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二人二声之影Ⅱ  作者: LAR
特別編NS
19/22

風邪をひいたら 出演:羅ー、サーシャ、斐瑪、椿

「か、勝輝ーーー!」

劈く様な甲高い声と、勢いよく駆けてくる足音に、事務所に居た者達は一斉に何事かと、集まり出す。

「騒がしいですわよ、どうかしまして羅ー?」

「羅ー、少しうるさい…」

事務所に残っていた者達というのは、サーシャと斐瑪だった。

二人共身寄りがないため、勝輝の事務所に住まわせてもらっている。

そして、この騒がしい元凶は羅ーだった。

「だってだって、勝輝が、勝輝がぁ~!!」

「だから、勝輝がどうしましての?」

羅ーの騒々ぶりには困ったものだと、サーシャは呆れる。

「ね、ねね、熱があるの~><」

「熱がある?わかった、私が勝輝を冷たくしてくる」

「どうするつもりですの?」

ハテナマークを浮かべるサーシャを見て、これだから身の程知らずは、と、斐瑪はため息をもらす。

「生き物を冷たくする方法は簡単、これでもハンターとして一度は生きたことがある…狩りは得意」

「狩りって…、死んだらどう致しますの?」

一体何に対して小バカにされたのか、わからぬままサーシャは斐瑪の揚げ足を取る。

「…?死ななきゃ冷たくはならない…」

「な、何言ってるの~!か、勝輝を殺すなんて~><」

「ダメなの…?」

「ダメ、ぜったいぜーったい!ダメなの><」

「だめぇ?」

「…そんな可愛いらしく言っても、ダメなものはダメなの><私は…」

羅ーの言葉に続くのはある有名なセリフ。

それが周りの者たちにも見える。

「綺麗な顔してるだろ…死んでるんだぞ。それで…」

突如としてみえた光景に一同が真っ青になる。

「なんて言いたくないお~><」

今のはなんだったのかと、口篭る空気を破ったのはサーシャだった。

「斐瑪、別に生き物としてありえない温度にまで下げろというわけではないですの」

「そうなの、私はただ、勝輝の体温が高いから、勝輝を平熱に戻したいだけなの」

ピンポーン!

