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あっけない幕切れと意外な裏切り

 平凡な公立高校の屋上に一人の女教師と男子生徒がいた。

 その二人は決して疚しい間柄などではなく、しかし、敵対していた。

 そして、そんな二人の正体は太古の昔に存在した、正義の神と悪の神……らしい。

「悪の神よ。 この前のようにはいかんぞ」

「だから、悪の神じゃなくて、イーヴィちゃんだっての」

「そんなことはどうでもいい! 行くぞ!」

 清真は社長に走って向かっていく。

「こっちはどうでもよくないんだけど……」

 ぼやきながら、清真の右ストレートを手のひらで受け止める。

 そして、そのまま膠着状態になった。

「離せ」

「いやよ」

 おそらく、清真は必死に動かそうとしているが、微動だにしていなかった。

「その体、具象化しているわけではないのか?」

 具象化? 聞き覚えのない単語だ。

「そんなこと、いつ誰が言ったのよ」

「誰も言ってはいないが、お前のその姿、昔そのままではないか」

「そりゃあね」

 清真は左手で先ほど同様に社長にパンチするが、それも受け止めた。

「無駄よ」

「ならばっ!」

 清真は足を振りかぶり、社長の顎を蹴り上げた。

 その衝撃に耐え切れなかったのか、社長は清真の手を離した。

 清真は社長から距離を取る。

「……女の子の顔になんてことするのよ」

 全然堪えた様子はなかったが……。

「悪は断罪するのみだ。 もとより、お前のことを女子だと思っていないがな」

「傷ついちゃうなぁ。 そんなこと言うと……」

 社長は懐から黒い物体――拳銃を取り出した。

「撃っちゃうぞ」

 発砲音が響いた。

 だが、銃口の先に居た清真は無傷だった。

「前のこともあったのだ。 対策しないわけがなかろう」

 清真は籠手を着けていた。

「銃口と目線を見れば、どこに向けて打つかなど容易にわかるからな」

「そっかぁ。 それだったら……」

 手に持っている銃を投げ捨て、社長は背中に手を伸ばす。

「これはどうっ!?」

 そして、どこにしまってあったのか? 軽機関銃――マシンガンを取り出していた。

 それを清真に向かって、連射する。

 清真はそれを全てかすりもせずに避けていた。

「に、人間業じゃねぇ」

 思わず口に出る。

 社長は弾を全部撃ち尽くすと、マシンガンも捨てた。

「ふむ、火力不足ね」

 そういう問題じゃないだろ。

「今度はこっちから行くぞ」

 清真は人間離れした速度で、社長に近づいた。

「ここだ!」

 それは、かがんだ状態からのアッパーだった。

 途中の動作が速すぎてよく見えず、気づいたのは社長に当たってからだった。

 社長はアッパーを食らったような、仰け反った姿勢のまま動かなかった。

「流石に脳震盪を起こしたか」

 社長は何事もなかったように、姿勢を戻した。

「何!?」

「そんなパンチじゃ、効かないよ」

 社長は拳を握り、腕が伸びきる前に清真の顔面に拳を叩き込み、押すように殴った。

 清真のとは違いそこまで速いものではなかったにも関わらず、清真は五メートル程吹っ飛んだ。

「そんな程度じゃないでしょ?」

 清真は起き上がる。

「舐めるなぁ!」

 先程と同じように清真の動きは人間離れしていた。

 社長に直進したかと思うと、拳の弾幕とでも形容できそうな連撃をしていた。

 が、そのどれも社長には当たっていなかった。

「――はぁ」

 社長がため息をした。 それは何を意図していたのか。 

 ただ、社長らしくないなと思った。

 そして、そのため息は清真をイラつかせたらしい。

「何をそんなにイラついているの?」

「このっ……!」

 清真のストレートが社長の顔面に直撃した。

 清真が社長の顔から手を話すと社長は無表情だった。

 いつも、笑みをを浮かべているあの人が無表情なんてどういうことだ?

