第3話 僕の新しい自宅は億ションでした
研究所の待機室でぼんやりと考え事をしていると、午前中に何度も聞いた声が聞こえた。
「やぁ颯真君。迎えに来たよ」
「優一さん、僕の自宅ってどこになるんですか?」
「これからいくからついてきて」
楽しそうに笑う優一を見て、僕は悪い予感がした。この人が笑うとマイナスなイメージしか湧いてこないよ本当に。
研究所の複雑な通路を迷うことなく歩いていく優一を見て、疑問が浮かんだ。とりあえず口に出してみる。
「優一さんも、PSI能力者なんですか?」
「そうだよ。一応星城学園の生徒会長をしているからね」
「そうなんですか」
どんな能力なのかは聞かなかった。所長に、PSI能力者に不用意に能力を聞くのはマナー違反だということを聞いていたからだ。
会話をしている間に、出口が見えた。
「本当に迷路みたいな研究所ですね」
「ホントそうだね~。僕も最初に来たころは迷いそうになったんだよ」
迷ってはいなかったんだ。
そんなどうでもいいことを考えていると、一台の黒塗りの車が止まった。
「さあ、乗って」
「え? 今からヤ〇ザの集会にでも行くんですか?」
「いやいや、これから君の移動手段はこれだよ?」
当たり前のように言い放ってくる。この人たちの生活感覚は麻痺どころか大破している。まぁ、この人たちの感覚に僕のリアクションも薄くなってきているから、僕も少しなれ始めているんだろう。かなり嫌だが。
「嫌ですよ。普通に徒歩でいいです」
「このベ〇ツがいやならフェ〇ーリかポ〇シェでもいいよ」
「遠慮しておきます」
「まぁ、今日は移動手段これしかないし、とりあえず乗ってよ」
そう促され、いやいやながらも乗り込む。……意外と乗り心地がよくて、少し決意が揺らいだ。
車は滑らかに発進し、目的地へ向かう。車内でも、会話が途切れることはない。
「そういえば、君はどんな能力だったんだい?」
当たり前のように聞いてくる。マナー違反じゃないの?
「なんか、身体能力の向上みたいな感じです」
「でも、『強化系』の能力じゃないんだろう?」
「はい、そうみたいです」
このことに関しては、僕はもちろん、研究員の人たちすら首をひねっていた。
「ああ、そういえば、君の星城学園への編入手続きはもうしといたから。君クラスはは1-1だよ」
「そうですか、ありがとうございました」
チッ、余計なことを。なんて思ったことは、墓まで持っていくつもりだ。
「1-1は、とても優秀なクラスだよ。まぁ、それだけ君も期待されているということだろうよ」
「正直放って置いてほしいです」
そう答えながらも、優秀なクラスと言いながらいたずらっぽく笑っている彼は、かなり危険人物だ。
「まぁ、PSI能力者はいつも不足しているからそれは無理だろうね」
その後もしばらく無駄話が続き、研究所を出発してから30分ほどで、車が止まった。
「さぁついたよ。このマンションの最上階が君の新しい自宅だ」
いかにも高級マンションといった感じの建物を見て、恐る恐る聞いてみる。
「僕のへやって、家賃いくらくらいなんですか?」
「家賃なんてないよ」
「は?」
最上階に移動しながらの会話の中での衝撃発言に思考が停止する。家賃がないマンションなんてあるの? そんな疑問を抱いていると、優一が衝撃発言をした。
「ここは賃貸マンションじゃなくて、一部屋丸ごと買い取るんだよ」
「ち、ちなみにお値段は……?」
「ん~7億くらい?」
え? 今なんていいました? 昨日まで家賃2万のぼろアパートに住んでいた僕がいきなり億ション?現実感がまったくないどころか、夢だといわれても信じることができないだろう。
「そういえば君、料理はできる?」
「え? まぁ少しは」
部屋に到着し、急な話題転換に少し気後れしながらも返事をする。
「君が希望するなら一流のシェフを雇うけど」
「グハッ!?」
あまりの衝撃の連続に血反吐を吐いて倒れてしまう。ああ、神様。僕は人生をどこで間違えたんですか? 日常を返してください。
「君が要らないというなら雇わないよ」
優一は少し残念そうだ。
「食材は冷蔵庫に入れてあるから。あと、お金はカードを渡しておくよ」
そういって目の前に漆黒のカードが置かれる。これって俗に言うブラックカードというやつですか?
まあ、衝撃の連続でもうブラックカードごときじゃ反応すらしなくなった僕は、もう一般人じゃないのかもしれない。
「逆に聞くけど自分が一般人だと思っていたのかい?」
地の文まで見破られました。
「じゃあ、明日の朝迎えに来るから」
そういって優一は玄関から帰っていく。僕はそれを見送りながら、いまだに自分の状況が信じられないでいた。
まさか、一日で生活がここまで代わることなんてないと思っていたのにな。
とめどないことを考えながら夕飯を作るために冷蔵庫へと向かう。台所というよりも、キッチンといったほうが正しいのではないかと思うほど、スペースがとってあった。
「なんて無駄なんだ……」
冷蔵庫を開けてみて、不覚にも絶句してしまった。入っている食材の名前を見てみる。
「松坂牛、トリュフ………………」
その他もろもろの高級食材を見て、庶民だった僕は思わず絶叫してしまう。
「あんたらの金銭感覚はどうなっているんだぁ――――――――――――――――!!」
学校に登校してからも、苦労は耐えなさそうだ。そう思いながらも、自分じゃどうすることもできなかった。
題名に「学園」とか「竜」とか入っているのにいまだに出せていなくてすみません
そろそろ両方とも出したいと思っています。
これからも更新するので、ぜひ見てください!!