Tachyon:5 空にないもの
あの地球の周りを取り巻いているあれはいったいなんなんだろう。
「アビス。あれはいったいなんだ。」
「あれですか。」
「そうだ。」
僕はあることに気付いて、空を見回した。アビスは前にここは地球だと言った。でも、地球なら空を見ればあるはずのものがない。それは月だ。空を見て違和感があった。その違和感の正体はどうやら月だ。月の有無だ。
「月がない。」
僕はそう声を大きく上げた。
「そうです。お気づきの通り、今の地球には月はありません。」
「無いはずがない。どうして無いんだ。」
「あれが月になるからですよ。」
「えっ・・・。」
あの土星みたいに広がっている輪がか。あれが月になるっていうのは何とも不思議なものである。どうして、あれが月になる。
「どうしてあれが月になるんだ。あれはいったい何なのだ。」
「あれは、さっき見た隕石の衝突により巻き上げられた地球の岩石です。吹き飛ばされた地球の岩石は地球の重力圏内に拡散します。しかし、地球の重力により地上に再び落ちて来るものがあります。その落ち切らなかったものが地球の重力圏内で月のように回り始める。それが一つではないから、輪が形成されるのです。」
「ふぅん。そうなのか。」
「そして、一つ一つは自分にものを引き寄せようとします。重力があるんです。その重力に予て軌道をゆがめられた岩石同士がくっつきやがて大きくなる。大きくなれば重力も大きくなり、より多くの岩石を取り込みます。その結果が月です。」
「へぇ・・・。月っていうのはそういうふうにできていたのかぁ・・・。でも、このとき作られた月っていうのはもっと大きいのではないか。月にはたくさん穴が開いている。」
「ええ。もちろん、このときの月は今の月よりも大きいですよ。」
「おいおい。難しい話はそれぐらいにしないか。そろそろ行こうじゃないの。」
「そうじゃ。そうしよう。レオンさっさと次の時代へ。」
と言った瞬間にメチャクチャ頭が痛くなった。
「いい加減に学習しなさい。」
「ア・・・ハハハ・・・。」




