楽しい?パーティー
ある日の放課後、俺はいつものように裏生徒会室にいた。
「ゴールデンウィーク何しようかなぁ…」
何しようといってもいつもの日常と同じだろうな…退屈な時間が繰り返されるだけだ。
「何しようって、裏生徒会どうするの?」
「何かやることあるんですか?」
「えーと…」
今考えるのかよ。
「今後のアニメについて語る?」
「嫌です」
「…。 それじゃあ、遊びに行く?」
「どこにですか?」
「…勇人君の家」
「僕も行きたいですね」
「私も先輩がどんな家か見てみたい」
「わ、私は…その…」
「私はどうでもいい」
周りから幾人か賛同の声が上がる。…とりあえず無視。
「何故?」
「おもしろそうだから」
こっちは何も面白そうではないがな。
「単純明快ですね」
「それは肯定とみなしてもいいのね?」
「…はぁ、まぁいいですよ」
「なによ、そのため息は」
「いえ、問題ないです。 自分の問題なんで」
「嫌なら嫌って言ってくれればいいのよ?」
「別に嫌じゃないです。 ただ…」
「ただ?」
「女の子を家に入れるの初めてで…」
「あぁなるほど。 それで恥ずかしいわけね」
「そ、そんなんじゃないですよ!」
「じゃあ何?」
「それはその…気恥ずかしいんです」
「やっぱりそうなんじゃない」
「はいそうですよ! おっしゃる通りですよ!」
「そんな風に言わなくったって」
「別に怒ってるわけでも嫌だと思ってるわけではないですよ。 さっきも言いましたけど気恥ずかしいだけです」
「ならみんなでパーッと楽しもうじゃない! そうすれば、そんなの気にならないわ」
「…楽しめるならいいんですかね?」
「もちろん!」
「そ、そうですか…」
「それじゃあ、明日行ってもいいのね?」
「だからいいって言ってるじゃないですか」
「そうじゃないわ。 どうせなら勇人君の口から…ね?」
「それはつまり…あれを言え…ということですか?」
「そゆこと」
「…ハァ」
ため息をして少し息を吸う
「うちくる!?」
「「「いくいく!」」」
やけにノリノリな社長と光士と秋奈。 恥ずかしそうに口をもごもごさせてる結良ちゃん。 そして、どうでもよさげな顔をしている美春だった。
楽しみ四分の一、恥ずかしさ四分の一、不安半分で今の俺の気持ちは構成されていた。
家に帰ってきた…親に言う必要はないとして兄貴休みなんだよな…。言っておかなきゃな
「なぁ、兄貴」
「何だ?」
「明日、友達来るんだけどいいか?」
「…俺の貴重な休みを何だと思ってるんだ?」
「別にいいだろ。 俺は自分の部屋にいればいいんだし」
「ま、たまにはいいだろう」
「サンキュ」
「…お前大丈夫なのか?」
「何が?」
「進路だよ」
「大丈夫。 問題ない」
「…本当に大丈夫なのか?」
「そんなに心配しなくても大丈夫だよ。 心配性だなぁ」
「…お前がいいならそれでいいが…」
翌日の朝。
「起っきろーーーーー!!」
「な、なんだ!?」
「まえにも起こしただろ? にいちゃん」
パソコンの画面にカイルが映っていた
「カイルか…ってなんでお前がここに?」
「遊びに来た」
廊下から足音が聞こえる
「まずい! ちょっと隠れてろ!」
「? わかったよにいちゃん」
扉が開く。そこには兄貴がいた
「何だ今の声?」
「め、目覚ましの音だ。 き、気にするな!」
「そうか。 友達来るんだろ? 体裁は整えておけよ」
「言われなくてもわかってるよ」
兄貴は部屋を出て行った
「…ふぅ。 お前、調査してたんじゃなかったのか?」
「忘れてた」
「…お前なぁ…!」
「まぁ、きにしないきにしない」
「もういい。 俺は飯食ったりしてくるから、お前は大人しくしてろよ」
「はーい」
軽く朝食をとり、部屋を掃除したりした。よし、これで抜かりないはずだ
ピンポーン
チャイムが鳴る。
玄関の扉を開ける。
「おはよう、先輩」
「よ」
目の前には秋奈、後ろには光士、美春、結良ちゃんがいた。みなビニール袋を持っていた。
「みんな一緒に来たのか? って社長は?」
「そこにいるよ」
「えっ?」
秋奈が指をさす方、俺の足元を見る。…そこには幼女がいた。
「誰? この子」
「私よぉ。 勇人君。 それとも上司で友人の私のことを忘れちゃったの?」
こ、この声、喋り方、この外見的特徴!
