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外道屋のサバイバル その3

これで視点変更する話は終わりです。

良かったのでしょうか、悪かったのでしょうか。

どちらであれ、反省はしている後悔はしていない。

SIDE 白城勇人 三日目

 お、重い……。 なんだ、この感覚は?

 誰かが俺に乗っかっているのか? だとしたら、海人か?

 確かめるように、目を閉じたまま自分の上に乗っている何かに触れる。

 自分の胸のあたりを触ると、髪のような感触がある。

 やっぱり海人か? けど、この髪すげぇサラサラだ。 それに長い……長い!?

 その事実を確認すると目が覚めた。

 そして、自分の上に乗っかっているのは秋奈だとわかった。

 なんで、こんなことになってるんだ? 確か、昨日はベッドで寝て……そのままだ。

 秋奈は俺に気にせずベッドに入ったのか? というか、考える前に秋奈をどかそう。

 バレないように、そーっと、そーっと。

「兄ちゃん?」

 横を見ると目をこすりながら、起きている海人の姿があった。

「か、海人、起きてたのか?」

「うん。 でも、兄ちゃん。 なんで、秋奈姉ちゃんが上に乗っかってるの?」

「俺もよくわからないが、とりあえず起こさないようにどかしたい。 協力してくれ」

「いいけど、その必要はないんじゃない?」

「どうしてだ?」

「だって、起きてるよ」

「え?」

 自分の胸元の方を見ると、秋奈が少し起き上がっていた。

「あ、秋奈?」

「……こ、これは別に私が寝る時、先輩を起こすのがかわいそうだな~と思ったからとか、先輩の傍が安心するな~とか、別にそんなんじゃないですからね!」

「そんなことを赤面しながら、言われても……」

 自分の発言に、まずいことがあったのに気づいたのか、秋奈は慌てる。

「い、今のはなし! 私、何も言ってませんから! 忘れてください!」

「うん。 わかった。 わかったからどいてくれ」

「す、すいません」

 前から薄々はわかっていたけど、鈍感な俺でも秋奈が俺に好意でないにしても、それに近いものを持っていることがわかる。 気まずくなるのも嫌だから、気づいてないことにするけどな。

 

 飯を食べたあと、部屋の奥へと進むと最後の間と書かれた扉があった。

「もしかし、ここをクリアすればこの島ともおさらばか?」

「そうかもしれないですね。 私もすぐにでもこの島から出たいです」

「俺は結構楽しかったから、みんなとこの島に一緒に居たいんだけどな~」

「「それは嫌だ」」

 俺と秋奈の発言がかぶる。

「え~。 ……それにしても兄ちゃん達なんか仲良くなった?」

「そうか?」「そうかな?」

「ほら、またハモったし」

 指摘されるとすごく恥ずかしいな。

「そんなことはないから! 海人君早く行こうっ」

「そうだな。 さっさとこの島から出たいしな」

 俺と秋奈は必死に海人の問答を避け、次の部屋に入ろうとしていた。

 そして、扉を開き中に入るとそこは通路だった。

 奥に進み、全員がこの通路に入ると、扉が閉まった。

「何だ!?」

 『ザザーッ』と昨日のようにノイズが聞こえる。

『ちょっと調整中だから、待ってて…………。 それでは、改めまして、ラストステージ最後の間ことセパレイトメイズにようこそ!』

「セパレイトメイズ?」

『この場所と今の語感で分かったと思うけど、ここは迷路よ。 けど、ただの迷路じゃ面白くないでしょ? それでね……実はこの部屋に裏生徒会メンバー全員が揃ってます!』

「あいつらもいるのか!?」「お姉ちゃんは大丈夫!?」「おぉ、すげぇ!」

 社長の言葉に俺たちは三者三様の反応をする。

『同時に質問されても返せないよ。 ただ、この部屋で全員揃えてこの部屋の中心まで行けば、ゲームクリア……この島から出る権利を貰えるわ』

「ルールは?」

『……ふふ』

 なんで笑った?

