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外道屋と悪神と白城

ようやく完結できました。

九月中に終わらせるつもりだったのにだいぶ過ぎてしまいました。

また、視点変更入れてしまいましたしね……。

とりあえず、楽しんでいただけたら嬉しいです。

 SIDE 白城勇人



 光士が起こした事件からおよそ三ヶ月。

 現在、冬休みになっていた。

 正直な話、秋奈と時間を過ごしていたいのだが、受験のこともありしょっちゅう会うわけにもいかず、自宅で勉強三昧だ。

 社長の方は特に何も言ってこないので、裏生徒会の活動は全くない。

 今日も今日とて勉強をするだけの日だ。

 社長が三者面談で余計な事を言ってくれたせいで、母さんも俺の受験に対して妙に積極的に関心を示しているし、サボるわけにもいかなくなっている。

 ただ、ずっと机に向かっているのは俺の集中力では無理なので、時々テレビを見て休憩をしている。

 

 適当にチャンネルを回して付けるとワイドショーをやっていた。

『今年は行方不明者が続出しております。 こちらをご覧下さい』

 アナウンサーがフリップを出す。

『これはここ十年間の行方不明者数です。 年々減ってきていたんですが、今年に入って多い時より倍近い二十万人を超えています。 しかも、例年では行方不明者は毎年88%以上は見つかるのですが、今年は50%程しか見つかっておりません――――』

 コメンテーターも警察の人も今までのケースにない出来事にコメントに困っていた様子だった。


 俺とは関係ないことだな。 と、思いつつ何か引っかかっているような気がした。

 

 部屋に戻り勉強に戻ろうとすると、携帯が鳴った。

「誰だ?」

 画面を見ると、秋奈からだった。

 何の用だろ?

「もしもし」

『……先輩っ! お姉ちゃんがっ!』

 秋奈が涙声で叫んでいた。

「……何があったかはわからないけど、落ち着け。 深呼吸しろ。 美春がどうしたんだ?」

『すー、はー……。……お姉ちゃんが一昨日からずっと帰らないの』

「連絡が取れないのか?」

『うん』


 あの美春が秋奈にここまで心配させるということは、何か事件にでも巻き込まれたのか? 社長が関係している可能性も否めないな。


「誰かに――社長の方とかは確認したか?」

『まだ』

「そうか。なら、社長に聞いておくから、秋奈は一応結良ちゃんの方にも聞いてみてくれ」

『わかりました。ありがとう、先輩』

「何、当然のことをするまでだ。 それじゃあ、またあとで連絡するよ」

通話を切り、社長の携帯に電話をかける。

『もしもし』

「社長ですか?」

『そうよ』

「そっちに美春は来てないですか?」

『美春ちゃん? ……もしかして、連絡がつかないの?』

「俺は確認してないですけど、秋奈が美春が帰ってこないというので、連絡してみたんですが……と言うよりどうしてそのことを?」

『……秋奈ちゃんと結良ちゃんを連れて外道屋の本社まで来なさい』

「いきなり、どうしたんですか?」

『早くしなさい。理由は後で話すわ』

「わ、わかりました」

 俺の了承の言葉と共に電話が切られた。

 