「しゃ、社長なのか…?」
「イエス、アイアム!」
「な、なんでそんな姿に?」
「さすがに教師の姿ではいるのはまずいでしょ。 だからイメチェンしてみた」
「イメチェンってレベルじゃないような…」
幼くするにしてもやり過ぎな気がするぞ
「ほら、中に入れてくれないの?」
「あぁ、ごめん。 俺の部屋に上がって」
自分の部屋に招く。
…さすがに六畳半の部屋に六人は狭いな。
小さいテーブルの周りにみんなが座る
「…ところで何するんだ?」
「とりあえず、みんなで持ってきたジュースとかお菓子を開けようか?」
「なら、コップ取ってくる」
取りに行って戻る
「ありがと」
ポテチやらポッキーやらたくさんテーブルの上に置かれる
「パーッと行きましょ、パーッと」
サイダーをコップに注ぎ、手に持つ。
とりあえず、ここは一言言っておくか
「その…乾杯」
しばし、沈黙が訪れた。…は、恥ずかしい。
「「「「「乾杯」」」」」
はぁ、よかった。
しばらく飲み食いしていると…
「ねぇ、勇人君。 そこに置いてあるゲームで勝負しない?」
「さすが社長だな、あれに気付くとは。 何をやる?」
「やはり勝負と言ったら格ゲーでしょ」
「おぉ、やってやるぜ!」
なんか人と格ゲーやんの久しぶりだな。兄貴ともしばらくやってなかったしな~。
すぐに準備し、起動させる。
…社長との数回のバトルの末、勝敗は五分五分だった。
「や、やるな、社長」
「勇人君こそ…」
「私もやりたいです。 先輩」
秋奈が首を突っ込んでくる。
「そうだな。 やるか?」
「はい、やります」
「ねぇ、どうせならみんなでリーグ戦やらない?」
「俺は賛成だ」
「私も別にいいです」
「社長が望むのであれば」
光士はいつも通りだな
「私はパス」
だと思ったよ。美春はこうゆうの興味なさそうだからなぁ
「わ、私はどうしよう…」
「結良ちゃんもやろうよ。 わからないんだったら教えてあげるから」
「わ、私にできるでしょうか?」
「問題ないよ」
「そ、それじゃあ…」
結良ちゃんに操作方法を教え、リーグ戦が始まった…。
…………結果は結良ちゃんの優勝だった。
「「こ、この」」
「私が」「俺が」
「「負けた…!?」」
「ぐ、偶然ですよ!」
俺は本当に全力だった。試したことはないがオンラインでやっても上級者に引けを取らないであろう実力を持つ俺が完敗だったのだ。その俺と互角にやった社長も負けたのだから偶然ではない。しかも、止めにはこのゲーム最高難易度のコマンド入力の技でやられている。はっきり言ってまずこのコマンドを格ゲー初心者が出すのは無理だし、上級者であっても当てるのが難しい。それをきれいに止めに決められているのだ。落ち込まないわけがない。
「ゆ、結良ちゃん、格ゲーの才能あるね…」
「そうね。 私もそう思うわ」
「そ、そうですか? あ、ありがとうございます…?」
「く、悔しい…!」
「僕なんて全敗していますよ」
「お前は弱かったなぁ」
「…皆さんが強すぎるんです」
光士は思いのほか落ち込んでいるようだ。…しかし、こいつを相手にしてる時、面白いほど思い通りにできて、マジで笑いそうになったな。
「もう我慢できないぞ! おれにもやらせろー!」
パソコンから声が響く
…そういや、カイルのこと忘れてた
「な、何これ!?」
秋奈はパソコンの画面のカイルを見て驚いた。
「そういえば、秋奈は一回もあったことなかったな。 社長が創ったAIのカイルだ。」
「秋奈ねえちゃん、ひどいな。 そーゆー反応」
「ご、ごめん」
「別にいいよ」
「って言うか、なんで私の名前知ってるの?」
「神に教えてもらった」
「神?」
「それ、社長のことだ」
「そうなの? それでカイル君はゲームやりたいの?」
「おう!」
「でもどうやって…」
「それなら私がどうにかできるから…ちょっと待ってて…」
パソコンのキーボードをたたき始め、その後変わったコードをパソコンとゲーム機につないだ。
「これで完了。 Cpu対戦を選んで」
「わかった」
俺はcpu対戦を選択した。
「普段通りにプレイしてみて」
キャラを選択すると相手のキャラ枠が勝手に決まる。
本来は自分で決めるはずなのに…
「どうなってんだ?」
「とにかく、ほら」
ステージを選択する。
ゲームが開始される。
普段通りプレイし、cpuを容赦なくボコボコにする。
「よし! パーフェクト」
何か前にやった時と感覚が違うような気もしたが…何だろ?
