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外道屋の文化祭 後編

公開処刑回です。

そして、急展開。

反省はしている、後悔はしていない。

 文化祭 二日目

 今日は一般開放されており、たくさん人で賑わっていた。

 そんな中で動き回るのはだるいし、暑いので秋奈のクラスがやっているメイド喫茶に来ていた。

「はぁ……だるい」

「こんなところにずっといて、することないんですか?」

 秋奈が呆れたように言う。

「ないな。 外でステージ見ててもいいが暑いし、つまらん」

「昨日はカラオケで楽しんでいたのにですか?」

「……聞いていたのか?」

「校舎のすぐそばのステージであれだけの音量で流れてれば何もしなくても聞こえますよ」

「なるほど」

「今日もカラオケあるみたいですけど、歌わないんですか?」

「暇だしな、歌うかもしれん」

「私から言ったことですけど、だるいって言ってたのに歌うんですか?」

「カラオケは別体力だ」

「先輩……面白くないです」

「うるせ」

 ちょっと自信あったんだけどな……。 別に笑いをとろうと思ったわけではないけど。

「とりあえず、外行ってくる」

 俺は椅子から立ち上がる

「暑いから嫌だったんじゃないんですか?」

「長いこといると迷惑なんだろ? それに退屈だったしな」

 おれが廊下に出ると、秋奈がついてきた。

「何だ?」

「私も暇なので一緒に行きます」

「クラスの方はいいのか? それに、お前その格好のまま行くのか?」

 秋奈はクラスの出し物のメイド服のままだった。

「宣伝にもなるし、仕事はもう自分のシフトは終えたから別にいいんですよ」

「そうかい」



 俺たちは、小ステージまで行き観覧席に座った。

 昨日と変わらず相変わらずハイテンションな司会者だ。 人は昨日と違うようだがテンションが同じぐらい高い。 正直、昨日のことを思い出してイライラする。

「先輩、どうしました?」

「いや、昨日のことを思い出して、ちょっとイライラしてただけだ」

「……昨日何があったんですか?」

「昨日、司会者してたやつが俺のこと知ってたみたいで、カラオケ歌うとき勝手に曲決めやがったんだ」

「それで歌ったんですか?」

「そうだけど?」

「それ司会者さんはひどいですけど、先輩は変わってますね」

「かもしれない。 だが、とにかく腹が立つ」

 目の前では、早食い競争が終わっていた

「おや、どうやら時間が空いてしまったようです。 誰か、カラオケとかする人いませんか?」

 ステージでは次にやる、叩いてかぶってジャンケンポンをやる人が全然集まっていないらしく時間が空いたようだ。

「先輩、歌ってきたらどうですか?」

「……仕方ない」

 俺は立ち上がりステージに向かう。

「おっと、あなたは昨日もここで歌いましたよね」

「そうだけど、ダメなのか?」

「いえ、全然そんなことはありませんよ。 それでは、自己紹介と歌いたい曲をどうぞ」

 司会者は俺にマイクを渡す。

 昨日よりはだいぶマシな奴なようだ。

「三年の白城勇人です。 歌う曲はDE⭕Nの夢⭕あるようにです」

 周りが騒がしくなる。

 指笛を拭いたり、「ヒューヒュー」言う奴。そして、前奏が流れると静かになる。

 この瞬間がとても好きだ。



「きっと、ふたりの 出逢いも 遠い日の奇跡だったから」

 歌い終わり、マイクを下ろす。

 すると、歓声が沸き起こる。 曲が流れる直前のようになる。 いや、それよりも大きな歓声。 昨日も同じような感じではあったけど、昨日と違って今はとても気分がいい。

「ありがとうございました」

 昨日と同じようにクラスの宣伝をして、昨日とは違いゆっくりと秋奈の隣の席に座る。

「今日初めてじっくり聴きましたけど、驚きました。 うまいんですね」

「そうか?」

「はい。 とってもよかったです」

 気のせいか、周りの歓声よりも秋奈の言葉の方が何故か嬉しいような気がした。

 そして、何故か秋奈の方を見ていられず、顔をそらした。

「どうしたんですか? 先輩」

「いや、なんでもない」

 なんで、こんなに恥ずかしいんだ。 あの大衆の面前で歌ってる時より、秋奈はメイド服なんて俺より恥ずかしいことをしているのに、なんでこんな気持ちになるんだ。

 秋奈はおそらく俺のことを憎からず思っているだろう。 ならば、俺の方は……?

