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外道屋社長の真実

翌日の放課後、俺たちは裏生徒会室に集まっていた。

「よし、みんな集まったわね。 これから勇人君、美春ちゃん、秋奈ちゃん、結良ちゃんには二年生の近藤誠司君の所へ向かってもらいます。 質問はありますか?」

……

「ないみたいね。 それじゃあがんばってね」

こうして、俺たちは近藤誠司というやつのもとに行くことになった。

この時間は既にほとんどの生徒が部活か帰るかしているので、一部の教室を除いて人がいることはない。

「おぉ、来てくれたんだ」

生徒会の人とは思えないような俗に言うチャラ男みたいな奴だった。

「裏生徒会ってこんな人たちなのか~。 後ろにいる子たちかわいいな~」

黙れよ。ふざけんなよ。うぜぇよ。

「そんな嫌そうな顔しないでくださいよ~」

「御託はいいからさっさと要件をいえ」

「どーしよっかな~」

な、殴りてぇ…!

「決めた。 後ろにいる子たちの誰かが聞いてよ」

意味不明なぐらい調子に乗りやがって、この野郎…!

美春が俺の前に出てきた。

「いいわよ。 さっさと終わらせたいし」

確かに。ついでに俺はこいつの相手をしていたくない。

「お姉さん話がわっかるー」

「で? 副会長さんをどうしてほしいの?」

急に奴の表情が変わった

「あなた方も知っていると思いますが、副会長有馬清真は最強の高校生と言われています」

いきなり真面目になったよ、こいつ。口調まで変わって。っていうか、最強の高校生?

「なんだそれ?」

「先輩、いい加減にしてください。 この学校じゃ常識ですよ」

前に光士に言われた時のように秋奈に言われる

「そうなのか?」

「あ、あの私も詳しくは知らないんですが…」

「副生徒会長の有馬清真は部活に所属していないにもかかわらず、よく助っ人として参加しています。 しかし、彼が最も実力を発揮できるのは専ら格闘技系なんです。 その実力ゆえ個人として何度か大会に参加していますが負けなしです」

「そりゃすげぇな」

「えぇ。 自慢の親友ですから」

「結局どうなの? 何をしてほしいの?」

「…昔のあいつならこんなたいそうな称号がつくはずがないんです…」

「どういうこと?」

「あいつとは小学生からの付き合いなんですけど確かに昔っから強かったんですよ。 それこそ同年代どころか一回り体が大きい奴が相手でも。 でも、あいつ気が弱かったんです。 あいつが強くなろうとしていたのも正義感ゆえだったし大会とかにまったく興味がなかったんです」

「それで?」

「高校に入ったあたりから急にそういう目立つことをしたんです。 それが先ほど話した通り助っ人だったり大会だったり…」

「別に悪いことじゃなくね?」

「確かに悪いことなんてないですけど…あいつ会長に立候補するって…。 ちょっと前は俺だけしかいなかったはずだったから信任票だけだったのに! あいつが立候補するんじゃ俺が勝てるわけがない!」

あぁ、これ悪意の部分か。

「つまり有馬清真が立候補するのを阻止してほしいわけね」

「そういうことです」

「…あんた、自分の実力で勝ち取るっていう発想はないの?」

俺もそれは思った

「昔のあいつならいざ知らず、今のあいつには全く勝てる気がしないので無理です」

「あんたねぇ…」

秋奈は呆れているようだ。俺も同感だがな。

「そういえば一つ言い忘れてたけど、裏生徒会は悪魔でお手伝いする組織だ。 一から十やってもらえるとは思わないでくれ」

「えぇ~。そんなこと言わずにお願いしますよ~」

うぜぇなぁ!こいつ!

