外道屋のサバイバル その2
SIDE 白城勇人 二日目
ゴツゴツした石の上で寝ていたせいか寝起きが最悪だ。 変な時間に目が覚めるし、あんまり寝た気がしない。 贅沢を言ってもしょうがないんだけどさ。
秋奈と海人といえば、ぐっすり眠っている。 よくこんなところで寝ていられるなと感心する。 まだ起こすには早い時間な気がするし、起こさないでおこう。
ちょっと早く起きすぎちゃったみたいだし、散歩でもしようかな
そう思って、洞窟の外に出てみたら、10ℓのポリタンクが二つと弁当箱と思わしきものが三つ置いてあった。 ポリタンクの下にはメモ書きが置いてあり『一日生き抜いたご褒美』と書いてあった。
ポリタンクの中身はどうやら水のようだ。 恐らく、遠出のために持ってきてくれたのだろう。
それらを洞窟の中に運んだ。 次は朝食の準備でもしよう。
例の冷蔵庫に向かう。 冷蔵庫を開けると下から『カタッ』という音が聞こえた。
下を見るとカードが落ちていた。 どことなくキャッシュカードのように見える。 番号は何も書いてないが、両面に肉と野菜の絵というか写真が写っている。 なんだかよくわからないが、一応とっておこう。
俺は朝食の準備を終え、二人を起こしに行った。
「おい。 秋奈、海人、起きろ」
二人共、、眠そうにしながら起きる
「朝食の準備ができてるぞ」
「うまそうな匂いがする……」
「本当、いい匂い」
朝食を終え、次は会議だ。
「ところで、これからどうする?」
「食料もありますし、探索がいいんじゃないですか?」
「賛成!」
「そうだな。 社長から弁当箱渡されたわけだし、長時間行けるな」
「それじゃあ、分かれて探しますか?」
「いや、今回は全員で行こう」
「どうしてですか?」
「猪のこともあって、一人はマジで怖い」
「「……」」
「なんだよ、その哀れむような目は?」
「いえ、少しかっこ悪いなと思っただけです」
「……面目ない」
「で、どこに行くんですか?」
「洞窟の奥に進んでみようと思ってる」
「まぁ、今のところここが一番怪しいですからね」
「俺もそう思う」
海人が同意する。
「よし! それじゃあ、探索と行くか」
朝食で作った残りを、弁当箱に詰め、出かける準備を進める。
そして、洞窟の奥へと足を進めた
しばらく歩いていると、洞窟がだんだん明るくなってきた。 不自然だ。
切れ間があるわけでも、電灯や松明の明かりがあるわけでもないのに明るい。
明るいといっても、薄暗い程度だが。
さらに歩くと開けた場所を見つけた。 そして、その部屋の前の横の壁には『的当てゲームの間』と彫られていた。
その部屋を、外側から見渡すとダーツの的と人型の的、円形の的がそれぞれ離れた位置に設置してあった。
「とりあえず、入ってみるか」
その部屋に脚を踏み入れた瞬間、ヒュンと何かが自分の横を通り過ぎた。
「え?」
思わず変な声を出してしまった。 そして、振り返ってみると壁には矢が突き刺さっていた。 もしかして、少しずれてたら俺に刺さってた? 怖ぇ~!
「あ、これ紙が結びつけてありますよ」
「本当だ」
「矢文かよ!」
秋奈が紙を手に取る。
「えぇと、『ここのゲームを全部クリアしなければ前に進むことはできない。 ただし、必ず一人一つゲームをしなくてはならない』だそうです」
本当に何がしたいんだ? あの人は。
「ゲームはどうやらダーツと拳銃か弓による射的みたいですね」
「二人は何かやりたいのはあるか?」
「はい、はーい! 俺、銃が使いたい!」
「別にいいぞ」
「やったー!」
「秋奈はどっちがいい?」
「逆に先輩はどっちがいいですか?」
「俺はできればダーツがいいな。 弓なんて使ったことないし、うまくできる気がしない」
「私もやったことないんですが……」
「それでも、秋奈ならできるだろう?」
「で、でも……」
あの才能の件もあるし
「信頼してるからさ」
「……はい! 頑張ります!」
「よし! それじゃあ、それぞれのゲームをしますか」
ダーツの的の前にある白いラインまで行くと、下から台がでてきた。
そこには、ダーツの矢が3本置いてあり、横にはモニターがあり、ルールが書いてあった。 というか、いきなり現代的になったな。
『ダーツのルール
今回行うゲームはカウントアップというゲーム。 これは純粋にスコアを競うゲーム。
ダーツボートから244センチ離れた位置から矢を投げる。 8×3回、合計二十四回投げてスコアを決める。
的についての説明
ダーツボードには、円形の的を二十分割しており、その枠にそれぞれ点数がついている。そして、矢が刺さったところがその点数通りになる。 ただし、外側の赤と青の枠はその点数の二倍、内側の赤と青の枠はその点数の三倍。
真ん中の黒い部分は五十点、真ん中の赤い部分は二十五点。
クリアノルマは千点』
「クリアノルマが千点ということは二十四で割って……無理だろ……」
一本あたり最低でも四十点は取らないときついぞ。
駄目だ。 最初から諦めるな。 これは、俺の悪い癖だ。
テストで十位以内に入れなかったとはいえ、こんな俺が十五位に入れたんだ。
あの時の感覚を思い出せ。 猪の額に突き刺したあのナイフを。 完璧に自分の 狙い通りに当てた、あの時の感覚。 自分でも変だと思うぐらいの集中力。 それでもって、投げる!