 俺は秋奈のことは嫌いではない。 だが、好きと言ったらどうだろう? 人間として、異性として……わからない。 考えてみれば今まで一度もそんなことを思ったことがないからな。

「先輩? 先輩、どうしたんですか? 具合でも悪いんですか?」

「別になんでもない」

 顔をそらしたまま答える。

「……そうですか」

 秋奈の声のトーンが明らかに下がっていた。

 そして、ふと気づくと周りの視線が集まっており、それもかなり殺意のあるものに感じた。

「秋奈、ちょっとここを離れるぞ」

 俺は秋奈の手を握り、早歩きで移動する。

「ちょっ、ちょっと先輩!?」

 俺は人気の少ない体育館の裏まで来た。

 体育館からは吹奏楽部の演奏が聞こえてくる。

「急になんですか?」

「いや、特に何もないんだが、周りの視線がきつくて耐え切れなかった」

「そんなに視線が集まってました?」

「あぁ、なんか殺意がこもってた気がしたぜ」

「何故、そんな視線が……?」

「そりゃ、お前、ミスコンの優勝を取れるような美少女が冴えない男と一緒にいたら、その男に殺意を向けてくる奴もいるだろうよ」

「私がまだ優勝すると決まったわけじゃないんですけど」

「秋奈なら優勝するだろ」

「……! それって、どう言う意味ですか?」

「別に深い意味はない」

「……そうですか」

 また、秋奈の声のトーンが下がった。 落ち込んでいるのか? 俺の言葉に……。

 俺は秋奈に背を向ける。

「深い意味はないが…………秋奈が一番綺麗だと思うぞ」

 自分でも顔が赤くなっているのがわかるぐらい熱い。 この顔は見られたくない。

「! ありがとうございます!」

 秋奈の声のトーンが上がり、上機嫌になったようだ。

 なんだろう? とてつもなく嬉しいぞ。 俺は……秋奈のことが……好き、なのか?