「なら二択だ。 情報収集か実行か。 どっちがいい?」

「え~と。 前者で」

…言っといてなんだが普通、後者だろ

「なら、俺らの欲しい情報を渡せ」

「了解~。 で、何の情報が必要ですか? 先輩」

てめぇに先輩言われると腹が立つな

「そうだな…。 そいつの苦手なものとか脅せそうなもの。 逆に好きなもの…いわゆる賄賂になるものだな」

「…先輩、そんなものであいつが止まるなら自分でやってる」

「なん…だと…?」

「そういうネタいりませんから」

「おぉ、わかるのか?」

「わかりますけどそれは関係ないです。 それと、とにかくさっきの二つは無理です」

「どうしてだ?」

「清真は正義感があるって言いましたよね。 最近それが顕著でしかも悪事に対して暴力で解決することが多いみたいで…下手したら怪我ではすまないかもしれないんで…」

…おぉ、怖い

「なら実力行使か…」

「それはやめたほうがいい!」

「なんでだ?」

「さっきも言いましたけど、あいつは最強の高校生ですよ。 勝てるわけないじゃないですか」

「実際どれくらい強いんだ?」

「…私が聞いた話なんですけど、噂では不良に絡まれた少年助けるときに一人でその不良チームを壊滅させたとか」

「それ本当の話です」

「何そのマンガレベル…」

「あいつは非現実的レベルの強さなので実力行使は無理です」

「それなら、説得しか方法はないな」

「そんなことできるんでしょうか?」

「さぁな」

「さぁなって…!」

「当たり前だろ。 確証も何もないんだから」

社長ならどうかわかんねぇけど

「とにかく情報収集だな。 何か分かればそれに合わせて対策が立てられるかもしれない」

「わかりました」

「それじゃあ、空いてる時間に聞いてこいよ」

「先輩方は手伝ってくれないんですか?」

「俺達が一緒に聞きに行ったら怪しいだろうが」

「は、はぁ…」

「ま、頑張れ」

翌日の放課後、誠司が報告に来た。

「と、とりあえず聞けること全部聞いて紙にまとめました」

「ご苦労さん」

紙に目を通す。そこには好きなもの、嫌いなもの、趣味、長所、短所、得意科目、苦手科目、自己アピールが書かれていた。

「って、どこの調書だよ!?」

「もちろん学校のですが?」

「いや、わかってるから。 こんなもんしかないのか?」

「こんなもんしかないです」

「親友なんだろ? もっと弱点的なものを聞けよ」

「そんなの聞けませんよ」

「お前ら本当に親友なのか?」

「…今はそう言えないかもしれないです」

「実際、今お前が俺たちに依頼していることは親友にすることではないしな」

「そうですよね…こんなことをするなんて親友同士のすることじゃないですよね」

「…だけどよ、お前は蹴落とそうとしている奴を親友と呼ぶのはなんでだ? 憎い相手ぐらいに思うもんじゃないのか?」

「…今でも信じているからじゃないでしょうか」

「何をだ?」

「清真が昔と変わらないってことです。 …こんなこと聞いたところでしょうがないじゃないですか」

「そうとも限らないと思うぞ。 今聞いて思ったんだが、言ってやればいいんじゃないか? お前の思ってること全部」

「そ、そんなことしたらあいつに殺されちゃいますよ!」

「今でも信じてるんだろ? だったらそのまま言えばいいじゃねぇか」

「で、でも…」

「でもじゃねぇだろ。 こんなのに頼るよりよっぽどいいと思うけどな。 親友…なんだろ?」

「先輩…」

「俺もついて行ってやるから」

「それはいいです」

「即否定しなくてもいいじゃねぇか」

「先輩が来るぐらいなら四季先輩とか秋奈さんがいいな~」

やっぱり、殴りてぇ…!

「冗談ですよ。 これから行きますか?」

「今から行くのか?」

「思い立ったが吉日というやつですよ」

そう言うと誠司は歩き出した。

付いた先は生徒会室だった。

生徒会室から人が出てくる。

「よっ、清真」

「誠司か…」

そいつの体の大きさは高校生最強という割には大きくはなかった。その代わりがっちりとした感じの体つきをしていた。しかし、何より気になったのは社長が入っていた光士に雰囲気がどこか似ていることだった。