「……そんなものなの?」

「くっ……! ならば見せてやろう我の切り札を……!」

 清真の手が光り輝いている。

……今までもそうだったけど、本当にやってることがもう人間じゃないな

「喰らえっ!」

 清真の拳から閃光が走った。

 直後、ドォーン! というような轟音が響いた。

 清真は正拳突きをし終えたあとのような構えを取っていた。

 そして、社長の首から上は煙に覆われていた。

「やったか!?」

 ……やってないフラグありがとうございます。

 しかし、煙が晴れるとそこには――――何もなかった。

「きゃぁああああああああ!」

 結良ちゃんが悲鳴を上げた。

 嘘だろ……。

「やった……。 やったぞ!」

「勝利の余韻に浸るには早すぎるわよ」

 どこからか、社長の声が聞こえる。

 やっぱりフラグはフラグだったようだ。

「何っ!?」

「ったくもう! こんな情けない姿になっちゃったじゃない」

 首のない身体が動き出す。

 そして、向かった先には社長の頭が転がっていた。

「接着が甘かったのかしら?」

 埃にまみれ、胴体がない以外何も変わらない社長の頭がそこにはあった。

「貴様、機械だったのか!?」

「今更、気づいたの? よっと……」

 首のない身体は頭を拾い、自分の首に装着する。

「しっかり止めないと、また取れちゃうわね。 後でしっかり修理しなきゃ」

 あれで死なないあたり、やっぱり社長は社長だった。

「我の修行の成果が効かないだと……!?」

「全く、切り札は先に見せるな、見せるなら更に奥の手を持てって言葉を知らないのかしら?」

 その台詞は漫画のだから知っている人間のほうが少ないと思うんだが……。

「知るか、そんなこと!」

 やっぱり。

「あなたとの闘いを続けても、もう無駄みたいだし、そろそろ決着をつけるか」

「なんだと!」

「あなたに切り札ではなく奥の手がないと言うのなら、これで終わる」

 懐から、拳銃を取り出す。

 あんた、一体何丁持ってるんだよ。

 そして、清真を狙っているにしては銃口が下に向けられていた。

「馬鹿にしているのか!? そんな角度では絶対に当たらんぞ!」

「そんなことは言われなくてもわかっているわよ。 ……この勝負が終わる前にもう一度忠告しておこうかしら」

「何をだ?」

「切り札はっ!」

 社長が拳銃を撃つ。 それは、地面に着弾した。

「だから、当たらないと……ぐあっ!」

 着弾した場所からボクシンググローブが出てきて、清真の顎を捉えていた。

「最後まで!」

 次は社長が拳銃を清真に向かって投げ捨てた。

 ものすごい勢いで飛んでいくそれは、清真にぶち当たり清真をフェンスまで運んだ。

「がはっ!」

「取っておくものよ!」

 フェンス下から鎖が出てきて、清真の四肢をフェンスにくくりつけた。

「これはっ!?」

「それがあなたの……」

 そしていつ仕込んだのか、周りには数え切れないほどのマシンガンが清真に銃口を向けていた。

「敗因ッ!」

 社長の言葉と清真を指差すポーズを合図に一斉にマシンガンが発砲される。

 十五秒ほど『ダダダダダダダダダッ!』という、発砲音が響き続けた。

 辺りにはゴム弾の残骸が大量に散らばっていた。

 そして撃たれていた場所は、もはや死んでいるのではないかと思われるほどボロボロで痣だらけの清真の姿があった。

「ふぅ……。 これは掃除が大変ね」

「殺した……のか?」

「失礼なこと言わないでよ。 ちょっときつめにお仕置きしすぎただけよ」

 ちょっときつめのお仕置きでこれか……。 俺なら死んでたぞ。 ……俺じゃなくても死んでたと思う。

 そんな中、光士が清真に近づいていた。

「おい、光士。 何してんだ?」

「っ! ダメよ! そいつから離れなさい!」

 常の社長の雰囲気から明らかに逸脱した、俺が初めて聞いた怒声だった。

 光士はその言葉に従わず、清真の胸に手を当てた。

 直後、目を開けられない程の光に包まれた。

「何だっ!?」

 光が止むとそこにはいつもと変わらない光士がいた。

「何が起きたんだ?」

 光士は社長の目の前まで、近づく。

「早くそれを有馬君に返しなさい」

「嫌です。 せっかくあなたと並び立つ存在になれたのに」

「それは、あなたじゃなくて、正義の神――ジュストの力よ」

「……わかりました。 あなたを倒すほど強くなれ、ということですね?」

 何の話しているのかはわからないが、光士がとんでもない曲解をしていることはわかった。

 光士が横に手を振ると、背中から翼が生えた。

光士に一体何が起きてるって言うんだ!?

「それでは、皆さん。 しばらくの間、ごきげんよう」

 光士は空へと飛び立った。

「逃がさないわ!」

 どこから取り出したのか、ロケットランチャーを光士に向けて放った。

 しかし、光士は躱して飛び去っていった。

「光士様! 一体どこへ行くんですか!?」

 舞香の言葉は光士に届くことはなかった。

「光士様……」

「迂闊だったわ。 この可能性は全く考えてなかった……!」

「おい、一体どういうことなんだ?」

「後で話すわよ。 その前にこの騒ぎを止めなきゃね」

 

その後、社長は救急車を手配した。

 

 

 後から聞いた話だが、あの加工音声は社長が録音したものを流したものであったらしい。

 グラウンドで何をさせてかといえば、命懸けの障害物レースだったそうだ。

 ちなみに、レースをやらせている間、この辺をジャミングして圏外にして、逃げようとすれば威嚇射撃。 誰もその場から逃げられなかったそうだ。

 光士が飛び去った後は、音声に『気が変わった』とだけ言い残させ、事態を収束させたらしい。

 ついでに言えば、幸いと言っていいのか、この二人の神の戦いに気づいているものは誰も居らず、強く光ったのを確認したのが数名いた程度だった。

 

 救急車には社長が清真の付き添いで乗っていった。

 俺たちは未だ収まらない混乱に乗じて学校を抜け出し、清真の運ばれた病院に向かった。

 