社長は一体どうしたんだろう? 声色が光士が起こした事件の時のように、真面目な感じだった。

 今までに感じたことがないタイプの不安に駆られていた。

 とにかく、秋奈に連絡してみよう。


 ……………………


 繋がらない。

 まだ、結良ちゃんに電話をしているのかもしれない。

 迎えに行くのも兼ねて秋奈のところに行ってみよう。



 四季家に向かう道中、何度か秋奈に電話をかけてみたが繋がらなかった。

 結良ちゃんにもかけてみたが繋がらなかった。

 社長の言い方の事も有り、不安から焦りのような感じに変わってくる。

 秋奈の家であるマンション二階に到着した。 

 チャイムを押してみたが、誰も出る気配がない。

 鍵は閉まっていた。

 もう一度、電話をかけてみるが反応がない。

 固定電話の方にもかけてみたが部屋の中から音が鳴っているだけで、誰も取る気配はなかった。

 焦りは確信になりつつあった。

 美春と秋奈は何か事件に巻き込まれている。 しかも、社長が関連している可能性が高い。

 とにかく、社長の元へと向かうことにした。

 道中に結良ちゃんにもう一度電話をかけたが電話に出ることはなかった。

 そして、今度はもう一度社長にかけた。


『もしもし』

「秋奈も結良ちゃんも電話にかけても出ないし、秋奈は家にもいなかった」

『そう……。それなら、あなただけでも来なさい』

「もう向かってるよ」

 ちなみに俺は結良ちゃんの家の場所を知らないので行きようがなかった。


『着いたようね』

「あぁ、着いたよ」

 何の変哲も無い雑居ビル。

 光士とカイルと初めて訪れた外道屋のある場所。

 ここの地下に外道屋に繋がる道がある。

 唐突に落下する感覚に陥る。

 それも既に慣れた。

「来たわね」

 落ちた先の部屋には、社長と光士と清真がいた。

「言われた通りに来ましたよ。と言うか、なんでジュストがここに?」

「我もそいつに呼ばれたのだ。お前と違って理由は知っているがな」

 何か馬鹿にされたような……。けど、そんなことはどうでもいいんだ。

「それで、社長はどうして俺を呼んだんですか?」

「ここが一番安全だからよ」

「どういうことですか?」

「白城君は今年の行方不明者の数は知ってる?」

「急になんですか?」

「答えて」

「えっと……確か今日の朝見たニュースで二十万人とか言ってました」

「その半分以上がある人物に誘拐されたのよ」

「なんですか、そのでたらめな話は。それに、秋奈達と何の関係があるんですか?」

「この話は事実よ。それと、私が言いたいことは、おそらくそのある人物に皆拐われたということよ」

「ある人物って誰なんだ」

「……私よ」

「は?」

「正確に言えば昔の私。『元』悪の神ではなく、悪の神そのものよ」

「……ちょっと理解が追いつかないんだが」

「正義の神――ジュストが復活した切っ掛けは覚えてる?」

「確か……清真の父親が考古学者とかでジュストを見つけた……だったかな」

「そう、神が復活するにはそれだけで十分なのよ」

「ちょっと待てよ。悪の神は今ここにいるじゃないか」

「前にも言ったかもしれないけど私は悪の神ではなく『元』悪の神なのよ。つまり、悪の神が復活する余地はあるのよ」

「……誰が暗躍しているかはわかったよ。それで、その悪の神の居場所は?」

「場所はわかっているわ。けど、手をこまねいているのよ」

「どうして!?」

「罠かもしれないからね。向こうも私たちのことに気づいているだろうから」

「でも、行かなきゃ助けられないじゃないか!」

「わかっているわよ。 けど、今度ばかりは冗談じゃ済まないの。 光士君の時はまだ、何とかなる可能性が高い方だったけど、今回の件は何が起こるか全く予想がつかないのよ」

「それなら、どうしろって言うんだ!」

「白城君は光士君とここで待っていなさい。 私とジュストで決着をつけてくる」

「待ってなんかいられるか! 彼女が――秋奈が! 美春が! 結良ちゃんまで居なくなったんだぞ! ここでじっと何かしていられない!」

「……ごめんなさい」

「一体何にっ……!」

 謝っているんだと言おうとしたら、首の後ろあたりから強い衝撃を感じた。

 立っていられず、膝を折り背中の方を向きながら倒れたとき、視界の端にジュストが手刀の形を作っているのを認識して、完全に俺の意識は飛んだ。



SIDE 神宮寺イーヴィ


ジュストは白城君の頚椎を手刀で叩き気絶させたようだ。

「手間を取らせたわね」

「別にいい。我らだけで解決すべき問題であるのだから」

「そうね。光士君、悪いけど白城君見張っててね」

「わかっています。社長……お気を付けて」

 白城君への手紙を書き残し、ジュストと共に新たに造った隠し通路を使い、奴の元へ向かう。

 

 奴の居場所であろう部屋の壁の前で通路は行き止まりになっている。

「ぉ、らぁっ!」

 そして、ここは蹴破って抜ける。

 その壁を抜けた先には黒く管がたくさん伸びている気味の悪い大きな機械があり、それに繋げられているおよそ十万の眠っている人間だった。

「あらあら、随分と無粋な侵入ねぇ」

 私と同じ声が聞こえる。

 私たちの目の前には、私と同じ姿をした女が立っていた。 格好は露出度の高い 民族衣装のようなものを身に纏っているが。 ……私ってあんなの着てたことあったかな?

 

 相手は元は自分なのだから私と同じ姿と声をしているのは当然なのだが、いざ対してみると気味が悪いものだ。

 この部屋の雰囲気も相まって不快感が際立っている。

「随分と悪趣味な部屋ね」

「自分に対して言っちゃう?」

「名前も好みも目的もあなたとは違うわよ」

「同じ人を愛しているのに?」

 この発言に私の不快感とイラつきを感じる。 思わず、拳を握りしめてしまうほどに。

「落ち着け。ただの挑発だ」

「わかっているわよ……!」

「それに正義の神――ジュストといるのはおかしいわね。ジュストは悪が嫌いなのではなかったのかしら」

「その通りだが、イーヴィを悪だと思ってはいない。例え悪になったとしてもそれはお前を倒してからの話だ」

「……つまらないわね。ところで、私はイーヴィって名前にしたんだ。ねぇねぇ……」

「断る!」

「まだ、何も言ってないわよ」

「あなたと私は違うけど元は同じ悪の神。だから、あなたがやろうとしていることなんてなんとなく想像がつくわよ」

「そうなの。それは残念。わかっていながら賛同してもらえないなんて……」

「あなたがやろうとしていることは、下手をしたらこの世のすべての人間を犠牲にしかねない」

「それは絶対に許してはならんことだ」

 私の言葉に追随しジュストが言う。

「いいわ。私の邪魔をすると言うのなら絶対に許さない。かかってきなさい、消滅させてあげるわ!」

 人がいる方は壁に覆われ、その壁からは数多の銃口がむき出しになっていた。

「元は私なだけあって、武器の趣向も似てるわね」

「そう。それじゃあ、消えなさい」

 数多の銃口からは鉛の弾が飛んできた。

 ここが、私との決定的な差か……。

 鉛の弾である以上、その内弾切れを起こすはず。

 それまで、なんとか持ちこたえよう。

「ジュスト! 大丈夫!?」

 避けながら、悪の神に対しての攻撃の要である、ジュストを心配する。

「誰にものを言っている!」

 どうやら大丈夫なようだ。

 しかし、この弾幕がいつまで続くのだろうか。

 人間の身体を使っているジュストにはかなり堪えそうだ。

 