「何か用か?」

「実はな、お前が何で会長に立候補したのか聞きたくてな」

「僕が立候補したのは目的のためだ」

「目的?」

「もちろん、この学校をよりよくするためだ」

「でも中学の時は、俺が生徒会長やって、高校でもそうしようって言ってただろ?」

「君には僕の理想は達成できないからだよ」

「そんなのお前だってできるかわからないだろ」

「できるよ。 絶対にできる」

「な、何でだ?」

「僕だから…」

理由になってないな。そのはずなんだが裏付けがあるぐらいの説得力を感じさせた。

「り、理由になってない!」

「そんなのは必要ない。 ただ、僕がなれば僕のやりたいことは成すことができるんだ」

「なんでだよ…何でそんな風になっちまったんだ!」

「君の言うことはわからないな。 僕は何も変わってなんかいない」

「お、俺達、親友…だろう…!」

「勝手に決めつけないで欲しいなぁ。 君なんかとどうして僕と親友なんだ?」

誠司が項垂れる

見てて腹が立つ。誠司に対してとは全く違う怒りというやつだ。だからかな?あんなアホな行動に出てしまったのは

「おい、てめぇ!」

「誰ですか? あなたは」

「俺はそいつの相談相手になっていた先輩の白城勇人だ」

「で、その白城先輩が何か用ですか?」

「さっきから聞いてりゃ、てめぇ! こいつに何の恨みがあるってんだ! こいつはお前のこと親友だと思ってたんだぞ!」

「それが何か?」

「仮にだ! お前がこいつのことを親友だと思ってなくともだ、なんかとは何だ!なんかとは! 少なくとも昔から続いてるダチだろうが!」

「だから、それがどうしたというんですか? 駄目だと思う人は駄目だと思って何がおかしいんですか?」

「お前のその言葉は冗談じゃない。 冗談じゃないから、そいつを深く傷つける。 俺はとにかくお前の誠司に対する言葉がとことんムカつくだけだ!」

「それで?」

「とにかくお前をぶん殴ってやる…!」

俺は走って俺より少しでかいそいつの顔に拳を向ける。…が、普通に止められ投げられる

「痛っ!!」

「今のは正当防衛ですからね」

「こ、この野郎…!」

今の衝撃で俺、ちょっと我に返ったみたいだ。

今思い出したけど、あいつ最強の高校生…だったよな。勢いよく出たのはいいものの勝てる気がしねぇ。

立ち上がろうとすると、何かが当たった。

なんか柔らかい感触が…

ちょっと前に出て、後ろを確認する。…

「しゃっ! …先生!」

思わず社長と言いかけてしまった

「こんなとこで喧嘩しちゃだめだぞ、勇人君。 それに…エッチなんだから」

エッチ?…あぁ、あの柔らかい感触は…ってやっぱり考えないでおこう

「っていうか何でこんなところに?」

「私がここにいちゃ駄目?」

「いや、駄目じゃないですけど…」

「それじゃあ、いいじゃない」

「そうですか…」

「ところで、清真君…だっけ? 殴りかかられたからって投げちゃ駄目よ」

「…見ていたんですか」

「なんか見えちゃってね…」

「あの、あなたは…?」

当然の疑問だよな

「私? 私は勇人君の担任の神宮寺イーヴィちゃんで~す!」

ちゃんっておい…!

「あなたが近藤誠司君ね?」

「なんで、僕の名前を…?」

「別にいいじゃない、知っていたって」

「所で先生は何をしに来たんですか?」

「いい質問だね、清真君。 答えは挨拶…ってところかな?」

「…? どういうことですか?」

「そのまんまの意味よ」

「何を言っているのか分からないのですが」

「ここまで言って分からないなんて、阿呆なんじゃない?」

「今、何と言いましたか!?」

「阿呆って言ったのよ。 か・み・さ・ま❤」

神様?

