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門前払い

駐屯所で女性とお茶をして談笑していると国王への謁見の話を持っていった男が帰ってきた。

帰ってきた男は乱暴に扉を開けて俺を睨みつける。

だが、すぐに傍にいた女性に気づいて声を荒げた。


「姫様! なぜこのような所に・・・!!」


入ってきた男は慌てた様子で女性に近づくと俺か遠ざける様にして立ち上がらせると自身の背後に隠した。


(え、俺ってそんなに怖い?!)


と俺は自分の顔を触って眉間に皺が寄ってないかなどを確かめた。

うん。大丈夫だ。

俺はそう確信するとできるだけ警戒させないために笑顔で男性を見つめる。

ところが・・・


「薄汚い詐欺師風情が! 姫様に余計なことを吹き込んでいないだろうな?」


と、ものすごくドスの利いた声で睨みつけながら問いただされた。

それにしても、人のことを詐欺師呼ばわりって失礼じゃないのかな?

ヤングドに言いつけちゃうよ?

と思っていたら男は周りの兵士や女中さんに指示を出して姫様と呼ばれた女性を部屋の外に追い出した。

女性は困った顔で俺の方を見てきたとりあえず笑顔で手を振っておく。


「陛下に貴様のことを尋ねた所、貴様なんぞ知らんとのことだ。よって、貴様は陛下の友人を語った不敬罪で処刑する。無駄な抵抗はするなよ?」


と、女性が出て行ったことを確認してから男は口を開いた。

俺はその言葉を聞いてびっくりだ。

ヤングドは俺のことを友人と思っていなかったらしい。


ガガーーーン!!!


ショックで少し頭痛がする・・・

いや、もしかしたら何かの間違いという可能性もある。

俺は男にちゃんと話したのかを聞くことにした。


「何かの間違いじゃないのかな? 俺の名前ちゃんといった?」


と、尋ねると男は激怒したのか怒った口調でこう反論した。


「『陳腐なコーヒー』などという明らかな偽名を陛下に伝えるわけないだろうが!! 一応、陛下にも話を通しただけだ! この不埒者が!!」


と怒鳴られた。

というか、俺の名前は『コーフィ=チープ』であって『陳腐なコーヒー』なんかじゃない!!

人の本名を偽名呼ばわりってひどくないかな?!

さすがの俺も涙が出そうだよ・・・


(こうなったらヤングドに直訴するしかない・・・!)


そう思って立ち上がると俺の前に男は悠然と立ちはだかった。


「どこに行く気だ?」


まるで値踏みするかのような視線をこちらに向けて男は尋ねる。


「ヤングドに直接会いに行くんだよ。」


俺が自分の意志を示した瞬間だった。

男はニタリと笑った。

男の顔だちも最初に会った印象も穏やかで特に敵意などは感じなかったが、今の男からは好戦的な雰囲気が漂っている。


(冒険者時代にもこういう人いたなぁ・・・)


戦いが好きな変わり者。

時に異常者と呼ばれ嫌われる事もあるが、こういう人を俺は嫌いじゃない。

ガイとは性格が違うし普段の様子も全然違うけど彼はどうやらガイと同じ人種らしい。

戦いの中にいる時にだけ本性を現す獣の様な人格はアノ人のことを思い出す。


(アノ人もこんな風に笑ってたなぁ~・・・)


アノ人の笑顔はものすごく怖かったけどそれに比べれば目の前の彼は可愛く思えてくるから不思議だ。


(しょうがない。相手をしてあげるか。)


俺が戦うために王都の外にある荒野に移動しようとした瞬間だった。

男が小さく何かの呪文を唱えると俺と男は一瞬にして王都の外に出た。

どうやら、瞬間移動の魔法が使えるらしい。


「ここなら、存分に暴れられるから好きなだけ抵抗してくれてかまわないよ。」


男は楽しそうに笑みを浮かべて俺を見ている。

どうやら、戦いたくて仕方がないらしい。

不敬罪でただ処刑するよりも抵抗されて戦いたがるだなんて「よっぽど戦いが好きなんだぁ~」と少し感心してしまった。

俺は暴力はできるだけ振るいたくない人なんだけど・・・

まぁ、いいか。


「オールド=ヴィルターの三番弟子。コーフィ=チープです。」


一応、戦う前に名乗っておく。

決闘は昔からお互いが名乗るのが基本だからね。

名乗り終ったらペコリと頭を下げる。

戦いの前の一礼は相手への敬意の表れだ。


「まだその偽名を使うのか。まぁ、いい。俺の名は劉剋りゅうかつ。ヒノモトの国の五大将軍が1人。」


勇ましく名乗った男は名乗り終えると共に攻撃を開始した。

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