいんだ。」と頷いた。


「ふむ。」


そこで俺は手を顎に当てて考える素振りを行う。

それを見てコーフィは「どうかしたのかい?」とでも言いたげな顔で不思議そうに俺を見てくる。

いや、そうじゃない。

普通はここで「何か問題でもありますか?」と尋ねてくるものだ。

そうすれば俺も「受けてもいいけど報酬は?」と尋ねることができる。


そう!

こうやって『相手から言葉を引き出す』のは王侯貴族の使う駆け引きだ。

俺は直接的な言動が多いからこういうのは苦手なんだが、こいつ相手なら使えるだろうと試してみたが駄目だった。

こいつには効果がない。

ああ、もうすでに難しい顔をした俺を余所に出されたお茶とお菓子を楽しんでいる・・・。

おまけに、それがどんなものなのか傍に控える使用人達に聞いている始末だ。


「オホン!」


俺は一度、コーフィと使用人との会話を切るためにわざと咳払いを行った。

それを聞いて使用人は後ろに下がり、コーフィはこちらに向き直る。


「風邪かい?」


「いや、そうじゃない。」


コーフィを俺を見た後で、口から出て来た言葉に驚きつつもバッサリと切り落とす。

昔から、こいつの言動を聞いていると「本当にお前は世界最強の生物か?」と疑いたくなる。

まぁ、頭も良い上に能力も世界最強だったら本当に世界を平定してしまいそうなので、国王になった俺からすれば『安心して放置できる存在』なので良しとしよう。


「お前の依頼を受けるにあたって条件と言うか・・・ まぁ、俺は国王だがな。なんでも、自分勝手にしていいわけじゃない。」


「ああ、そうだね。国王ってみんなの顔色を窺わないといけない職業だもんね。俺は絶対になりたくないよ。」


俺の言葉にコーフィは頷きながら「わかるわかる」と呟く。

その言葉を聞いて「国王でもないのになぜおまえにそんなことがわかるんだ!」と声を大にして言いたい。

俺は正直、国王になるまでは『国王は何をしてもいい』と思い込んでいた。

だが、実際になってみると俺の一挙手一足投から言動までの全てが監視される状況になる。

正直いって面倒だが、その代わりにある程度の融通は利くので良しとしよう。

今回の件も『友人に頼まれて』と言えば何とかなるかもしれないが、こいつはあのコーフィ=チープだ。

世界最強クラスの魔剣を50本以上どこかから入手して来ている。

その秘密を知るためにも今回のこいつのお願いはタダで聞くわけにはいかない。


「ああ、わかってくれるならありがたい。そこでだ。お前の依頼を受ける代わりに報酬を俺にくれないか?」


「報酬?お金でいい?」


俺の切り出した見返りを求める声にコーフィは金銭でのやり取りを提案する。

確かに、冒険者として生きてきたコーフィにとって『報酬=お金』の図式は簡単に想像できるだろう。

しかしだ。コーフィよ。

いくらお前が地上最強の存在であろうと、超有名な冒険者であろうと、俺の提示額は払える額ではないぞ?

俺は勝ち誇った笑みを浮かべて身を乗り出すと指を一本立てた。


「まぁ、そうだな。開発期間を十年としてこれだけもらえれば開発してもいい。」


「1億G?」


コーフィのこの言葉に正直俺は驚いたね。

冒険者ってそんなにもうかるものなのだろうか。

コーフィの顔色からしてその額なら出せるとでも言いたげな表情だ。

正直言って信じられない額だ。

俺の調べでは超一流の冒険者であろうと冒険者は基本的に財産を持っていない。


それはいつ死ぬか分からないから使ってしまうというのもあるが、一番大きな理由は一流の冒険者には一流の装備が必要だからだ。

そのため、冒険者は強者になればなるほど報酬が大きくなる代わりに装備にかかる出費額も伸びるので手元にはあまり残らない。

無論、装備だけでなく食事や寝床なども豪華な物を用意するので、それも理由に入るだろう。

貯蓄なんて精々が年間で30万Gぐらいだろうと予測されたのだがそうではないらしい。

ちなみに一般的な国の一般的な職に就いている人の年間で稼ぐ額が30万Gなのでその額を貯金できる人はそうそういない。

一流の装備と高品質な生活水準をした上で一般人の年間の給金を貯金できる存在が一流の冒険者だと思っていたが、さすがは超一流の冒険者。それ以上に貯金しているのか・・・。


一億と言う金額をポンと出せそうな雰囲気に圧倒されてしまったが、大丈夫だ。

その程度の額のはずがない。

なにせ、新魔法の開発・研究には優秀な人材と膨大な時間と魔力や物品が必要だ。

それらを揃えるためにもかなりのお金がかかる。


我が国は三大国家を凌ぐ魔法先進国だ。

そんな我が国の人材を投与するのだ。

通常よりも多めにふっかけても問題ないだろう。

払えなくても、魔剣についての情報と交換ならばこちらにとっても多大な利益がある。


「いやいや、お前の使う新魔法の発展形を作るんだ。少なくとも1000億は必要だ。」


そう言って俺は莫大な金額をふっかけた。

この金額に驚いたのかコーフィは口ごもった。

それはそうだろう。

1000億Gは大金だ。

どれくらいの金額かと言うと小国が年間で使用する国家予算がだいたい6000億Gぐらいだ。

その6分の1を一つの案件に使うようなものだ。

ちなみに小国より上の中堅国で約3兆G、大国と呼ばれる三大国家の年間の予算がだいたい10兆Gだ。


おっと、勘違いしないで欲しいのだが、我が国は魔法先進国で魔法の開発や研究をしているが一つの案件にこれだけの金額を投与することはない。

最大でも20億ぐらいだ。

この最大値の50倍もの金額のふっかけに、さすがの俺も内心は冷や汗が出ているが、1億を軽く払えそうなこの男にはこれぐらい無理な金額をふっかけても問題ないだろう。


いや、寧ろ断ってくれ。

そうすれば魔剣の秘密が手に入る。

各国の王が知りたがるその秘密を俺だけが知ることができれば大きなアドバンテージになる。

そう思っていたのだが・・・


「分割払いでいい? 支払いは三大国家経由でお願いしたいんだけど。」


「は?」


コーフィの口から放たれたその言葉に俺の理解は追いつかず、思わず間抜けな声を上げてしまった。


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