 病院に向かうと清真の治療は終わったらしく、既に目を覚ましているということだった。

 病室の前に立ち、扉をノックする。

『どうぞ』

 今まで聞いたことのない声色。 ただ、それが清真の声であるのは間違いなかった。

 扉を開け俺を含め計6人が病室に入る。

 そこには、包帯をぐるぐる巻きにされていた清真と横で座っている社長がいた。

「はじめまして、みなさん。 ご存知だとは思いますが、僕が有馬清真です」

 何を言っているんだ、こいつ? と一瞬思ったが、今まで話していたのは正義の神――社長によればジュスト――だったからな。 光士も初めて会った時そんな感じだったから、当然の行為なのだろう。

「怪我の方は大丈夫なのか?」

「えぇ、全身打撲ですが、骨も内臓も至って健康そのものです」

「私の神懸かりな手加減のおかげよ」

「ハハ、神様が言うと冗談に聞こえませんね」

「冗談なんかじゃないわ。 それと、私は神様じゃないって言ってるでしょ」

「それは、もういいから光士について説明してくれ」

「それもそうね。 有馬くんも全部は理解できていないと思うから、確認のためにも最初からみんなに話すわね」

社長は椅子に座り直す。

「有馬君は既に知っていると思うけど、有馬君の中にいた正義の神――ジュストは今、光士君の中にいるわ」

「そうだとなにかまずいことでもあるのか?」

「ありますよ! だいたい……」

「有馬君、今は黙ってなさい」

「……はい」

「有馬君自身のことは置いておいて、光士君が何をする気かは知らないけど、まずすることは決まっている。 ――力を蓄えることよ」

「まだ、よくわからないんだが?」

「まだ、話は途中よ。 私やジュストの力は存在を知られたり、信仰とか畏怖の感情を向けられることによってエネルギーが得られるわ。 そこに際限はなくて力さえあれば、実質できないことは存在しない」

「どんな願いでも叶えられるということか?」

「そうね。 もちろん、何をするか――何を叶えるかによってエネルギーを使う量が大きく変わるから、なんでもできる力はあっても叶える願いによってはエネルギー自体が足りなくなるわ。 ……本当の問題はここからよ。 この力はエネルギーがないと使い物にならない訳だけど、そのエネルギーの扱いがとても難しいのよ。 扱い方を間違えれば、世界の法則を捻じ曲げたり、世界が崩壊しかねないほどの大災害が起こる。 それは、絶対に避けなくてはならないわ」

「光士はその使い方を間違えるかもしれないということか?」

「そうね。 人に御しきれるものではないと思うわ」

「それじゃあ、清真はどうなんだ?」

「有馬君は体をジュストに貸していただけであって、力そのものを扱っていたわけではないのよ」

 なるほど、だから社長はあそこまで焦ったのか。

 ……もしかして、世界の危機ってやつなのか?

「今頃、エネルギーを必死に集めているでしょうから早くジュストを取り返さないと大変なことになりかねない」

「僕の夢も叶えることができません」

 清真は急に言葉を挟んできた。

「……ところで風紀委員長さんの夢ってのは何なんだ?」

「よく聞いてくれました。 僕は昔からこの世の悪を根絶したいと思っていました。 けれど、そんなことは絶対に不可能だと、小学生高学年になる前にはわかっていました。 けれど、彼――ジュストがいれば叶えられます。 ジュストは僕の夢に共感してくれましたし、強いですから」

「あっそ。 こんな話はどうでもよかったな」

「ひどい! ほかの皆さんはそんな風には思いませんよね?」

 社長は

「どうでもいいわ」

 秋奈は

「どうでもいいです」

美春は

「どうでもいい」

 結良ちゃんは

「えと、今はどうでもいいですね」

 海人は

「どうでもいいよ」

 舞香は

「そんなことより光士様を探しに行きましょう」

 と言った。

 清真は涙目になっていた。

「みなさん、ひどいです」

「舞香ちゃんの言うとおりね。 ま、ネットかテレビを見ればもう情報は出ているでしょうけどね。 ここで見るわけにもいかないし、外に出ましょう」

 社長に連れられて、みんな出て行く。

「無視ですか……」

 清真の悲痛な声さえも無視して、病室の外へでた。

 正直、ちょっとかわいそうだった。

 今が清真のことよりも光士のことが優先なのは間違いないことだ。


 何やら、病院を出てから少し騒がしい。 その騒がしさの理由はすぐにわかった。

そして、光士の姿が見えたわけではないが、居場所もすぐにわかった。

「なに、あれ?」

 みんなは空を見つめていて、誰かがそう呟いた。

 そのみんなの視線の先には――城が浮いていた。

「ラピュタは本当にあったんだ!」

 ……なんというシリアスブレイクな発言なんだ。

「そうじゃないだろ……」

「わかっているわよ。 冗談はさて置き、もうこんなことをしているとは思わなかったわ」

「あんなところへどうやって行くんだ?」

「私が飛行機かロケット作るから、それで行きましょう。 明日には作れる」

「そんな急ごしらえで大丈夫なのかよ」

「大丈夫よ」

「私も手伝います。 光士様を早く迎えに行かないと!」

「それじゃ、お願いね。 みんなにはできない作業ばかりだし、今日は帰りなさい」

「俺たちに手伝えることはないのか?」

「あなたたちじゃ、部品を間違えてしまうこともあるだろうからね。 ロケットか飛行機が完成するまでは何もできないだろうから、明日の朝まで待機ね。 幸い、明日は学校が休みだしね」