「…神様だって? ククク、そういうことか…」

清真の様子が変だ。急に笑い出し始めやがった。

誠司はもうなんだかわかってなさそうだな。俺も全く分からないが。

「お前、生きていたんだな。 悪の神」

「あら? もうわかっちゃった? 正義の神様」

「それにしてもなぁ。 逃げてそのまま死んだのかと思ったんだがな」

「私たちに死ぬって言うのはおかしいんじゃない? それと私はあなたと違ってちゃんとずっと存在してきたのよ」

「我はお前が逃げてくれたおかげで存在が消滅してしまったからな」

「嫌な予感はしていたから復活しているとは思ったけどね。 ここまでぴったり予想があっているとは思はなかったわ」

「どういうことだ?」

「あなたがいるとしたらこの学校の生徒会にいて生徒会長もしくはなろうとしているところだと思ったってこと」

「お前の根拠の分からない予想はよく当たるらしいからな」

「それにしても、あなたどうやって復活したの?」

「こいつの親が考古学者でな。 我を発見してくれた」

「なるほど。 それで清真君の体を奪ったと。 正義の神がやることとは思えないわね」

「人聞きの悪いことを言うな。 我と清真は互いの夢のための協力関係にある。 我の行動は清真のためでもある。 それに悪の神であるお前に言われたくない」

「ノンノン」

社長が人差し指を振る

「今の私は『元』悪の神。 今の名前は神宮寺イーヴィでこの学校の先生。 悪の神なんてものに縛られるイーヴィちゃんじゃないから」

「本当にふざけたやつだ…。 だが、お前が悪であろうとなかろうと今も昔もお前は我に勝つことなどできない」

「それはどうかな?」

「なんだと!?」

「私のこの世界での二つ名は知っているかな?」

「そんな物知らん」

「名前は教えてあげないけど、それなりに有名よ。 これでも長いことこの世の中にいるしね」

「っぐ…!」

「あなたの知名度は所詮学内のもの。 最強の高校生なんて言われてるのはこの校内でだけ…その程度で私に勝てるのかしらね?」

「…それでお前の二つ名は何だ!?」

「教えてあげないよ♪ ジャン♪」

「こ、この…!」

「まぁ、いえるのは、私に勝つには…十年早ぇんだよ!」

「…仕方がない。 今回は見逃してやる。 だが、お前を消し去るのも我の目的なのだからな」

「見逃すとか…ップ。 何言ってるのかな、この人」

「お、覚えてろ!」

…どこの雑魚敵ですか

清真が去っていく

「ねぇ、勇人君」

「な、何ですか?」

「あなた、マンガとかアニメとかは好き?」

「好きですけど…?」

「私も好きでね、今からあるワンシーン再現するからよく見ててね。 実はこの廊下都合いい感じに作り変えててね。 今なら再現ができそうなの」

都合いい感じっていつの間にやったんだよ。

社長は胸元から銃のようなものを取り出す。銃に詳しくないからよくわからないが俗に言うマグナムというやつだろうか?銃口がでかい。

「な、何ですか? それ」

「エアーガン(改)」

「はい?」

いまだ直線状に清真はいた。…まさか!?

「くらえ正義の神! バッキューン!」

社長はバッキューンと言葉と同時に引き金を引いた

清真の後頭部に命中したのか、前のめりにぶっ倒れた。

「え、エアーガンの威力じゃねぇ…」

「人に試したことなかったけど頭に当たれば気絶させるぐらいの威力はあるよ」

「それ人に向けて打つものじゃないですよね…」

「まぁ、いいじゃない。 弾は入れてないし。 …それにちょっとスカッとしたでしょ」

確かにイラついていた気持ちが落ち着きを取り戻していた。…しかし、弾入れてないってどうしたらあんな威力出るんだよ

「…まぁ、そうですね」

そんな話をしていたら清真が立ち上がっていた。

気絶させるぐらいの威力あったんじゃないの!?

清真がこちらを見ると同時に怒りの形相へと変わった

「いつか絶対消してやるぞ!!」

と言い残し去って行った。

「あー、あの子…丈夫ね…」

「…最強の高校生だからか?」

「そうなんじゃない?」

「あの~…一体これは?」

全力で置いてきぼりにされてた誠司。ま、あんなところを見て理解できる方がおかしいと思うが…。俺も何話してんだかわからないところあったし

「これはね~…裏生徒会としてお仕事しただけかな」

「先生も裏生徒会の人だったんですか!?」。

「って言うより私が作ったんだけどね」

「…えぇぇ!」

その驚きは当然だな

「そのことだけど…ごめんなさいね」

「えっ? 何がですか?」

「今回の依頼、達成できなかったから…」

「いえ、別にいいですよ! あいつの中身が別の奴みたいだったし…」

「俺からも謝るよ。 実行していたのは俺なんだし…」

「だからいいですよ。 仕様がなかったことなんですから」

……もやもやする…

「それと依頼が達成できなかったと言ってましたが今キャンセルしたので気にしなくていいです」

「は? どういうことだ?」

「…僕、秋奈さんの言うように自分の実力でどうにかしようと思います。 僕はあいつ…清真以外に負ける気はないですからね!」

今に限ってかっこよく見えるな。最初に会った時のうざさとはえらい違いだ。

「そうか…。 なら頑張れ」

「はい…! 僕はこれで失礼します」

誠司は帰った。

俺たちは誠司が見えなくなるまで見送った。

「…ふぅ。 それで先生、またいくつか疑問ができた…というより再浮上してきたんですが、聞いてもいいですか?」

「どっちにしてもいつかは言うつもりだったんだけどね…。 ここで話すもなんだから裏生徒会室に入りましょ」

生徒会室のすぐそばにある裏生徒会室へと入る。

部屋の雰囲気はいつもと物の配置が変わらないにもかかわらず何か変わっているような気がした。それだけ社長が今回は真面目だということだろうか…。

「座って」

普段の位置に座る

「まず何から聞きたい?」

「できれば正義の神と社長の成り立ちから全部を」

「さすがに全部は話せないから最初と今。 それと神について教えてあげる」

社長は光士の姿で最初に出会った時のような異様な…けれど惹かれる雰囲気を纏っていた

「さてどこから話そうか…」


はるか昔のこと人々は今のような知力を持ち合わせていなかった。それ故に自分の理解の範疇を超える出来事を神の仕業…つまり神罰と考えられていた。その時、自分たちに害悪をもたらすものとして悪神が創られた。