 悪の神――ディザルムによる銃撃が五分は続いていた。

「いい加減疲れてきたし、イライラしてきた」

「我もだ。何か反撃の手立てはないのか」

 今まで静観してきたけど、やっぱり攻撃しなきゃ勝てないわよね……

「正直な話、こっちも結構イライラしているのよ。 なかなかあたってくれないから」

 圧倒的優勢なくせしてこいつは何を言っているんだ。

 まぁ、とりあえず……

「私があの砲台一つ一つ破壊していくから、ジュストは適当に避けてて」

「わかった」

 私は懐から銃を取り出して、壁から出てきている銃口に向けて撃つ。

 ゴム弾は銃口に入り込み、壁に埋め込まれた銃は暴発を起こす。

 

 避けながらそれを五回程繰り返した。

 そうして、ディザルムは口を開いた。

「……これ以上は時間の無駄ね」

 銃撃が止まった……

「なんのつもりよ」

「これで直ぐに決着がつくと思っていたからね」

「元はあなたなのよ。私たちをそんなに舐められちゃ困るわ」

「その通りだ。それに我は元々お前を倒すために創られたのだしな」

「そんなものは関係ないわ。圧倒的な力の前ではただひれ伏すだけ。あなたたちが私に勝てる道理なんてない」

「言ってくれるわね。あなたがおよそ十万人の畏怖を手に入れたからってちょっと調子に乗りすぎじゃない?」

「そうね。これじゃあ、私の目的は全く果たせそうにない。でも、あなたたちを消すには十二分にあるわよ」

 ディザルムは剣の柄のようなものを取り出し、一回振ると紫がかった黒い刀身が姿を表した。

「……あれは私がくらっても結構やばいかも」

「我の閃光拳をくらってなんともなかったやつが何を言っている」

 

 閃光拳は前に私の頭を吹っ飛ばした技だったかな……


「あれはやせ我慢よ」

「なにっ!」

「本当は死ぬほど痛かった。 あれ、手だけ具象化してエネルギーを飛ばしたんでしょ」

「そうだが……」

「あいつのは痛いじゃすまないわよ。 それだけ高密度なエネルギーだから。 あなたの場合はその身体もかなり危ないけどね」

「気をつけなくてはな。清真の未来のためにも」

「わかってるならいいわ」

「いつまでお喋りを続けるの? もう斬りかかってもいいわよね?」

 ディザルムは欠伸をしながら、退屈そうに言う。

「嫌だけど、来るなら来るといいわ」

「それじゃあ、いくわよ!」

 ディザルムは私たちを同時に攻撃するために横薙ぎに剣を振るった。

 

 速い……!


 私はなんとかボクシングのスウェーバックの要領で避け、ジュストはディザルムの後ろ側に回り込むことで回避した。

「後ろによけなくて正解だったねぇ」

 後ろを振り向くと壁が切り裂かれたような跡があった。


 まずいわね……。

 ここまで力があるとは思わなかった。 ますます勝てるかどうか怪しくなってきたわ。


「さて、そろそろ飽きてきたし、決着をつけようかな」

「つれないわね。もう少しぐらい遊んでくれたっていいんじゃない?」

「これで終わるんだからもう必要ないわ」

 ディザルムは袈裟斬りを仕掛けてきた。

 速さからいって避けきれない。

 なら……! 手で受け止めるまで!

 私の力を左手に集中して斬撃を掴む。

「へぇ……。よく受け止められたわね」

「これでも私を慕ってくれる子はいるし、私の信仰者ファンだっているのよ」


 だからこそ、ジュストに負けることもなかった。


「そうなの……でも、残念だったわね」

 私の左手が掌から先の肘まで真っ二つに切れた。

「……っ!」

 機械の身体故に血は流れないし、生命に支障を来すこともない。

 だが、自分の身体は痛覚がないはずにも関わらず、左腕を失ったことを訴えるように左腕が痛む。

「イーヴィっ!」

「人の心配をしている場合じゃないわよ!」

 ディザルムは離れた位置にいるジュストに対して横薙ぎに剣を振るった。

 そして、斬撃はジュストに向かって飛んでいった。

「ぐあぁぁあ!」

 ジュストはバリアのようなものを展開したらしく切り裂かれはしなかったもの衝撃で後ろに吹っ飛んだ。


 万事休す…………かな。

 

 諦めにも似た感覚が身体を襲い、倒れずにはいられなくなる。

 仰向けに倒れ、私たちが侵入した方をなんとなく見つめていた。

「あら、もう諦めちゃったの? 本当につまらないわね。それじゃあ、おしまいね」

 ディザルムが剣を振り上げても私はなんとなく顔の向きを変えなかった。

 そして、二人の人影が見えた瞬間、何故か笑い出してしまい、堪えきれなくなっていた。



SIDE 白城勇人



 目が覚めた時、俺は縛られて動けなくなっていた。

 そして、目の前には光士が立っていた。

「お目覚めのようですね」

「光士か……。俺はどのくらい気絶してた」

「五分か十分ぐらいでしょうかね」

「そっか。とりあえず、これを解いてくれないか?」

「嫌です。社長の命令ですから」

「……お前は呪いをかけられていた時と変わらないな」

「そうでもありませんよ。これでもイエスマンではなくなりました」

「自覚あったのかよ」

「えぇ。と言っても、呪いが解けてからですが……。僕にとってはあの人の命令に従順であることが最も良い愛情表現だと思っていましたから」

「そうかい」

「ま、そこはどうでもいいんですが、社長から手紙を預かっています。そんな状態では読むことすらままならないでしょうし、僕が読みましょう」


 あの社長が手紙……?