社長と舞香は一緒にどこかへ行ってしまった。

「海人は行かなくてもいいのか?」

「俺も手伝ってもいいんだけど、出来ることは少なそうだし帰るよ」

「そうか……。 しかし、お前はいつまでその格好なんだ?」

「帰ってから着替える」

 ……女装のまま帰るのか。 いろんな意味で心配だ。

「それじゃあ帰るついでに、私が送ってくわ」

「私も帰ります」

 美春と結良ちゃんが海人を心配してか、こう言ってきた。

「俺も帰るかな……」

「あなたは秋奈と一緒に夕食でも食べてきなさい」

「なんでだ!?」「なんで!?」

 秋奈も俺と同じ反応をする。

「せっかく、今日彼氏彼女の関係になったんだからこのままじゃ台無しでしょ。 あ、神宮寺君のことで不謹慎だからって拒否はなしよ」

「しかし、自分で言いたくはないが俺のこと好きなんだろ? 悔しくないのか?」

「あぁ、ミスコンでのことは嘘よ」

「嘘ぉ!?」「嘘でしょ!?」

「嘘じゃないわ。 あのミスコンでのことは全て私と小井塚さんと社長で仕組んだことよ」

 社長が何かしたのは予想がついてはいたが、美春と結良ちゃんまで……。

「待てよ……もし、俺が秋奈以外を選んでいたらどうしたんだ?」

「その時は多分付き合うことになったでしょうね。 私たちは白城君のことは別に嫌いじゃないし」

「先輩は渡さないよ」

「わかっているわよ。 むしろあれは、あなたのためにやったんだから」

「え?」

「秋奈も白城君も強制的に言わざる展開でもない限り告白なんてできないでしょ」

「「……返す言葉もございません」」

「わかったでしょ。 だから、二人で楽しんできなさい」

「あぁ、ありがとな」

「ありがとう、お姉ちゃん」

「さて、もう帰ろうか。 小井塚さん、海人君行くわよ」

 美春は歩き出す。

「はい」

「俺も兄ちゃんたちと一緒がいいなぁ」

「二人の邪魔しちゃダメよ」

 そんな会話をしながら帰って行った。

「二人きりになっちゃったな」

「そうですね」

「……とりあえず電話していいか?」

「どこにですか?」

「ちょっと母さんに。 母さんに連絡しておかないと何言われるかわからないからな」

「そうですか」

 携帯から母さんの携帯にかける。

「もしもし、母さん」

『何? 勇人』

「これから文化祭の打ち上げがあるから夕飯はいらない」

『……別にいいけど、勉強の方は大丈夫なの?』

「大丈夫だよ。 もうこれで最後だから、参加しないと後悔しそうだからさ」

『わかったわ。 楽しんでいらっしゃい』

「ありがとう、母さん。 切るよ」

『はい』

 携帯をポケットにしまった。

「ごめん。 待たせた」

「別にいいですよ。 でも、彼女とって言ってくれないんですね」

「恥ずかしくて言えるわけないだろ……」

「……そうですか。 そうですよね」


 その後、ファミレスへと向かった。

 中に入ると、店員が話しかけてきた。

「何名様ですか?」

「二人です」

「こちらへご案内します」

 休日にもかかわらず、あまり人はいなかった。

「ごゆっくりどうぞ」

 テーブルを挟み向かい合わせに座った。

 メニューをとって、秋奈に渡す。

「ほら」

「ありがとうございます」

 沈黙

 人が少ない事も有り、余計に静けさが際立っていた。

 とても彼氏彼女の関係とは思えないほどの気まずさだ。

「め、メニューは決まったか?」

「は、はい。 このパスタで」

 急に初々しいカップルのように、恥ずかしげなやり取りをしてしまう。

「それじゃあ、俺はこのハンバーグにしようかな」

 呼び出しのボタンを押す。

 人が少ないせいかすぐに店員が来た。

「ご注文をどうぞ」

「えっと、そのパスタとこのハンバーグで」

「はい。 トマトソースパスタとデミグラスソースハンバーグですね。 ドリンクバーはお付けしますか?」

「はい。 秋奈はどうする?」

「は、はい! いただきまひゅ!」

 ……今、噛んだのか。

 心なしか、店員が笑いそうになっているように見えた。

「確認させていただきます。 トマトソースパスタとデミグラスソースハンバーグとドリンクバー二つですね」

「はい」

「少々お待ちくださいませ」

 そのまま、店員は厨房の方へ向かった。

「思いっきり噛んだな」

「……やめてください。 恥ずかしいです」

「でも、少し落ち着いたよ。 なんかずっと緊張してたからな」

「そうですか。 私もです」

「ジュースでも取りに行くか」

「私も行きます」

 二人でドリンクバーの前に行った。

「先輩はどうして私を選んだんですか? てっきり、結良ちゃんを選ぶと思ってました」

 グラスを取り氷を入れながら話す。