しかし、狙いは下にずれ3点のダブルだった。 大丈夫、理由はわかってる。 リリースするのが遅かったみたいだ。
よし、次はど真ん中に決める。 自分の弱点がわかったのならそれを克服できる。
集中して……投げる。 狙い通り、今度は真ん中に命中!
次は20のトリプルを狙う。 もう一度集中して投げる。 ……狙い通り。
その後も順調に二〇のダブル、トリプル、五十点を連続して取り続けることができた。
残り3回まで来て千十六点。 ノルマは越えられた。 なら、残りの3回全部を20のトリプルに当ててやろうじゃないか。
一投目……よし、当たった。
二投目……少しギリギリではあるが、当たった、
三投目…………あれ、狙いがぶれる……。 そのまま投げると、ダーツの矢は明後日の方向に飛んでいった。
『ノルマクリア、ノルマクリア。 全てのゲームがクリアされたので扉を開けます』
機械的な音声が流れる。
なんか……すごい疲れた。 最後のがうまくいかなかったし、でもそのことを気にするより早く休みたい気分だ。
「先輩! やりましたね! それとこっちもうまくいきましたよ」
秋奈か。 どうやら先に終わっていてこっちに来ていたようだ。
「そっかぁ……それは良かった……」
「先輩、なんかすっごく疲れてますね。 どうしたんですか?」
「わからん……。 ただ、ものすごく集中力を使ったせいかもしれん」
「とりあえず、ここで休みましょうか」
「海人は?」
「海人君ならすぐにゲームクリアして、拳銃使ってひとしきり遊んだあと、弓の練習してますよ」
「楽しんでるなぁ」
「そうですね」
唐突に『ザザーッ』というノイズが聞こえる。
『……あ、あ、テステス、マイクテスト~。 こちら、神宮寺イーヴィ。 聞こえてる?』
「社長か?」
『そうだよ。 イチャイチャしてるところ悪いね』
「い、イチャイチャって……!」
秋奈は顔を赤らめている。 まったく……
「からかうのはやめてください。 俺は疲れてるんですから」
『あら、面白い反応するのは秋奈ちゃんだけ? まぁ、いいや。 奥の部屋にベッドあるから、使っていいよ。 ちなみに、あのカードも使えるから。 言いたいことはそれだけ。 じゃ~ね~。 また会おう』
ブツッと音声を切る音が聞こえた。
「ホント、嵐のような人ですね。 それにしても、カードが使えるってなんのことでしょう?」
「多分これのことだ」
俺は今朝拾った肉と野菜が写っているカードを見せた。
「なんですかこれ?」
「さぁ、俺もよく知らない」
「お~い!」
海人もこちらへ来たようだ。
「兄ちゃん、クリアしたんだな」
「あぁ……」
「どうしたんだ? 元気がないぞ」
「なんか疲れてな」
「そっか」
「今は社長の言葉に甘えておくか」
「さっき言ってたベットがある部屋か? 早く行きたいぞ!」
「あぁ、俺はぐっすり眠りたいよ」
奥の部屋に入ると確かにベッドはあった。
ただし、でかいサイズが一つ置いてあるだけだった。
「うぉぉおお! でけぇぇぇ!」
海人ははしゃいでいるみたいだが……。
この部屋は普通の家と変わらないような空間だった。 水道やシンク、ガスコンロ、鍋やフライパンがある。 それに広く、三人一緒にいる分には問題ない広さだ。 だけど、なんでベッドはひとつだけなんだ……。
「なぁ、兄ちゃん」
「なんだ?」
「ここに、隙間がある」
ベッドから少し離れた位置には、普通の部屋には無い、隙間があった。 というか、カード差し込み口と書いてある。
朝拾ったカードを入れてみる。 すると、横の壁から取っ手が出てきた。 見覚えのある取っ手だった。 開けてみると冷気が漏れ出し、前に入れたはずの食料や水が入っていた。
「……相変わらず、とんでもない技術だな」
海人は目を輝かせている。 楽しそうで羨ましい限りだ。
とりあえず、今は寝たいが先に飯を食べてからでもいいかな