『親愛なる私の友人 白城勇人へ

 まず、あなたに謝らなければならないことが三つ程あります。

 一つは、舞香ちゃんと海人君を囮に使ったこと。

 悪の神であるディザルムという敵を見つけるためにわざと攫われてもらいました。

 もう一つは、秋奈ちゃん達も攫われる可能性があることを知っていて黙っていたこと。

 これを知ってしまったら、あなたは行動を起こしてしまうと思ったから黙っていました。

 最後にあなたを巻き込んでしまったこと。

 私がしっかりしていれば秋奈ちゃん達が巻き込まれることもなかった。 私と関わったばかりにあなたの周りを不幸にしてしまった。

 それに、秋奈ちゃん達を連れ戻せるかどうかもわからない状況なの。

 ごめんなさい。

 ディザルムに関しては私が命をかけて倒すつもりよ。

 もしかしたら、倒せないこともあるかもしれないから私が戻って来なかったらしばらくはここで過ごして、そうすれば安全なはずだから。

 巻き込んでしまって、本当にごめんなさい。

                     外道屋社長 神宮寺イーヴィより』


 何を考えているんだよ、社長は……。

 確かに社長の謝らなければならないということに対して怒りを覚えた。

 しかし、社長は俺にとって恩人だ。退屈な日々を楽しいものに変えてくれた。

 秋奈と付き合うことができたのだって元を辿れば社長のおかげだ。

 そんな社長に対して感謝こそすれ、責めることなんて出来はしない。

 ならば、答えは一つしかない!



「光士、やっぱり縄を解いてくれないか?」

「どうしてですか?」

「みんなを助けに行くためだ」

「そう言うと思っていましたよ」

 光士はナイフを取り出し、俺を縛っている縄を切った。

「どうしてだ……? 自分で言っておいてなんだが、本当に解いてくれるなんて……」

「白城さんが望んだことではないですか」

「確かにそうだけど……」

「社長のことを本当に想うのなら、こうするのが一番だと思ったまでです」

 ……光士らしいな。

「それに……」


「親友の頼みですからね」


 初めて光士に認められたような気がした。

 あいつにとって社長が全てであり、それ以外は丁寧な話し方はするものの眼中にもないといった感じだった。

 やはり、社長に呪いを解いてもらったのが切っ掛けなのだろうか?

 それはあえて聞くほどのことでもないかと思った。


「ところで、社長のところに向かう前に言っておきたいことと渡したいものがあります」

 光士は近くにあった机の引き出しから変わった形の短剣と小さいナイフを五本ほど取り出した。

「マインゴーシュと投擲用のナイフです。そこにナイフをしまうベルトがあるのでそこにしまってください」

 俺のそばを指差し、そこには言っていた通りナイフをしまえそうなベルトがあった。

「なんで、これを俺に?」

「なんでって、丸腰で敵に向かう気ですか?」

「……確かにそれはまずいな」

「でしょう。 特別製ですから大事に持っておいてくださいね」

「あ、あぁ、わかったよ」

「それで、言いたいことですが、二つあります」

「二つもあるのか? さっさと社長のところに行かないと……」

「大丈夫ですよ。社長のところに向かいながらにでも話しますから」

「そうか。それじゃ、行くか」

「えぇ、そうですね」

 俺は光士に付いていった。

 光士は自動ドアの前に立ち、ドアが開く。

 その先は、部屋に続く廊下ではなく、周り全てが土だった。

「さて、歩きながらお話ししましょうか」

「あぁ」

 薄暗いこともあって、先が全く見えずどこまで続いているのかわからなかった。

「これ、どんくらい距離があんだろ」

「さぁ。しかし、少し急いで行きましょうか」

「そうだな」

 光士は走るというほどではないが足を速く進め、俺は後に付いて行った。

「それで、言いたいことですが、一つは社長の目的についてです」

「社長の?」

「あの人は、学校で有馬さん――つまりは正義の神であるジュストにあった時に悪の神であるディザルムの復活を予感しました。そこから、社長はディザルムを倒す方法を模索してきました」

「それがどうしたんだ?」

「あの人は元々、僕達全員を戦力として考えていたんですよあのサバイバルが一番わかりやすい強化でしたね」


 あのサバイバルそんな意味があったのか……


「……なら、どうして社長は俺達を置いて向かったんだ?」

「これは僕の推測でしかありませんが、あの人はやはり自分のことは自分で処理したかったんだと思います。それに……」

 光士は一呼吸置いて、再び言葉を紡ぐ。

「それに……僕達のことが大事だったんだと思います。こればっかりは下手したら死にかねないですからね」

「……なるほど。 それで、もう一つの方は?」

「ディザルムの目的についてです」

 

