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二人二声之影Ⅱ  作者: LAR
本編
15/22

13話 御剣(ツルギ)の眼覚める時

勝輝には、まるでその行動が分からなかった。

目の前の侍女…和吹花火が、どうしてコンプレクシティであったのにも関わらず、ニュージ・アースで戯れていたのか

それよりも気になっていたのは、ティリアの事だ。

彼女は一体どうなった?

「花火さん…どうして?」

勝輝にはもう何もかもがわからなくなってしまっていた。

さっきまでは味方だったはずの花火が?敵?では勝輝自身が身に付ける事の出来た、この剣術は一体何?

「しょーもない事を考えるのはお止しなさい」

その花火の言葉に、勝輝はようやく、周りが見えてくる様になった。

今は、凌ごの言っている場合ではない!

一刻も早く花火を倒さなければ、地球崩壊へのタイムリミットは、刻一刻と迫っている。

「名勝輝、師弟との戯れをしましょう。2時間程…いい訓練になるはずですよ」

刃のない刀を、抜刀し、上方に構える。

「そしてもう一度言います。しょーもない考えはお止しなさい!」

その言葉を放った瞬間、花火に闘気が見え始める。

「余計な交錯は、自らに死を呼ぶだけ…さあ、参りますよ!」

勝輝がまだ構える体勢すら、していないにも関わらず、花火は刀を腰に構え、一直線を駆け巡った。

「う、うわっ!!」

一瞬の中の事。

4回にわたる花火の居合を、勝輝は、なんとか捉え、鍔迫った。

何度かの中で火花が散っていた。

両者の模刀にわずかな、焦げがついた。

「一瞬の中での防御、見事です。ではこれならどうでしょう」

次の一撃がもう来る。

勝輝は、まだよろよろとした体勢の中、次に備えようとした。

花火が刀を右腕だけに持つ。

そしてまた俊敏な疾走!

(くるっ!!)

勝輝には花火の攻撃が分かっていた。

ニュージ・アースの訓練の中で見た技法“疾走二転右横斬舞”だった。

(これならいける!そこだ!!)

この技法に弱点がある。

左腕が無防備な点、単純に片腕だけの技となるため、左腕が筒抜けなこの技は、全く欠点だらけなものだった。

しかし、勝輝が捉えた時、花火は、左腕にも刀を握っていた…。

「な、なに!?」

捉えたのは花火の方だった。

直撃は避けれない

痛感が勝輝に襲いかかる。

気を通し、樫で殴られた様な一撃をもろに喰らう

「ぐっ!くそ」

衝撃で飛ばされた身体を、空中で立て直し、地に足から付く

やはり勝輝自身も思っていた通り、気が保護してくれている。

滅多殴りにされた身体ならば、既に骨は砕けていた。

しかし今の勝輝は、痛みはまだ残ってはいるものの、差し障りはなかった。

(何とかいけるか?だが、ただ保護されているだけじゃ花火さんには勝てない!どうすればいい…)

技が終わり、前髪に隠れた表情を手直しする。

その瞳は、気など込もってはいなかった。

つまり、花火は腕力で、今の一撃を勝輝に浴びせていたのだった。

「あなたは私から、剣術を学びましたが…私が教えたのは基礎中の基礎。疾走二転右横斬舞は基礎技、初歩の下章の技」

花火の技は、全く別のモノだった。

「今の私の技は、連撃の功、疾走技の中章、疾走二斬浮人舞」

その構えをしてみせると、左腕に気で生成された刀が出現した。

「刀自体は気で生成されていながらも、これは自身が持つ刀に、技が同調し、同等の長さ、威力を持つ刀を作り出すだけです。よってこの技は気を使わずに繰り出せるわけです」

長々とした会話に、勝輝はゆっくりと理解していく

しかし、花火はどうして、このような、素早い技ばかりがあるのだろうか?

侍女にしては繰り出す技の一つ一つが、余りにも早さに偏りすぎているのだった。

そんなことを考えていると花火はそれを察したのか、刀を一時的におろし、勝輝を見据える。

「私は侍女という素性でありながら、忍の長でもありました」

突然、自らの過去を明かした。

技の殆どに『疾走』がつくのは、忍の部分が混じっているからなのだろうか?