『ここでのルールは簡単よ。全員が所定の位置につくとスタート。 この部屋の中にはいくつかスイッチがあって、それを押すとどこかの壁が開いてどこかの道が塞がるわ。 けど、どこかしら押さなければ絶対にクリアすることはできないようになってるから。 ここのクリア条件は全員揃ってこの部屋の中心にたどり着くこと。 それじゃあ、皆すぐその床に書いてある円形のマークにそれぞれ立って』

 俺たちは言われたとおり、三箇所にそれぞれ一人づつ立った。

『皆、円形の枠に入ったわね。 それじゃあ、スタート!』

「きゃぁぁぁぁあああ」「うわぁぁぁぁぁああ」

 社長のスタートという掛け声とともに、秋奈と海人は地面に消えていった。

「海人! 秋奈! おい、どういうことだよ!」

『このゲーム中は質疑応答しませんのであしからず。 あ、言い忘れたけど仕掛けもいろいろあるから気をつけてね。 それじゃ、頑張ってねぇ』

ブツッ

 電話を切る時のような音が聞こえ、それ以降社長はしゃべりそうにもなかった。

「仕方ない。 適当に探すか……」

 急いでも仕方がない。 そのうち、誰かと合流するだろう。

 曲がり角すらない道をただまっすぐ、ゆっくりと歩いていると壁が見えた。 どうやら、T字路になっているようだ。 

右にしようか、左にしようか道の真ん中で考えていると横から人が来た。

「ちっ、白城さんでしたか」

 思いっきり舌打ちをした少女、その正体は舞花だった。

「いきなり舌打ちかよ」

「すみません。 つい本音が」

「まぁいいよ。 三日ぶりだな。 今まで大丈夫だったか?」

 俺はそう言って、舞花の頭を撫でようとすると振り払われた。

「気安く触ろうとしないでください」

「すまない。 嫌だったか?」

「はい。 嫌です」

「はっきり言うなぁ。 海人は嬉しそうにするんだけどな」

「それは、海人があなたのことを気に入っているからでしょう。 私は嫌いです」

「なかなか傷つくこと言うな。 ま、おおよそ光士と二人きりなりたかったってところか」

「な、何故、それを!?」

「むしろ、なぜバレないと思った。 舞花はいつもそれしか考えてないだろう?」

「た、確かに」

 否定しないのかよ。

「最初にあったのが俺だからって腐るなよ。 光士と二人きりなる機会ならいつか見つかるさ」

「……仕方ないですね。 この場は白城さんと一緒にこの迷路を攻略することにします」

「あぁ、わかったよ。 光士に比べたら頼りないかもしれないが、頼ってくれよ」

 俺は舞花と合流し、舞花が来た反対方向へと足を進めた。

 ずっと歩いているとスイッチがいたるところにあるのがわかる。 スイッチを押すのは少なくとも回れるところをすべてまわってからにするつもりだが。 とにかく今はしらみつぶしにまわるしかない。

 しばらく歩いて、奥のほうから見えたのは美春だった。

「おう、四季じゃないか」

「白城君。 なんだか久しぶりね」

「そうだな。 それだけ、このサバイバルが大変だったということなんじゃないか?」

「そうかもね」

「……また光士様じゃない」

 恨み言でも言うかのように舞花は何かつぶやいている。

「また会ったわね、舞花ちゃん」

「はい、そうですね。 早く先に進みましょう」

「そうね」

 早くも二人と合流し、残り四人を探す。

 三人になって、また歩き始めるとすぐに声が聞こえた。

「なんか聞こえないか?」

「気のせいじゃないですか?」

「いえ、女の子の声みたいだわ」

 だんだんと助けてという声が近づいてくる。

 そして、奥の方からやってきたのは結良ちゃんと……大きな球体の岩だった。

「助けてくださ~い!!」

「これって、俺らもやばいんじゃ……!」

「逃げるしかないわね」

「そうですね。 激しく同意します!」

 俺たちは結良ちゃんと一緒になって、走って逃げた。

「どうしてこんなことに!?」

「ごめんなさ~い!」

「喋らないでさっさと曲がって逃げなきゃ!」

「もう少しで横道があります。 そこに逃げましょう!」

 なんとかギリギリで全員が岩を避けることができた。

「あ、あぶねぇ~」

「本当にごめんなさい」

「どうしてこんなことになったの? 結良ちゃん」

「私も聞きたいです。 どうしてこんな目にあわなくちゃならなかったのか」

「あの、実は歩いてる途中に転んでしまって、それでなにか押してしてしまったみたいで、そしたら後ろからあの岩が……」

 なんという、ドジっ子!