「結良ちゃんは確かに可愛いし性格も俺好みではあるけど、恋人として好きってのとはなんか違うんだよな」

 俺はボタンを押して、コーラを入れる。

「お姉ちゃんは?」

「美春は嫌いじゃないし、器量もいいと思う。 けど、俺は秋奈の方が好きだ。 理由は俺にもよくわからない」

「ふふ。 なんですか、それ」

 秋奈は少し笑って応えた。

 そして、席に戻った。

「それなら、秋奈は俺をどうして好きになったんだ?」

「私は……どうしてでしょう? お姉ちゃんとの中を取り持ってくれたことがきっかけなのは間違いないですけどね。 それからどうしてかわかりませんけど、先輩に惹かれていきました」

「俺とほとんど一緒じゃないか」

「そうですね」

「お待たせしました」

 ちょうどいいタイミングで料理が運ばれてきた。

 俺と秋奈の前に料理が置かれる。

「ごゆっくりどうぞ」

 店員が離れていった。

「美味しそうですね」

「そうだな」

「「いただきます」」

 図ったわけではないが全く同じタイミングだった。

 また、気恥ずかしくなる。

「あー! もう!」

「いきなりどうした?」

「彼氏との楽しい食事のはずなのになんでこんな雰囲気なんですか!?」

「俺に言われてもわからん」

「……ここは思い切ってしまいます。 先輩、そのハンバーグちょっとください」

「別にいいが……?」

 俺はハンバーグが乗った皿を秋奈の方に近づける。

「そうじゃなくて、私に食べさせてください」

「それはつまり……」

「俗に言う、あーん、ですね」

「そんな恥ずかしい真似を俺にしろと?」

「一度恥ずかしいことをやってしまえば、もうそれ以上恥ずかしくはならないと思うんです」

「一理あるけど……」

「駄目ですか……?」

 俺に上目遣いで訴えかけてきた。

 か、かわいい……。

「わかったよ」

「ありがとうございます」

 俺はハンバーグを一口大に切り、フォークを刺す。

 そして、秋奈の口に持っていく。

「ほれ、口を開けろ」

「あーん……」

 秋奈の口にハンバーグを入れる。

 フォークを秋奈の口から出す。

 秋奈は嬉しそうに顔を赤くしながら、もぐもぐしている。

 多分、俺も顔が赤くなっている気がする。

 秋奈がハンバーグを飲み込んだようだ。

「美味しいです。 先輩が食べさせてくれたからですね。 きっと」

「……恥ずかしいことを言うなよ」

「ほら、先輩も口を開けてください」

 秋奈はパスタをフォークにくるくる巻いて、俺の口元に差し出してくる。

「俺はいいよ」

「駄目です」

 何故か知らないが、押しが強いぞ。

「わかったよ」

 諦めることにした。 恥ずかしいが嫌なことではないしな。

「あーん……」

 俺は無言で口を開けた。

 秋奈は当然俺の口にパスタを入れる。

「美味しいですか?」

 口に物を入れたまましゃべるわけにもいかないので咀嚼し飲み込む。

「……うまいよ」

「そうですか。 よかったです」

 さっきと同じように俺に笑みを向ける。


 俺たちが今やっていたことを誰かがやっていたら、心の中でなんだよこのバカップル共! って思うのに……なんでこんなことをしてるんだろ。 ……めっちゃ嬉しいんだけどさ。


 その後は意外と普通に食べ進めていた。 恥ずかしさ故の気まずい雰囲気もなくなっており、静かだけどいい雰囲気の夕食になった。


「「ごちそうさま」」

 また、図らずも言葉がかぶった。

けど、今度は……

「っふ、あははは」「ックス」

二人で笑っていた。

ほかのお客さんに変な目で見られただろうから、人が少ない方でよかった。

……良くはないけど。


しばらくして、店員さんが食器を下げに来た。

 下げてもらったあとは、少し真面目な話をすることにした。

「さて、明日はどうする?」

「どうするって、明日は神宮寺先輩のところに行く以外になんの選択肢があるんですか?」

「社長は特に何も言ってないけど、清真のことも考えると危険が多そうだからな。 俺は秋奈には付いてきて欲しくないと思ってるんだ」

「社長がダメと言うかもしれませんよ」

「言えばわかってくれる。 あの人は嫌がらせが好きだけど、本当に嫌なことはしないよ」

「……そうですか。 先輩は行くんですか?」

「そうだな。 光士は俺の数少ない友人だ。 放っておくわけにもいかない」

「……先輩にとって自分の命の次に大切なものってなんですか?」

「急に何だよ? ……そうだな、なんだろうな? 思いつかないや」

「それじゃあ、言い方を変えます。 私と神宮寺先輩、どっちが大切ですか?」

 ……嫉妬なのか? それとも別の何かか?