 そういえば、全く知らないな。


「ディザルムの目的については社長の推測なのですが、恐らく社長が好きだった人の蘇生だそうです」

「……? 社長は何でそれを邪魔するんだ?」

「かつては社長も考えたらしいのですが、あまりにも大きなエネルギーを必要とするので断念したことをディザルムはやろうとしているみたいなんです」

「エネルギーっていうのは、確か信仰とか畏怖とか記憶が素になるんだっけ?」

「はい。 ディザルムは人を拉致して、機械を使い悪夢を見せ自分に強い畏怖の念を向けさせているようなのです」

「夢なら問題なさそうだけど……」

「単なる夢なら問題ないのですが、より強いエネルギーを得るために精神崩壊が起こりかねないほどの悪夢を見せている可能性があるのです。問題はそれだけではありませんが」

「十万人以上集めているから社会が混乱してもおかしくないからな」

「その通りです。社長にとって人はとても大事ですしね。社長にとって人は単なる生きる糧ではありません。生きがいです」

「……なるほど。けど、これを俺に話してどうしたかったんだ?」

「僕にもよくわかりません。でも、とにかく知っておいて欲しかったんです。わかっているとは思いますが、社長は僕達が特別なんですよ。特にあなたが」

「俺が?」

「えぇ。理由は自分で考えてください。そろそろ目的地のようですしね」

 奥の方を見ると人影が見える。

 二人は倒れ、一人は何か棒状のものを構えていた。

 そして、それを認識する寸前

「アハハハハハハハハハ!」

 と笑い声が聞こえてきた。

 それが誰の笑い声かはわからなかったけど、俺はとにかく今まさに振り下ろされようとしているものを止めることだけを考え、光士から渡された投稿用のナイフを構えている奴の手元に向けて投げた。

 うまく命中して、当たった奴は動きを止めた。

 光士と走って、現状を確認しに行く。

 

 そこで見た現状はジュストは倒れ伏し、社長も倒されていて今にも止めを刺されそうになっていたようだった。

「社長っ!」

「ご無事ですか!」

 社長は状態を起こして応える。

「来ちゃったのかぁ……」

 嬉しそうな、そうでもなさそうな複雑な表情だった。

「誰よ、あなたたち」

 格好は違うが社長と全く同じ顔をした女が話しかけてきた。


 ……あれが、ディザルムか?


 ディザルムは剣先をこちらに向ける。

「そこの穴からきたということはそこの私の関係者? 片方は少しあの人に似ているわね」

「似てて当然よ。あの人の子孫なんだから」

「へぇ~。それじゃあ、あの人の贄にはぴったりね」

 