 結良ちゃんが疲れたのか壁に手をつく。

「そこに手を付けちゃダメ!」

結良ちゃんの手の先にはスイッチと思われる突起物があった

「え?」

そして『カチッ』と、そんな音が聞こえた。

「何も起こらないな」

「ご、ごめんなさい!」

「こっちでは何も起こらないということは向こうで何かあったかもな」

 つい、思ったことが口をついて出る。

「つまりここにいない誰かが被害を被った可能性があるわ」

 結良ちゃんは泣きそうな顔をしている。

「だ、大丈夫だよ。 とにかく、ゴールを目指そう?」

 俺は必死に結良ちゃんをフォローする。

「はい、すみません」

「この人、狙ってやっていませんよね?」

「わ、わざとじゃ……」

「こら、舞花! そんなことを言うな!」

「ですが、小井塚さんのせいで危機的状況になったのは間違いないんですよ」

「ご、ごめんなさい」

 高校一年生が小学三年生に謝っている構図なのに違和感がない。 というか、舞花が結良ちゃんの可愛さにたじたじになっているみたいだ。 しかし、小学三年生より高校一年生の方が可愛らしいとはどういうことだ。

「も、もういいですよ。 謝らないでください」

「はい。 わかりました……」

「それじゃあ、先に行くか」

 騒ぎも一段落したところで、先に進む。

 しばらく進むとゴールの文字が見えた。

「あれ、もうゴールか?」

 みんなもそう思っているようだ。

「何があるかわからないし、慎重にね」

 そして、ゴールの文字が目前まできたあたりで、シャッターが降りるように壁が降りてきた。

「そううまくはいかないか……」

「そうみたいね」

「でも、ここに何か書いてありますよ」

そこには『この扉は軽くデコピンする程度の威力でも壊れる。 ただし、前後から全く同時に衝撃を与えなければ壊れない』と書いてあった。

「向こう側に協力者がいないとここから先は進めないわけか……」

 光士か秋奈か海人がいればクリアできるわけだ。

 とりあえず、呼んでみよう。

「おーい! そっちに誰かいないか!?」

 返事は返ってこない。

「どうする? ここで二手に分かれる?」

「いや、待機しよう。 分かれて、またここまで来れるとは限らない」

「そうね」

 しばらく経つと向こう側から声が聞こえる。

『やった。 ゴールですよ』

『もう終わりかー』

『まだ全員揃ってないのでゴールできませんよ』

『そうでしたね。 あれ、向こうに文字の書いてある壁がありますよ』

「そっちに誰かいるのか!?」

『その声は、先輩ですか?』

「あぁ。 この壁は前後同時に衝撃を与えないと壊れないらしい。 協力してくれ」

『わかりました。 神宮寺先輩!』

 しばらく経つと、向こう側からまた声が聞こえてくる。

『大丈夫ですか?』

「光士か?」

『はい、この扉を壊すんですよね』

「あぁ、同時に衝撃を与えれば壊れるらしい」

『それでは、早速試してみますか』

「そうだな。 いっせーの、せ! でいこう」

『わかりました』

「せーの!」

『「いっせーの、せ!」』

 俺を「せ!」を言うタイミングで壁にパンチをした。

 しかし、壁は全く壊れる気配はなかった。

「ダメか」

『タイミングが合わなかったみたいですね。 どうしますか?』

「……全員でやるか?」

『え?』

『いいな! それ!』

奥から海人の声が聞こえた。

「どうする? 美春たちも」

「別に異存はないわ」

「そうですね。 拒否する理由もありません」

「私も別にいいです」

「こっちは全員賛成みたいだが、そっちはどうだ?」

『みなさん賛成のようです』

「ついでだ、掛け声も変えるか?」

『何にするんですか?』

「こんな時にいいタイミングの合わせ方があるんだ」

「へー。 どんな?」

「カツ丼、天丼、親子丼! だ」

「あなたってそんなキャラだったっけ?」

「馬鹿言うな。 これは某アニメで危機を回避した、タイミングの合わせ方だぞ」

「別にいいわよ。 そんなの」

「すいませんね」

『……いきますか?』

「あぁ」

『それでは……』

『『『「「「「カツ丼、天丼、親子丼!」」」」』』』

『丼』のタイミングで俺たちは壁にパンチする。

 少なくとも、こっちは全員同じタイミングだった。 これでどうだ?