その時、来客を示すベルが鳴る。

「?もう、こんな忙しい時に誰よ~、んも~!」

慌ただしい勢いで、玄関に向かう羅ー

そんな中、サーシャと斐瑪は、語り合っていた。

「…血を抜けば、体温下がる?」

「確かに体温は下がりますわね」

「じゃあ、ちょっと6000ccほど抜いてくる。全く、手間の掛かる奴…」

「勝輝の体の血液量を超えていますわよ、それ…」

めずらしく、明るく流すことなくサーシャは止めにかかった。

「ダメ?」

「流石にダメですわ。それにあの方は、なかなか面白い者ですし、なにより司の大事なご友人。そうやすやすと死なせるわけにはいきませんわ」

サーシャの言葉に、吸血の牙をあっさりと納める斐瑪であった。

来客は事務所に居座る者、元:椿だった。

「勝輝様が熱!?大丈夫なのですか?」

「あら、椿ではありませんの。一体どういたしましたの?」

突然の来客(帰宅)にサーシャは快く迎える。

「最近出歩いていて、気になる和菓子店を見つけたので、ご一緒にと、お誘いを申し出にいらしたのですが…その様子だと中止せざるを得ないようですね」

「ごめんね~つばきぃ~><勝輝を一人置いていったりは、やだから~」

半泣きの羅ーを、頭二個分の小ささの椿がうまく抱え込む。

相変わらず長身な女ですわ、と、サーシャは思うが、なにより、そんな身長を気にもしない椿が羨ましかった。

「いえいえ、お店など平日なら何時でも行ける事、また今度にしましょう」

「うにゅ」

「それで、勝輝様の調子はどうなのでしょうか?」

「熱があるの、体温計で計ったら39°あった~><」

「39°!一体何があったのでしょう?普通ならそんな大きな熱にはならないはず…」

椿の問いに隣にいた、サーシャはじっと考えて思い返す。

「そういえば羅ー、貴女昨日、斐瑪と遊んでて、ガスの元栓が切れた、とか言ってましたわね?」

「うん」

「そのあと勝輝が、入浴なさって、水しか出なかった、と、脱衣所で聞きましたわよ」

「…それは、流石に不幸としか言えませんね」

清々しい表情の椿が、額に汗を浮かべる。

「まずは熱を下げないと、その前に病院…でも勝輝は辛そうだし、あ!救急車!100番!」

「落ち着きなさい!それは通話料金を知りたい時の番号ですわ、救急車は114番ですわ!」

二人の漫才振りに、椿が制止にかかる。

「御二方共落ち着いてください!114番は連絡先の相手が、話し中かどうか確認するための番号です」

というより、よくもまあ、そんなマニアックな番号と間違うものである。

「電話する…?」

斐瑪が、事務用電話の受話器を取って、数字ボタンをいつでも押せる準備をしていた。

「その必要はありません。ただの風邪でしょうし、少し様子を見ましょう。流石に救急車は大げさです」

「そ、そうだよね。まずは熱を下げないと…氷、氷…あ、でも寒がってる場合はどうしよう?Hot?それともCool?Hot!?Cool!?どうしようぉ~!?」

羅ーの大袈裟な焦りに、またしても椿が出る。

「ああ、あ、ただの風邪なんですから、放置はマズイでしょうけど、落ち着いて対処しましょう」

「椿は風邪をひいた場合、どう致しますの?」

突然きたサーシャの言葉に、椿は首を向けず答える。

「スポーツドリンクを飲みまして、水分補給だけはしっかりと、あと暖かくして寝て、とりあえず汗をかく。それでも熱が下がらなければ、病院といったところでしょうか?」

「ふうん、なんだか体力がいる治療方法だにゃ」

「はい…うまくいけば一晩ですっかり完治します」

「ですけど暖めるのはいいことではなくて?程度にもよりますでしょうけど、熱を下げたいからといって、裸にする訳にはいけないでしょう?」

サーシャの言うことにも一理ある。

「そうだね、それじゃ勝輝の体を温めないと」

「冬用の服と毛布とかで、厚着するのが良いかもしれませんね」

「でも、それはちょっと勝輝が苦しくならないかな…?」

「それじゃどうするおつもりですか?」

椿の問いに羅ーは顔を赤らめ始める。

「そ、それは…し、しょうがないから、私が一肌脱ぐしかないかと…」

「一肌脱ぐ…?」

羅ーの言葉に、斐瑪が反応を示した。

「や、やっぱり、こういうのは人肌が一番いいんじゃないかな…て、ああ、勘違いしないでね、別に変な意味じゃないんだお、勝輝が病気だから、だから、仕方なくなんだからね。別にやましい気持ちはこれっぽっちもないんだからぁ~!><」

勝手に誤解を生むような言い方を、次々とこぼす羅ーなのだった。

「いや、流石にそれは…どうなのでしょう?やはりまずいのでは?」

椿も冷や汗を流すばかりだった。

「だ、大丈夫…その程度なら、勝輝の風邪は移ったりしないと思いますし…」

「いえ、私が言いたいのはそこではなくて…」

押しに出れない椿なのだった。

「寒い時に互いの体を寄せ合うのは普通の事…」

「まあ、嘗ての人間達はそうしていたのでしょうけど」

サーシャも段々、頭が痛くなってくる。

「勝輝なら、勝輝なら私の気持ちをちゃんと分かってくれるはずなの、そして…きゃあ~♪きゃあ~♪勝輝のえっちぃ~、私はそんなつもりじゃないの調子に乗っちゃダメェ~!!」