人々は科学のような力を持っていなかったが強い思い込みが気づかぬままその事象を引き起こしていた。

 ただこの悪神には知力と力があった。現代人をも凌駕するものを。しかし、人々は自分の都合の良いものを作り上げる力があったために、悪神はすぐに人々によって消し去られる運命にあると悟った。だから愚直な一族の人間へと乗り移り、逃げた。その直後に生み出されたのが正義の神だった。

 神の根本的な力、存在を保つためには信仰心や畏敬の念を人に抱かれることが必要だった。悪神にはたった一人の信仰しかなかったが存在を保つ方法は他にもあった。それは記憶である。信仰心などに比べると力や存在を保つには弱いが存在し続けることに支障はなかった。

 消えないためにまず、悪神は悪神であることを捨てた。将来、科学が発展し神のような存在があるわけがないと思いこまれたとき、そのことによる消滅を防ぐためだった。

ちなみに正義の神は信仰している人たちがいなくなり、人々の記憶からもなくなったので消滅した。

 悪神はたった一人の信仰者とともに世界を回り、外道屋という名で悪事を起こしていた。その間に子供を作っていた。自分が新しく乗り移るための体である。そうやって世界を転々とし、百年以上前に日本へとたどり着いた。そして、今へと至る。


「こんな感じよ」

「…なんというか、驚きました」

「あんまり人に話すものでもないと思うのよね、これ」

「まぁ、普通は信じないですよね。 あの非現実的なものを見てなきゃ信じられませんし」

「ちなみにこの話をしたのは勇人君が初めてよ」

「光士には話してないんですか?」

「あの子は何も言わなくても私に付いて来るからね。 必要ないのよ」

「そうでしょうか?」

「そうよ。 …ところでなんで私はいまだに外道屋を続けてると思う? 正直な話、もう何もしなくても後数十年は生きてられるからね」

少し考えてみる。社長はしばらく外道屋の仕事をしていなかった。…なのに始めた。

…何の脈絡もなく一つの答えが浮かんだ

「……退屈だから…?」

「そうよ。 退屈だからやっているの」

「もう二つほど聞きたいんですけどいいですか?」

「何?」

「何で悪事なんですか? 善行もしているのに」

「アイデンティティーだから…かな? 善行をするのはただの悪人じゃ忘れ去られそうだしね」

「それじゃあ、もう一つ。 …俺をスカウトした本当の理由は?」

「…あの時に言った通りなんとなく…だけど…」

「だけど…?」

「なんか私に似ていたからだと思う」

「似ている…か…」

「だからなんとなくあなたの考えていることがわかる。 そして、とっても愛おしく思えるわ」

「なっ!」

「もちろん、友人として、友愛としてね」

そ、そういうことか…

「顔真っ赤にしちゃってホント、可愛いわね」

「からかわないでください」

「言っておくけど、私とフラグが立つことはないからね」

「別に立てる気ありませんよ」

「ひっどーい! こんな美人に向かって」

「実際社長が女性かどうかわかりませんし、その体は機械なんでしょう?」

「まぁ、そうなんだけどね」

「なら、フラグが立つとも立てようとも思いませんね」

社長が落ち込んだのか黙っている。

「…先生?」

「…私は勇人君が大事だからね、友人として」

「そんな改めて言わなくても…」

「というわけで、マンガ貸してあげるから読んでね!」

社長の両手には大量のコミックが握られていた

「えっ?」

「そして、感想聞かせてね!」

「…外道屋してなくても退屈じゃなかったんじゃ…」

「それとこれとは別。 勇人君そういうの好きだって言ってたし」

「まぁ、今渡そうとしているいくつか読んでますけど…」

「えっ? 本当に? それじゃあ今から語り明かそう!」

「ちょ、ちょっと待ってください! もう結構遅いんでまた今度にしましょう」

「ちぇっ、しょうがないな~」

あ、危ない、今捕まったら多分帰りがとんでもなく遅くなるところだった。

「それじゃあまた明日、さよなら」

「じゃあね~。 楽しみにしてるよ」


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