 壁にはヒビが入り、少しづつ崩れていく。 そして、向こう側には光士と秋奈と海人がいた。

「よっしゃー!」

 俺が誰よりも最初に喜びの声を上げた。 そして、みんなはそれにつられるように喜びの声を上げる。

 そして、ゴールと書かれた向こう側から社長が現れた。

「みんなおめでとう。 さて、これでこの島から出られるわよ」

 社長の言葉に皆が喜ぶ。 俺も嬉しい。

 ようやく終わった……。 ここまですごく長かった気がするぜ。

「このゴールはエレベーターになってるからみんな乗って」

 社長に言われた通りエレベータに乗り、そして恐らく下に降りていた

「はい、到着」

 エレベーターから出ると、そこは特大のトンネルだった。

 少し奥には八台のそれぞれ色の違う単色のSFに出てくるような車が置いてあった。

 その車にはタイヤがなく、後ろにはジェットエンジンのようなパイプがついていた。

「ここは、私の持っている東京のビルの地下に直結してるわ」

 相変わらずとんでもないことしてるな

「この車は、最新鋭の車でいわゆる空飛ぶ車ね。 最高時速はおよそ1800キロでるわ」

1800キロってでたらめな数字だな、おい。

「マッハにしたらおよそ1.5ね」

 やっぱり、でたらめな数字だ。

「ってそんなの乗ったら危ねぇだろ!」

「大丈夫よ。 仮にみんながこれで全速力で正面衝突したとしても命の保障をしてあげるわ。 もちろん怪我も負わない」

 本当にそんなことが可能なのか?

「だって、そうしなかったら楽しくレーシングなんてできないじゃない?」

 全員がギョっとする。 この後に及んでまだ、ゲームをさせるのかと。

「あ、みんなやる気ないんだよね。 わかるよ、サバイバルで疲れたもんね」

 あんたがやらせたんだろ! きっとみんなこう思ってるはずだ。

「けどね、みんなをやる気にさせる魔法の言葉があるんだ」

 言葉……?

「私を抜いてゴールしたら、賞金十万円!」

 言葉じゃねぇ! いや言葉だけど、言葉じゃねぇよ!

「やらせていただきます!」

 美春は声を大にして答えた。 美春のやる気はメーターを振り切っていそうだ。

 仕方ない、やるしかないか。

 俺は灰色、社長は黒、秋奈は橙色、美春は桃色、光士は黄色、海人は赤、舞香は青の車に乗った。

「みんな、乗ったー? それじゃあ、前に信号出すから青になったらスタートね」

 社長の言うとおり、信号が出てきた。

 ま、賞金も出るわけだし、やるからには優勝を目指してやろうじゃないか。

 そして、レースは始まった。



 この車にはアクセルというものがないらしく、勝手にどんどん加速していく。

 さらに、壁面も天井も走行できるようだ。 赤が壁面に、黒が天井を走っている。

 開始数分で既にメーターは1500キロを超えていた。


 このコースは1800キロあるらしく、現在1500キロを通過していた。

 その頃になると障害物――壁が現れた。 早速、赤が――海人がぶつかっていた。 一瞬で過ぎ去ってしまったので、しっかりは確認できなかったが、特に破損している感じはなかったので多分怪我はしていないのだろう。