 何と答えていいのか迷うな。

 自分の彼女に嘘を言うわけにはいかないし、素直に答えるとしよう。

「正直な話、どちらが大切かと言われると、どちらも、としか言えない。 俺はまだまだ秋奈とも光士ともそれほど付き合いが長いわけじゃない。 けど、二人共大切な人だ。 俺にはどちらかを選ぶことはできない」

「そうですか、わかりました」

「何を納得したかは知らないけど、どうして自分と光士を比べるんだよ。 同性で比べろよ。 光士に嫉妬しているのか?」

 茶化すように言ってやった。

「ち、違いますよ! ただ、先輩が私より神宮寺先輩を優先しているような気がしただけです」

「それって、やっぱり嫉妬じゃあ……」

「違います!」

「安心しろ。 俺が一番好きなのは秋奈だから」

 秋奈は下を向き顔を赤くしていた。

 我ながらベタでくさい台詞だと思ったが、顔を真っ赤にして恥じらう秋奈を見れるなら悪くない。

「……先輩はずるいです。 そんなこと言われたら、信じるしかないじゃないですか」

「あぁ、信じておけ。 俺は秋奈が好きだ。 その真実だけは絶対に覆らないから」

 また、我ながら恥ずかしい台詞を言ってしまった。

 しかし、秋奈が照れながら笑い、嬉しそうにしているところを見ると恥ずかしい台詞も悪くないと思えてくる。

 その後、秋奈を家まで送ったあと、抱き合い別れを惜しみ俺も家へと帰った。



 翌日、朝早くに社長から電話がかかってきた。

 曰く「さっさとグラウンドに来い」だそうだ。

 おそらく、学校のグラウンドに飛行機かロケットを置いたのだろう。

 ほぼ起き抜けではあったが、さっさと支度して行くことにした。


 グラウンドには、既にみんな集まっていた。 そして、予想通りそこにはロケット……と形容したほうがいいと思われる横長の物体があった。

「お、ようやくきたわね」

「これが突入用のロケットか?」

「そうよ。 ちなみに四人までしか乗れないから」

「どうしてだ? いつもなら全員で突っ込むことを考えると思ったんだけど」

「今回ばかりは命の保証ができないからね。 向こうに行く人数を強制的に減らそうと思ったのよ。 で、乗るのは二人は既に決まっているわ。 私と……」

 ロケットの入口と思われる側面の部分が開くとそこには清真が縛られていた。

「有馬清真君よ」

「明らかに無理やり押し込んでいる感じなんだが」

「私がいないとどうしようもないのと同様に彼がいないとどうしても困るのよ。 だから、みんなで二人選んでね」



 社長と清真を除いてみんなで集まった。

「それでどうするんだ?」

「希望者を取ればいいんじゃない?」

 と美春。

「それでいいと思うよ」

「私もそれでいいです」

「異存はありません」

「俺もそれでいいと思うぞ」

「そうか。 それじゃあ、光士のところへ乗り込みたい人。 手を挙げてくれ」

 そうして、手を挙げたのは俺と舞香と海人だった。

「三人か……。 てっきり全員行きたがっていると思ってたんだが……」

「薄情って思うかもしれないけど、社長に命の保証はできないって言われて、飛び込むほどの勇気はないわよ」

「右に同じです」

 それは確かに仕方のないことではあるな。

「私は先輩が行かないほうがいいって言ったから……」

 確かにそれは言ったな……。

「海人と舞香の方の理由を教えてくれないか?」

「俺は現状がよくわからないけど、光士が何かあっているのなら助けたい。 それに、何か楽しそうだ」

 ……不謹慎な奴だな。

「私は光士様が大切だからです。 それ以外に理由はありません」

 舞香は相変わらずというか、何というか……

「そういう、白城さんはどうなんですか?」

「友達が道を踏み外そうとしているかもしれないのにそれを助けない友達がいるか?」

「いると思います」

 …………反語ぇ

「とにかく、光士は俺の数少ない友人だ。 光士のために行動しなきゃ、光士のダチとは言えねぇ」

「わかりました。 それで、誰が行くことになるんですか?」

「ここは公平にじゃんけんといくか?」

「別に構いません」

「俺もそれでいいぞ」

 というわけで、じゃんけんをした結果、俺と舞香が行くことになった。

 海人が少し不満げだったが、そこまで気にしている様子でもなかったから気にかける必要はないだろう。

 舞香はといえば、落ち着いているようでいて、何か急いているようにも見える。

 それだけ、光士のことが心配なのだろう。


 光士の所へ乗り込むメンバーが決まったので社長の傍に向かう。

「ようやく決まったようね。 さっさと乗って」

 車のような構造になっている中に座る。

「みんなシートベルトは付けなさい。 衝撃も結構来るだろうから備ええてね」

 社長に言われた通りにシートベルトを装着する。

 清真の方は既にガチガチに壁に貼り付けられていた。

「大丈夫かよ……」

 と言ったものの、口も塞がれていたのでしゃべれそうにもなかった。

「行くわよ~!」

 だんだんと傾いていきロケットの先が上に向く。

 大体45度くらい傾いたあたりで止まり、わずかに横にスライドしたような感覚があった。

「発射ッ!」

 急激に発進したロケットは当然、とんでもないGを発生させた。

 感じたこともない圧迫感に辛くなる。

 しかし、その状況からはすぐに解放されることになった。

 ――――壁に激突する衝撃と共に

 