バシバシと、椿の背中を叩く

「い、いたい、いたいです。羅ー様、そんなに体を叩かないでおくんなまし!」

「ご、ごめ~ん、とにかく私はいってくるね~」

ダッダッダッと、階段を駆け上がり勝輝の部屋に向かっていく。

「ああ…行ってしまいました。このまま羅ー様が帰ってこなかったらどういたしましょう?」

ひどく心配気味な椿、クローン化の影響なのか、司に比べると、とても周りを思うようだ。

「その心配はいりませんわ…勝輝君は、ああみえて芯が強い子。意外にむっつりなんですわよ」

サーシャの言葉に椿は少し安堵の息を吐く。

「私達も勝輝を暖めに混ざる…?」

「いえ、理屈としてはわかりますが…て、なりません!斐瑪様まで服を脱がれては!!」

てきぱきと準備を始める斐瑪を椿は止めにかかる。

「…?参加しないの?」

「それは流石に…貴方達はともかく私は、司のモノですから。それに、そろそろ…」

サーシャが気配を感じ取る。

大体3秒くらいしてからだろうか、羅ーがしょぼーんと表情を落として現れた。

「勝輝に怒られた><『何考えてんだバカー!』って、私はただ、勝輝を暖めたかっただけなのに~(。>_<。。)」

「相手が勝輝君なら、そんなところでしょうね」

泣き崩れる羅ーを、サーシャは介抱する。

「雪山じゃあるまい…とにかく、私はスポーツドリンクを買ってくる…」

「あ、私も饂飩の材料を買ってきますわ。途中まで一緒に行きましょう。椿!羅ーの御守り頼みましたわよ」

羅ーの介抱は、椿に任せて斐瑪と、サーシャは出て行った。

「うにゅ、私たちはどうしよ~?」

椿に膝枕をしてもらいながら、羅ーは相談を持ちかける。

「勝輝様、病気なら、私が薬を作りましょうか?」

「え?なにか作れるの?」

「もちろんです。遥か昔にも行われていた、処置方法で『蚯蚓』を煎じて飲めば良いのです」

椿のドッキリ発言に、羅ーは膝枕から離れた。

「そ、そんなの飲ませちゃって大丈夫にゃの?」

「あくまでそんな方法もあるということです。ですが、最近は蚯蚓自体、とりづらい世の中になっていますし、時間もかかりますので、今日はこの事務所にある薬でなんとかいたしましょう」

「そ、そうだよね。うん、そうしお~」

羅ーは心の中で思った。

ミミズなんてお仕置きの材料でしかないじゃん。と

羅ーと椿が、事務所を散策しまわって薬を探している間、斐瑪とサーシャも買い物を済ませて戻ってきていたのだった。

「というわけで勝輝君に、饂飩を作るといたしますわ。それとなにか薬があればよいのですけど…」

「薬あったよ~、これこれ~♪」

羅ーは駆け足で戻ってくる。

手に持っていたのは確かに薬、薬だったのだが…

「…座薬ですの?そういえば、以前、司が風邪をひいて倒れた時に、私が風邪薬を全部持ち出していましたわね。座薬は流石にいらないと思って置いてはいましたけれど」

サーシャは自分に不覚と、頭を下げる。

「座薬ってなあに?」

羅ーが無邪気な表情で聞いてくる。

「え、えーっとですね、座薬というのは…」

「お尻の穴に入れるものです。効力が高いので高熱で嘔吐するのを考えるとちょうど良いと思いますが…」

サーシャの問いにあっさりと答え、更には奨める椿だったが、再びサーシャがそれに突っかかってくる。

「で、ですが、座薬って…勝輝のお尻に誰がいれますの?」

サーシャの言葉に、この場にいる全員が固まる…。

よくよく考えてみれば、今いるのは全て女性だ、男勝りな者もいれば、男女を平等に考える者、無頓着な者、ある特定人物だけを溺愛する者もいる。

しかし、そうはいってもみんな初心な女の子。

とてもじゃないが、風邪で寝込んでいるとはいえ、男の尻を奪う事など簡単にできっこない事だろう。

「へ、変な意味じゃなくてよ。勝輝君も体調を崩して色々と大変でしょうから、意外と大変なもののようですし、だからその他の人にやってもらのがいいのではなくて…?」

「そ、そういう考え方もできないことは…ないのでしょう。いや、でもそれはやっぱり…」

サーシャも、椿も、口調がおかしくなっている。

この二人だけにあらず、今この場にいるものは皆、よからぬ事を考えてしまっていることなのだろう。

「と、なると、この中のうちの誰かが入れることになるのではなくて…?」

「勝輝のお尻に?これを?」

「勝輝様本人を抜くとすれば、この中の誰か、ということになりますね」

冷静に考え始める椿、だが、サーシャはというと、まだ初心が解けないでいる様だ。

「そう…友人を助けてあげるのが友人の勤め。私が行く…」

それまで黙っていた、斐瑪が、いきなりすっと立ち上がり、羅ーの座薬をさっと奪ったかと思うと、そそくさと階段を上がっていこうとした。

しかし、それを椿が止める。

「嫌々に行くくらいなら、私が行って参りましょう。やはりこういうのは、汚れを受け持つ巫女の方が…」

「なんだか、よくわからないけど、私が行けばいいの?勝輝のお尻に入れればいいの?勝輝のお尻に、ズッキューッン!してくればいいの?」

羅ーの言葉にまたしても、一同は困惑したような気に落ちる。

「ズッキューッン!って、どんな状況…?」

冷や汗を流す斐瑪、奪い合いのように交差するこの揉め事は一筋縄ではいかない結果になることを、誰もが望み始めている。

「いえ、ここは私が責任を持って、行くとしますわ。司との関係性を持っている私の事は、勝輝君もよく知っている事、余計な気を起こさなければ勝輝君も、自然に受け取ってくれるはずですわ」