 その後、さっきの事も有り小ステージに戻るわけにもいかず、教室の方へ向かった。

 道中、光士と美春と結良ちゃんと舞香がいた。

「みんな集まって何してるんだ?」

「たまたま海人くんと舞香さんと会ったので、一緒に文化祭を楽しもうと思いまして」

 光士が俺の質問に答えた。

「そういや、海人は?」

「ここにいますよ」

 俺の方を向いたのは小柄で髪は銀のロングで黒のゴスロリ服を着ており、わずかに化粧が施されていた。 それは美少女と形容されてもなんら差し支えない姿だった。

「海人……なのか?」

「……うん」

「お前らなぁ……俺の大事な弟分に何してくれとんねん!」

 思わずエセ関西弁になってしまった。

「落ち着きなさい、白城君。 それに、着たいって言ったのは海人君なのよ」

「本当か?」

「……嘘は言ってない」

 それにしても、海人はまだ体が発達してないせいか中性的であり、似合いすぎている。

 某中二病大学生ならこう言っただろう。……だが男だ。

「なんで、着たいなんて言ったんだ?」

「最初はここにある女装喫茶で、なんで女装するのか意味がわからないって言ったら、店員が着たらわかるかもよ。 って言ってきたんだ」

「それで着たのか?」

 その一言を言った奴、半殺しにしてやろうか……。

「いや、違うよ。 そしたら、美春姉ちゃん達が綺麗に着られたら兄ちゃんが喜ぶかもよって言うから……」

 それってつまり……

「やっぱりお前らじゃねぇか!」

「でも、海人くんから言ってきたって言うのは本当でしょ?」

「そんなもん誘導尋問みてぇなもんじゃねぇか!」

「しかし、白城さんが喜ぶかもしれないと言っただけで、ここまで行動するのは偏にあなたのことを想ってでしょう」

 でも、それじゃあまるで海人が性同一性障害かホモみたいじゃないか……

「海人、……お前は男が好きだったり、女の子のなりたいって思ったことはあるか?」

「兄ちゃん、何言ってんの? そんなことあるわけないじゃん」

 呆れたような物言いだった。

「そ、そうか……!」

 だからこそ、その言葉には真実味があり、なんかすっごい安心した。

「ところで、兄ちゃん。 これ、似合ってるかな?」

「あぁ、似合ってるな。 どっからどう見ても美少女にしか見えん」

 ……だが男だ。

「そっかぁ」

 俺の言葉に海人が微笑みを浮かべ、わずかに顔を赤くしている姿を見ると、俺は途方もない不安に駆られた。

 そして、わずかに秋奈が不機嫌になっているような気がして、寿命を削られているような思いだった。

 その後、六人で行動し、少し物理的に狭い思いをしながら文化祭を楽しんだ。


 みんなと再開してから、秋奈が終始不機嫌だったことがずっと気になった。

 そういや、今日の秋奈はなんか変だったな。 いつもみたいに俺に強く当たらないというか呆れたようなあの嫌味っぽいことをあまり言わなかったし。 それに妙にもじもじしてるときもあった。 「トイレか?」と聞いたら、ものすごく不機嫌になったから、トイレとは全く関係ないだろう。 それならば、一体なんなのか? 俺がいくら考えたところで思い当たる節は全くないので諦めることにした。

 午後3時頃をまわると美春と秋奈、結良ちゃんはミスコンの準備があるということで体育館に向かった。

「特にすることないし、俺たちも体育館に行くか?」

「そうですね」



 体育館には満員という言葉がふさわしいぐらい人が集まっていた。

 観覧席の方で、手を振っている姿がある。 ……どうやら、俺に向けて振っているらしい。

 その近くまで行くと座っているのは社長だった。

「やぁ、白城君に光士君、それに海人君と舞香ちゃんまで」

「どうして先生がここに?」

「ま、席は確保してあるからみんな座って」

 俺たちは社長の横にちょうど四つ席が空いていた。

「どうやってこの席確保したんですか?」

「ちょっとここにいた子にお願いしただけよ」

 一体何をしたんだ、この人は?

「それで、結局なんでここにいるんですか?」

「それは、あの三人がミスコンに出るのよ。 私が観戦しないわけには行かないじゃない?」

 偶然か、必然かは知らんが全員、裏生徒会メンバーだしな。

「そうですか」

 社長は俺に三枚の紙切れを渡す。

「これは?」

「光士君たちにも回して、それとこれ」

 もう一枚紙切れを受け取る。

「それが、あなた用よ。 あとでもいいから読んでね」

 社長に言われたとおり、三枚の紙切れを光士たちに回し、あとから渡された一枚の紙切れに目を通す。

『これが終わったら、何があっても屋上に来なさい。

 追伸 逃げちゃダメよ』

 逃げちゃダメ? 某ロボアニメを思い出すが、それは多分関係ない。

「先生、これってどういう意味ですか?」

「それは自分で考えなさい。 ほら、そろそろ始まるよ」

 ステージに司会者が上がる。

「レディースアンドジェントルマンッ!」

 一般の人はいるけど、ここに紳士淑女がいるのか?

「みなさん、大変長らくお待たせしました。 これよりミスコンを開始したいと思います」

 美春、秋奈、結良ちゃんの順でステージに出てくる。

 全員、クラスの出し物での衣装を着ていた。

「既に投票は終えて、集計も終わっていますが、彼女たちの紹介をしたいと思います」

 なに!? 投票は終わってたのか! ……確認しておけばよかった。

「エントリーNo.1! 四季美春! ここで一言いただきたいと思います」

 司会者は美春に近づく。

「一言どうぞ」

 そして、マイクを美春に渡した。

「みなさんのおかげで今この場にいます。 まずはそこにお礼を言いたいと思います。 ありがとうございます」

 拍手が起こる。

「四季美春さん、ありがとうございます。 続いて、エントリーNo.2! 四季秋奈!」

 美春の時と同じように「一言どうぞ」と言いマイクを秋奈に渡す。

「姉の言うこととかぶってしまいますが、私もみなさんのおかげで今この場にいます。 ありがとうございます。 それと、後で結果がどうであろうと言いたいことが一つあります。 以上です」