 社長を信頼してはいるが、本当に大丈夫かともおもっている。

 そして、俺の心配には関係なく、レースはクライマックスを迎えようとしていた。

 俺は限りなく集中力をあげ障害物をよけるのに精一杯になりつつあった。

 その前に確認した感じでは、黒と桃色が前で競り合っており、となりに黄、少し後ろに青、恐らくずっと後ろの方に赤と橙がいる。

 前のほうでは、黒と桃色が激しいと言わないまでも激突しており、徐々に減速しつつあった。 そのおかげで黒、桃、黄、灰は並んだ。

 並んだと思ったら黒は桃に強く激突し、桃はわずかに壁に激突してしまい激しくスピンした。 しかし、何故かそのまま俺の方に向かっていき俺に体当たりを仕掛けてきた。

 だが、それは妨害ではなく押し出し――加速の手伝いだった。

 一時的にスピードアップした俺は一番に躍り出た。 しかし、何故か黄も追いついてきた。

そして、ゴールラインは目前に迫っていた。

 そして、ほぼ同着でゴールした。

 機体は行き止まりの壁に激突し、強い衝撃が体を襲った。

「……!」

 声にならない悲鳴が上がる。

そして、後ろからさらにぶつかってきたようで、また衝撃が体を襲った。

周りを見渡すと八台の車が山のように積み重なっていた。

「出られんのか? これ」

「とりあえず、ワースト順に出てね」

 上と横の方から『ガタンガタン』と金属が何かにぶつかるような音が聞こえる。

 しばらくして、ようやく車の扉を開けられた。 

しかし、意外なことにこの車はとんでもなく軽かった。 その為、積み重なっていても開けることができた。

「とんでもない目にあったぜ」

「全くですね」

 光士は珍しく俺の言葉に同調しているようだ。

「で、結果はどうなったんですか?」

「超スパースロー見てみる?」

「あれを捉えられるんですか? 相変わらず、すごいですね」

「いやぁ、それほどでも。 でも、スタープ○チナ・ザ・ワー○ドでも捉えられる自信あるしね」

「それはおかしい」

「まぁ、気にしない。 ほら、見てみな」

社長がタブレットを出し映像を出す。

その映像では確かに灰色の車が先にゴールラインを割っていた。

「これって、つまり俺の優勝か!?」

「……!」

「何言ってんの?」

 勝利の余韻に浸る間もなく、社長がこんなことを言った。

 社長は何をおかしなことを言っているんだ、お前は、というような目で見ている。

 ほかのみんなも俺と同様に理解できていないようだ。

「だって、私の方が十秒は早くゴールしたわよ」

「そんなわけ……! だって、社長は俺たちの後ろの方に居たぞ!」

「この通路、ゴール前にワープゾーンと加速エリアがあってね、そこ使ったら先に着いたわ」

 本当にトンデモ科学だぜ。 しかも、せけぇ……!

 そういえば、俺たちが到着する前から外に出ていたみたいだったし、よく見れば周りに転がっている車の数が七台だし……やっぱり事実なんだろうな。

「ま、私に勝とうなんて十年は早かったわね」

 俺はしばらく呆然と立ち尽くし、言われるがまま社長の後について行き、地上に出たあとはトボトボと家に帰宅した。



SIDE 神宮寺光士 三日目

 昨日と同じように今日も早く起きる。 僕にとってはせめてもの優位点でありたい思いからそうしているような、そんな錯覚を覚える。

 奥にあった最後の間と書かれた場所を見たときは、これで終わってしまうのか……汚名返上をすることもできず、ただ無為に時を過ごしてしまうのかと、言い表せない恐怖のような不安が掻き立てられる。

「おはよう。 今日も早いわね」

 と、四季さん。

 僕はいつもどおり受け答えし、しばらくの雑談をしたあと、昨日と同じように朝食を取った。

 

 全員が最後の間に揃い、確認を取る。

「みなさん、準備はいいですか」

「はい、いつでも大丈夫です」「大丈夫よ」「は、はい!」

「では、いきますよ」

 僕は最後の間の扉を開けた。

 扉を開けた先は通路のようになっていた。

 全員がその中に入っていくと、扉が閉まる。

「え? なに? 一体なんですか?」

 小井塚さんが少し慌てている様子だ。

「大丈夫だよ」

 と、四季さんがなだめている。

 そして、『ザザーッ』と昨日のようにノイズが聞こえる。

『ちょっと調整中だから、待ってて…………。 それでは、改めまして、ラストステージ最後の間ことセパレイトメイズにようこそ!』

「セパレイトメイズ?」

『この場所と今の語感で分かったと思うけど、ここは迷路よ。 けど、ただの迷路じゃ面白くないでしょ? それでね……実はこの部屋に裏生徒会メンバー全員が揃ってます!』

「先輩たちも来てたんですね」「秋奈は無事なの?」「……大丈夫でしたか」

 そっか、白城さん達も既に来ているのか……。

 社長の言葉に僕たちは四者四様の反応をする。

『同時に質問されても返せないよ。 ただ、この部屋で全員揃えてこの部屋の中心まで行けば、ゲームクリア……この島から出る権利を貰えるわ』

「ルールはどうなっていますか?」

『……ふふ』

 社長はなんで笑ったんだろう?

『ここでのルールは簡単よ。全員が所定の位置につくとスタート。 この部屋の中にはいくつかスイッチがあって、それを押すとどこかの壁が開いてどこかの道が塞がるわ。 けど、どこかしら押さなければ絶対にクリアすることはできないようになってるから。 ここのクリア条件は全員揃ってこの部屋の中心にたどり着くこと。 それじゃあ、皆すぐその床に書いてある円形のマークにそれぞれ立って』

みんなは言われたとおり、四箇所にそれぞれ一人づつ立った。

『皆、円形の枠に入ったわね。 それじゃあ、スタート!』

スタートの掛け声と同時に僕を除く円形のマークのある床が抜けた。

「ちょっとぉおお、いきなりこれ……!」「きゃぁぁぁあああ!」「光士様ぁぁぁぁああ!」

 いきなり全員とはぐれることとなったってしまった。

『このゲーム中は質疑応答しませんのであしからず。 あ、言い忘れたけど仕掛けもいろいろあるから気をつけてね。 それじゃ、頑張ってねぇ』

ブツッ

 電話を切る時のような音が聞こえ、それ以降社長は何も言ってくれなさそうだった。

 焦っても仕様がない。 ゆっくりとしらみつぶしにまわろう。

 しばらく歩いて、最初にあったのは四季秋奈さんだった。

「お久しぶりです」

「あ、神宮寺先輩」

「四季さん――秋奈さんはご無事でしたか」

 若干名前で呼ぶのに抵抗があるが、苗字だと四季美春さんとかぶってしまうな……。

「これぐらい、なんてことありませんよ」

「さすが、姉妹ですね」

「お姉ちゃんは神宮寺先輩といたんですか……」

「えぇ、あなたのお姉さんはとても立派な方ですね」

「そ、そんな身内を褒められても少し困ります」

「それは失礼しました。 それでは、そろそろ行きますか?」

「そうですね」

 

