魅力UP大作戦 出演:羅ー、斐瑪、アルフ
「くぅ!…くぅ!…」
事務所で不思議な声が立っている事に、斐瑪は気付く。
声のする方に向かってみれば羅ーが、腕立て伏せをしているではないか!?
闘神の血を持つ羅ーにとって、運動なんて必要のないものだと思っていたが、やはりこういうところで己の鍛錬をしていることがあるのだろうか?
「腕立て伏せ?健康的で良いこと…」
斐瑪は自らの意思に関係なく、自身の存在を薄めることができる。
しかし、それは斐瑪よりも力が弱い者にしか効かないことであった。
当然、羅ーは、こんな無邪気な性格をしているが、顔を伏せていながらも、斐瑪が、どこにいて、更にこちらに向かってきているということまで、手に取るように分かっていた。
しかし、集中しての鍛錬に、全く見向きもせず続ける。
「にじゅう、っと!ふ~おわった~」
果たして何セット目の数字なのか、全身汗だくになりながら、漸く斐瑪を見る。
「一体どうした…?勝輝に襲われた時にちゃんと抵抗できるように、筋肉をつけている…?」
「そ、そんなのじゃないお~、…それに、もし勝輝が、私に襲いかかってきてくれるなら…きゃあ~~~っ!やっぱりダメなの~><」
この頃から、主流になっている妄想の中で羅ーは、突然暴れだした。
彼女からしてみれば、目の前には勝輝が今正に襲いかかるような状況なのだろう。
いきなり、両腕をガンガンに暴れさせ、抵抗している素振りをする。
しかし斐瑪は、それを避けた。
というのも、別に拳の連打等ではなく、ただ単純に振り回してきているだけな為、動きが単調すぎて見切っただけである。
しかし、その振るう速さは、人間のそれとは比べ物にならない。
軽く空は切っているだろう。
「やっぱり、抵抗するための筋肉…?」
「ああ、いや、そうじゃなくて~」
「よし…私がいい方法を教える、イメージトレーニング…」
「イメージトレーニング、かにゃ?」
こくっと斐瑪が頷く。
「体重100kgの覚醒生物、ザンギラスと戦うことにより、自然界の未知なるパワーを経験するという、常識にとらわれないトレーニング…ファイト、がんばる、羅ー…!」
「私は別に、地上最強の生物なんて目指してないお!!」
羅ーの絶叫は事務所だけにあらず、外にまで丸聞こえだった。
そんな中、事務所に一人の学校帰りが入ってくる。
「なんだぁー、今の大絶叫は!?って、羅ーと斐瑪じゃないか!どうしたんだ、んなとこで?」
「アルフ~」
羅ーは、勝輝の次に信頼しているアルフに無防備に近付いていく。
「羅ーが、勝輝に抵抗できるように筋肉をつけている…」
「んぁ?抵抗…?って、まさか!?あんにゃろー、羅ーに手を…手をー!?警察沙汰じゃねえか!もう容赦しねえ!一発、ぶん殴ってくる!!」
腕をパキポキならし、大股で階段を上がっていこうとする。
「あわわ、ちが、ちがうの~、私がちょっと腕立て伏せをしてたら、斐瑪が勘違いしちゃったの~」
「あに?そうか。それならいいんだけどよ…本当か?あのタコに口止めされてたりとかじゃねえよな?」
「大丈夫だお、勝輝がそんなことするわけにゃいじゃにゃいか~…寧ろ、手を出してくれてもいいくらいなのに…」
ぽろっとこぼれた本音に、アルフは恐い顔をする。
「羅ー?今なんて…?」
「ああ、なんでもにゃいからきにしにゃいで~><」
半泣きで、アルフの怖い顔に怯える。
流石に可愛そうだと、アルフは普通の表情に戻った。
「でも、それなら、どうして急に腕立て伏せを…?」
斐瑪が聞く
「あ、それはね~、なんていうか、その…」
「その?」
アルフが、目を細める。
さりげなく睨んでいるようにも見て取れる羅ーはまた少し怯え始める。
「大胸筋とか…ちょっとだけ欲しくなっちゃたりなんかしちゃったりなんかして…」
「つまり、筋肉…」
「やっぱり、あいつにナンカされたんだな!よし待ってろ!俺があいつを逝かせてやる。運動なんてしなくていいぞ~!」
有無を言わさず、ポキポキと音をたとながら階段を上がろうとする。
「ち、ちがうんだってばぁ~><だ、だからその、む、ムネを…」
「胸?大胸筋は、胸の筋肉…」
「だが、それは自分の身を守るためじゃなくて?」
降りてきて件し始める。
「胸を…胸を大きくするには、大胸筋があった方がいいっていう話を聞いたような、聞かなかったような…」
「胸?羅ー、お前、胸を気にしてたのか?」