 なんか、とんでもないこと言ってやがるな。


「社長も光士もやらせはしないぞ」

「あなたはよくわからないわ。何故、そこの私があなたを味方にしているのか」

「あんたには一生わからないわよ」

 社長がそう言う。


 実際のところ俺もよくわかってないんだけどな。


「あっそ。どうでもいいから別にわからなくてもいいわ」

「……元は同じ存在なのに随分と違うんだな」

「「当たり前でしょ」」

 同じ声で同時に言われた。

 ……まるでステレオだ。

「全く,面倒事はこれ以上増えなくてもいいのよ。 特にあなたはどうでもいいから消えなさい」

 ディザルムは剣を俺に向けて振り下ろしてきた。

 俺は咄嗟に光士から渡されたあの短剣で受け止めるように構えた。

「無駄よっ!」「斜めに構えなさい!」

 また同じ声が聞こえた。

 そして,おそらく社長が言った斜めに構えろという言葉に従い,剣が短剣に衝突する瞬間に斜めにずらした。

 その結果,ディザルムの振るった剣を図らずとも,捌く形になった。

「……! まぐれとはいえ、よく私の剣を捌いたわね。本当に面倒だわ!」

 また剣を振り下ろしてきた。

 俺はさっきと同じようにして、ディザルムの剣を捌いた。

 ディザルムは舌打ちをする。

 俺自身、よくわかっていないが上手い立ち回りができているようだ。

「今度はそうはいかないわよ」

 ディザルムが俺から距離をとって、横なぎに剣を振るう。

 そして、斬撃が飛んできた。

「なんでもありかよっ!」

「剣を手前に傾けて受け止めなさい!」

 今度も社長の指示通りにした。

 斬撃は短剣に当たり、『ギャリギャリ』とまるで金属が削られているような音をしながら斬撃は傾けた方向に飛んでいった。

 俺はその衝撃に耐え切れず、尻もちをついた。

 そして、上を見上げると大きく斬られた痕が残っていた。

「……シャレにならないな」

「……なんなのよ、あなたは。その剣はなんなのよ!」

 ディザルムは何故か焦っているようだった。

「そう言われても、わからん」

「うまくいかないことが多すぎて、腹が立つわ」

「その剣については私が教えてあげる。その剣は神話の武器よ」

 社長が口を挟んできた。

「は? そんなものあるわけないでしょ」

「あなた自身、神なんて言う非常識な存在なくせしてよく言うわね。あなたも私たちに関する神話があることはよく知っているでしょう? その神話に出てくる短剣よ」


 自分で非常識って言っちゃったよ。


「……知らないわよ。そんなもの」

「あれ? まぁ、いいわ。彼の持っている短剣はジュストが造ったとされている、守りのための剣――災厄と悪を退ける剣よ」

「どうしてそれを知っていて、あなたが持って来なかったのよ」

「あの剣は人間にしか使えないのよ。そういう設定だから」

「設定なんて……」

「知らないなんてことはないはずよ。 私たちは私たちが思っている以上にあいつらの妄想に縛られている。 何せ、私たち自身があいつらの妄想そのものなんだから」

 社長は「私は違うけど」と付け加えるように言う。

 俺は意味がよくわからないままとりあえず聞き流していた。

 その上、何をしたらいいのか全くわからないのでオロオロしていた。

「白城君、落ち着きなさい」

「あ、はい」


「知らないわよ。 そんなこと」

「……あなたの目的は推測できていた。 けど、あなた何かおかしくない?」

「何のことよ?」

「最初から疑問だったのよ。あの人の言葉を聞いてきた私がこんな行動をとることが」

「だから、なんなのよ?」

「あなたはあの人と出会ってから死ぬまでの記憶、一部失っているんじゃないの?」

「……あなたは知っているの?」

「やっぱりね。一つ教えてあげる。あの人が死ぬ間際まで望んでいたことを」

 社長は一呼吸を置く。

 機械だから息はしていないけど、息を吸い込む動作をしていた。


「私がいつまでも存在し続けることよ」


「え?」

「あなたが望んでいることは全ての命を犠牲にしてでもあの人と再会すること。つまり、あの人はあなたがしようとしていることなんて望んでない」

「それでも、私は! あの人が……あの人が私の全てだから……」

「……あなた、光士君じゃないんだから」

 確かに俺もそれは連想した。

「とにかく、あなたのやろうとしているそれは確実に自分の寿命を減らす行為になる。それは、あの人も嫌だと思うわ」

「最後まであの人と居たあなたに私の何がわかるの!?」

「そんなの知らない」

 