 特に何が起こるわけでもなく、ただスイッチが多いのでそれを押さないように注意を払っていた。

 探し回っても誰もいなく、最後に長い直線の通路を行こうとした。

「これで誰もいなかったら、仕方ないのでスイッチを押しますか」

「気が進まないですけど、仕方ないですよね」

 そう会話していると、前方から音と人影が見えてきた。

 ずっと見ていると、その正体が海人君と……大きな球体の岩が転がってきていた。

「あはははははは」

 海人君は楽しそうに笑いながらこっちに走ってきていた。

「秋奈さん!」

「はい! わかってます!」

 僕と秋奈さんは全速力で逃げた。


 直線を最後までもどると岩が……海人君が来ていないことに気づいた

「……まさか」

「海人君は大丈夫ですよね?」

 不安からか秋奈さんが聞いてくる

「わかりません。 とにかく、確認に行きましょう」

 走って戻ると、途中には何もなかったところに壁があった。

「こんなのさっきまでなかったのに」

「海人君! 大丈夫ですか!?」

「海人君、無事なら返事して!」

『なんだ? 光士と秋奈姉ちゃんか?』

 壁の向こう側からは、いつもと変わらないような海人君の声が聞こえてきた。

 僕と秋奈さんは安堵の息を漏らす。

『あぁ、この岩もこの壁も柔らかい素材でできてるからぶつかっても痛い程度だよ』

 僕たちが心配したことに気づいたのか、説明をしてくれた。

「動かないでくださいね」

『なんでだ?』

「このゲームは全員揃えなくてはなりません。 せっかく合流できそうなのにここで動いてまた、扉が閉まってはぐれるのは嫌ですからね」

『なるほど。 それじゃあ、ここ開けてきて』

「わかっていますよ。 それでは行きますよ、秋奈さん」

 とは言ったものの、適当にスイッチを押したら何が起こるかわからないし、どうしたら良いものか……

「ねぇ、神宮寺先輩」

「どうしました?」

「あの壁、変わったデザインしていると思いません?」

 言われてみると、壁の中心から右側に一本だけ線が伸びて、他の壁と線が繋がっていて、変に見えなくもない。 普通なら中心から両側に出ていそうなものだ。 シンメトリーの方が基本は見栄えがいいし、周りの壁も基本はそうなっている。

