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7話 魔術大会本番

 気温が高くなり夏の風が吹く七月、魔術大会の日がやって来た。生徒は皆この日を待ち望んでおり、始まる前から学校中が興奮で包まれていた。


 魔術大会が始まると、午前には技術部門の発表会があった。この日のために難しい魔法を練習してきており、それが披露されると、生徒は沸き立った。


 特に三年生の扱う魔法は派手で迫力のあるものが多く、とても見応えのあるものになっていた。


 炎を操って不死鳥を形作ったり、水で龍を作って見せたりと、今までの努力が見て取れた。また派手なもの以外にも繊細が求められる審査もあった。


 出場者は上級魔法を難なく使って細やかな技術を見せた。上級魔法は安定して使うのが難しいため、それをしっかりと顕現できているだけでも凄いことだった。


 難しい魔法を扱う姿を見た生徒は、いつか自分も使いこなせるようにと奮起した。


 そして午前の技術部門の発表会が終わり、一旦昼休憩が挟まれた。生徒たちは興奮が冷めやらぬ中、昼食を取った。昼食時は上級魔法の凄さや、それを操作した生徒についての話題で持ちきりだった。


 カイとハクロもベンチに座り、昼食を取っていた。


「やっぱ三年の先輩は凄かったな!」


「そ、そうだね」


 ハクロは先ほどの上級魔法を見て興奮していた。一方でカイは緊張で食事の手が進んでいなかった。


「どうした、カイ? 緊張してんのか?」


「……うん。僕も上手く魔法を使えるか不安なんだ」


「大丈夫だって! 今日のために練習してきたんだろ?」


 ハクロは緊張するカイを励ました。


「それに一人じゃないんだ。ヒバリちゃんが何とかしてくれるさ」


 それでもカイは不安そうだった。


「ヒバリちゃんに良いとこ見せるんだろ? もっと胸を張れって。カイなら出来るさ!」


「そうだね。ヒバリちゃんのためにも頑張るよ!」


 ヒバリの名前を出されたカイは、やる気を取り戻した。そして体力を付けるために食事をかき込んだ。



          ※



 午後になり太陽が真上に来た。陽射しがより一層増していた。そんな中、学年別の対抗戦が始まろうとしていた。


 対抗戦はトーナメント方式で、一年生から行われる。クラスは全部で八クラスあるため三回勝つことが出来れば優勝だった。


 ヒバリとカイは二回戦のため控え室で出番を待っていた。ハクロに励まされたカイだったが、直前になってまた緊張していた。


 そんなカイの手をヒバリは握った。


「ひ、ヒバリさん!?」


「大丈夫だよ。たくさん練習してきたんだもん。楽しんでいこう!」


「は、はい!」


 ヒバリに手を握られ、励まされたカイは緊張が吹き飛んでいた。すると一回戦が終わったようだった。


「あたしたちの出番だね! 頑張ろうね!」


「はい! 頑張りましょう!」


 ヒバリは自信満々に歩いて会場である校庭に向かった。その後をカイは付いていった。


 二人が登場すると、クラスメイトの声援が聞こえた。


「ヒバリ! 頑張って!」


「頑張れよー! カイ!」


 声援を受けたヒバリとカイはやる気に満ち溢れた。そして相手のクラスの代表と向かい合った。相手は男子二人だった。


 ヒバリとカイ、そして相手のクラスの代表は礼をすると、距離を取り、杖を構えた。そして審判の先生の合図で対抗戦が始まった。


 先手を取ったのは相手のクラスだった。


「先手必勝だぜ! 『赤矢』!」


 相手は二人同時に、最小限の詠唱で魔法を放った。一気に片を付けに来たのだ。赤い光の矢がヒバリとカイに向かって飛んできた。


「若夏くん、よろしくね」


「はい」