 俺はロケットを這いずるように出た。

 社長は何事もなかったように悠然に降りていたが

「なんだったんだよ! あの衝撃は!?」

 社長のもとに駆け寄りながら文句を言ってやった。

「城に突っ込んだだけよ」

「下手したら死ぬぞ!」

「それはないわ。 計算してこうなったんだもの」

「わざとなのかよ!?」

「あれぐらいじゃないと飛んでるって感じがしないでしょ」

 某マッドサイエンティストのようなことを言いやがって……

「それに、さっさと光士君に会いたいとも思ってたからね」

「それはどうも。 いつまで茶番を続ける気かとちょっと心配になりましたよ。 しかし、僕に会いたがってくれたというのはとても光栄なことです」

 ロケットが突っ込んだ場所は玉座の間。 光士の居るところだった。

 ピンポイントで狙っていたんだろうな。 さすが社長というところか。

「まるで王様……いや、神にでもなったようだな」

 玉座に座る姿は正しく偉そうな態度であり背中から生えている翼が威厳があるような雰囲気を出していた。

「なったようではなく、なったんですよ。 全てはイーヴィと結ばれるためです」

 社長のことを呼び捨てで呼ぶようになるとはな……

「光士様!」

 舞香がロケットから降りていたようでロケットのそばに居た。

「あぁ、舞香さんですか。 どうしました?」

「私は光士様をお慕い申しておりました。 だから、あなたのそばに置いてください!」

「嫌です」

「……!」

「僕が傍にいて欲しいと思うのはイーヴィだけです。 彼女以外はいらない。 舞花さん、はっきり言ってあなたはうざいだけでいらないんですよ」

 舞香は光士の言葉にショックを受け膝をつく。

 幼い恋心は微塵に砕かれ、どうしようもないのだろう。

「嘘よ。 光士様が私にそんなひどいこというわけがない……」

「現実逃避しているところ悪いですが、紛れもない真実です」

 僅かな期待すらも砕かれた舞香は涙を流していた。

「……一体、どうすれば光士様の傍に居られますか………?」

「そうですね。 白城さんとそのロケットの中にいる有馬さんを殺してくれれば、考えなくもないです」

 とんでもない事を吐かしやがった。

「おい! お前は何言ってんだよ!」

「わかりました……」

 舞香はどこから取り出したのか……幼い少女には似つかわしくないナイフを握りしめていた。

「うわぁあああああああ!」

 そして、叫びながら俺に突っ込んできた。

 俺は一体どうしたらいいんだ!?

「あっ……」

 そう迷っていたら、糸の切れた人形のように舞香は倒れた。

「何が起きたんだ?」

 近づいて舞香の安否を確認しておく。 幸い手から落としたナイフは舞香の体のどこにも傷をつけていなかったようだ。

「なんとなく予想できていたから、舞花ちゃんには睡眠針を仕込んでおいたのよ」

 この人は相変わらず万能すぎるな。

「さすがはイーヴィ。 僕の愛しい人」

「……あなたをそんな下衆に育てた覚えはないんだけどなぁ」

「僕はあなたと共にいるためならなんでもしますよ」

「はぁ……あの人もこうなるとは思わなかったでしょうね」

 社長は何か呟いていた。

 あの人って誰だ? 今何に関係があるんだ?

「さぁ、僕と共に永遠を過ごしましょう!」

「……正直、戦う前からあなたを止める程の力が私にないことはわかっているわ。 既にあなたの存在はテレビとネットを通して多くの人があなたを知っているだろうからね」

「それなら、僕と……」

「それでも、あなたを許すわけにはいかない。 あなたがそうしているだけで、世界にどんな影響を与えるかどうかわからないからね」

「それは、僕と戦うということですか?」

「いいえ、あなたと戦う方が危険だからそんなことはしないわ。 さっきも言ったとおり、勝てそうにないし、それこそ世界が崩壊しかねない。 あなたに行うこと。 それは、真実を語ることよ」

「……真実、ですか?」

「最初に言っておくわ。 私には好きな人がいる」

 とんでもない真実にこの場にいる全員が沈黙する。

 最初に口を開いたのは光士だった。

「……それは誰ですか? 僕が葬り去ります」

「無理よ。 だって既に故人だもの」

「ならば、あなたから記憶もしくは存在しなかったことにすれば……!」

「それらもダメね。 その人はあなたの祖先だからそんなことをすればあなた自身もなかったことになるわ」

 さらっと、またとんでもないことを言い出した。

「昔、話したかもしれないけどその人のおかげで私は生き延びることができたの。 そして、彼は私が好きだったし、私も好きだった。 今も好きだけどね」

「それと今! 何の関係があるんですか!」

「今までの話でも十分関係はあるし、まだ話は終わっていないわ。 彼は死ぬ間際、自分の子孫たちに呪いをかけたわ」

 呪い?