「ううん、私はまだまだ成長する予定だから、問題はないんだけど、でも勝輝がなかなか、お風呂を覗いたりとか、夜這いに来たりとかしてくれないから、魅力UPの為に、今からちょっと成長を早めようかと思ったりとかなんとか…ね、私は別にお風呂に一緒に入りたいとか、一緒に寝たいとかじゃなくてね。ただ、そ、そそそそその自分の魅力を上げる為に~!」
またしても、羅ーの妄想が発揮されつつあるようだ。
これまでに何度となく、色々と見てきたが、毎度新鮮さを感じさせるそれは、どこか初心が混じっていて、可愛らしい。
「胸を大きく…うん、より良い子孫を残すためには、自分の魅力をUPさせるのは必要な事。よくわかる…」
「なんか、お前らの認識には、少し差を感じるんだが…まあいっか。だけどよ、その方法は時間がかかるんじゃないか?」
後髪をポリポリと掻き、なんとか対策を練ろうと考え始めるアルフ
「それは、そうなんだけど、でも、そういうのは急に大きくはならないじゃない?」
「まあ、確かにな、程度にもよるが、突然ボンッ!て大きくなったら、あからさまに怪しすぎるしな…」
「あと、胸が大きくなった時に、筋肉があったほうが垂れないってのも、きくのにゃ。斐瑪もどう?」
突然振られた事に、斐瑪は驚くが、割とすぐに、答え始める。
「私は別に…今のままの方が動きやすい…大きくなると肩が凝り易いと聞く…」
「…斐瑪って、割とスタイルいいもんにゃ~」
羅ーの言葉に、斐瑪にピカッと閃くものがあった。
「とどのつまり、羅ーは優秀な♂を魅了したい、という事?…?」
「あ、あのそういう直接的表現はやめてほしいにゃ><」
「とどのつまり、羅ーは、繁殖行動をより円滑に進めるために、自分の魅力を上げておきたいという事…?」
「あはは、ちがうよ~遠回しに見せかけて直接的表現も避けてもらえると…」
羅ーは、少し気分を害し始めていた。
「まあ、言ってることは間違いじゃないと思うけどな…」
「なるほど…羅ーは発情期なの…?」
「…だから、そういう表現はものすごく嫌だから、やめてもらえないかにゃ><」
羅ーの心にグサッと刺さるモノ
どうやら、羅ー自身はロマンチックな恋愛を楽しみたい所を、斐瑪はぶち壊そうとしているのだった。
「発情期じゃない…?そういう考えを持っているのだから…」
「いや、季節関係なく考えちまうものじゃないか?」
「ちょ、アルフ~!?それだと、まるで私が年中えっちぃ~事考えてるみたいな言い方じゃないかにゃ~!!」
アルフまで、鋭利に尖らせた言葉を刃を飛ばしてくる。
それは羅ーの心の奥深くにズサッズサッと刺さっていく。
「年中発情期…?羅ーはエッチなのか、私とは違う…突然変異か!?闘神はこれから、年中発情期しかない生き物として、劇的な変化を遂げていくのか…?」
「や、やや、やめてよぉ~><まるで私が新人類!カッコ、でもエッチィ事を常日頃から考えているだけ!カッコとじる。みたいな感じになってるじゃにゃいか~><」
「違うのか…?」
「違うお~!!これは私だけじゃないお、多分だけど…え?ええー!?違うのー?私、変な子?変な子なのかにゃー!?」
羅ーが発狂寸前にまで追い詰められかけている。
それをアルフはなんとかフォローするのだったが…。
「落ち着け!?羅ーはそれほど、変じゃねえから!」
「『それほど』って、事はやっぱり変な子なのー!!」
「うーん、少なくとも人として平均的…とは言い難いな」
「はぁうぅーーっ(。>_<。。)」
遂に心を折ってしまった。
「ああ、悪い…その、そういう意味じゃなくてな、十人十色って、言うだろ?だから十把一絡げでは人間をくくることはできないっていうか…だから、個性って奴だ!」
「常日頃から絶え間無く、えっちぃことばっかり考えている変態さんなのが、私の人としての個性みたいだお~><」
「うーん…そんなつもりじゃなかったんだがな、人をフォローするのは難しいな…」
言葉を間違えたと、熟後悔するアルフなのだった。
「とにかく、求愛行動を上手に行いたいだな…?」
「ちがう、ちがうけど…もういいお><これ以上話してたら、傷口をぐりぐりと、踏みつけられているみたい気持ちになるから…(。>_<。。)」
「うーん、とにかく羅ーは普通に部類に入ると思うからな、落ち込まないでくれ、な!」
背中に腕を回して、抱え込むように慰める。
「…うん、ありがとうごにゃいましゅ」
返事は聞けたため、アルフはもう、下手な事は言わない様にした。
「…求愛行動を上手にできる薬、私が作ってあげよう…?」
斐瑪のいきなりの言葉に5秒ほど、反応がなかったが、何度も頭の中でその言葉がリピート再生され、羅ーは途端に頭を上げる。
「え?今、なんて?」
