23話 実力差
「あいつを何とか出来る?」
「もちろんさ。人間の魔法使い如きに遅れは取らん。任せておけ」
ヒバリの問に、ギルバートは自信満々に答えた。
すると男は瓦礫の中から出てきた。そして魔法で瓦礫を浮かせて、それをこちらに撃ち込んできた。それをギルバートは無詠唱で出した防御魔法で防いだ。
ギルバートは笑みを浮かべた余裕そうな表情で、杖を構えた。そして優雅に杖を振るって魔法を放った。
「『紅槍』」
ギルバートはいきなり上級攻撃魔法を撃ってみせた。カイは扱えない上級魔法をいとも容易く使ってみせた。
「む! 『青盾』!」
男は右腕の紋様を光らせながら防御魔法を唱えた。分厚い青い障壁が生まれた。それに紅い槍がぶつかった。
すると紅い槍は簡単に青い障壁を突き破った。そしてそのまま男に紅い槍は男にぶつかり、男を大きく吹き飛ばした。
吹き飛ばされた男は床をゴロゴロと転がった。しかし威力は軽減出来ていたようで、すぐに立ち上がって、杖を構え直した。
「手加減してやったんだ。耐えて貰わないと困る」
笑みを浮かべるギルバートととは対照的に、男は苦虫を噛み潰した様な表情をしていた。まさか自分の防御が貫かれるとは思ってもいなかったのだ。
「油断していただけだ。もう二度と攻撃は食らわない」
男はギルバートに対して強がった。その様子にギルバートは楽しそうだった。
「『赤矢』!」
男は無数の赤い光の矢を顕現させ、それで廊下を埋め尽くした。飛んでくる光の矢をギルバートは魔法を使わず、優雅に避けた。
「何だと!?」
男はギルバートの動きに驚いた。
「驚いている暇があるのか?」
そう言うとギルバートは攻勢に転じた。数本の紅い槍を顕現させ、それを男に撃ち込んだ。
「『海壁』!」
男は濃い青の壁を出現させて攻撃を防いだ。今度はしっかり防ぐことが出来たが、男は攻めあぐねていた。
ギルバートと男の上級魔法が飛び交う戦闘に、ヒバリはついて行けなかった。ヒバリは流れ弾を防ぐので精一杯だった。
そしてどれほど攻防が続いたか。戦況はギルバートの方に傾いていた。防戦一方の男と、余裕そうなギルバートが対照的だった。
男は魔法の威力は凄まじかったが、それだけだった。ギルバートと男では魔法の練度が違いすぎた。
「私の右腕を使ってその程度とは。宝の持ち腐れだな」
男はギルバートの煽りに反応することも出来なかった。すでに魔力が底を突きそうだったのだ。
そしてギルバートは男の防御魔法の隙を突いて、もう一度男の体に紅槍を撃ち込んだ。男は受け身も取れず、そのまま壁に体を打ち付けた。男は杖を手放した。
戦闘不能になった男に、ギルバートは優雅に近づいた。そして触手を顕現させると、男の紋様が入った右腕に這わせた。
「や、やめろっ!」
男は無様にも命乞いをした。怯えた表情の男を見て、ギルバートは邪悪な笑みを浮かべた。
「返してもらうぞ」
そう言うとギルバートは触手で右腕を引っ張った。すると男は絶叫した。カイと同じく、身を引き裂かれるような痛みが生じたのだ。
そして男の右腕から紋様が消えた。紋様はカイの右腕に移っていた。
「ふむ、やはり馴染むな。最高だ!」
紋様を取られた男は気絶したようだった。
「ふう、良い運動になった」
ギルバートはぐっと伸びをして、リラックスした。そしてヒバリの方を向いて、一つの忠告をしていった。
「ヒバリと言ったな。いいか、敵は一人ではないぞ」
「どういうこと? 誰が敵なの?」
「それは秘密だ。カイと一緒に愛を育みながら、頑張るんだ」
言いたいことを言ったギルバートは、体の主導権を手放した。するとカイの体は、糸の切れたマリオネットのように倒れそうになった。
それをヒバリは急いで支えた。するとカイの意識が戻った。
「は! ここは?」
「若夏くん? 戻ったのね!」
カイはヒバリに抱きかかえられていることに気付いて、すぐに自分の力で立った。そしてカイは現状説明をヒバリに求めた。
「ヒバリさん、無事ですか?」
「あたしは大丈夫」
「敵は? どうなったんですか?」
「ギルバートがやっつけてくれたわ」
カイは廃墟の廊下を見て、凄まじい交戦があったことを理解した。
「とりあえず、ここを離れましょう」
「そうですね」
ヒバリの提案にカイは賛成した。二人は男が目を覚ます前に廃墟から出ていった。
その後、騒ぎを聞きつけた警察が廃墟にやって来た。そして廃墟で倒れる男を見つけて搬送した。
数日後、男は目を覚ましたが、物言わぬ廃人になってしまっていて、何も喋ることはなかった。
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