「…勇人君。 ひどいことするのね」
「えっ? 何が?」
「今のカイル君が動かしてたのに」
「そうだったの!?」
パソコンの画面にカイルが映る
「手加減なしかよぉ…にいちゃん」
「その、…すまん」
「なら、もっかい勝負だ」
「受けて立つ!」
プレイ二回目…
「ハハハ、その程度か!」
「まだまだ!」
プレイ五回目…
「くっ。 あ、危なかった」
「あとちょっとだったのに!」
プレイ八回目…
「ま、負けた…」
「やったー!」
わ、わずか八回目にして負けてしまった…
「ずいぶん白熱してたわね。 私ともやる? カイル君」
「やるやる!」
対戦後…
「容赦しないのね…」
「秋奈ねえちゃんはちょっと弱いな」
「…さらっとひどいこと言うのね」
「あ、あの、ごめんなさい」
「別にいいの。 カイル君が楽しそうでよかったから」
「ありがとう。 秋奈ねえちゃん」
ふと、俺は結良ちゃんの視線に気づく。何かもじもじしながらこっちを見てる。
「結良ちゃん、やりたいの?」
「わ、私は別に…」
「やろうよ! 結良ねえちゃん」
「う、うん。 それじゃあお願いね」
プレイ中…
コントローラーのボタンをたたく音が響き渡り、画面内ではものすごい勢いで攻防が繰り返されていた。コントローラー壊れないよな?
「見えん! この神の目にも!」
「元神だからってそのセリフはちょっと……確かにこれすごすぎだけど」
どちらもHPがあと少しになっていた。
「カイルも結良ちゃんも頑張れ」
「先輩! ちょっと黙っててください!」
うっ。結良ちゃんに怒鳴られた。…凹む。
…………激戦を制したのは結良ちゃんだった。
「勝ったー!」
「ま、まけたー…!」
「ナイスファイト」
俺はお互いの健闘をたたえる
「楽しかったよ、結良ねえちゃん」
「私もだよ。 カイル君」
…見てて微笑ましいなぁ。
「先輩、気持ち悪いです」
「な、なんでそんなこと言うんだよ!」
「その表情は本当にありえないです」
「俺、そんな変な顔してたかぁ?」
「はい」
「そんなはっきり言わなくても…」
「みんなー! ちょっと楽しんでるところ悪いけどとっておきの物があるんだけど、いい?」
俺はつい先ほど気分を害されたがな。
どこから出したのか社長は何かを手に持っていた
「ジャジャーン!」
という掛け声?とともにそれをテーブルの上に置いた。
「こ、これは! ゴードチョコレートじゃないか!」
「…先輩、こういうのは知ってるんですね…」
「当たり前だ! これは高級チョコレートにも関わらず数百個が即日完売するような代物だぞ。 食ってみたかったんだよなぁ…!」
「あ、あの、私も食べたいです!」
「みんなのために持ってきたんだから食べていいに決まってるじゃない」
社長は包装紙を開け、ふたを開ける。
まるで輝いているかのようなその茶色い物体は、口に入れたらさぞかし至福の気分にさせてくれるだろうことを予感させた。
「ゴクリ…」
一粒手に取り口に運ぶ
「…いただきます」
口に入れて噛む。
口の中にカカオの香りが広がり、尚且つ葡萄のような香りもする。甘すぎず、くどくない味わいは幸せになれる味だった。
「うまい!」
みんなもチョコを口に入れる
「おいしーい!」
「…♪」
「あははは、おいしいでしょー!」
ただ一人、光士だけ顔色が悪かった。
「どうした? チョコ嫌いだったのか?」
「いえ、チョコ自体は嫌いではないのですが…うっ」
光士は口を手で押さえる
「おい、大丈夫か?」
「あまり大丈夫ではないです…ですので帰らせてもらいますがいいですか?」
「構わないぞ。 それじゃ、気を付けろよ」
「気遣いありがとうございます。 それでは、さようなら」
光士は部屋を出て行った。
「どうしたんだ? あいつ」
「ちょっとトラウマを思い出しちゃったみたいね」
「トラウマ?」
「あ、気にしないで。 それよりジュースはいる?」
「あぁ、いる」
「あ、私もー」
「わ、私にもください」
…俺の家にみんなが集まって四時間ぐらいを過ぎたころ。
なんか顔が熱いな…頭がクラクラする。風邪でも引いたかな…
「せんぱぁい…」
結良ちゃんが俺の左腕の方に体を寄せてくる
「ちょ、ちょっと結良ちゃん!?」
「アハハハハ…せんぱぁいのにおい…エヘヘ」
「だ、大丈夫か?」
結良ちゃんの体が密着してる。…駄目だ、変なことを考えるんじゃない、俺!
