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28話 遭遇

 翌朝、カイは駅に先に着き、ヒバリを待った。カイは山の中を捜索することになるため動きやすい服装をしていた。右腕には赤黒い紋様を隠すためのアームカバーを付けていた。


 そしてヒバリを待っていると、少し遅れてヒバリがやって来た。ヒバリはいつもの露出度の高いオシャレな服装ではなく、動きやすさ重視のスポーティーな服装だった。


「お待たせ。それじゃあ、行こっか」


「はい」


 二人は郊外に行くバスに乗って、巨人の森を目指した。森までは一時間ほど掛かった。二人はバスに乗っている間、あまり話さなかった。


 これから巨人と戦うことに緊張しているのだ。相手は手練れの魔法使いも殺してしまうほどだった。学生で巨人をどうにか出来るか不安なのだ。


 そして郊外の山中で二人はバスを降りた。そこは道路以外に人工物はなかった。二人は道路の脇から森に入っていった。


 巨人のいる森は二人の入った地点から少し歩いたところにあった。これほど遠くからでなければ、規制に引っ掛かってしまうのだ。


 二人はスマホの地図を見ながら、森の中を歩いて巨人の現れた地点に近づいた。森の中は陽射しが遮られていて薄暗かった。


 また森は蒸し暑く、二人は滝のように汗をかいた。二人は水分補給のために、細かく休憩を挟みながら巨人を探した。


 森の中を歩くこと一時間、二人は巨人のいる森に足を踏み入れていた。二人は息を切らしていた。


「そろそろ巨人のいる森だね。注意しよう」


「はい、わかりました」


 すると土や樹の匂いに混じって、何か別の匂いがした。それは血の匂いだった。二人が匂いの強い方向に行くと、そこには大きな肉塊が転がっていた。


 それは巨人の死体だった。


「これってもしかして、例の巨人ですか?」


「たぶん違うと思う。左腕には何もないし、なにより食い荒らされた後がある」


 巨人の死体には大きな噛み跡があった。サイズからして別の巨人のものだった。


「同族まで手にかけてる……。かなり凶暴みたいだね」


 二人は巨人の死体を見て、少し怖じ気づいた。しかし二人は歩みを止めなかった。


「近くにいるかもしれないから、慎重に行こう」


「はい」


 二人は杖を抜いて、いつでも魔法を使えるようにした。そして二人は森の中に川を見つけた。一度そこで休憩することにした。


 二人がそこで座って休んでいると、重い音が聞こえだした。それは規則正しいリズムで聞こえた。


 二人はそれが巨人の足音だと気付いた。二人はすぐに川から離れて、木陰に体を隠した。すると川に巨人が現れた。


「でっか……」


 ヒバリは巨人のサイズに驚いていた。その巨人は先ほど見た、死んでいた巨人より一回りも大きかった。


「ヒバリさん、見てください。左腕」


 巨人の左腕には赤黒い紋様があった。二人は目的の巨人を見つけた。


「先制攻撃で決めよう」


「そうですね」


「あたしに任せて」


 二人はギルバートの左腕の効果がどんなものかわからなかった。そのため、先制攻撃で巨人を仕留めようと決めた。


 ヒバリは木陰から杖を巨人に向けた。


「灼熱と沸き立つ血の結晶、我が敵を貫け! 『紅槍』!」


 ヒバリは呪文を唱えて上級攻撃魔法を撃った。詠唱が聞こえた巨人は二人の方に体を向けた。


 そこには杖の先から煌々とした紅い槍を顕現させるヒバリがいた。巨人は二人を認識したが、もう遅かった。


 巨人に向かって紅い槍が飛んでいった。それに巨人は紋様が入った左腕を突き出した。すると完全に顕現したはずの魔法がかき消された。


「そんな!? どうして!?」


 ヒバリは魔法に自信があった。そのため魔法が消えたことに驚いた。


「ヒバリさん、逃げましょう!」


 そんなヒバリの手を引っ張って、カイは走り出した。巨人は逃げる二人を追い出した。のろまで鈍重な巨人だったが、一歩が大きく、すぐに二人に追いつきそうだった。


「くっ! 『爆灼』!」


 カイは呪文を唱えて、巨人の頭部付近に爆発を起こそうとした。しかしまた巨人が左腕で払うと、魔法はかき消されてしまった。


 二人は森の中を必死に逃げた。樹の根や石に躓きそうになりながらも、必死に走った。しかし二人は不運なことに、行き止まりに来てしまった。


 二人の逃げた先は崖になっていた。そこはかなり高く、飛び降りるのはムリそうだった。


 崖で立ち止まる二人に、巨人は持っていた大木を振り下ろした。二人は何とかその一撃を避けた。


 しかし地面に大木が当たった衝撃で崖が崩れた。二人の体は宙を舞い、崖下に向かって落ちていった。


 カイはヒバリを抱きしめた。そして空中に向かって手を伸ばした。


「出ろ! 出ろ! 頼む、今だけでいいから出てくれ!」


 するとカイの祈りは、天に、いや内なる存在に届いた。カイの体から触手が顕現した。カイは触手を近くの樹に伸ばすと、それを巻き付けて落ちる体を止めた。


 二人は宙づり状態になった。そしてカイは触手を徐々に伸ばして何とか崖下に降りた。


「若夏くん、ありがとう……」


「何とかなって、良かったです……」


 ヒバリは地面に降りてもカイに抱きついたままだった。


 二人が安堵していると、大きな音が鳴った。巨人が崖を滑り降りて来たのだ。巨人は二人を諦めていなかった。


 そしてヒバリとカイは再び巨人と対峙した。

読んでいただきありがとうございます。

次回更新は2月16日の0時です。

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