「? それがなんですか?」

「もしかしたら、開閉スイッチの場所を指しているんじゃないかと思いまして」

 可能性はなくはない。 あてもないし、試してみる価値はありそうだ。

「よし、それで行こうか」

 壁に書いてある線を辿っていくと、終着点には一本の線でつながるようにスイッチがあった。 早速、押して見る。

 そして、戻った先には岩を持ち上げている海人君がいた。

「おぉ、光士! 秋奈姉ちゃん!」

「よかったぁ! 海人君! 心配したよ」

 秋奈さんは海人君を抱き寄せる。

「恥ずかしいよ。 秋奈姉ちゃん」

 海人くんは岩を僕のほうに投げ、秋奈さんを引き離そうとする。

「ご、ごめんなさい」

 僕は岩に触ったり、持ったりしてみる。

 確かに、この軽さとやわらかさならかなりの速度でぶつかっても大したことはないかも。

 ま、社長なら当然の配慮だったか。

「向こうもそろそろ、だいぶ合流しているかもしれません。 待たせるのも悪いですし、先に行きましょう」

「オー!」

 海人君はノリノリだ。

「そうですね。 行きましょうか」

 その先は特に何もなく、ただ平坦な道を進み、ゴールまで着いてしまった。

「やった。 ゴールですよ」

「もう終わりかー」

「まだ全員揃ってないのでゴールできませんよ」

「そうでしたね。 あれ、向こうに文字の書いてある壁がありますよ」

 秋奈さんはその壁に近づいていく。

『そっちに誰かいるのか!?』

「その声は先輩ですか?」

 どうやら、向こうにいるのは白城さんのようだ。

『あぁ。 この壁は前後同時に衝撃を与えないと壊れないらしい。 協力してくれ』

「わかりました。 神宮寺先輩!」

「聞いていました。 僕が代わりにやりましょう」

 実際のところ僕がやる必要はないかもしれないが、できれば活躍したい。

「大丈夫ですか?」

『光士か?』

「はい、この扉を壊すんですよね」

『あぁ、同時に衝撃を与えれば壊れるらしい』

「それでは、早速試してみますか」

『そうだな。 いっせーの、せ! でいこう』

「わかりました」

『せーの!』

『「いっせーの、せ!」』

 僕は『せ』が言い終わるタイミングで壁にパンチをした。

 しかし、壁はまったく壊れそうになかった。

『ダメか』

向こう側からは落胆の声が聞こえる。

「タイミングが合わなかったみたいですね。 どうしますか?」

『……全員でやるか?』

「え?」

僕は確かにそのほうが確率が高いなと思った。 同時になぜ自分が思いつかなかったのか悔やまれた。

「いいな! それ!」

 海人君が同意の声を上げる。

「確かに、そっちの方が確実にできそうですね。 だめな先輩のくせにいいこと思いつきますよね」

「でも、兄ちゃんは面白いよな」

『こっちは全員賛成みたいだが、そっちはどうだ?』

向こうから話しかけてくる

「みなさん賛成のようです」

『ついでだ、掛け声も変えるか?』

「何にするんですか?」

『こんな時にいいタイミングの合わせ方があるんだ』

「なんだろうな?」

 海人が嬉々とした表情を浮かべる。

『カツ丼、天丼、親子丼! だ』

 そんなおふざけ……!

「やっぱり、兄ちゃんはおもしろいな」

「そうね、海人君。 ホント、先輩のお気軽さはこのゲームにぴったりなんじゃない?」

 納得がいかない。 どうして、彼ばかり……。

 向こうも誰ひとり異存は無いようだ。

「……それでは、いきますか?」

『あぁ』

「それでは……」

『『『『「「「カツ丼、天丼、親子丼!」」」』』』』

『丼』のタイミングで僕たちは壁にパンチする。

 こっちの全員が少しタイミングがずれていたかのように見えたが、大丈夫だろうか?

 壁にはヒビが入り、少しづつ崩れていく。 そして、向こう側には白城さん、秋奈さん、小井塚さん、舞花さんがいた。

「よっしゃー!」

 彼が誰よりも最初に喜びの声を上げた。 そして、みんなはそれにつられるように喜びの声を上げる。

 そして、ゴールと書かれた向こう側から社長が現れた。

「みんなおめでとう。 さて、これでこの島から出られるわよ」

 社長の言葉に皆が喜ぶ。 ……僕を除いて。

 ……終わってしまった。 汚名返上も名誉挽回をすることもできずに。

「このゴールはエレベーターになってるからみんな乗って」

 社長に言われた通りエレベータに乗り、そして恐らく下に降りていた

「はい、到着」

 エレベーターから出ると、そこは特大のトンネルだった。

 少し奥には八台のそれぞれ色の違う単色のSFに出てくるような車が置いてあった。

 その車にはタイヤがなく、後ろにはジェットエンジンのようなパイプがついていた。

「ここは、私の持っている東京のビルの地下に直結してるわ」

 社長はこんなこともしていたのか。 今更、驚くことでもないが。

「この車は、最新鋭の車でいわゆる空飛ぶ車ね。 最高時速はおよそ1800キロでるわ」

「マッハにしたらおよそ1.5ね」

「ってそんなの乗ったら危ねぇだろ!」

 白城さんがツッコム。 まぁ、常識的な反応だ。

「大丈夫よ。 仮にみんながこれで全速力で正面衝突したとしても命の保障をしてあげるわ。 もちろん怪我も負わない」

 社長なら当然の配慮だな。

「だって、そうしなかったら楽しくレーシングなんてできないじゃない?」

 全員がギョっとする。 この後に及んでまだ、ゲームをさせるのかと。

 しかし、僕は少し嬉しかった。 これで、まだ汚名を返上するチャンスがある。

「あ、みんなやる気ないんだよね。 わかるよ、サバイバルで疲れたもんね」

 そんなのは関係ない。 僕はあなたに……!

「けどね、みんなをやる気にさせる魔法の言葉があるんだ」

 なんとしてでも並び立ちたい!