「ちょっと、社長!?」
「何? 勇人君」
「どうなってんの、これ?」
「あははは。 そんなことより秋奈ちゃんのことを気にしてあげたら?」
「なんで?」
秋奈の方を見ると涙目になっていて今すぐにでも泣きそうな状態だった。
「あ、秋奈、どうした?」
「ぐすっ…せ、先輩がぁぁぁ、社長と仲良くしててぇぇ、結良ちゃんとべったりしてるよぉぉぉぉ! うわぁぁぁぁぁぁん!」
「な、泣くな! いきなり泣かれると困る!」
いきなりじゃなくても困るけど
「ぐすっ、先輩、近くにきて…」
「あ、あぁ、わかったから泣くな」
悪いと思いながら結良ちゃんを若干引きずって、秋奈そばによる。
「近くに来たぞ」
「うわぁい!」
秋奈は俺の右腕の方に抱き着いてきた
「ちょ、ちょっと!? 何すんだよ!?」
「う、うぅぅうぅぅぅ…」
また秋奈が涙目になっていく
「や、やめろ、泣かないでくれ。抱き着いててもいいから、泣くな!」
「うん!」
か、可愛いな。ってそんなこと考えてる場合じゃねぇんだよ。
な、なんなんだ?この状況は!チョコレートとジュースを飲んだあたりから体が熱いし…。
ふと、下に落ちている箱のラベルを見る。
…アルコール分五パーセント………そうですか…しかし、これだけでも結構な量だとは思うが俺も含めてここまで酔っぱらうものなのか?ま、まぁ、とりあえず現状を何とかしなくては。、最初に美春の様子を見よう。
見た目は、ちょっと顔が赤くなっている以外変わっているようには見えないが…
「おい、四季」
「……」
「おーい、返事しろー」
「……」
「四季?」
「…すー、すー…」
目、閉じてるし完全に熟睡してるね、こりゃ。まいったね。はぁ…
「あっははははは!」
「おい、社長! 笑ってないで、この状況どうにかしろ!」
くっ、大声出すと頭に響く…
「えー! なんでー!? 面白いじゃない。 あははははは!」
…最初からこの状況になることわかってて、あのチョコ出しやがったな…!
しかも、この状態をカメラで撮りまくってやがる。
「やめろ…! 撮るんじゃない…!」
酔いがかなり回ってきたみたいだ…、少し気持ちが悪い。
「そろそろ限界?」
「結構きつい…だが、まだ俺は落ちないぞ…」
「おっ! いい根性だ。 それじゃあもう一杯行こうか」
俺のコップに先ほどのジュースを注ぐ
「もう一杯ってそんなおっさんみたいな…もしかしてそれ酒か?」
「イエース。オフコース。 シャンパンですよー」
だからか…!全員ここまで酔ってるのは。しかし、飲んだことがないとはいえ誰も気づかないのはおかしいだろ。…俺はわからなかったけど。
「犯人はあんただったのかよ」
いや、あの箱見た時点でそうだとわかったんだがな…言わずにはいられないっ!
