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魔法王との会談

この国の五大将軍の1人である雲郭さんの風鈴についての懐かしいエピソードを聞き、俺は少し業況を整理している。

風鈴は読んで字の如く、風になびく鈴だ。

夏の暑い日差しに耐えるために、音で風を感じて涼を取るという東方ならではの使い方だそうだ。


「ううむ・・・」


この話を聞いた後で、一人になった俺は頭を抱えて悩んでしまう。

俺は今現在、お店で風鈴をドアベルとして使用している。

当然、これは風鈴の正しい使い方ではない。

もし、今現在の俺の店の惨状を雲郭さんに見せれば怒られるかもしれない。

なにせ、正しく風鈴を使っていないのだ。

風鈴をこよなく愛する雲郭さんはきっと衝撃のあまり激怒するだろう。


しかし、しかしだ。

使い方は間違っているけれども、俺だってあの風鈴を愛している。

通常の金属製のドアベルと違い、柔らかく優しい音の出る風鈴はガラス細工であるために脆く壊れやすく、ドアベルには向かないのかもしれないが、ベルとしての機能は果たす。

おまけに、その優しい音色は俺の理想とする『安心して寛げる空間』のイメージにマッチしている。


それにだ。

金属の音色と違い角の取れた優しい音を出す風鈴だが、窓を閉め切り閉鎖された空間で生活する俺の喫茶店では窓の外になんて吊るすことはできない。

なにせ、魔の森で店を開いているのだ。


魔法による結界で、防御したり周りに悟られない様に隠蔽したりしているが、危険がないわけではない。

風鈴なんて割れ物を外に吊るしておけば、何かの拍子に割れてしまうかもしれないし、風鈴の根を聞くために窓を開けておくと虫なんかが入ってくるかもしれない。

そう!

これは風鈴をドアベルとして使用するのは立地的に仕方なくなのだ!

け、決して今更使用方法を変えてガイ達に『あ、風鈴の正しい使用方法聞いて来たの?』とまるで俺が風鈴の使用方法を知らなかったことを隠す為じゃない!

あえて! そう! あえて! あの使用方法をしているにすぎないのだ!!


大事なことだから、一応もう一度心の中で唱えておこう。


(俺はあえて風鈴をドアベルとして使用している!!)


ふぅ、すっきりした。

さて、そろそろヤングドとの会談の時間だ。

忙しい彼を待たせないためにも、僕は一足先に予定されている場所に向かうことにする。




だが、俺は道に迷ってしまい、残念ながら到着したのはヤングドの部下が俺を探し回った後の事だった。

少し反省。

道が分からないのに先回りしようだなんてするものじゃない。

という教訓を得た俺はヤングドと食事をしながら、俺の訪問理由である新魔法の開発に関する要望を述べた。


「ふむ。新魔法か・・・ 別に、今のままの魔法でも問題ない気がするが・・・」


俺の話を聞いたヤングドは眉をしかめたままの状態でそう述べた。

まぁ、確かに一年間保存しても一時間しか経っていないという現在の保存魔法は確かに有効だ。

鮮度的には問題ない。

問題になるのは味の方だ。


「味か・・・ 確か、強力な魔法に晒されるために鮮度は落ちていないのに味が落ちるという謎の現象だったか・・・。」


ヤングドはそう言って現在の保存魔法の欠点を述べる。

それは鮮度はほとんど落ちないのに味が落ちるという謎の現象だった。

一番可能性がある理由として強力な魔法に晒されてるからじゃないかと思われているが、真相は定かではない。


「そうなんだ。おまけに別に冷凍しているわけじゃないからね。涼しい場所においていても夏場だとすぐにダメになってしまうんだ。俺は冷却系の魔法がほとんど使えないから余計に酷くてね・・・」


食料の保存は地下にある氷室の近くにしているとはいえ、我が喫茶店には地下に温泉を完備している。

そのため、距離を開けて氷室の近くに食料を保存していても以前より保存状態が悪いのだ。

『じゃあ、温泉なんて掘るなよ』とヤングドはあきれた返事を返してくるが、当初の予定では、魔の森にある宿泊施設付きの喫茶店の目玉として考えていたのだ。

まぁ、作ったけどお客さんが来ないので俺専用とかしているが・・・

これが、若気の至りと言う奴だろうか・・・


「取らぬ狸の皮算用に近いが・・・ まぁ、事情は分かった。 開発に関しては昔の付き合いでしてやってもいいが、タダでと言うわけにはいかんぞ。なにせ、俺は国王だしな。」


ヤングドは片方の口角を上げてニヤリと笑う。

まぁ、もともとタダでしてくれるとは思っていないのでこの言葉は想定内なので問題ない。


「それで、いくら用意すればいいのかな?」


もっとも単純でシンプルな答えを聞くために俺は金額を尋ねた。

こう見えても、俺は元一流の冒険者だ。

貯金額は仲間達の中で一番だからきっと問題ないだろうと思いそう問いかけた。


「フフフ。コーフィよ。元一流冒険者と言えど払えるのか?言っておくが1ゴールドだってまけたりはしないぜ?」


そう言って俺はコーフィに切り出した。

これはこの件の主導権を握り、こちらにとって最上の条件を絞り出す為に必要な行為だ。

ここで主導権を取ることができればコーフィ=チープが持つ様々な謎を解明することができる。

そのためにも俺は本腰を入れて話をすることにした。




コーフィ=チープの持つ謎。

コーフィは冒険者時代に≪散歩に行こう≫のメンバーとして行動していた。

そして、この≪散歩に行こう≫は数々の伝説と偉業を成し遂げた歴代最高にして最強のパーティーである。

そのリーダー格であるコーフィ=チープは規格外の戦闘の力を持っている。


魔法の能力は結界、防御、領域と言う防御支援寄りの能力しかまともに使えず、魔法による遠距離攻撃手段は存在しない。

魔力の量だけ見れば魔法王と呼ばれる御醍五条 ヤングド=ヴィルターとほぼ互角であるが、魔法のセンスと技量の差で負けているため決して史上最強の魔法の使い手と言うことはない。

しかし、格闘技においてその実力は国家規模の軍隊でさえ勝てないという評価がなされている。

その理由は国家規模で対峙するべき魔獣を単独で仕留めたという実績と三大国家の近衛兵たちを誰一人傷つけることなく無力化したこの二点にある。

無論、各国の入念な情報操作によって民衆には伏せられているが、国家の上層部や一部の冒険者には周知の事実である。


その実力もさることながら、コーフィ=チープの流派や出自も不明である。

各国が素性を調べるために辿れる最終地点は彼の魔法の師匠であるオールド=ヴィルターと出会った山奥までであり、それ以前は不明のままである。

ヤングド達も彼と出会う以前の話は少しばかり聞いていたが、そこから素性を辿ることはできなかった。


だが、今現在各国の王達が知りたいのはそんなことではない。


それはコーフィ=チープがもたらしたある魔剣の出どころである。

チープクラスと名付けられたその最強の魔剣は、50本ほどが今現在王国の管理下にあり、4本ほどが元≪散歩に行こう≫メンバーが所有している。

それらの魔剣は、各国の技術では製造不可能であり、その製造技術は喉から手が出るほど欲しい物でもあった。


そして、それらの技術を手に入れるために各国の王達はコーフィに幾度となくアプローチをかけるが、すべて失敗しているのだった。


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