「だから、求愛行動を、上手にしたい…その為の秘薬を、私がつくってあげよう…?」
無口で小さな口から発せられる言葉は、羅ーの心を潤した。
しかし、同じく聞いていたアルフは、羅ーのからかいの言葉だろうと、斐瑪を睨みつける。
「そんなの、ホントにあんのかよ!?」
「もちろん、嘘じゃない。一族に伝わる秘薬で、調合がとても難しいけれど、羅ーは可愛いから特別に今回はサービスする…」
斐瑪の口から、可愛いなんて言葉が出るとは、思いもしなかった。
何だかんだで、羅ーを大事にしてくれているんだなとアルフは、睨むのをやめ、自分に叱咤した。
「秘薬…秘薬か~、ちょっと興味があるお、お試しってことでお願いしていいかにゃ?」
「わかった、少し待つ、作ってくる…」
そそくさと、斐瑪は事務所の地下へと降りて行き、すぐに調合が始まった。
地下室の扉に掛けられた札には、『実験室』と書かれていた。
異質な物音や、危険なガスらしきものが吹き出るなど、いろいろと問題があったが、無事に斐瑪が戻ってきたということは、何事もなく調合は成功したのだろう。
そして、再び、事務所の一階でのことである。
「できた…これが秘薬」
目の前に置かれたのは、三つのフラスコに入れられた液体
「なんか、すごい色した薬だな…赤、青、黄色、どれも綺麗だなぁ~!その分、薬としては、すんげぇ怪しいんだが…」
「どうして薬が複数あるの?」
巌しい顔をするアルフと、手順があるのか、面倒そうに待つ羅ー。
「それぞれ効果が違う…、それぞれ、『ふにふに』したのと、『キュルキュル』したもの、あとは『ゴゴゴゴッ!!』という効果がある…」
「効果が違うってことは一つは、胸が大きくなったり、他に何かあるのか?」
「斐瑪の説明だと、さっぱりわからないんだけど…(・・;)」
「それは試して見れば、分かること…」
斐瑪の雰囲気の暗さもあってか、目の前の三つの薬は、どれも良的な効果を得られるものかと心配になってくる。
「ちょっと怖いけど、試してみるにゃ」
「お試しなら、量はそんなに塗らないほうがいい…、薄く広げる様に塗るといい…」
「本当に塗るのか?」
アルフが赤色の液体の入ったフラスコをガシッと掴む。
よくみると、液体のようなそれは、ゼリー上になっていて、飲む物というよりは塗り物の様な外用薬だった。
勢いでつかむアルフでさえも、フラスコの中の液体は、殆ど、揺れず、零れる事はなかった。
「せっかく斐瑪が作ってくれたものだし、それじゃあ」
スーと、上着の袖を捲くり、フラスコを手に取ろうとするが…
「ん?どうした?硬直して?」
「あ、あの…やっぱり恥ずかしいから、あんまり見ないでね」
羅ーの言葉に、アルフの頬が赤くなる。
「ああ、悪い。配慮が足りなかったな」
そういってアルフは、羅ーとは正反対の後ろを向く
「それじゃあ…ん、はぁ、くぅ…」
変な声を立てる羅ーにアルフは思わず聞き耳を立ててしまう。
「どう…?羅ー?」
「ちょっと冷たいかな、それにすっごいヌルヌルする…滑るお」
「冷たいのは仕方ない…」
「そ、そうだよね…ん、はぁ、くぅ、ん、うぅ…これでいいかな?」
腕を袖を戻し、アルフにOKの合図を出す。
「どうだ、終わったか?」
「うん塗り終わったお」
「どんな感じだ?大きくなりそうか?」
「え、えっと、なんだかすごくムズムズして…」
羅ーの腕は、まるで小傍唯感覚に陥っていた。
「そろそろ反応するはず…その前に準備をしないと」
「え?準備??」
斐瑪が、どこから取り出したのかマスクを付ける。
最初は二人とも、ちんぷんかんぷんだったが、先に事態に気付いたのは、アルフの方だった。
「こ、これは!!?…ゴホッゴホッ!なんだこれ!?すんげぇ臭い!ゴホッ!ゴホッゴホッゴホッ!」
「あ、あやめ…ゴホッ!なにこれ?すっごく変な臭いがするんだけど~」
二人の言葉に、斐瑪は鼻声で答える。
「それは♂が寄ってくる臭い、フェロモン…これで♂は羅ーにメロメロ…」
「メロメロというか、ケホッケホッ!これじゃ勝輝と話をすることも、ゴホッケホッ!できないお~」
「うう、斐瑪は平気なのか?この臭い…」
羅ーの言葉に続いてアルフが、鼻をつまんで言う
「大丈夫…すでに鼻栓をしている…」
「くっ、ヒキョオーーーッ!さっきから、ヤケに鼻声だと思ったら、ゴホッゴホッ!ダメだ…臭いが鼻の中まで染み付いて、ゴホッ!ゴホッゴホッゴホッ!とにかく、このままだとエライ事になりそうだから、早く洗い流してくるんだ!…くぅーっ!鼻摘んでも臭ってきやがるし…」
「う、うん~><」
二人の意気投合に斐瑪はがっくりと項垂れる?