「言いたいことってなんでしょうね。 四季秋奈さん、ありがとうございます。 最後に、エントリーNo.3! 小井塚結良!」

 先ほどと同じようにマイクを結良ちゃんに渡す。

「え、えと。 私がこのような場に居ていいのか不安になりますけど、みなさんにえらばれたことによってこの場にいます。 その、お二人には圧倒的に見劣りすると思うんですけど本当にありがとうございました!」

「みなさん、ありがとうございました。 それでは、開票に参りたいと思います」

 プロジェクターにより画面が表示される。

「総得票数459票! そして、気になる結果は!?」

 顔写真の横に投票数が全員同時に表示される。

 そして、表示された数字は全て153――つまり、全員同数だった。

「おぉっと!? 誰がこんなことを予想できたでしょうか!? 全員153票だ!」

「ククク……」

 社長が横で静かに笑っている。

「もしかして、これは先生がやったのか?」

「なんのことかなぁ? イーヴィちゃん、わかんない」

 やっぱり、この人だ。

「こんな偶然は滅多にあることでもないですし、決着を付けるのも少し無粋な気がしてしまいますね」

 司会者がそんなことをぼやくと、秋奈が勢いよく真っ直ぐに手を挙げた。

「なんでしょうか? 四季秋奈さん」

 秋奈は司会者からマイクを受け取る。

「優勝したかったので残念です。 けど、先程も言いたいことがあると言ったので今ここで言いたいと思います。 私には好きな人がいます」

 この言葉に、周りがざわめく。 

俺は心臓の鼓動が速くなるのを感じていた。

「なので、今まで付きまとっていた人は、できれば近づかないでください。 おそらく、今回のことで投票してくれた中にいると思うんですけど、迷惑ですので」

 秋奈は冷たく言い切り、マイクをおろした。 そして、俺の心臓の鼓動も少し落ち着いた。

 次は美春が手を挙げた。

「四季美春さん、なんでしょう?」

 前に出て秋奈からマイクを受け取った。

「私は秋奈の好きな人を知っています」

「なっ!」

 秋奈は驚いていた。 そして、落ち着いていた俺の心臓が再び鼓動を速くさせた。

 一体、何を言うつもりなんだ!?

「そして、私もその人のことが好きです」

 周りがさらにざわつく。

 何を言っているんだ! あいつは!

「さらに、小井塚さんもその人のことが好きです!」

 一体、何を考えているんだ!?

「誰なんでしょうねぇ? その殺したく……もとい羨ましい人は」

 おそらく、この場の多くの人の気持ちをを代弁した司会者。 そして、その羨望の眼差しではなく殺意を向けられる人物とは……

「その人の名前は……」

「だめぇーーーーー!」

 秋奈が叫んだ。

「これは秋奈のためだ。 あいつでもこの状況なら、告白に答えざるを得ない。 それにお前も勇気を振り絞れないだろう」

 あいつというのが誰かは知らんが、そいつのことよくわかってるんだろうな……。

「それでも私は自分の口から言いたいし、この場で知られたくなんかない!」

「私は決着を付けるのにこの場がふさわしいと思ったんだ。 それに、ミスコンの決着もつけられる」

「どういうこと?」

「決着の方法は私たちの好きな人に一番を決めてもらう。 もちろん、名前を告げるのは秋奈でいい」

 美春は秋奈に詰め寄るように近づく。

「それでいいな」

「……うん」

「……声を挟んでいいのか、非常に迷う場面ですが、それでも私は言います。 四季姉妹の話し合いにより、この三名の共通の好きな方に一番を選んでもらうということで、いいですね?」