「犯人だなんて人聞きの悪いこと言わないでよ。 私は楽しくなればと思ってあのチョコとシャンパン出したんだから」
「だからって未成年に出すもんじゃねぇだろ…」
「うーん。 それもごもっともなんだけどね。 やっぱりお酒が一番楽しいじゃない?」
「その姿で言うのは実にシュールだし、未成年に同意を求めることじゃない」
目はうつろの状態で秋奈と結良ちゃんは強く締めてくる。
「先輩…」
「せんぴぁい…」
あぁ、もう!こんなかわいい子に引っ付かれてうれしいがうれしくない!今にも危ない考えが浮かびそうだ!落ち着くんだ、俺!
そうだ!素数を数えて落ち着こう。二、三、五、七、九…九?九は素数とちゃう!
……あぁ、柔らかい。って何を考えてんだ俺は!
「若いんだから、無理しちゃ駄目だよぉ」
「無理じゃねぇ!うっ」
「あははははは!」
こ、この野郎…!
「う~ん、秋奈? 秋奈どこ?」
四季が起きた
「おい、四季何とかしてくれ」
「あきなぁ…むにゅ」
ね、寝ぼけてる…!しかも、こっちによって来る!
「お、おい、今はよるんじゃない。 ちょ、ちょっと待て。 止まってくれ、マジで。 お願いだから…!」
美春はまっすぐ俺にダイブしてきた。
「あきなぁ! むにゅむにゅ。 すー、すー…」
あぁ、重いなぁ…本人に言う気はないけど。それに胸があた…これ以上考えるのはやめとこう。
うぅ~、泣きたい。 だがしかし、これはまぁ、考え方によっては幸せかもしれない…。けど俺の良心が…!
「私も~」
社長が足に引っ付く
「もう好きにしてくれ…」
と、半ば諦めた瞬間、扉が開いた。
「うるさいぞ。 少し静かに…」
そこには兄貴がいた。
「…その…何だ……うらやましいぞ! この野郎ぉぉぉぉぉ! うわぁぁぁぁぁぁ!」
兄貴が急いで部屋を出ていく
「ちょっと待てぇぇぇぇぇ! うっ!」
い、今のはやばかった。マジで戻しそうになるとこだった。あーあ、絶対勘違いされたな。
もうなんか疲れた。やってらんない!このまま寝るか!?でも、なんかだいぶ酔いが引いてきたような気がするしな、どうしようかな…
「な、何してるの、先輩?」
声が聞こえたので秋奈の方を見ると恐らく正気に戻っているようだった。
俺がやらせたものではないとは言え、誤解を招かざるを得ない状況だな。
「俺は何もしてないぞ」
「結良ちゃんもお姉ちゃんもそれに社長まで先輩にぴったりくっついてるのに?」
「断じて俺のせいじゃない。 それにお前もくっついてるぞ」
「きゃっ!」
秋奈が俺の腕から離れる
「きゃっ! って自分からくっついてきたんだけどな」
「そ、そんなわけない! 私が先輩なんかに…」
「泣いて頼んできてたんだけどな」
「なっ! そ、そんな恥ずかしいことしないわよ!」
「もういいよ別に。 それにしてもお前、少し胸がちイッ!」
秋奈は俺の頬にビンタした。…痛いってか俺の上に美春乗っかてんのに何であんなうまくビンタできるんだよ。…あぁ、痛い。
「何セクハラ発言しようとしてるんですか!」
「別にそんなつもりは…」
それにしても俺まだ酔ってんのかな?爆弾発言しそうになった。途中で止められたけど。
「は、はわわわわ…」
ビンタされた勢いで結良ちゃんの方を向いたのだが、結良ちゃんも正気に戻っていたようだ
「おはよう。 結良ちゃん」
「こ、こここっこれは、いいいいいい、いったいどうゆう状況なんですか?」
「実に説明しづらいな」
俺の腕にしがみついているのに気付いたからか、顔を真っ赤にする。
「は、はうう…! そ、その、ごめんなさい!」
結良ちゃんは俺の腕から離れる
「謝らなくてもいいよ」
「うーん…騒がしいなぁ」
美春が起き上がる。
「やっと起きたか…」
「な、ななななな! 何この状況!?」
「見ての通りだ」
「ふざけんな!」
美春の拳が俺の顔面めがけて飛んできた。
あぁ、走馬灯…と思ったけどそんな思い出はなかったな…。
「ぐはっ!」