 カイはヒバリの前に立った。そしてカイも最小限の詠唱で防御魔法を唱えた。


「『青盾』!」


 二人を青い光が包み込んだ。そしてそれに赤い光の矢がぶつかった。魔法がぶつかると土埃が舞った。


 相手のクラスの代表はヒバリとカイの出方を窺った。すると土埃の中から赤い光の矢が飛んできた。


 不意を突かれた相手は、一人が杖を弾き飛ばされた。土埃が晴れると、そこには杖を構えたヒバリが立っていた。


 視界が晴れたヒバリは残りの一人に怒濤の連撃を放った。上級生すら圧倒するヒバリの攻撃に相手は対応し切れなかった。


 ヒバリの攻撃に防御魔法が間に合わなかった相手は、体に魔法が当たり、そのまま吹き飛ばされた。


 相手は二人とも戦闘不能になり、ヒバリとカイの勝ちになった。


 初戦を突破して喜ぶヒバリとカイ。ヒバリはカイに抱きついた。


「やったね、若夏くん!」


「や、やりましたね!」


 ヒバリに抱きつかれて動揺が隠しきれないカイは、声を上擦らせながら勝利を喜んだ。そして勝利した二人は控え室に戻っていった。



          ※



 控え室に戻ったヒバリはバッグから魔法薬を取り出して飲んだ。それによりヒバリの魔力は回復した。


 ヒバリは魔力の消耗が激しいため、魔法薬が必須だった。渋い顔で魔法薬を飲みきったヒバリは、カイと一緒に他のクラスの試合を見ながら休憩した。


 そしてあっという間に自分たちの番になった。


「次も頑張ろうね!」


「はい!」


 二人は校庭に出ると、相手と挨拶をして、杖を構えた。そして二回戦が始まった。


 今度はヒバリが先手を取った。


「敵を貫け、『赤矢』!」


 ヒバリの攻撃魔法は相手に向かって飛んでいった。相手は防御魔法で攻撃を防いだ。ヒバリは攻撃の手を緩めなかった。


 赤い光の矢が雨のように相手に降り注いだ。相手はそれを二人がかりで防いでいた。そしてヒバリが一呼吸置くために攻撃を一旦止めると、カイがヒバリの前に行き、防御魔法の準備をした。


 しかし相手のクラスは攻撃に転じなかった。明確な攻撃タイミングであるはずなのに、何もしてこなかった。


 ヒバリとカイは疑問に思いながらも、攻撃し続けた。相手はひたすら防御魔法に集中していた。


 そしてヒバリは相手の作戦に気付いた。


(あたしの魔力切れを狙ってるのね!)


 相手は魔力の消耗が激しい攻撃魔法を撃たせて、魔力切れになるのを待っていたのだ。


(そっちがその気なら……)


 ヒバリはカイに指示を出した。


「若夏くん、攻撃するの交代して」


「わかりました!」


「出来るだけ相手を釘付けにして!」


 ヒバリは後ろに下がると、攻撃をカイに任せた。カイは自慢の魔力量を活かして、攻撃魔法を撃ち続けた。カイは速度は遅いが、ヒバリ以上の赤い光の矢を顕現させた。


 そして物量で攻め続けた。相手はカイに意識が集中し、ヒバリのことを見る暇がなかった。相手は止むことのないカイの攻撃に苦しそうだった。


 その間にヒバリは詠唱をしていた。


「灼熱と沸き立つ血の結晶、我が敵を貫け! 『紅槍』!」


 ヒバリは上級攻撃魔法を放った。それは紅い槍の形を成し、相手に向かって飛んでいった。


「まずいっ!」


 相手はカイの攻撃に夢中で、低級の防御魔法しか張れていなかった。相手の青い光の盾に紅い槍が当たった。


 紅い槍は防御魔法を突き破り、相手を二人とも吹き飛ばした。そして相手は杖を手放し戦闘不能になった。


 こうしてヒバリとカイは決勝に進んだ。

読んでいただきありがとうございます。

次回更新は1月26日の0時です。

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