「よし、飯作るか」
「先輩、大丈夫ですか? 疲れてるんじゃ……」
「大丈夫だ。 飯食ったらとりあえずすぐベッドで休ませてくれ。 そのあと、寝たくなったら言ってくれ。 俺は床で寝るから」
「そんなに私に気を使わなくても……」
「女の子なんだから気にするな。 俺はすごく寝たいが、年下の女の子の前くらいはカッコつけていたい」
「先輩……」
飯を食った後、風呂はないが備え付けにタオルがあったので、それを水に濡らし体を拭いた後ベッドに倒れた。 心地よい感触に僕はすぐに眠りについた。
SIDE 神宮寺光士 二日目
僕は、誰よりも早く起きた。 理由は特にない。 ただ、考えに浸っていたかったのかもしれない。
昨日の洞窟でのことを考えると一人は不安に感じる。 けれど、孤独なんかに屈したりはしない。 それが、あの人の課した試練だというのなら乗り越えなくてはならない。
しかし、あの洞窟を攻略するのは一人ではできないように作っている可能性がある。 ここは恥を忍んで、頼むべきだろう。
「おはよう」
後ろから声がする。 振り向くと、四季さんが立っていた。
「おはようございます。 四季さん」
「何か悩んでいたみたいだけど、大丈夫? 私でよければ話を聞くわよ」
態度に出ていたのか……。 けれど、好都合だ。
「はい、実はあの洞窟にサバイバルクリアの鍵があると思うんです」
「洞窟って、神宮寺君が迷ったていう洞窟?」
「そうです。 一人でいった為に情けない結果になってしまいましたが、複数人で行けば攻略できるかもしれません」
「神宮寺君が迷ったような場所に、他の人が入って大丈夫かしら?」
「買いかぶりすぎですよ。 それに、複数人で行くこと自体が条件かもしれません」
「どうゆうこと?」
「社長のすることですから、そうゆうことがあってもおかしくはない、という事です」
「なるほど。 あの人なら確かにやりそうだわ」
「ご協力お願いできますか?」
「もちろん。 さっさとこんな島からは出ていきたいしね」
これで、あの洞窟にもう一度挑戦できそうだ。
「ところで、神宮寺君」
「はい。 なんでしょう?」
「あなたは一体何に悩んでいたの? 協力をお願いするだけなら、あまり悩む必要はないよね」
「……できれば、一人で洞窟を攻略したかった。 それだけですよ」
本質は言ってないが嘘ではない。
「へー、負けず嫌いなんだ」
「自覚したことはありませんが、そうかもしれません」
「疑問も解消したことだし、ご飯にしよっか」
四季さんは、人をよく見ているみたいだな。 社長ほどではないが、理知的で賢い。
そんなことを考えているより、彼女の作ってくれたご飯を食べてしまおう。
行動を起こすのはそれからでも遅くはない。
朝食をとりながら、洞窟に行くことを告げると、全員で洞窟に行くことになった。
食料は大丈夫なのかと聞くと、食料は一日ぐらいなら何も取らなくても保つらしい。 それにしても、さすがに全員で行く必要はない気がするのだが……。 でも、全員で行ったほうが心強くはあるかもしれない。
「それでは、行きましょうか」
「はい、光士様!」
舞花さんだけ声高らかに返事をする。 返事は別に期待していなかったけど。
洞窟に到着したら、僕は少し緊張していた、
「ここね。 みんな準備はいい?」
秋奈さんがみんなに確認を取るように、ひとりひとりの顔を見る。 そして、みんなが頷く。
「それじゃ、入るわよ」
皆が洞窟に足を踏み入れた。 そして………………洞窟には明かりが灯った。
「え?」
僕だけではなく、みんなが同じ反応をした。
「どうゆうことなの!?」
「僕にはさっぱり」
「あ、あのぉ……ここを見てください」
小井塚さんが指差すところには、文字が書いてあった。
『四人以上で入ると明るくなるよ』
あ、あんなところに……!