……ひ、ひでぇな


「そして、私はあなたがしようとしていることが許せない。私の存在を脅かす行為だから。 私の友人さえもね」

「うるさい! うるさいうるさいうるさい! お前は私に勝てないんだ! だから、私の計画は実行する!」

「無駄よ。準備は整ったわ。そうよね、ジュスト」

「あぁ、問題ない」

 その言葉を放ったのは、清真ではなく光士だった。

 そして、その姿はいつぞやに見た、金の双眸を覗かせていた。

「…………○○○?」

 ディザルムが何かを呟いていたが聞き取ることはできなかった。

「おい、勇人」

「俺?」

「お前以外に誰がいる」

 そうだけど、光士の見た目で言われるとすごい違和感。

「お前の持っているその投稿用のナイフであいつの手元を狙え」

「……わかったよ」

 言われたとおりに集中して、ディザルムの剣を持っている手に向けて投げる。

 ディザルムは茫然としており、避けることも防ぐこともなく狙い通りに当たり、剣を手から落とした。

「しまった!」

 落としたところでジュストはディザルムよりも先に拾い、離れた。

「これで、お前に勝ち目はない」

 ジュストはディザルムに対し、勝利宣言とも取れる発言をする。

「……なにを勝ち誇っているのかしら。それに、その姿で私を……私をぉぉおおお!」

 突如、ディザルムから風が吹き荒れた。

「今度は一体なんだよ!」

「あいつ、自爆する気よ」

「それってやばくないか!」

「私を否定するなら、こんな世界消えろぉおおおお!」

「勇人! 手に持っているその短剣であいつの胸元めがけて投げろ!」

「こんな暴風の中当てられるかよ!」

「我がこの剣を投げて風よけにするから、お前はそれめがけて投げるのだ!」

「そんな神技できるか!」

「なせば成る。お前は先ほども神技ともいえるような精度で投げていたではないか」

「知るか! そんなもん!」

 風がさらに強まっていく。

「早く準備しろ! さもなくば、おそらくこの国は吹っ飛ぶ!」

「いきなりそんなこと言われても!」

「白城君」

 豪風吹き荒れる中、普段の社長からは考えられないような穏やかな声が聞こえる。 そんな声なのに風の音にかき消されることはなく、確かに聞こえていた。

「あなたならできるわよ。本当はこの戦いに連れてくるつもりだったんだから」

「そう言われても……」

「私が今まであなたたちにしてきたことはただ楽しむという目的もあったんだけど、あなたたちを鍛えることも目的にしていたわ」

「あぁ、光士から聞いた」

「それによってあなたは、人間の限界を超えた集中力を手に入れたわ」

「だけど……」

「あなたは何のためにここまで来たの? みんなを助けるためでしょ。 なら、あきらめずに最後の手を尽くしなさい」


 …………俺は確かに彼女を、友人を、後輩を、そして、社長を助けに来た。

 だが、覚悟を決めていたつもりでもやはり命の危険を大きく感じると自分の覚悟とは何ともちっぽけなものだったことに気付いた。

 だけど……だけどそれでもやらなくちゃいけない。 社長に言われたとおり、俺はここにみんなを助けに来たんだ。 やることはやらなくちゃならないんだ。


「わかったよ。 とにかくやってみるよ。 ジュスト!」

「ようやくやる気になったか。構えろ!」

 言われたとおりに投げやすい体制に構える。

 集中力を一気に高める。

 すると周りはコマ送りのようにスローモーションになっていく。

 ジュストがサイドスローの要領でディザルムから奪った剣を投げる。

 そして、ジュストが手から剣が離れる直前を確認し、俺は投げるモーションに入る。

 俺の投げた短剣はジュストの投げた剣と完璧に同じ軌道になった。

 風を切り裂き飛び、ジュストが投げた剣は途中で落ちた。

 そして、俺が投げた短剣はディザルムの胸元に――――――――――――突き刺さった。

「いやぁああああああああ!」

 ディザルムが悲鳴を上げる。

 そして、風は止んだ。

「勝った……のか?」


 わずかな沈黙が訪れる。


「そうね」

 俺たちはその言葉に驚いた。

 その言葉を発したのは、胸元に短剣が突き刺さったまま立ち上がったディザルムだったから。

「心配しなくても、もう自爆なんてできないわよ。 既に体が消えかかっているしね」

 ディザルムの傷口からは、血ではなく光っている粒子のようなものが流れ出ては消えていた。

「消える前にいくつか言っておこうと思ってね」

 ディザルムは自嘲気味な笑いを浮かべていた。

「こんなこと負け惜しみにしか聞こえないと思うけど、私はきっといつかまた復活する。 その時まであなたたちは存在しているかしらね?」

「知らないわよ、そんなこと。……でも、私だけは絶対に居るから覚悟しておきなさい」

「私は私に容赦ないわね」

「もちろんよ。同じであって同じじゃないんだから」

「そう。それじゃあ、もう一つ言っておくわ。監禁した人間たちは早く保護したほうがいいわよ。私はどうなろうと知ったことではないからね」

「っんな!?」


 早く秋奈達のところに向かわないとまずいということなのか!?


「どうして、そんなことをわざわざいうのかしら? 言わなければ、私たちに一矢報いれたかもしれないのに」

 確かに言われなければ、そこまで急がずに探していたかもしれない。ディザルムがさらったわけだが、俺たちを手助けしてくれた発言にも取れる。

「さぁね? なんとなくよ」

 ディザルムはため息をこぼし、その後顔を上げた。

「それじゃあね」

 ディザルムはそんな言葉を残して、一気に光となり霧散した。

 後には、刺さっていた短剣がカランと音をたてた。


「早くしないとまずいみたいだから、さっさとこの壁を壊すわね」

 社長は壁にパンチをした。

 そして、俺たちが入ってきた穴ぐらいの大きさの穴があいた。

 社長は中に入ろうとすると、何かに気づいたように立ち止まる。

「ジュストは有馬君の身体に戻りなさいよ」

「既に戻ろうとしている」

 光士は倒れている清真の元に向かっていた。

「白城君はこっちに来なさい」

 俺は社長に言われたとおりに社長についていった。

 そして、壁の内側に入るとそこには椅子に座らされたたくさんの人がいた。

 その人たちはヘルメットのようなものをかぶっており、そこからは管が伸びていた。

「気味が悪いな」

 思わず、そう言ってしまった。

「そうね。とりあえず私はこの機械を破壊しに行ってくるから、白城君は秋奈ちゃん達を探してきなさい」

「……! わかった」

 社長は俺が秋奈達のことが心配であることをわかっていたからこその発言だろう。

 俺は社長に言われた通り、秋奈を探すことにした。


 綺麗に人が並べられているものの、この大勢の人・人・人にはいっそ気持ちが悪くなるぐらいだ。

 そうして探しているうちに少し遠くで爆発音が聞こえた。

 社長が機械を破壊したのだろう。俺は早く秋奈達を見つけなきゃ。

 しばらく探し回り、ようやく秋奈を見つけた。

 運がいいのか、すぐそばに美春と結良ちゃんもいた。

 とにかく秋奈がかぶっているヘルメットのようなものを取り外す。

「これでいいのか?」

 すると、そのタイミングで社長が俺のところに来た。

「白城君、秋奈ちゃんがかぶっていたそれ外しちゃったの?」

 社長が深刻そうな顔で言う。

「なにかまずかったのか!?」

 社長が俯く。

「さっき知ったんだけど、正式な手順を踏まずに取り外すと永遠に夢の中に取り残されるらしいの」

「それって……!」

「二度と目が覚めることはないわ」

 秋奈の方をもう一度見る。

 二度と目を覚まさないなんて嘘のように静かに寝息を立てている。

「どうにかできないのか……?」

「強く、現実に戻りたいと思えるようなことがあれば戻ってこれると思うんだけど」

「方法があるのか!? なら、教えてくれ!」

「そうね……。例えば、恋人とのキスとか」

「……!」

 恋人とはいえ、眠っている彼女に無断でキスなんてためらってしまう。それに、お互いファーストキスもまだだった。それをこんな形でしてしまうことが残念だったが、秋奈が目を覚ましてくれる方法がこれしか無いのなら仕方がないことだ。