うーん、と、四人の中から担当者を決める会がはじまる。

まず最初に、言葉を発したのは羅ー

「斐瑪、さっき躊躇ってたよね」

「私だって女…ためらいもする。だけど、こういうのは、汚れ大き黒神が受けるべきだと思うから…」

斐瑪が墓穴を掘る。

そんな言葉を発せば、もうひとりの神もだまってはいないことになる。

「神というのなら私だって神ですわよ。闘神、そうですわ、闘神は戦いの神ですから、こんなことは気に求めないですわ。だからここは私の出番ですわ」

サーシャがいきり立って前に立つ。それを椿がくずしにかかる。

「さっきから、神の三方々は様子がおかしいですよ。そんな汚れじみた行為、この巫女が涙を惜しんで遂行するのがピッタリです」

「あ、お待ち!それは私の大役なのですわよ!!」

椿が、さっと奪い取った、座薬をかけて、追い掛け回すサーシャ

並外れたスピードだが、椿も負けてはいなかった。

「やめて~さっきから、暴れてばっかりで、そんなことばっかり言うのなら闘神の頂点である私が…」

視界に入り込んできた椿の腕を抑えて、その座薬を奪い取る。

「そんなに気にしない…、私が行ってくる」

小さな黒い少女が、長身にジャンプするが、ぎりぎりのところでよけられる。

「そろそろ私が、手を挙げたときに、どうぞどうぞ!と譲られても、いい頃合なのではなくて?」

サーシャが芸人じみたことをしてみせるが、まるで気に求められなかった。

うーん、と、再び四人の中から担当者を決める会がはじまる。

「はぁ…このままでキリがないですわ、どうでしょう?恨みっこなしのジャンケンできめるというのは?」

「そうだね、それが一番いいですね」

「こうして話している間にも、勝輝様の風邪は悪化する一方でしょうし」

「しょうがないから…私もそれに賛成」

全員の意見が一致したところで、サーシャが指揮をとる。

「では、行きますわよ。ジャンケン!ポン!!」

四人がだしたのは!?

一同で見回していく。

サーシャ、椿、斐瑪はパー、羅ーはチョキだった。

「え!?やったあ~♪、勝ったお~♪」

「失敗しました…」

「むぅ…」

椿と斐瑪に、悔しさが見て取れたが、サーシャは納得の笑みを浮かべていた。

「まあ、勝輝君を一番思っている人が、この勝負は表に出ていたのでしょう」

「やったよ、勝輝、勝輝のお尻は私が守ったお!」

羅ーに微笑ましい笑顔が浮かんだ。

「いや、守ったというよりは…奪う権利を勝ち取ったといいますか…」

「そ、そうだった。これから私が勝輝の、勝輝の貞操を…」

羅ーに再び妄想の域が走る。

その光景は、この場にいたもの全員に見えていた。

「うあぁ…だめだよ羅ー、ちょっと痛いよ」

「大丈夫だよ、勝輝、私が優しくしてあげるからね…はい、力を抜いてね~」

「入ってくる…ああ、そ、そこは…」

「か、勝輝の中、熱いですよ。すごく熱くて」

「羅ー、俺…うああーーーーっ!」

そこで妄想の域は消える。

しかし当の本人の妄想はまだ消えてはいなかった。

「か、勝輝…はぁ、はぁ…って!変な事言わないでよぉ~!!」

「息が荒い、羅ー、変わるか…?」

隣にちょこんといた斐瑪に羅ーはビックリするがすぐに戻って

「だ、大丈夫…別に、変な妄想をしたとか、そんなんじゃないから、勘違いしないでね><すーはー。それじゃ行ってきますね」

羅ーは猛スピードで、勝輝の部屋へと向かっていく。

「はあ…、これで勝輝君の処女が焦らされ、そのまま勝輝は童貞のクセして後ろは開発済みという身体に…クク、それはそれでなかなかおもしろそうですわね」

「その趣味は少し理解しかねないですね…。それにしても、さんざん話しておいてなのですけど、私、結果が見えている気がするのですが…テンドンってものでしょうか?」

二人して、不思議かな会話を交わしているのだった。

「そういえば、座薬は食後でなくてもいいのでしょうか?…とりあえず、私は饂飩でも作っておきますね」

「すぐに羅ーも戻ってくるでしょう。…と、行ったそばから」

気配を勘付いたサーシャが階段をみると、泣きながらトボトボ降りて来る羅ーがいた。

「う~グスン、勝輝に怒られちゃった。『そんなの自分でやるわー!!』…って、しばらく一人にしておいてくれって、おこられちゃったお~(。>_<。。)」

「あははは、まあ勝輝君ならそんなところでしょうね」

サーシャは、羅ーの結果報告に思わず笑みをこぼしてしまっていた。

「しかも、勝輝に変な目でみられた。まるで変態を見るような目で、ちょっと、というかかなり引いてたお><だれだお~座薬は他の人が入れる必要があるとか言い出したのはぁ~><!?」

「羅ーでしょ…」

羅ーの言葉にそっと言葉を返す斐瑪だった。

「まあ、病気の時は普通に看病してあげるのが一番でしょうね」

サーシャの正論に、一人を除く他の者は、せっせと看病の準備をしたのだった。

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