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ファーストフード店にて

 レイジと明那は、自宅近くのファーストフード店を訪れていた。

 自宅近くの商店街の端にあり、レイジもよく利用する店だった。

 ファーストフード店のほとんどはナノテクによる成型食材を使用し、コストダウンを図っている。

 高校生の身分であるレイジ達にとってはありがたい存在であった。

 二階の席に座り、明那はハンバーガーに齧り付いている。

 明那が頼んだのは、ダブルチーズバーガーだった。パテが二枚はいったボリューム満点のハンバーガーである。

「……まったくよく食うな」

 明那の食欲に、レイジは呆れながら言った。

「……だってここ数日まともに食べてないんだもん」

 レイジが頼んだのは、ロースカツバーガーである。

 サイドメニューにはポテトを頼んでいた。

 朧も出現していて、二人のやり取りを見守っている。

 レイジもカツバーガーに口をつける。

「まあ、確かに俺にも聞こえるくらいの腹の音だったもんな」

 レイジの言葉に明那は顔を真っ赤にする。

「……性格悪い。そういうこと女の子に言う……?」

「だからモテないの」

 朧もレイジを攻める。

「モテるモテないの話は今カンケーねえだろうが……!?」

 レイジは抗議の声を上げる。

「……なんでさあ、アーバン・トライブなんて危ない場所を指定したんだ?」

「あそこはアンダーグラウンドシーンのナノテクフリークスの最先端が集まるクラブだって訊いてたから……。ウィザードってようはサイボーグなんでしょ?」

「否定はしないけど……。でも、クラブで群がってるような奴らとは一緒にして欲しくないね」

「むしろアキバ系……?」

「うっさい」

 レイジは咳払いをした。

「改めて聞くけど、レイジ君はウィザードなの……?」

 ポテトをつまみながら、明那はレイジに尋ねてきた。

「いちおね」

 レイジもポテトを摘みながら答えた。

「半人前だけどね」

 朧が言う。

「……いちいち口出すな」

「マージとか戦闘ソフトのほうは……?」

 アイスコーヒーをストローですすりながら、明那は尋ねた。

「……まあ、いろいろあってさ」

 レイジはあまり多くを語らなかった。

 レイジが保有するソフトのソースは瞑想寺院である。瞑想寺院に保存されているデータだった。

 ウィザードの命は情報量である。

 ナノマシンの精製データは元より、戦闘関連のソフトから、生物のDNA情報に至るまで脳内のDNAメモリにストックする。

 貴重な情報を得ることこそ、ウィザードの喜びであり、命題ともいえる。

 様々な情報を保有することで、その情報を編集、ナノテクを通して、現実世界に映し出すことが可能だからだ。

 情報ソースを守ることは、ウィザートとしては本能と言えた。 

「子供の頃から、カードバトルのようにデータ同士を組み合わせて、遊んでたから、な。それより、明那こそ、どうしてあいつらに追っかけられてんだ……?」

 レイジは明那に訊きながら、教授に相談するべきなのかもしれない、と考えていた。

「マージが関係しているのか……?」

 明那は頷く。

「アイコニック社とどう関わりが……?」

「そんな一度に聞いたら、かわいそうだってば。……だからモテないの」

 朧はレイジを諌める様に言う。だが、朧の言う通りだった。

 明那は周囲を確認するように見る。

「……絶対に笑わないでね」

 明那は真剣なまなざしで言うと、レイジは「ああ」と言った。

「――わたしはオフィリアなの」

 明那は小さな声で、レイジに伝えた。

「はっ?」

「……だからオフィリアなの」

 レイジはすぐに理解できなかった。

 内容だけ聞けば、明那の発言はかなり痛い内容である。

 レイジは反射的に朧を見ていた。

「……体温分布、声の緊張度合、発汗状態から嘘は言ってないわ。眼球運動や表情から精神的疾患の兆候も見受けられない。……まあ、本人が本気でそう思い込んでる場合は別だけど」

「だからホントなの……!」

 明那は必死に訴える。

「はいはい、大ファンなのは分ったから」

「……そうじゃなくて。正確には、オフィリアの論理人格を動かすためのマージがインプラントされているの」

「……ごめん。意味が分からん」

「つまり、オフィリアはマージって事……?」

 朧の補足する言葉に、明那は頷く。

「姿形はぜんぜん違うじゃないか?」

 レイジが思わず突っ込む。

「……仮象変身機能。ウィザードとは思えない言葉なんだけど……」

 明那は呆れたように言う。

「言ったでしょ? こいつ半人前だって」

 朧の言葉に、レイジはムッとする。

「……すぐには信じられないよね?」

 明那はレイジを伺うように言う。

「まあ……狙われたことは事実だからな」

「今、わたしのマージはあいつらに追っかけられないよう論理人格を自閉休眠にして完全に停止してあるの」

「追跡監視システムが組み込まれてるのね……?」

 朧の言葉に、明那は頷く。

「わたしはシンカーと呼ばれる……」

「ちょっと待って」

 朧が明那をさえぎる様に言った。

 朧は空を見ていた。

 店内を一匹の蜂が浮遊していた。

「……蜂。蜂がどうした……?」

 レイジが朧にたずねる。

「……多分、ナノ集合体。自己組織化型機械よ」

 朧の言葉に、レイジは状況をすぐに理解した。

「……もう、見つかったの?」

 明那の問いに、朧は「らしいわね」と言った。

「……逃げたほうがいいな」

 レイジが立ち上がると、明那も席を立ち上がっていた。


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