「「「はい」」」

 三人とも了承の返事をする。

「それでは、四季秋奈さん。 その好きな人を言ってください」

 一部の人間は目を閉じたり、お祈りするような様だったり、耳を塞いでいる者もいた。

 そして、俺はと言えば心臓の鼓動が周りの人に聞こえるのではないかと思うほど速くなり、秋奈から目を離せないでいた。

「私の……私たちの好きな人は――」

 その答えは知っていた。 でも、なんとなく認めたくなかった。 とても嬉しいことではあるけれど、それは自分らしくない気がして。 いい気分な反面後ろめたいような気もして。 今、彼女らの何かに漬け込んで好かれたのではないか、と自分に対して疑心暗鬼になって、否定していた。

「白城勇人先輩です」

 周りがざわついている。 「羨ましいぞ、そいつ」とか「口々に誰だ?」とか、「ほら、カラオケで歌ってたやつ」とか、「秋奈さんと一緒にいるところみたわ」とか、「俺は美春さんと一緒にいるところを見たぞ」とかそんな会話が聞こえる。

「あの~、白城勇人さん? この場にいるのでしたら、出てきてもらえますか?」

 社長が俺の背中を軽く叩く。

「ほら、呼ばれているわよ」

「逃げちゃダメってこのことですか?」

「さぁ? どうだろうね?」

 やっぱり、ごまかすか……。

 ゆっくりと立ち上がり、ステージに向かう。 

多くの人の視線が俺に集まっているのを感じた。

 それは羨望であり、嫉妬であり、怒りであり、おそらく理不尽極まりないものだ。

 理不尽であってもそれは自分に対する敵意であり、嫌な気持ちしかしないものだ。

 ステージに上がり三人の前に立つ。

 そして、この三人は恋慕の視線を俺に向ける。

 それはこの上なく喜ばしいことだ。 嬉しいことだ。 だけど、俺の自己評価は限りなく低く、なぜ好かれたのか理由がわからない。 そんなものに理由はないという人もいるのだろうけど、そんなことは自分にはわからない。 ただ、ただ、喜怒哀楽様々な感情が入り混じり、混乱していた。

「それでは白城さん。 誰が一番か口頭で言ってください。 恥ずかしければここに書いて私が代弁しますが、それは流石に情けないでしょう?」

「わかっている。 既に決めてはいるんだ」

 そう、決めてはいる。 この一番というのは実質誰が好きか言っているのと同然。

 この中から選べないとか、彼女がいると嘘を言ったりして否定すれば、ここの三人どころか多くの人間の反感を買うことになる。

 かと言って、誰かを選べば、それもまた多くの人から反感を買いそうだ。

 ……本当に恨むぞ、美春と社長め。

 誰が好きかなんて今日、自覚したばかりだが、言わなければならない状況なのだろう。

「決まっているのでしたら、どうぞ」

 司会者は俺にマイクを渡す。

「俺の好きな人は――」

 やべ、好きな人って言わずに、一番綺麗な人といっておけば言い訳出来たかもしれないのに! 今更、思いつくなよ! 俺の馬鹿野郎! だがもはや、それはたらればだ。 諦めよう。

 ……俺は呼吸を整えた。

「四季秋奈だ」

 まるで、時が止まったかのような錯覚を覚える。

 でも、それはたった数秒でしかなかった。

「先輩っ!」

 秋奈が俺に飛びついてきた。

「嬉しいです! 私を選んでくれて。 ……グスッ」

 涙を貯めて鼻声になっていた。

 美春は笑顔で、結良ちゃんも寂しそうではあったが笑顔を浮かべていた。

「ほら、先輩。 私を選んだんですから、私のことだけを見てください」

 そう言って、俺のことを抱きしめてきた。

 あまり感じることのない、人の温もり。 それが、俺に彼女ができたという非現実的な出来事に現実感を与えていた。

 周りは大歓声である。 「ヒューヒュー」だの、指笛だの、人の数は違えど俺がカラオケを歌ったあとと大差ない。 ただ、そこまで後ろ向きに考える必要はないぐらい受け入れてくれる人は多かったようだ。