「あ、あんたがそんな奴だったなんて見損なったよ!」
「痛ーっ! お前なんか勘違いしてるだろ!?」
「何がよ?」
「お前が寝ぼけて俺にとびかかってきただけだ」
「そ、そんなの証拠がないじゃない!?」
証拠も何もそんなの…ってそういえば…
「証拠なら社長がカメラで撮ってるんじゃないか?」
「…それで社長はどこにいるの?」
「俺の脚にしがみついてるぞ」
美春は俺にまたがっている体制から後ろを向いて社長を確認する
「な、何してるんですか?」
「筋肉が付きすぎない程度の硬さの太ももを枕にしてるの」
…俺は運動してないからな
「…それはどうでもいいです。 さっきの話聞いていたんでしょう? 証拠があるんですか?」
「あるよー」
社長は手元からデジカメを取り出し美春に渡す。
美春はデジカメを操作し、確認する。
「……ちょっと二人ともこれを見て」
美春はデジカメを秋奈に渡す。
「なに? お姉ちゃん」
「どうしたんですか?」
画面を見た瞬間、結良ちゃんと秋奈の顔が朱に染まった。
次の瞬間には秋奈はデジカメを壁に叩きつけていた。
「あーあ、壊しちゃって。 デジカメはただじゃないんだよ~」
「そ、その、ごめんなさい…。でもあんなの撮られたら…消したくもなります」
「あ、データに関してだけどバックアップとってあるから」
「「「…えぇぇぇぇぇ!」」」
それはまた驚きです。…俺はもう驚く力すら残ってない
「君たちのあんな可愛いところ残さないわけないじゃない」
「可愛いって…」
「俺は現在進行形で勘違いされそうな状況にあるんですがね」
「なっ! べ、別にそんなんじゃ…」
美春が俺から離れる
「やっと上体を起こせる。 後は社長が離れてくれればいいんだがな」
「こんなにかわいい幼女に抱き着かれて離れてほしいの?」
「俺はロリコンじゃないし、どうせなら…」
また、爆弾発言するところだった。
「どうせなら?」
「…何でもない」
「えぇ! 言ってよ!」
社長は起き上がって俺を叩く。大して痛くはない。
「今日はもう解散でいいだろ。 俺はすごく疲れた…」
「そ、そうね」
「私ももう帰りたい…」
「わ、私は別にどちらでもいいですよ」
「社長はどうなんだ?」
「私? 私は別に解散でいいわよ。 ただ…」
「ただ?」
「なんで今日、勇人君は私に対して敬語使わなかったのかなって」
「それは、単にその見た目に敬語を使いたくなかっただけだ」
「そ、そう…」
あれ、少し落ち込んだか?
「なら、休日はいっつもこれで行こうか!?」
むしろ喜んでたのかっ!?
「別にどっちでもいいよ」
「うーん、それじゃあ必要な時にする」
「それでいいんじゃないか?」
「そうだね」
「そんじゃ、解散な」
みんなは部屋を出ていく。
見送るために玄関まで行く。
「じゃあな」
「先輩、さよなら」
「ああ」
「最後に聞いていいですか?」
「何だ?」
「この服似合っていますか?」
何で今更…とりあえず答えておくか
「俺は基本的に他人の外見に感情を抱かないようにしているが、言っておくなら似合っていると思うぞ」
「そ、そうですか。 あ、ありがとうございます」
「それだけか?」
「それだけです。 それでは」
気のせいか、秋奈の顔は酔いも引いたはずなのに赤く見えた。まぁ、気のせいだろう。
「ああ」
遠くで四人で話しながら去って行った。
楽しいと言えば楽しかったが、とんでもなく疲れた。
あの写真、社長のことだからばらまきはしないだろうけど人に見られたなんて言われるか…。学校の人気者が俺に…もうこのことを考えるのはやめよう。これ以上考えても無駄なことだし、俺の精神衛生上に多分よくない。
洗い物して飯食って風呂入って寝よう。それが一番だ。…兄貴の誤解も解かないとな。
こうして今日という騒がしい日常は過ぎ去った。
社長といるのは確かに楽しいが本当に疲れる。いい加減うざい気もするのだが、離れようとは思わない。お互いの退屈を埋めあう、大事な大事な友人だしな。




