20話 ギルバート
「誰なの、あなたは?」
「私は、ギルバートだ。よろしく頼む」
カイの体を乗っ取った何かは、ギルバートと名乗った。ギルバートはカイの体で、優雅な所作で頭を下げた。
ヒバリは杖をギルバートに向けて、鋭い眼光で睨んでいた。
「そう警戒するな。危害を加えるつもりはない」
ギルバートは笑顔を見せて警戒を解こうとした。しかしヒバリはギルバートを睨んだままだった。
「若夏くんは無事なの?」
「宿主のことだな。安心しろ、体の主導権を私が握っているだけで、意識はある」
カイが無事だと聞いてヒバリは少しだけ安心した。
「何者なの?」
「まだ秘密だ」
ヒバリはギルバートの正体を探った。しかしギルバートは正体を明かさなかった。
「君たちが興味があるのは私より、こっちだろう?」
そう言うとギルバートは触手をウネウネと動かした。
「使い方を教えてやろう」
ギルバートは触手をヒバリの方に向かって伸ばした。そして触手はヒバリの体に絡みついた。
ヒバリは突然のことに防御魔法を張ることが出来なかった。触手はヒバリの体を縛り上げ、ヒバリのスタイルを強調した。
「きゃっ! やめてっ!」
触手に絡みつかれたヒバリは悲鳴を上げて抵抗した。しかし触手の力は強く、もがけばもがくほど体を強く締め付けた。
触手はヒバリの体を舐め回すように這った。
「どうだ、扇情的な使い方だろう?」
「離してっ!」
触手にいいようにされるヒバリ。そんなヒバリの助けを求める声を、カイは聞いていた。
「ヒバリさんを、離すんだっ!」
それは紛れもなくカイの言葉だった。カイはヒバリを助けたい一心で、ギルバートから体の主導権を取り戻した。
「ほう、やるじゃないか! これが愛の力か!」
ギルバートは嬉しそうな、楽しそうな反応をした。その声はカイにしか聞こえていなかった。
体の主導権がカイに戻ったことで、ヒバリに絡みついていた触手は離れた。触手から解放されたヒバリは、カイの表情を見て、カイが元に戻ったことを理解した。
「若夏くん、大丈夫!?」
「だ、大丈夫、です……」
ヒバリはカイに駆け寄った。カイの体からはまだ触手が出ており、カイはその制御に苦戦していた。
そしてカイは何とか触手を体の中に収めることが出来た。カイは肩で息をしていた。それを見てヒバリはカイを心配した。
「気を付けろ、この力を狙ってる奴がいるぞ」
ギルバートはカイにしか聞こえない声で忠告をした。カイは薄れ行く意識の中で、その言葉を聞いた。そしてそれを最後にカイは気絶した。
※
カイが目を覚ますと、ヒバリの豊満な胸が目に入った。気絶したカイは、ヒバリに膝枕されていたのだ。
「ひ、ヒバリさん……」
「あ、起きた! 若夏くん、大丈夫?」
カイは体に疲労が残っていたが、起き上がろうとした。ヒバリはそれを制止した。
「ムリに起きなくていいよ」
「すいません、ありがとうございます……」
そして少ししてカイは体力が回復し、起き上がった。カイはヒバリの隣に座った。
「さっきのは何だったんだろうね。ギルバートとか言ってたけど」
「わかりません。でも最後に忠告をしてきました。この力を狙ってる人がいるって」
「狙ってる? 誰が?」
「そこまでは教えてくれませんでした」
ギルバートは謎だけを増やして消えていった。
「まずはこの力の制御を覚えないとダメですね」
カイは穴の空いた服を触りながら言った。
「そうだね、これじゃあ服が何枚あっても足りないもんね」
ヒバリとカイはどちらともなく手を繋いだ。そして来る困難に備えようと思った。
神社には涼しげな風が吹いていった。
読んでいただきありがとうございます。
次回更新は2月8日の0時です。




