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二人二声之影Ⅱ  作者: LAR
本編
8/22

6話 宇宙(ソラ)の帰還

冬嫁が見た物は覚醒生物の姿。

ここでは既に、その実験の過程で誕生した生物が存在していたことになる。

「また奇怪な生物を作ったものだ…」

司はその生物を見てそう言った。

その姿は身体の上半分が蛙、下半分が長い尾…

「蛇…かい?」

冬嫁はいち早く、その生物の特徴を明かす。

成体になりかけのお玉杓子のようにも見えるが、それにしては異様に長すぎる。

仮に目の前の生物が人間の半分くらいの大きさでも、この尾の長さは異常としか言えないだろう。

ゲロゲーーロッ!!

甲高く鳴く声に、司と冬嫁は、耳を塞ぐ

鼓膜を劈く様な、巨大な波長はとても五月蝿い!

しかし、そんな二人の硬直に容赦せず、蛇蛙は、二人にその尾を振るう

「冬嫁!」

咄嗟に司が冬嫁をかばってその長い尾を背中に打たれる。

「ぐおっ!!」

鞭打ちされたかのように、尾は司を強打させた。

想像以上に痛みは大きく、司は背を押さえ、蛇蛙をみる。

「あの尾…あれさえなんとかできれば」

司は、目の前の敵に背を向けながら、銃に別の弾丸を装填していた。

その間、蛇蛙は、頬を縮ませ膨らませを繰り返して呼吸していた。

「冬嫁」

突然、司はその名を呼ぶ

「何?」

「あれをひきつけられるか?」

司は、作戦をうまく練っていた。

「アレの本体はおそらく武器として使う尾だ。正面の蛙は恐く、ただ動かされているだけの死体だろう」

「どうしてそんなことがわかるんだ?」

冬嫁は率直な疑問を司にぶつける。

「奴の尾を見てみろ」

司にそう言われ、冬嫁は尾に目を移す

「…!!」

冬嫁の目に見えたもの

それは、尾の先端部分と言える部分が、時間差で開閉を繰り返していた。

「なんだ?あれは?」

「おそらく口だろう。捕まれば逃れることはできないと言っていいかもしれん」

司は先程の、尾の一撃の際、僅かにそれが見えていた。

目標は冬嫁…司はそれをとっさの判断で庇い、更には、捕らわれるのを防いでいたのだった。

「司、その背中は…?」

その尾を受けた背中には皮膚が剥がれ、内面が見えていた。

しかし、それは無機質な物体が山のように組み込まれていた。

「そうだ…俺はコンプレクの実験対象の一体」

冬嫁には見せないようにしていたつもりのようだが、今この状況では、、それどころではなかった。

「より人に近い姿を目指して作られたのが俺だ…だが、ある段階で俺は絶対周波を受け付けなくなっていた」

絶対周波、それは司が機械であることを証明する一言であった。

機械というのは、誰かがコントロールしなければ暴走しかねない危険なモノである。

司という機械は、それがなくなってしまったのだ。

いわば今の状況は暴走ということで間違いないのだろう…

「この続きは後だ。今はアレを倒してからだ」

司はそう言って、さらけ出されている背にコートを羽織り、気を高める。

「さっき言ったことは覚えているな」

念じながら冬嫁に呼びかける

「わかってる。可能な限り引き付けるよ」

そういって冬嫁は単身、蛇蛙にむかって駆けていく、しかし、運動不足が働いているのか、その足はとても、遅いように見えた。

(くれぐれも捕まるなよ…)

ガラスの眼に映る視界に、心配という感情を生み出す司だった。

巨大な蛙の前面は舌の貫刺、後面の尾は一撃必殺の食らいつきと攻防一体ともいえる、この生物を負かせるのは冬嫁ではとても役不足だろう。

「意識弾!」

まずは小手調べの一発を放つ

生物自体はオットリしている様で、行動力は低かった。

その為、意識弾の集中は余裕で行える。

しかし、ようやく放った一発は、蛇蛙が飛び跳ねているだけで外れた。

眼は確りしている様である。

再び意識弾に集中を注ごうとするが、我慢しかねなくなったのか、蛇蛙は冬嫁に向かって襲いかかってきた。

鳴き声を上げながら、徐々に接近してくる。

距離を詰めると尾を一気に振るう

「うわっ!」

意識弾の生成を中止するが、残っていた集中力を回避に利用した為、尾は避けれた。

横転を一回し冬嫁は、もう一度向かってくる蛇蛙に、回避の準備を始める。

「ゲロゲロ五月蝿い奴だね。司、準備はまだかい!?」

この時の、冬嫁は既に細めを開眼し、完全集中の体制に入っていた。

司の返事を聞いている間に蛇蛙の長い舌の一撃が襲ってきたのにも関わらず…

サッ!と、バック転の回避を見事に決めていたのだった。

(あの動き…!)

司は一度、冬嫁のバック転を見たことがあった。

絶対的な状況であっても集中力の過程で確実に回避する。

(だが、ありえないだろうな…仮にあの一族の者だったとして、何故、地球に味方をするかだ)

司は念じに集中し、気を込め終える。

(よし…)

体勢を解くと同時に、司は見えるほどに溢れさせた気を全身に纏う。

「炎業はできた、冬嫁!」

司の甲高い呼び声に冬嫁は完全集中のまま振り返る。

しかし、そこに蛇蛙の舌が再び襲いかかる。

「冬嫁、あぶな…」

言い終わる前に、バック転でかわしていた。

「終わったのかい?」

「ああ、あとは任せろ!」

交代を示し、冬嫁は勝輝のいる個室へ

司は、眉間に皺を寄せるが、かまおうとはせず蛇蛙を見る。

「うまく、できるといいがな…。」

左腕で右手首を掴み、気を一点に集中させる。

「フンッ!」

今の司の気は、炎を宿らせた気。

ネッドの時とは違い爆発性は全くない純正の炎の気だった。

「『フレイムスライサー』とでも名付けるか、隠れ剣の技術、貴様にはどう答えれる?」

司がさっと左腕を離すと、右腕には極小の短剣の様なものが生まれていた。

これが果たして、剣と言えるのか…?