 ただ、俺の言葉に喜んでくれる彼女と思ったよりも歓迎ムードのこの状況に、今まで感じたことがないほどの喜びがこみ上げるのを感じていた。



 ふと、観客席の方を見ると社長がまるで別の世界にいるように感じた。 社長がまるでこの世界からはじき出された異物のように……だけど、誰もそのことを気にしていない。 まるで、そのへんの石ころのように。 そして、体育館の外に出て行った。

「先輩?」

『ピーンポーンパーンポーン』

 唐突に流れてきた音は校内放送の前に流れる音声だった。

『全員、グラウンドに出ろ』

 それは、加工音声なのか電子音声なのかは知らないが、人の声ではなかった。

『さもなければ……』

パァーン! と銃の発砲音が響き渡った。 数秒すると

「うわああぁぁぁ!」

 と男子生徒の悲鳴が上がった。

『速くグラウンドに出ろ。 さもなければ、今度は頭をぶち抜く』

 そして、その男子生徒から恐怖は伝染し次々に悲鳴が上がり混乱状態に陥った。

 そのために我先にと、外に出ようと扉に多くの人が詰まっていた。

 彼女ができたという余韻に浸ることもできず、体育館は大パニック状態だった。

「先輩!」

 俺を頼りにしたのか、秋奈が俺の名を呼ぶ。 彼氏として情けないが、何も思い浮かばない。 いや、待てよ? 社長に渡された紙には――。

「秋奈! それに美春と結良ちゃん! 屋上に行くぞ!」

「先輩、それで大丈夫なんですか?」

「大丈夫だ。 俺……というか社長を信じろ!」

「なんで、ここで社長が出てくるんですか!?」

「知らん。 多分、屋上なら安全だ」

「けど、どうやって、外に出るんだ? 出入口は人で全て塞がってるぞ」

 美春が至極当たり前なことを言う。

「みなさん、こっちです!」

 海人と舞香を連れた、光士がこちらに来た。

 ここにいるみんなは光士に従い、体育館の倉庫に来た。

「なんでこんなところにきたの?」

「ここには社長の作った隠し通路があるんです」

 光士の言うとおり、そこにはうまくカモフラージュされた扉があった。

 そこを通ると体育館裏に出た。

「みなさん、社長は誰にも気づかれずに屋上に来いと言っていました。 ですので、気をつけてください」

 光士の言うとおりに、気づかれぬよう、足音を立てないように移動した。

 昇降口に入り、光士によれば「ここからは大丈夫でしょう」ということなので、屋上まで走った。

 そして、屋上に居たのは社長と――有馬清真だった。

「ようやく、到着? 待ちくたびれたわ」

「何故、我が付き合って待たねばならなかったのだ?」

「別にいいでしょ」

 その二人は仇同士でありながら、旧知のとものようでもあった。

「何やってんだよ、社長?」

 わずかに上ずった声になってしまう。

「これから決着つけるのよ。 あなたたちにはその証人になってもらうのよ」

「しかし、貴様はなぜこのような回りくどいことをする?」

「風紀委員っていうザコ敵蹴を散らして、ボスにたどり着くのもいいけど、悪がするのなら、やっぱりボスになりたいじゃない?」

「それは、自分が倒されに待っていたともとれるぞ」

「そんなわけないじゃない。 それに、ボス戦には負けイベントっていうのもあるのよ」

 二人のあいだには火花が散っているような錯覚を覚えた。

 もはや、二人を止める術などありはしないのだろう。

 誰も口を出せず、この中の誰ひとりとして知らない、悠久からの戦いが今ここに再び始まろうとしていた。

もう少し伸ばしても良かったんですけど、切りがいいので途中で分けることにしました。引きとしても十分なところだったと思いますし……。


次話、バトル回です。初めて書く上に唐突ですみません。この小説はお試しと練習を兼ねて書いていますので、こうなりました。もちろん、面白くなるよう精一杯努力はしています。

もう話も残り少ないので、是非最後まで読んでください。

そして、感想ください。

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