「私を抜いてゴールしたら、賞金十万円!」

 ……それで釣られるのは四季さんだけだ。

「やらせていただきます!」

 四季さんは声を大にして答えた。 まったく予想通りの反応すぎる。

 しかし、みんなはそれに釣られて参加するようだ。


 僕は黄色、白城さんは灰色、社長は黒、秋奈さんは橙色、四季さんは桃色、海人君は赤、舞香さんは青の車に乗った。

「みんな、乗ったー? それじゃあ、前に信号出すから青になったらスタートね」

 社長の言うとおり、信号が出てきた。

 なんとしてでも、僕は勝つ!

 そして、レースは始まった。



 この車にはアクセルというものがないらしく、勝手にどんどん加速していく。

 さらに、壁面も天井も走行できるようだ。 赤が壁面に、黒が天井を走っている。

 開始数分で既にメーターは1500キロを超えていた。


 このコースは1800キロあるらしく、現在1500キロを通過していた。

 その頃になると障害物――壁が現れた。 早速、赤が――海人君がぶつかっていた。 一

 よし、少しでも勝率が上がればそれでいい。


 そして、レースはクライマックスを迎えようとしていた。

 障害物が増え、僕は避けながら周りを見て、勝つ方法を探っていた。

 現在の状況はは、黒と桃色が前で競り合っており、となりに灰、少し後ろに青、恐らくずっと後ろの方に赤と橙がいる。

 前のほうでは、黒と桃色が激しいと言わないまでも激突しており、徐々に減速しつつあった。 そのおかげで黒、桃、黄、灰は並んだ。

 並んだと思ったら黒は桃に強く激突し、桃はわずかに壁に激突してしまい激しくスピンした。 しかし、何故かそのまま灰の方に向かっていき灰に体当たりを仕掛けていた。

 だが、それは妨害ではなく押し出し――加速の手伝いだった。

 一時的にスピードアップした灰は一番に躍り出た。

 くそ、これじゃあ置き去りにされる。

 何を考えたのか青はわざと壁に衝突した。 そして、桃色と同じように回転して、僕に突っ込んできた。 その行動が僕を灰まで追いつかせた。

そして、ゴールラインは目前に迫り、ほぼ同着でゴールした。

 機体は行き止まりの壁に激突し、強い衝撃が体を襲った。

「……!」

 声にならない悲鳴が上がる。

そして、後ろからさらにぶつかってきたようで、また衝撃が体を襲った。

周りを見渡すと七台の車が山のように積み重なっていた。

「……勝てたのだろうか」

 僕は呟く。

「とりあえず、ワースト順に出てね」

 上と横の方から『ガタンガタン』と金属が何かにぶつかるような音が聞こえる。

 しばらくして、ようやく車の扉を開けられた。 

あの岩と同様に車は軽く、その為に積み重なっていても簡単に開けることができた。

「とんでもない目にあったぜ」

「全くですね」

 僕はあなたに勝てたかどうかの方が気になります。

「で、結果はどうなったんですか?」

 彼も勝負の結果が気になっているようだ。

「超スパースロー見てみる?」

「あれを捉えられるんですか? 相変わらず、すごいですね」

「いやぁ、それほどでも。 でも、スタープ○チナ・ザ・ワー○ドでも捉えられる自信あるしね」

「それはおかしい」

「まぁ、気にしない。 ほら、見てみな」

社長がタブレットを出し映像を出す。

その映像では確かに灰色の車が先にゴールラインを割っていた。

「これって、つまり俺の優勝か!?」

「……!」

 ま、負けた……!

「何言ってんの?」

 敗北の辛酸を味あわせる間もなく、社長がこんなことを言った。

 社長は何をおかしなことを言っているんだ、お前は、というような目で見ている。

 ほかのみんなも僕と同様に理解できていないようだ。

「だって、私の方が十秒は早くゴールしたわよ」

 ……そういうことか。 社長らしい。

「そんなわけ……! だって、社長は俺たちの後ろの方に居たぞ!」

「この通路、ゴール前にワープゾーンと加速エリアがあってね、そこ使ったら先に着いたわ」

 社長が一着でゴールすることなんてはじめから用意に想像がついていた。

 けど、大事なのはそこではなく僕が彼に白城さんに負けたこと。

「ま、私に勝とうなんて十年は早かったわね」

 白城さんは完全に勝っていたつもりらしく、呆然としていた。

 僕にとってはあなたほど羨ましい存在などいないのに……。

 僕は結局このサバイバルで何も成し得ることはなかった。

 ……僕は一体どうしたらあの人に並び立つことができるのか? それだけが、僕の考えの全てになりつつあった。


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