「ダメ…?」
「ぬぅ…コイツは臭いが強烈過ぎだ」
「…でも、効果は抜群、動物だけではなく、色んな生き物に効果がある。ほら…窓の外にも、もう虫が集まり始めてる…」
斐瑪の言葉に、アルフは窓を見回してみる…
「えぇ?…ぐおぉーーーっ!!早く、早く洗い流してくるんだぁーっ!!!」
窓を見回せば、外の景色が見えなくなるほどの虫の大群。
蠅、蜂、羽蟻、飛蝗、蟋蟀、G、蚰蜒、団子虫、甲虫、鍬形、黄金虫、亀虫、瓢虫、蚊、蛾といった凡ゆる虫が窓中を埋めていた。
「うわわぁーーっ!わ、わかりました~~~!!!」
おぞましき光景に、二人はささっと洗面所へと駆け込んでいったのだった。
斐瑪が、そんな光景には、気に求めず、羅ーが使用した赤色の液体の入ったフラスコを回収した。
その間に虫達は、なぜこんなところにいるのかと、それぞれ自分達の持ち場、あるいは土の中へと潜っていった。
まだ春だというのに、季節でさえを超越させる秘薬の力は末恐ろしいものだと、斐瑪も二人も思った。
「ああ…あぶなかったな、窓が閉まっていて助かったよ。もう少しで大惨事になるところだったぞ!」
「効果抜群な秘薬…えっへん」
小さな声とは裏腹に思い切ってドヤ顔をしてみせる。
「確かに効果抜群だけど、人じゃない生き物に、効力が発揮されすぎだお~。それに臭いも全然落なくて大変だったぽ…」
「そうか、これはダメか…それじゃ、こっちはどう…」
斐瑪は青色の液体の入ったフラスコを差し出す。
「…違う種類の臭い、なんてオチじゃないよね?」
「大丈夫、安心…」
「そうかなぁ?それじゃとりあえず…」
羅ーが果敢に挑むその姿に、アルフは感激していた。
斐瑪の秘薬を使ってまでも、そこまで自分の魅力?を上げる為に、がんばろうとする。
一体何がそんなに彼女を動かしているのだろうと、アルフは考えていた。
「気をつけるんだぞ!羅ー」
「…もしもの時は、解釈をよろしくお願いしまふ」
「わかった。まかせておけ!」
そういって、再び腕の袖をまくる。
アルフも後ろを向く
「それじゃ…んぅ…んぁ…くぅ…やっぱりヌルヌルして、冷たくて…」
慎重に塗っていく。
「今回はどう…?」
「…臭いは大丈夫、かな?でも、なんだか体がピリピリする」
「それ、大丈夫か?」
いつの間にかこちらを振り返っていたアルフに、心配の言葉をかけられる。
「問題ない、そういうモノ、本番はここから…」
「本番?」
アルフが疑問じみた表情をした途端!