「今でこそ侍女ですが、完全に技術を露にして、戦ってあげましょう…」

花火にの闘士が、濃く変わる。

姿は変わらないのに、まるで戦場と化したかの様に、辺りには、不可思議な風が走っていく感覚を肌から持たせた。

「な、なんだ、この感じは?それに花火さんが…」

勝輝は、辺りの雰囲気の違和感よりも目の前にいる侍女に、目が離せなかった。

「二人に見える!?」

まるで不思議なモノを見る様に、勝輝の眼は花火を捉えて離せなかった。

「身力を極限にまで速めることにより、まるでひとりの対象が二人に見えるようになる術。二重ノ人感」

二人に見える花火の声がそう言った。

実際は一人なのに、発声でさえも、一人の様には聞こえなかった。

「今の通りです。私の行動が全て、二重に実行できるわけです。では…」

花火が先の構えをとる。

勝輝の思考が目の前の二重の能力者を、危険と判断する。

しかし絶対猛勢の渦中が、勝輝の足を竦ませ、動き出すことができなかった。

これは恐怖だと、認識しだしていた。

「疾風・自転香燕山!」

すぐさま、二重は空中へと舞い上がる。

「秘天・桜天吹」

刀を抜刀すると、同時に無数の桜が舞った。

そして、一回転を空中で起こし、そのまま勝輝に向かって、刀を振り下ろす。

「くっ、足が…うごかない!?」

直撃だ。

勝輝は覚悟を決めた。

バシィーッ!

痛烈な一撃が脳天に走る。

頭から足にまで全身に広がり、地面からその身体を飛ばしてしまう。

木団(モクトン)!」

宙に浮く勝輝を背に、花火が目を閉じて一声

地面から、大きな丸太が幾つも、飛び出てくる。

勝輝の背にそれは直撃する。

「ぐはぁーっ…」

勢いの付いた、木塊による打撃に勝輝のダメージは、一気に限界に迎えた。

衝撃に返され、ようやく地に戻される。

しかしもう、勝輝には体力が限界へと陥っていた。

もはや、立ち上がろうとする気力でさえも、ないだろう。

それを見て察した花火は背を向け、刀を鞘に戻そうとするが…。

「ま、だだっ!」

声に驚き振り返ると、ゆっくりと勝輝は起き上がろうとしていた。

全身は打撲、打ちのめされた痣で、一杯であろう身体に何とか命令を送り、健気に立ち上がったのだ。

「末恐ろしい根性です。あれだけの打撃を受けていながら、まだ起き上がろうとは…基礎の演習中もそうでしたが、中々素質がありますね」

流石と言わんばかりに花火は、勝輝を褒め称える。

しかし、必死に起き上がった勝輝、だが、未覚醒のままでは、花火に対抗することはできない。

能力者は、能力の宿る武器、あるいは、能力自体で攻撃しなければ、能力者に備わる気の壁で攻撃を遮ってしまう。

勝輝に万の一つも勝機などないのだ。

この名前は、完全に親がつけ間違えた。

そんなことを勝輝は考えるくらいしかなかった。

「そのまま倒れていれば、助かったかもしれない命を、あなたは自らの行動によって捨ててしまった」

花火が刀を、技をかける構えを取る。

「さあ、トドメです、もう一度、疾風・自転香燕山を浴びせましょう!」

再び空中へ、桜吹雪を舞わせる。

一回転を空中で起こし、刀を振り上げた。

「くっ!」

また、足が動かなくなる。

「さようなら、勝輝さん」

正に、刃のない刀の打撃が触れる瞬間!

勝輝の眼が、赤黒く輝きだした。

そして、頭の中で声が聞こえてくる!?

[後ろに倒れろ]と…

今のままではどうしようも無い、身動きが取れないのでは意味がない。

仕方なく勝輝は、言われた通りに後ろに倒れようとしてみる。

すると、まるで、何かの拘束が外れたかのように、足が動くようになり、そのまま…

「うわー!」

ドスン!と尻餅を見事に付いた。

しかしそれにより、花火の疾風・自転香燕山の、燕の攻撃が外れた。

「ばかなっ…!」

攻撃のミスによって、疾風・自転香燕山は失敗に終わった。

情熱の塗れた少年に宿ったのは、憎しみの光を輝かせる瞳

勝輝の行動に驚きを隠せない花火は、その様子を見る。

そしてすぐにわかった。

今のは、まぐれでも、なんでもない。

目の前の少年が自らの危機に際して、会得した、本物の自然覚醒能力

「叡智の眼ですか?又の名を智眼…まさかあなたにその能力が宿るとは思いませんでしたね」

花火はその能力の説を知っていた。

「“叡智の眼”、星間戦争の最中、突如としてこの能力を持つ者が現れた。その者は見た目にも母国と敵対国から、貧弱な戦士と言われた。身体はガリガリ、戦闘服を来るだけで、まともに走れなくなるような非力さ…しかし彼らには、それがあった。絶対的な勝利へと導く力」