「わかった」

 秋奈の方を再び見て、顔を近づける。

「秋奈、ごめん。これで目を覚ましてくれ」

 秋奈の唇に俺の唇を触れさせる。

 そして――――――秋奈の目が開いた。

 次の瞬間には、俺は秋奈を抱きしめた。

「秋奈! 無事でよかった。目を覚ましてくれて本当に良かった!」

「え? ちょっと先輩? 目を覚ましたらキスをされてたり、起きたらすぐに抱きしめられているとかすごく嬉しいですけど、なんですかこの状況?」

「あぁ、実はな……」

「プッ! アハハハハ! 本当にキスしちゃったよ」

 社長が笑い出す。

 つまり、これは

「はめやがったな!」

「別にいいじゃない。こうでもしなきゃ、恥ずかしくてキスなんてできなかったんじゃない?」

「あのなぁ……!」

「おやおや、妬けてしまいますね」

 光士がこっちを見て、そんなことを言っていた。

 というか、こいつはいつの間にここに来ていたんだ。

「あの、先輩?」

「話すと長くなりそうだから、また後でな」

「いえ、そうではなくてずっと抱きしめられていると恥ずかしいです」

 秋奈はそう言って赤面した。

「あっ! すまん!」

 俺は秋奈から離れる。

「ま、美春ちゃんも結良ちゃんも目を覚ましたみたいだし、帰りますか」

どうやら、みんなに見られていたようだ。後で、美春や社長にからかわれ、結良ちゃんが赤面することになるのだろう。

 しかし、その場にジュストが姿は見えなかった。

 帰ってしまったのかと思ったら、清真の身体は動けないほどにボロボロで「誰か助けてくれ」と泣きながら言っていたそうだ。


 この事件の後の話だが、流石にこの規模のすべての記憶消去はできないらしく、なんとか、社長がディザルムの力を流用して被害者全員を地上に送ることぐらいだった。

 幸いなことに誰も目覚める人はいなかったため、社長やディザルムの正体がばれることはなかった。

 世間としては、関東大規模神隠し事件と呼ばれしばらく話題になるぐらいだった。

 そして、俺たちは普段の日常に帰ることになった。


 後日、ディザルムを打倒した祝勝会を兼ねてクリスマスパーティーが裏生徒会室で開かれることになった。

 ゲームやって、騙されて、馬鹿にされてとにかく楽しかった。

 ジュストとも仲良くなれた。

 正直な話、受験が心配だが気にしている暇なんかないぐらい楽しかった。


「白城君と秋奈ちゃんはそろそろ一緒にクリスマスを楽しんできたら?」

 社長がそんな提案をした。

「で、でも……」

 秋奈は如何にもみんなに悪いというような顔をしていた。俺も同じ気持ちだった。

「秋奈、遠慮せずに楽しんでいらっしゃい。今日みたいな日は恋人とイチャつくためにあるようなものなんだから」

 美春が

「そうですよ。今日という日はそのためにあるんです」

 結良ちゃんが

「いつか僕もあなたのように彼女できますから、気にしなくていいですよ」

 光士が

「うむ。清真も楽しんできた方がいいと言っているぞ」

 ジュストと清真が後押しをしてくれた。

「ありがとう。みんな。それじゃあ、秋奈とクリスマスデートを楽しんでくるよ」

 秋奈は頭を下げる。


 そして、秋奈と一緒に外に出た。

 冷たい空気が吹き付けてくる。

「しかし、出てきたのはいいものの何をしようか?」

「そうですね。クリスマスが感じられるスポットに行っても人混みが多そうですし」

 人が少なくて、気軽にいけそうな場所と言ったら……

「カラオケにでも行くか?」

「それ、先輩が歌いたいだけなんじゃ……?」

「ま、確かにそうかもな」

「別にいいですけどね。先輩の歌好きですし」

 秋奈が嬉しいことを言ってくれる。

 嬉しさと恥ずかしさで少し顔が熱くなる。

「あ、悪いけど先に行っててくれないか? 忘れ物した」

「私も一緒に取りに行きますよ」


 それじゃ、ダメなんだよな……


「いや、部屋いっぱいかもしれないしそれを確認するためにも行ってきてくれないか?」

「彼女にこの寒空を一人で歩かせるんですか?」

 ジト目で俺のことを睨んでくる。

「本当に悪い。今度色々おごるからさ」

「仕方ないですね。それじゃあ、先に行きますよ」

「すまない。ありがとう」

 俺は急ぎ足で裏生徒会室に戻った。

「社長!」

「あれ、秋奈ちゃんはどうしたの?」

「先にカラオケに行かせたよ。社長に用があったから戻ってきたんだ。ちょっといいか?」

「しょうがないわね」

 俺は社長と一緒に外に出た。

「こんな寒い中に呼び出して、何をする気なの? 彼女、一人でカラオケに向かわせるとか馬鹿なの?」

「それはそうなんだが、この機会に社長に言っておきたいことがあってさ」

「何? もしかして、浮気? 引くわぁ」

「違うわ!」

 相変わらず、ふざけた人だ……

「それにしても、敬語使わなくなったわね」

「ま、友人だからな。友達に敬語を使うのは変だろ?」

「そうね。それで、何の用なの?」

 一気に真面目な雰囲気になる。

「今まで本当にありがとう。それで、これからもよろしく!」

 社長が絶句する。

「……もしかして、それ言うためだけに戻ってきたの?」

「そうだけど?」

「白城君って本当に馬鹿ね」

「そんなに言うことかよ」

「だって、言わなくたってわかるわ。それに私の方こそありがとう。これからもよろしくね」

「……! あぁ、これからもよろしく」

 社長と握手を交わした。

 そして、その場から離れ急ぎ足で秋奈のもとへと向かった。

 途中で振り返り、社長の方に向き手を振る。

「また今度会おうな!」

「えぇ、また今度ね!」

 再び、秋奈のもとへと走った。


どうか感想をください。お願いします。

そして、これからも書き続けていくつもりなので次回作も是非読んでください。

最後まで読んでくれた方、本当にありがとうございました!

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