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こんな時は飲む!

ガイ達と別れた後、店の周りの魔獣事情を知った俺は項垂れていた。


(働く気が起きない・・・)


社会人として人間としてダメな気がするが、しょうがない。

ヤル気が出ない物は出ないのだ。

喫茶店を作り、料理の研究をして、宿泊施設や温泉まで作ったにもかかわらず、人が来れない。


(俺には商才がないという神の啓示だろうか・・・)


そんな風に思って俺はトボトボと道を歩く。

歩いていると仲間達と昔よく行った居酒屋の前についた。

お酒は飲まない派の俺も今日はちょっと飲みたい気分だ。


ギィ


重苦しい木製のドアを開けると中にはまだ早いのか疎らにしか人がいなかった。

中に居た人たちは俺の顔を一瞬だけ見て驚くとヒソヒソと何かを話し出した。


(俺のこと知ってるのかな・・・?)


俺が元いたパーティはなぜか伝説化しているので、俺の事を知っている可能性は無きにしも非ずだが、俺の顔はそんなに売れてないはずだ。

ガイや《救世主》《殲滅の射手》などの顔は売れているだろうが俺は他人とあまり話したことはほとんどないし、公の場に出た覚えもない。

公の場は基本的に他の人達に任せていたからな。


(俺・・・ お酒に弱いんだよな・・・)


初めて出た公の場のパーティで酔い潰れて以降、俺は公の場には出ていない。

なんでも、その時に俺の力を手にしようとした貴族が自分の娘をあてがおうとしたらしい。

俺は酔っていて全く知らなかったが、仲間達が「大変だったんだぞ」と言って教えてくれた。

それ以降、俺は貴族やお国のお偉いさんが怖くなって会っていない。


魔獣討伐のお礼にいくつかの国の国王が「パーティや受勲式を行うから来てください」と言ってきたが、すべて断った。

まぁ、仲間達は出たけどね。

ガイから聞いた話によると《救世主》や《韋駄天》《殲滅の射手》は俺がいないので国王や貴族の方達に事情を説明して平謝りしていたらしい。


(今思えば、悪いことしたかなぁ~・・・)


そんなことを考えながら俺はカウンター席に座る。


「いらっしゃい。久しぶりだね。今日は一人かい?」


そう言って話しかけてきたのはこの店の店主のカールさんだ。


「ああ、冒険者はもうやめたんだ。エールを一杯下さい。」


「え・・・? 酒飲むんですかい?」


俺の一言が引っ掛かったのかカールさんは聞き返してきた。


「ああ、ちょっと嫌なことがあってね。お酒を飲んで忘れたい気分なんだ。」


そういうとカールさんは「そんな日もあるわな。若いんだからあんまり気にすんなよ。」と言って励ますと俺に御通しを出してくれた。

俺はお通しをつまみながらメニューを眺める。


特に食べたいものがあるわけじゃないが「お酒を頼んだらおつまみを食べる物だ」とガイの奴がいっていたので俺も何か頼もうと思ったのだ。


(おつまみって何を食べる物なんだろう・・・)


そう思って昔、ガイがどんなものを頼んでいたかを思い出す。


・・・

・・・・

・・・・・


ううむ・・・

焼肉と一緒に酒を飲んでいたイメージしかないな・・・

ここは居酒屋でお酒を飲む場所なのだが、パーティを組んでいた時は他のパーティと食事会をしながら情報交換していたぐらいだからあんまり飲み食いをしていた覚えがない。


他の人で考えよう。

《破断の魔女》なら・・・

葡萄酒を片手に持ち、チーズを食べるイメージだな・・・


(チーズか・・・ そう言えばチーズっていろんな種類があるんだよな・・・ 料理の試作のためにいくつか買って帰ろうかな・・・)


俺はそう思い、忘れない様にメモを取った。

あと、チーズは店に置いてなった。


《殲滅の射手》なら・・・


「ねぇ君? 酒の肴に今宵は俺なんていかが?」


駄目だ。

女の子をナンパしている所しか想像できない。

そう言えば、彼の趣味はつまみ食いだった。


(そして、ナンパの果てに出来ちゃった婚か・・・)


最後は潔く結婚したことに俺はすごく驚いたな。

逃げ出してどこかで冒険者をやる物かと思っていたが・・・

まぁ、《救世主》と《破断の魔女》の女性コンビに何か言われてたのが決め手かも知れない。


(うう・・・ それにしてもメニューが決まらないな・・・)


残る二人の《救世主》はお酒飲まないし、《韋駄天》は「真のおとこは夜の月を見ながらひたすら酒を煽るもんすよ!」って言ってガイとは正反対のポリシーを持ってたんだよな・・・


(そう言えば、この二人は宮仕えしたんだよなぁ~・・・ 二人とも、元気にしてるかなぁ~・・・)


「ヘイお待ち。」


そう言ってカールさんはお酒を差し出してきた。

ガラスのコップに注がれたお酒は黄金色に輝きとても美しい。


「これはおまけね。」


そう言ってカールさんは串に刺さったお肉を出してくれた。


「ありがとう。何のお肉?」


「焼き鳥って言ってね。串に鳥の肉を刺してタレをつけて焼いたものだよ。東方から仕入れた物さ。」


「へ~・・・」


俺はそう言いながら一口食べてみる。


(うん。おいしい・・・)


お酒の肴にはピッタリかも知れない。

そう思って俺はお酒を一口飲んだのだった。


(うん。苦い・・・)


相変わらず、お酒のおいしさはよくわからない。

皆、なんでこんなのがおいしいというのだろうか・・・

このお酒独特の匂いも少し苦手だ。

だが、俺は焼き鳥とお酒を交互に楽しむのだった。

お酒があまり好きでない分、焼き鳥がすごくおいしく感じた。

俺は悩みを忘れてお酒を楽しんだ。

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