刀を再び構える。

「不可能を可能にする力、この能力の見えたものには未来がなくなるといいます。ですがこれならどうです!?」

振るう構え、しかし、そこから動かそうとはせず、花火の後ろに、ピシッ!っとなった刀からは風の気が集まり出す。

「過去に避けれた者はいません、斬将風切犀刃!!」

言葉を紡いだと同時に刀を、横薙に払う

目一杯纏わせた風の気が一気に放出される。

刀から離れた気は、広範囲に広がる真空波となって、勝輝に向かって飛んでゆく

その頃、勝輝はこの能力がなんなのか、全く分からずに戸惑っていた。

「この能力者は一体…?」

[気をつけろ!、もう攻撃はすぐそばに来ているぞ!]

「えっ!?」

今まで周りなど気にもしていなかった勝輝が、花火のいる気配を自然に察し、向く

[指示に従え!右に走れ!!]

頭に響くような大きな声が聞こえてきた。

頭痛にも似た感覚に、頭部を押さえながら、勝輝はフラフラと右に走っていく。

[遅い!それでは避けれないぞ!]

さっきよりも大きな声の、頭の中は揺れるような痛みを受けた。

「だぁー!わかったって」

気合を入れ直し、全力で駆ける。

真空波は広範囲かつ横に広い、更には、かなりの数だ。

避けるのは困難な事だが、叡智の眼はそれすらも容易に行えるのだろう

[ジャンプして拳を前に構えろ!]

叡智の眼が勝輝に指示を出した。

「え?飛べって…」

勝輝は、まだ自らが超人であることに気付いていなかった。

しかし無理もなかった、叡智の眼を持ち得るまでは、そんな感覚は微塵もなかったのだから

「くっそ!もうなるようになれー!」

制御できない気を勢いに任せて駆け、跳躍する。

そしてようやく気付くことができた。

その気の正体は、人間の跳躍力など比ではない。

[そのまま両腕を前に構えろ]

叡智なる手助けが、勝輝を最小限の被害で抑えた。

言われるがままの支持に従ってみると、真空波のダメージは勝輝の腕に当たるだけだった。

更には、空中から急降下しつつ花火に向かっていくため、真空波同士のぶつかり合い、そして、花火の距離も縮めることができている。

[今だ、お前の心の剣を解き放て!]

「え?そんなのねえよ!」

勝輝は、眼に対して言葉を向ける。

[できる。今のお前になら、思いを念へと変え、剣を心で描いてみろ]

最後の真空波を、切り消したところで勝輝は、瞳を閉じて念じる。

その頃、花火は真空波を切り抜けた少年を迎え撃つ体勢を既に終わらせていた。

「あの波刃を全て受けて、その程度の被害まで抑えるとは…流石です。ですが、私に接近してきた時があなたの最後」

新たに技をかけるタイミングを待つ

[リーチに入った時、御剣を解き放て!そうすればお前の勝利だ]