「……暗かったとはいえ、あれに気付けなかったのは痛いわね。 ま、はからずしも全員で来て正解だったわけね」
「僕の完全な不手際です。 すいません」
「光士様の所為じゃありませんよ!」
「別に僕を庇う必要はありませんよ」
「でも……!」
「そのような行為は時としてより深く相手を傷つけることがありますから」
「! す、すいません」
「私の言い方が悪かったわ。 そこまで、卑屈になる必要はないわよ」
「はい、すいません」
「と、とりあえず、先に進みましょう。 先輩」
小井塚さんの一言でその場での悪い雰囲気はある程度和らいだ。
けれど、悪い雰囲気を持ってきているのは明らかに僕で、四季さんが僕たちを引っ張ている。 僕がこのグループの和を乱し、役に立てずにいる。 本当なら僕が引っ張るべきなのに……。
無言のまましばらく歩いていると奥の方が少し騒がしい。 まるでゲームセンターやパチンコ店の前のような音が聞こえてくる。
当然、みんなもそれに気づいているようで、何があるのかという少し不安な面持ちだ。
そして、その答えは――――ゲームセンターだった。
床、天井、壁は洞窟の――石そのものだったが、その部屋はとても広く、格闘ゲームや音楽ゲームやクレーンゲームやもぐらたたき、エアホッケーなど、とにかく色々あった。
「ここに説明があるみたいです」
またしても、小井塚さんが見つけたようだ。 と言うよりは、ポツンと置いてあった長机にパンフレットのようなものが置いてあっただけなのだが……。
『ここはゲームの間。
ここより先に進みたい場合は、ここのゲームを全員合計で十種類以上(同ジャンルでも別のゲームなら可)クリアすること。
それぞれのゲームにノルマを設定したので、それを超えるとゲームクリア。
詳細は各ゲームごとに説明するので、ゲームの前まで行って確かめてね』
実に社長らしいと思った。 そして、僕はとても苦手だ。
僕はこの手のゲームを一度も遊んだことがない。 僕自身の体は経験しているが、それはあくまであの人が動かしていただけだ。 それでも、僕はクリアするつもりでいるが。
「……ねぇ、これって全部無料なのかしら?」
四季さんがパンフレットを持っている、小井塚さんに聞く。
「ここに、もちろん無料って書いてありますよ」
「みんなお金持ってませんしね」
「やったぁー!!」
四季さんが喜ぶのは、やはり『無料』で楽しめるということなんだろうか? 彼女らしいといえばらしいのだが、変な感じがする。
「お菓子取り放題~!」
やっぱり、この人はこういう人だった。
僕はまず格闘ゲームから始めようと思ったのだが、小井塚さんが物凄い勢いでプレイし始めて、既に三戦ほど終えていた。 すぐに5、6種類もあるこの格闘ゲームをすべてクリアしてしまいそうなので、あきら……譲ることにした。
次にクレーンゲームを見に行くとそこには、既にノルマをクリアしているのに、中身のお菓子を全て取り尽くそうと躍起になっている四季さんがいた。 近くにいるだけで疲れそうなので、クレーンゲームも譲ることにした。
次に、個室があったので見に行くと、どうやらカラオケボックスのようだった。 中では既に舞花さんが歌っているようだった。 正直、彼女といるだけで疲れるのでここも譲ることにした。
次に僕が向かったのはバスケのゲームだ。 制限時間がくるまでただひたすらゴールに入れるゲーム。 このゲームは制限時間内に一定以上の点数を取ることで最大3回までプレイすることができ、その合計がスコアになる。
そして、このゲームのノルマは1800点。
一本入ると十点で、制限時間が一分でその三回で三分。
クリアするためには一ゲームに600点。 つまり、一秒に一回はゴールを決めなくてはならない。
……始める前から心が折れそうだ。
とりあえず、プレイしてみよう。
案の、定クリアすることはできなかった。 スコアは1200点だった。
僕は運動神経がそこまで悪いわけではないが、突出して何かが上手いわけでもない。
続けても無理だ。 僕はそう思ったので、違うゲームに移った。
その後、もぐらたたき、音楽ゲーム、レーシングゲーム、シューティングなど試したがすべてクリアすることはできなかった。
時間を無為に過ごし、この部屋に入ってから感覚でおよそ六時間。 機械音声のアナウンスが入り、クリアしたことを知った。
結局、僕はなにひとつクリアすることができずにみんなが十種類のゲームをクリアした。
項垂れていると、みんなが僕の方に集まってくる。
皆の顔を見ると全員清々しい顔をしていた。
「いやぁ、ホント楽しかったわ」
「そうですね! また、やりたいくらいです」
「ちょっと、歌いすぎて喉が……」
「子供のうちに喉潰したら大変よ~」
とにかく、この人たちが羨ましい。
「神宮寺君はどうだった?」
「特に何もないです」
皆は何かを察したのか、僕に何かを言うことはなかった。
その後、四季さんがとったお菓子や社長がご褒美としてくれた食品を食べた。
社長はさらに、過ごしやすい部屋を提供してくれたので、今夜はそこに泊まることになった。
僕は一体何をしているんだ? 何もできない、ただの役立たずでしかない。
今日はもう寝てしまおう。 明日こそ、僕は……!
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