しかし、司は余裕の笑みと共に眼が、燃えるような紅蓮へと変わっていた。

「いくぞ!?」

問いかけ、司は高速で駆けた。

そのスピードは人ならばとても捉えられないだろう。

しかし蛇蛙には、それは見えていた…はずだった。

だからこそ、高く飛び上がり、短剣のリーチを免れた

だが、それこそが司の罠。

蛇蛙は何が起こったのかわからないまま、一刀両断にされ燃え上がる切り口をただ唖然と見ることしかできなかった。

「お前の死は確定した。燃え尽きろ」

蛇蛙の身に何が起こったのか、ふと司の右腕には炎の剣があった。

先程は短剣程のサイズであったのにも関わらず、今は刀程の長さになっていた。

ようやく理解できたのか、蛇蛙は納得したように悶えるのをやめ、息絶えた。

「冬嫁」

気を解放し、気配を察すると個室から勝輝を連れた冬嫁が現れた。

「流石だね、僕も近接能力が欲しいよ」

羨ましがるように、冬嫁は振舞って見せたが、その態度には何か違和感を覚えた。

だから司は、単刀直入に訪ねた。

「貴様…何者だ?」

「僕かい?」

二人の間に火花が走る。

「僕はね…」

ごくりと唾を飲む

「夜の神」

途端に冬嫁の声帯が変わる。

「何っ!?」

「覚悟!」

まるで気付かなかった気配に司は驚きを隠せなかった。

そして冬嫁の姿は消えたかとおもうと、夜神の少女が両腕に剣を携えて、特攻してくる。

夜神の少女とは、正しく夜蔵之九十九神であった。

「死ね!!」

剣が触れる瞬間!

バキィーンッ!!

炎の剣が鍔迫り合いを起こす。

司は覚醒する寸前で止めていた。

冬嫁が偽物であることは、司が何よりわかっていた。

ただ、その正体が夜神だとは思わなかったのだろう、巧みに変化していたこの少女を司は、今になってやっと気づいたのだから

「20年前もそうだったが…」

交じ合わす刃同士の中で会話を交わす

「何故、貴様は生きている?あの時は黒葉に真っ二つに、そして20年前は心臓を貫いたはずだ」

司の表情は驚きに満ち溢れていた。

「神はそう簡単に死にはしない。だけど、私の…私の親友をお前は奪った!!」

斐瑪は我を忘れているようだ。今の彼女は辛い過去に閉ざされたはずの門を全開にしていた。

「二人共やめろよ、喧嘩はよくなっ…うわっ!」

仲裁に入ろうとした勝輝は、二人の間に割って入るようにして転倒した。

起き上がり顔をあげると、司の強ばった顔

「じゃまだ!どけっ!!」

右腕に携えた炎の剣を振りかざそうとして…

「やめろ、元:司!!」

広い実験室だというのに、甲高い声が部屋内全体を響かせた。

「勝輝を傷つければ、斐瑪の前に、僕がお前を殺す」

両目を開眼させ、いつでも飛ばせる状態の、意識弾を構える冬嫁の姿が司に映った。

「フン!」

そういって、勝輝に今まさに振るうとされた剣は、司の手の内に消えた。

「どうした?さっさと行け!今の貴様には価値などない!!」

司の怒気のこもった声は、勝輝を震え上がらせ、冬嫁の後ろへと引っ込んだ。

「斐瑪、君もだ。こんなことはやめてくれ…僕達は仲間なんじゃないのか?」

斐瑪の方も両腕の剣を仕舞い、冬嫁の方を向いていた。

「今回の事は忘れて欲しい、私も今一度、復讐の刃を納める事にする」

司に向き、ペコリと、頭を下げたのだった。


セイレーン教 エントランス

地に埋もれながらも、徐々に肉体が再生していっていた黒葉は、自らの変異を抑えると、まるで何事もなかったかのように、姿をけした。

いま、この場には誰もいない

寂れた教会を黒葉は後にしたのだった。

そこへ冬嫁、司、斐瑪、勝輝の四人が、出入り口のドアを開けて出て行ったのだった。


霊法町セイレーン教前

四人が外に出ると見知らぬ、男が麻衣を介抱していた。

「アルフ!」

冬嫁はその姿に気付き、声をかけた。

しかし同時に悲報も訪れる。

それは麻衣が意識不明な事

これを聞かされた冬嫁は、宇宙の地球軍の元へ、一度戻り適正な治療を受けることをすぐに決めた。


霊法町から数十キロ程、西の地

「こんなところに、シャトルがあるとは思わなかったね」

「それは俺の使ってきたシャトルだよ!」

寒いギャグをを交わす冬嫁とアルフ

しかし、これで宇宙にすぐにでも、上がることができる。

早速、浮上の準備を終わらせ、宇宙への一歩を5~6時間ほどかけて、完成させたのだった。

彼等が地球軍にたどり着くのは、一体どれほどの時間がかかるのだろうか?

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