「ふぇ?あ、わああーっ!手が勝手に!?わっ!足まで!?なにこれ!!?体が勝手に、う、う、動いてー!?」
急に羅ーが、異質な踊りをし始めたのだった。
「森の先住民達、秘伝の求愛ダンス…これを踊れば、メロメロにならない獣はいない…」
「私は別に、森の動物を、うわあっ!メロメロにしたい訳じゃないのーっ!!」
「心配いらない…それを完璧に踊れれば他のメスなんて恐るるにたらない」
斐瑪の言葉にアルフは、頭を抱え込んでいた。
それに加えて、あまりにも、羅ーの動きが下手くそじみているのも重なって、笑いをこらえている。
これでは、某ダンスユニットはおろか、個人のクラブにも、入れてもらえないクラスだろう。
「いくら踊りが完璧でも、人には踊りの求愛は通じないと思うが…はぁ、また失敗ぽいし、洗い流したほうがいいんじゃないか?」
「くぅ、んにゃ、おおー!そうしたいんだけど、ああーっ!体が勝手に動いて、洗面所に行けないのーっ!た、助けて、たすけてよぉーっ!!」
「ぬぁ!?じっとしねえと、助けようにも助けれないってよー!」
「そんなこと入れてもっ!あ、うわあーっ!!」
アルフが上手く、羅ーを負ぶさっていったからか、なんとか洗面所までたどり着くことができた。
しかし、この苦労は、常人の生活より大変なんじゃないだろうか
っと、アルフは心身、思っていたのだった。
ようやく、戻ってきた二人は、もう、ヘトヘトだった。
「ああ、ひどいめにあったお…」
「踊りはダメ…?」
「あの踊りは人には通じそうにないから…」
「そう…難しい、人というのは…だけど、もうひとつ、ある…」
斐瑪が指差したのは、黄色い液体の入ったフラスコ。
先程までは体当たりで挑んでいた羅ーだったが、今は、ただ、とにかくやばい物を見るような目をするしかできなかった。
羅ーよりも先に、アルフが口を開ける。
「ものすごく、不安なんだが…」
「私も同意見なんだにゃ><」
二人の意見に、斐瑪は悲しそうな顔をする。
「…いらないの…?」
罠とわかっていても、守ってあげたくなるような、悲しい表情で、更には半泣き状態になってしまっていた。
「そんな悲しそうな顔しないでぇ~><」
あまりに同情を誘わせる表情に羅ーは覚悟を決めるしかなかった。
「はあ…わかったお、これが最後だし」
「えぇ?い、いいのか?まあ、羅ーがそういうのなら止めはしないが…」
「できる限り、助けてくれるとうれしいお…」
「よし、わかった。何が何でも助けるから、安心しろ」
「それじゃあ、塗ります!」
決意に身を固め腕の袖を捲る。
三度目にもなると、慣れが生じてきたのか、羅ーを助けることで気が一杯で、後ろを見ずにいるアルフの視線でさえももう気にしなくなっていた。
「ん…はぁ…んん、ん…ふぅ…」
羅ーの声は、この時に発されているものだった。
ばっちり確認するアルフは、何故か変なことが頭に回る。
「毎度、毎度思うんだが、その声やらしいぞ…」
「はぁ…ん、ん…だって、思わず声が漏れちゃって…」
「塗り終わった…?どんな感じ…?」
斐瑪の問いかけに、袖を戻す羅ー。
今までとは違って、体に不思議な感覚や、臭いといったものは無かった。
「…?えっと、今度は…」
しかし、今回の現象は、一番きついものだろうと誰がわかったか。
「ふえ?うわあーっ!なにこれーーっ!」
突如として羅ーが、眩く広範囲に発光しだした。
「うおおおおおおおーっ!!眩しいーーーっ!!!」
目の前でいきなり発光しだしたのを、アルフは直視していたため、目をやられてしまった。
床に倒れ、目を押さえて悶え苦しんでいる。
「なんか、急に光ったおーっ!」
「ある法則で点滅することにより、♂をメロメロにする。視覚的要素を盛り込んだ薬…完璧!」
発光している中で斐瑪は、(*^^)vっと、してみせるが、もちろん、この強烈な発光の中で見えている者はいない。
それに点滅しているようだが、事務所全体が真っ白になっているこの状況で、点滅しているのかどうか、それさえわからない。
「完璧じゃないお、眩しすぎて、目が開けられないおーーっ!!」
「眼がーっ!感光したぁぁぁぁーーーっ!!!なに、なにが起こったんだーーーーーっ!!?」
羅ー、アルフは両方共、余りの光にどうすることもできなかった。
「相手の人だって、目が見えなくなっちゃってるしーーっ!!」
「そうか…、確かに私ね何も見えなくて今困ってる…。まさかこんな落とし穴が!?…これが孔明の罠…?」
「違ーう!!これはただの欠陥品だおーーっ!!!早く落としに行かないと…う、うわあっ!…グスン、眩しくて周りが見えないのーーーーーーーーーっ!!!!!」
「これもダメ…?人の求愛行動は面倒なモノなのか…」
斐瑪の納得も虚しく、この後、三人がどうなったのかは、誰にもわからないのであった。