「子孫が私を守るように私を必ず好きになる呪い」

「……それはつまり、その呪いのせいでイーヴィを好きになったということですか?」

「そうね」

「馬鹿馬鹿しい! 呪いなんてものあるわけがないじゃないですか!」

「……それは、私の否定にもなりかねないわ。 それに、あなたたちの血族は誰もが私を好きだと言った。 私のために働き、私のために体を差し出し、時には私のために命も落とした。 それが二千年以上も続いているの。 それでもあなたは呪いを否定できるかしら」

「嘘だ! 嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!」

 光士は駄々をこねる子供のように荒れていた。

「これまでの真実から言いたいことはふたつ。 一つは私はあなたの祖先である彼以外を愛することはない。 もう一つはあなたの私を好きだという感情は呪いによるものだからよ」

「……僕は昔も今もあなたが好きだ。 僕にはそれが全てだ。 それが呪いによるものだというなら、僕は何を頼りに生きていけばいいんですか」

「私が答えることはできないわ。 ただ、あなたへの――あなたたち血族への労いと感謝を込めて、呪いを解くことはできるわ」

「それは、あなたを好きでなくなるということですか?」

「それはわからないわ。 あなたがこれからどうしていきたいのかはあなた自身が決めること。 もう私に縛られる必要はないの」

「でも!」

「呪いを解いても私が好きだというなら止めはしないわ。 ただ、私を好きだったあなたに感謝を、私の予想を超えたあなたの愛に敬意を評して、ご褒美をあげるわ」

 社長は光士の頬に両手を添え、その後、腕を光士の背中に回し――キスをした。

 キスをしていると認識した直後、俺は社長に背を向けておいた。 ただ単に恥ずかしいのもあるが、二人を邪魔するわけにもいかないと思ったからだ。

 

 

 あまりにも長いキスをしているようなので、チラ見しながら確認して、終わったと確認したら、光士は倒れていた。

「あなた、わざと光士君に乗っ取られたでしょ」

 倒れている光士に社長が話しかけていた。

「なんのことだかさっぱりわからんな」

 倒れ伏したまま光士――ではなくジュストが答えていた。

「とぼけちゃって、さっさと有馬君の身体に戻ってもらうわよ」

「わかっている。 だが、このままでは動けん。 連れてきてくれ」

「わかったわよ」

 社長はロケットから清真を猫の首根っこ掴むように襟を持って運んだ。

「んっ……!んんんー……!」

 めちゃくちゃ苦しそうだ。

「ご愁傷様」

 とりあえず、同情しておいた。

 光士――ジュストの前に放り出し、拘束を解く。

「ぷはぁっ! 死ぬかと思いましたよ」

「情けない」

「ジュストまでそんなこと言うの!」

「いいからさっさとこいつの体に触れろ」

「ホント容赦ないんだから」

 清真が光士の体に触れると閃光が走った。

 そして、清真の体にジュストが戻ったようだった。

「世話をかけたな」

「そう思うなら後処理もしっかりしなさい」

「そうだな」

「後処理って何をするんだ?」

「光士君が起こした事件に関する人々の記憶の削除よ」

「後は、それらに関する証拠の削除だな」

「なかったことにするのか?」

「安心しなさい。 この事件の直接的な関係者は記憶を失いはしないわ」




 その後、光士が集めたエネルギーによって光士がやったことはなかったことにされた。 光士が造った天空の城はと言えば、完全に消滅。 地面に降りる時は、これまた光士の集めた不思議エネルギーでゆっくりと降りることができた。 もちろん、人に見られないよう透明人間化して降りた。

 秋奈達に説明するのは、とても大変だった。 キスのくだりが話していて、恥ずかしかったし。

 翌日、舞香が目を覚まして説明するのはとても怖かった。 起きた直後に俺を殺そうとしてくるんじゃないかと思うぐらいの剣幕をしていたからな。 光士が元に戻ったこともありすぐに落ち着きを取り戻すことができたようだ。

 光士はと言えば、社長LOVEなのはあまり変わることはなかった。 ただ、吹っ切れていたような気がした。

 社長はいつもと変わることはなかった。 ただ最近、清真ことジュストと話しているところをよく見かけるようになった。 和解でもしたのだろうか?

 ちなみに俺は社長と光士のキスの話をしてから、時々キスをねだってくる秋奈の誘いをやんわりと避けることに必死だったりするが、それはどうでもいい話だ。

 今日もまた平和で良い日だ!

次回で最終話。

ここまで長かったような短かったような……。

他の人から比べたら圧倒的に短いと思いますけどね。

今月中には最終話を更新したいと思っています。

感想よろしくお願いします。

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