聞いていない様にも取れたが、念に集中する勝輝に、返事など不要だった。

仮に聞いてなかったとしても、これはあくまで保険だったからだ。

「最後です、死になさい!」

花火の刀に、黒い気が纏った。

「滅葬吸心傷!」

気が刀を覆い、巨大な牙が上下から現れる。

そして勝輝の方も、念を込めた剣を生み出す。

活電気の如き輝きを放つ剣は、清めた心が生んだ金色の御剣

「くらえっ!心剣・聖天刺断!!」

二人の二声が光に包まれ、影を作り出した。

互いの力がぶつかり合う。

刃先は当たっていない、気が削り合いをしている。

花火の牙を生み出す漆黒と、勝輝の発光する雷光の気

力は僅かも許さないほど互角に見えた。

押され気味に見えたのは花火だった。

滅葬吸心傷…命中させれば、対象の心までも喰らう、闇なる奥義の一つ

しかし、今のような、対象に通貫させれなければ、自らが喰われてゆく諸刃の技

長時間の使用は正に、花火自身にとって、不利極まりない。

だが、まだ策を秘めてもいた。

勝輝の気は、神気を帯びている。

彼の叡智の眼は、星間戦争の条約に基づき、神の能力と指定されたからだ。

これを知っているのは極わずかな者だけだろう。

そして花火はそれを知っている。

だからこそ、剣匠なる戦術に満ちた頭脳が、この少年の能力を反射することはできないと危機を示していた。

しかし、欠点が今見えた。

それは勝輝の剣、彼の剣は叡智の眼を司っていない。

内なる心に眠る気から、唯の剣を作り出したに過ぎない。

よって、この少年の剣は神気を帯びていない。

(まだ、私は倒せない!)

花火の技が、消滅する。

勝輝はここぞとばかりに心剣を、花火に刺す。

しかし、身体に刃先が触れる寸前!

[まずい、後退の構えをとれ!]

「え?」

心剣は異様な角度に反り返り、あっさりと折れてしまう。

「ぐあーっ!」

同時にその衝撃で勝輝は飛ばされ、花火から大きく距離をはなされてしまった。

「くっ!一体、何だ!?」

ゆっくりと起き上がった勝輝に見えたのは、花火の周囲に一定感覚で光を反射させる膜

覚醒壁ではない、もっと一つの物理に対して、特化させた防御壁

「剣性反転壁!」

花火は、表情が前髪で隠れているのを気にせず、その言葉を放った。

[グラディエーター・フィールド…気付くのが遅すぎた]

叡智は、花火が師の域の存在であることを認識していなかった。

並外れた思考と、それをうまく扱う身体性、更には我流で極めた技の数々

剣士であるという自覚と、真なる剣術の極めの証が認められれば、自らの意志でそれを体得できる能力

敵には惜しい存在だ。

せめて味方でいてくれれば、隕石落としの阻止に大きく貢献できたことだろう。

そして、今の勝輝にとって、この戦闘は圧倒的に不利な状況となった。

剣技しか扱えない彼に一体どのような勝機があるのだというのか?

[勝輝君、死を覚悟するのなら、君に絶対なる勝機を与えるが…どうする?]

叡智は自らの放った言葉とは思えない、賭けにでた。

同時に、これは叡智が、勝輝と本当の同調ができる確認の言葉でもあった。

「やってやる、俺は唯一残された地球人なんだろ…?なら、地球の為に死んでみせるよ」

考えている時間などない。

勝輝の生まれた星を守るためなら、自身はどうでもよかった。

[その言葉、しかと聞き入れた]

そして決意の言葉を聞き届けた叡智は、勝輝の意志を奪う。

「…!!」

その瞬間、勝輝に強烈な気が満ちてきた。

剣聖の名において、今、決着をつける時が来た。

叡智は完全に勝輝を動かせるようになった。

そしてすぐさま、気を、刃の形を想像する。

「どうやら私の反転壁を無駄にする、一撃が来るようですね…」

その様子を最後まで見ていた花火は、フィールドを消滅させる。

「反則技なんて使いたくないものです。正々堂々、最後の一撃で身を滅ぼしましょう!」

花火の持つ刀に、闇の気が集まる。

叡智には、神聖なる光郷の気

「勝輝君、君が死ぬなんて事は必要ない。私が代わりを受け持ち、君の眼の一部となって永遠の眠りの中で、知識を与え続けるだけだよ。ただ、その勇気と誓いの言葉が欲しかっただけなんだよ。さようなら…」

勝輝の身体が、駆け始める。

神気を包む身体は、末恐ろしいほどに素早かった。

「剣師、勝負だ!!」

再び、巨大な剣技が、ぶつかり合う瞬間だった。

「次は外しません。滅葬吸心傷!」

花火の闇の気が叡智に襲いかかる。

「私も戦士の名をもらった者だ。戦士らしく、戦って散ろう、閾伐・冴傷劔!」

光が剣に集束し、刃を作り出す!

