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6話 特訓開始

 カイがヒバリから魔術大会のペアに誘われた翌日、クラスのホームルームで魔術大会についての話し合いが行われた。


「それじゃあ、対抗戦に出場したい人、手を挙げてー」


 担任の教師が対抗戦に出たい人がいないか確認を取った。それを待ってましたと言わんばかりに、ヒバリが元気よく手を挙げた。


「はい! あたしが出まーす!」


「やっぱ春宵が出るよな」


 担任の教師はわかっていたという表情をした。


「でも対抗戦は二人での出場だぞ。相手は決まってるのか?」


「もちろん! 若夏くんと一緒に出ます!」


 ヒバリはカイをペアに選んだことを発表した。それを聞いたクラスメイトは驚いていた。カイがヒバリに誘われたことを意外だと思ったのだ。


「他に出たい奴もいないみたいだし、春宵と若夏で決定だな」


 他の人の立候補がなかったため、魔術大会の対抗戦はヒバリとカイの出場で決まった。


「頑張ってねー、ヒバリ!」


「任せておいてよ!」


「カイも頑張れよー!」


 クラスメイトからの応援にヒバリが自信満々に笑顔で応えた。一方でカイは縮こまっていた。根が陰気なため注目されるのに慣れていないのだ。


「頑張ろうね! 若夏くん!」


「う、うん!」


 縮こまっているカイにヒバリは激励の言葉を掛けた。それを受けてカイもやる気が出たようだった。


 こうしてヒバリとカイは魔術大会の対抗戦に出場することになった。



          ※



 対抗戦の出場が決まったその日の放課後、ヒバリとカイはさっそく集まっていた。魔術大会まで時間がそこまでないため、急ピッチで練習する必要があるのだ。


 ヒバリとカイは本場に向けての特訓をするため、校庭に行って軽く手合わせをすることにした。ペアを組む上で、お互いの実力を知っておきたいのだ。


「それじゃあ、軽く魔法を撃ち合おっか。最初にあたしが攻撃するから、若夏くんが守る側ね」


「わかりました!」


 ヒバリとカイは攻守に分かれて魔法を撃ち合うことにした。二人距離を取り、杖を構えた。そしてヒバリが呪文を唱え始めた。


「敵を貫け、『赤矢』!」


 するとヒバリの周りに矢の形をした赤い光が顕現した。そしてヒバリはそれを操ると、カイに向かって飛ばした。


 攻撃が向かって来るのを見たカイは、防御魔法を唱えた。


「わ、我を攻撃から守りたまえ、『青盾』!」


 カイが呪文を唱えると、青い光がカイの周りを包み込んだ。そしてそれに攻撃魔法が当たると霧散して消えていった。


「まだまだ行くよ! 『赤矢』!」


 ヒバリは最初手加減して攻撃魔法を撃っていたが、カイがしっかりと対応しているのを見て、どんどん攻撃のペースを上げていった。


 カイは緊張しながらも難なく攻撃を防いだ。ヒバリは調子を上げていって、怒濤の連撃をカイに浴びせた。


「『青盾』!」


 カイの張った防御魔法に赤い光の矢が降り注いだ。カイは何とか攻撃を全て防ぎきっていた。それを見たヒバリはカイを褒めた。


「若夏くん、すごい! 結構本気で撃ったのに一発も通らなかった!」


 ヒバリに褒められたカイは少し照れて、顔を赤くしていた。


「それじゃ一旦休憩しよっか!」


 ヒバリは攻撃に魔力をかなり使ったため、少し息切れしていた。ヒバリは校庭に座り込み、バッグから一本の瓶を取り出した。


「あんまり飲みたくないんだよねー」


 それは魔力を回復する魔法薬だった。魔法薬はかなりマズいため、飲んだヒバリは渋い顔をした。


 ヒバリは魔法の練度は高いが、魔力量はそこまで多くなかった。そのため魔法を使った後は決まってこの魔法薬を飲むのだ。


「若夏くんも飲む?」


「い、いえ、大丈夫です!」


 ヒバリは飲みかけの魔法薬をカイの方に向けてきた。カイは間接キスになってしまうと思い、恥ずかしがって咄嗟に断った。


「僕は魔力が多い体質なので、大丈夫なんです」


「たしかにあれだけ魔法を使ったのに、全然辛くなさそうだね」


 カイは生まれつき魔力量が多いため、魔力切れの心配がなかった。魔法薬も数えるほどしか飲んだことがなかった。


「よし! 休憩終わり! 今度は攻守を逆にしてやろっか!」


「わかりました!」


 魔力が回復したヒバリは元気よく立ち上がった。そして今度は攻守を逆にして特訓をした。


「遠慮なく撃っていいからねー!」


 そうは言われたもののカイはヒバリに怪我をさせないよう、最初はかなりゆっくりと攻撃魔法を撃った。


「敵を貫け、『赤矢』!」


 カイの周りに数本の赤い矢が顕現した。そしてカイはそれをヒバリに向かって放った。しかしカイの魔法は途中で消えたり、速度が遅かったりと、簡単に防がれてしまった。


 カイは攻撃魔法があまり得意ではなかった。安定して魔法が顕現しないのだ。それでも魔法を撃つ毎に調子を上げていき、持ち前の魔力量にものを言わせ、止まらない攻撃を浴びせ続けた。


 そして一通り魔法を撃ち合うと、ヒバリとカイはお互いの強みと課題を確認した。


 ヒバリの強みは練度の高い攻撃魔法で、課題は魔力量のなさだった。カイの強みは無尽蔵な魔力による強固な防御で、課題は攻撃魔法の練度不足だった。


 二人はお互いの課題に注意しながら、どう戦っていくか作戦を立てた。その結果、カイが全ての攻撃を防ぎ、ヒバリが攻撃に専念するという作戦に落ち着いた。


 お互いの強みを活かすためだった。


「よし! 今日はもう終わりにして、続きは明日にしよっか!」


「そうですね」


「これから頑張ろうね! 若夏くん!」


「はい!」


 それからヒバリとカイはクラスメイトに特訓を手伝って貰いながら、実戦経験を積んでいった。ヒバリとカイは自然と一緒にいる時間が長くなり、より仲良くなっていった。


 カイはヒバリと一緒に過ごせて夢のようだった。このままさらに仲良くなりたいとカイは思っていた。


 そして時は流れ、あっという間に魔術大会の日となった。

読んでいただきありがとうございます。

次回更新は1月25日の0時です。

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