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ガイ VS 麒麟

コーフィの店を後にして仲間と共に街に戻る道中。

俺達は予想外の生物に出会うことになった。


「な、なんで・・・ ここにあいつが・・・」


その姿を目にした瞬間、俺の思考は一瞬停止した。

姿形は馬でありながら、その全身は竜の鱗で覆われ、黄金に輝く髭(髭)とたてがみをなびかせる存在。

最弱と揶揄されることもあるが、その実力は間違いなく竜種の中でも最強に位置づけられる古龍種であり、本来ならば200kmゾーンの先、200~250kmゾーンに群れで生息しているはずの魔獣。

麒麟。


(なんでこんなところに・・・)


そう思わずにはいられなかった。

現れたのはたった一匹だけだった。

本来ならば群れで生息する麒麟が、たった一匹だけで存在している。

これは、冒険者にとってチャンスと取れる場面でもある。

なにせ、相手は古龍種だ。

その血肉から鱗の一欠片ひとかけらまで余すところなく売りに出せる上に、全身の総額は状態が最悪の取引でも1000万Gを超える。


「問題は・・・ このパーティーじゃ狩るどころか全滅することかな。」


なにせこちらはつい数か月前まで中間組と呼ばれるパーティーだったのだ。

実力はついて来ているが、さすがに麒麟を相手にしては勝ち目なんて存在しない。

俺は額に嫌な汗を流しながら剣を抜き構える。

それを見て後ろにいる仲間達が剣を抜こうとしたのでそれをやめさせる。


「待て、戦っても勝ち目がねぇ。お前らはコーフィの所に戻って助けを呼んできてくれ。ああ、ルビーは悪いが俺のサポートだ。さすがの俺も一人じゃ足止めしきれねぇからな。」


「え、でも・・・」


「了解しました。」


俺の言葉を聞いて仲間の1人が俺と麒麟とを見比べて言葉を詰まらせる。

そんな仲間達の後ろからルビーが顔を出すと彼女は杖を構えて臨戦態勢に入る。

さすがは、俺がヘッドハンティングしたサポーターだ。

他の奴らよりも理解が早くて助かる。


「良いから行け。どのみち、俺が魔剣を使ったら今のお前らじゃ足手纏いだ。」


そう言って俺が剣を構えて前進すると仲間達は静かに頷いた後で後方に向かって走り出した。


「魔剣。使われるのですね。」


「使わなきゃ勝負になんねぇだろうが。」


ルビーの問いかけに辛辣に答えると彼女は「まぁそうですね」と頷くと一足飛びに駆け出した。

ルビーの動きにつられて麒麟が一瞬俺から視線を切ったのとほぼ同時に俺は魔剣を発動する。


魔剣。

一般的に魔力を有した武具の総称であるため、その姿は剣だとは限らないが俺の持っている物は大剣形状だ。

特性として使用者が一定量以上の魔力を流すと発動し、内部の魔力が流出する仕組みになっている。

流出された魔力は剣によって固定の能力を保有する。

俺の持つ魔剣≪シグムント≫は重力操作と衝撃波を発生させる二重特性持ちで、その威力は数ある魔剣の中でも最強とされる≪チープ≫ランクだ。


ガシャン!


魔剣が発動した瞬間。

シグムントはその刃を収納してしまう。

なぜならば、シグムントは衝撃波で全てを吹き飛ばす打撃武器だからだ。

普段は大剣の形態を取っているが、魔剣としての能力を発動した瞬間に刃の部分が収納されて巨大な打撃武器となる。


「おらぁ!!」


重力操作によって自身と剣重量を消失させた俺は一足飛びに麒麟の下へと向かう。

重力と言う枷をなくした俺の速度は音速を超える。

そのため、剣を前に突出し衝撃波によって空気の壁を切り裂き突き進む。

重力に空気の壁、この二つの妨害を失った俺の速度はさらに加速し音速の倍以上の速度に到達した俺はそのまま麒麟に突撃し、横なぎの一閃を麒麟に向かって放った。


ブフォン!!


しかし、相手の虚を突いた上に、これほどの速度で突進した俺の攻撃を麒麟は実にあっさりと躱す。


「マジかよ!!」


まるで空中を走る様に軽やかに退避した麒麟は俺を一瞥すると雷撃を落としてきた。

それを剣を振って弾き飛ばすと同時に今度は全速力でその場から退避する。

初撃の奇襲によるダメージを与えられなかったことをくいながらも、俺は全力で逃げ惑いつつ隙があれば麒麟に攻撃を仕掛ける。

ルビーの回復魔法ならば多少傷を負ったところで回復は可能だし、彼女と共に逃げ惑う為には俺が奴に数回のアタックをかけなければならない。

ルビーの逃げ足はまぁまぁ早いが全力の俺とでは話にならない。


戦いはヒットアンドアウェイで俺が攻撃しつつ、ルビーが回復魔法で俺を支える。

魔剣は強力だが、自身の魔力を使っているわけではないのでその扱いは難しく扱い方を間違えれば使用者にもダメージが及ぶ。

最強クラスの魔剣は下手をすれば命を落とす。

そのため、長時間扱う際は操作ミスをしないために常に回復魔法をかけていて精神的、肉体的な疲労を軽減しなければならない。


「全く・・・ 全然当たらねぇな・・・」


さすがに一撃も当らないことに苛立ちを覚えながらも、なんとか平静を保ちつつ逃げ惑う。

こちらの攻撃は当たらないが、向こうの攻撃に当たらない方が重要だ。

なにせ相手は、あの麒麟だ。

逃げ惑う最中に遭遇したフォレストビッグフットやジャック王ランタンが麒麟の雷撃を浴びて一撃で地に沈んでいた。

人間である俺がまともに食らえば灰になってしまうことは目に見えている。


「はぁはぁ・・・ 早く来いよ。コーフィ。」


額の汗を拭いながらなかなかやってこない元師匠にして元パーティーメンバーに対してまで苛立たしい感情が芽生えた頃、そいつはやってきた。


「なんでこんなところに麒麟がいるんだい?」


少しの抜けた返事にあきれながらも俺は答えを返す。


「俺にもわからん。」


そう言って、俺は後は任せたと言わんばかりに剣を収めるとルビーと共に後ろに下がってコーフィの戦いを見つめることにした。

もっとも、一瞬で目に見える範囲から消え失せたので俺とルビーはただ茫然とその場に佇むことしかできなかった。


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