神聖なる光は、剣という特性を神器という分類へと変える。

剣性反転壁が例え、花火が発生させていなくても無意識に出てしまう。

可能性はなんとしても無くすべきだった。

人とは思えないスピードで迫る叡智を、花火は迎え討つ

「死になさい!」「トドメだっ!!」

リーチは互角!共に胸部に刃が入る。

「ぐっ!」

「痛っ!」

しかし互いの力は、消えることなく、未だに技はかかりきったままだ。

出血はしている、それはもう止めどなく

だが、何よりも叡智には自身の力が吸い上げられていっている事に、若干の障害を生み出し始めていた。

対する花火は、叡智なる光に、闇が消滅してゆくのが、不思議な鼓動を感じさせていた。

このまま長く消耗戦になることに思えたが、すぐにそれは終わる。

互いにバタリ!と倒れた。

技も消え、多量な出血が酷くなった。

「くうっ!」

胸部を押さえ立ち上がったのは勝輝だった。

叡智は、勝輝の能力として、完全に憑依した。

悪く言えば、死んだ霊が取り付いているようなものだった。

しかし違うのは、もう声は聞こえない。次からは勝輝自身がこの能力で自らを縛ることになる。

「かはっ!!ゴホッ!ゴホッ!」

感傷に浸っている勝輝の前で、花火は目覚めた。

身体を仰向けにして傷口を押さえる。

「はっ!大丈夫ですか?花火さん!?」

すぐさま駆け寄り、勝輝は介抱する。

「勝輝さん」

その行為に涙を浮かべた花火は

「ありがとう、ようやく私も死ねます…」

そんな言葉を放った。

「どういうことなんですか?」

勝輝は花火を問いただす。

そんなことをすれば、花火が余計に苦しむだけだというのは分かっている。

「私は、あと数ヶ月の命なのです」

「なんだって!?」

勝輝の表情にわずかに黒が差す。

「剣技を極めるために、闇に力を貸したのです。それによって私の精神は崩壊の一途を辿る事となってしまった」

今の勝輝にならわかる、花火に混じる闇の気の色が

叡智は、この闇を葬ったのだった。

「数ヶ月間が少し早まっただけです。勝輝さん、あなたは何も悪くありません。正当なる防衛を行ったのですから…がはっ!!」

「花火さん!?」

助かることはない、しかし、頭でそれが分かっていたとしても、きっとどこかに可能性があるなんて、考えもどこかで思っていた。

そんな甘いことは絶対にないはずなのに

「これだけは約束してください」

花火にとって、勝輝は大事な師弟でもある。

だから、彼女は死ぬ間際にこんな事を残した。

「地球の運命は勝輝さん達にあります。それを絶対に忘れないでくだ…さい」

その言葉だけを放った途端、花火は事切れた…

数分程、勝輝は花火を揺さぶってみたが、花火の意識が戻ることはなかった。

叡智の力が既に死んでいることなんて分からせてくれていた、だけど分かっていたって、人はそうしてしまうものだ。

大切な人を亡くしてしまった事には変わりないのだから。

勝輝はブレザーを脱ぎ、花火を覆い隠した。

感情を無くしそうだった目に、火を宿らせ、一気にこのフロアを駆けた。

残るは、最奥部だけだ。

敵は残り少ない、それに急がなければ、地球に危機へのカウントダウンは今すぐそこで待ち構えているのかもしれないからだ。


超大型強襲用戦艦クラポ 動力源イグニスプリズム

クラポの最奥部、ニュージ・アースとは正反対の方向

そこでは操葵、対、サーラと変異能力者が好戦を続けていた。

「操葵」

交戦している最中、背後で声がかかる。

「どうした?」

そこにいたのは、何かが終わったかのように疲れている慧が立っていた。

「隕石は投下した。後は地球圏に到達できれば、この作戦は完了だよ」

その言葉を聞いた瞬間、操葵に悪意のある笑みが浮かんだ。

「そうか、お前達の行為も無駄に終わったな。まもなく地球は、崩壊の序曲を弾き始めた」

操葵に、大きな気が満ちる。

しかし、その彼女の前に慧が立つ。

「操葵、君は逃げるといい、後は僕が相手をしよう」

慧の身体の周りには小さな石が回っていた。

「フッ、呉呉もしくじるなよ」

そう言葉を捨てて、時の次元を作り出したかと思うと、すぐに消えた。

「さあ僕が相手だよ。僕を倒せさえすれば、あの隕石は止められるよ」

慧の背後で、強化ガラスごしにみえる大きな隕石が、落下を始めていったのだった。

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