3.連携
遺跡を後にした五人は、北の古い交易路を目指して荒野を進んでいた。風が砂を巻き上げ、視界を狭める中、ミリアは首飾りを手に持つと、地図に目を落とした。最初のエーテルの欠片を手に入れた達成感が、彼女に新たな決意を灯していた。「次の手がかりは交易路にあるはず。私たちの旅がここから本格的に始まるよ」と彼女が静かに語った。首飾りの光が微かに揺れ、彼女を導く道標となっていた。風が彼女のローブを揺らし、砂が髪に絡む。彼女は目を細め、地図の古びた記号を指でなぞった。星詠みの民の知恵が、彼女の胸に静かな力を与えていた。彼女は風の音に耳を傾け、遠くの気配を感じ取ろうとした。
レオンが先頭を歩き、剣の脈動が彼に燃えるような感覚を伝えていた。遺跡での戦いと結晶の吸収、そして剣から流れ込んだ記憶の断片が、彼に大きな流れの一部を感じさせていた。「何かこの剣に秘密がある気がする。」と彼が呟き、風に髪を乱された。傭兵としての勘が、彼に警戒を促していた。彼は剣の柄に触れ、その熱を感じながら歩を進めた。砂塵が彼のブーツに跳ね、彼の鋭い視線が荒野を切り裂くようだった。
「敵って、帝国だけじゃねえよな。黒翼団って連中が動きそうだぜ」とガルドが馬を操り、短剣を手に持つと軽く宙に投げた。彼の声には緊張が混じっていたが、それを隠すように笑った。旅の仲間が増えたことで、彼の心に微かな安堵が芽生えていた。「ま、俺がいるから大丈夫だ。狭いとこなら任せとけよ」と彼が肩をすくめ、馬のたてがみを撫でた。風が彼のマントを翻し、砂が顔に当たる中、彼は軽く口笛を吹いた。彼の軽快な動きが、風に溶け込むようだった。
「ねえ、交易路ってどんなとこかな?何か面白いものあるかな?」カイが杖を肩に担ぎ、目を輝かせた。彼の純粋さが、荒々しい旅に和みをもたらした。子守唄を口ずさむと、風が彼の周りを優しく包み、どこか遠くで共鳴するような感覚があった。「僕、みんなと一緒ならどこでも楽しいよ!」と彼が笑い、杖を軽く振った。砂塵の中でも、彼の笑顔は明るく輝き、五人に活力を与えていた。
「何か近い。お前たち、気を引き締めな」とリナが笛を手に持つと、短く吹いた。風が一瞬勢いを増し、五人の周りを渦巻いた。彼女の瞳には鋭い光が宿り、風の民としての力が感じられた。「私の笛が反応してる。欠片か、敵か...どっちにしろ、面白くなりそうだ」と彼女が笑みを浮かべ、笛を腰に引っ掛けた。風が彼女の髪を舞わせ、彼女に自由な雰囲気を漂わせていた。彼女は風の流れを読み取り、遠くの気配を捉えようとした。
「俺の剣も何かを感じてる。お前が言うなら、敵が近いのかもな」とレオンがリナに目をやった。
彼の声には冷静さがあったが、剣の脈動が彼に新たな覚悟を促していた。「行くぞ。油断は禁物だ」と彼が言い、仲間たちを見回した。彼に鋭い気配を与えていた。
交易路の跡にたどり着いたのは、陽が完全に隠れた頃だった。崩れた石畳が風に埋もれ、枯れた草がわずかに揺れている。ミリアが地図を確認し、道の脇に古い石碑を見つけた。「これよ!
星詠みの印。ここに何か隠されてるはず」と彼女が手を触れると、首飾りの光が石碑に伸び、地面が揺れた。砂塵の中から、魔獣が二頭現れた。
狼のような姿だが、異様に大きく、目が赤く光っている。風が魔獣の毛を逆立て、低い唸りが響いた。
「またこいつらか」レオンが剣を抜き、先頭に立った。五人が即座に反応し、戦闘が始まった。レオンの大剣が一頭目の首を狙い、刃が毛皮を切り裂いた。ガルドが短剣で二頭目の脚を切りつけ、素早い動きで牽制した。ミリアは光の矢を放ち、カイが杖を振って炎を呼び寄せた。リナが笛を吹くと、風が渦巻き、魔獣の動きを一瞬止めた。「今だ!」彼女が叫び、レオンが一頭目を仕留め、ガルドが二頭目を倒した。砂塵が舞い、静寂が戻った。血の匂いが風に混じり、五人の息が荒くなった。
「風で動きを止めるとか、便利な技だな」とガルドが息を整え、リナに笑いかけた。彼は短剣を手に持つと、軽く回した。
「私の技さ。お前たちの力に合わせりゃ、もっと冴えるよ」とリナが笛を手に持つと、軽く笑った。彼女の風が、五人の連携に新たな息吹を与えていた。彼女は風に目を細め、次の気配を感じ取ろうとした。戦闘を終えた五人は、石碑の先に進んだ。そこには小さな祠があり、中に二つ目のエーテルの欠片が浮かんでいた。ミリアが近づくと、欠片が彼女の首飾りと共鳴し、光を放った。「これが二つ目よ!」と彼女が喜びを声に出した。だが、その時、リナの笛が低く響き、風が強まった。
「気をつけろ!誰かが来る!」リナが叫び、五人が一斉に構えた。