表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/30

2話 決闘

 魔法学校には普通の学校とは大きく違う制度がある。それは決闘が許可されているのだ。これは欧州から始まった魔法学校の伝統であり、日本に来ても続けられている。


 この決闘の制度は、魔法使いとしてのプライドを重視するものであり、また生徒間での自主的な解決を重視するという伝統から、許可されていた。


 しかし決闘は簡単に行うことは出来ない。ルールがあるのだ。まず決闘をする際にはそれを行う正当な理由があるかを審査される。


 実際これはお飾りで、大抵の場合はくだらない理由でも許可される。


 そして決闘には必ず見届け人が必要なのだ。決闘の審査が通ると、決闘委員会の生徒が見届け人として選ばれる。


 ここまでの流れがあってようやく決闘が出来るのだ。そのため一時的な感情による決闘は行われなくなっている。


 また決闘する者にもルールがあり、まず学校指定のローブの着用は絶対なのだ。このローブには対魔法防護が掛けられており、魔法が直撃するようなことがあっても怪我で済むのだ。これにより生徒の安全を保障している。


 以上のことから決闘は生徒間で安全に行われていた。そのため今日も学校のどこかで決闘が行われていた。



          ※



 風が暖かくなってきた六月のある日、カイはヒバリとの接点を探していた。しかしヒバリに話しかけようにも、ヒバリの周りには常に女子の壁があり、なかなか近づくことが出来なかった。


 見た目は好青年に変わったカイだったが、中身は陰気なままだった。そのため女子になんと話しかけていいかわからないのだ。


 社交的で明るいヒバリなら話しかければ、何とでも対応してくれただろうが、その一歩がカイには踏み出せなかった。


 またカイはクラスで孤立気味でもあった。カイは見た目を変えるのに必死で、友達作りなどに力を入れる余裕がなかった。


 そんなカイに唯一の友達のハクロが手を差し伸べた。要領のいいハクロは人付き合いも上手いため、クラスに馴染んでいた。


 ハクロはカイをクラスの男子の輪に入れたのだ。


「カイだっけ? めっちゃ見た目変わってビックリしたぜ!」


「急なイメチェンで驚いたわ! 何で急に変わったんだ?」


 カイがクラスの男子の輪に入ると、見た目の変化に驚かれて質問された。


「好きな人がいて、格好良くなりたかったんだ」


 カイの答えを聞いた男子たちは盛り上がった。色恋の話はこの年代にとっては最高の話題だった。


「誰が好きなんだよ?」


「ヒバリちゃんが好きなんだ」


「え、まじかー」


 カイがヒバリを好きだと聞いた男子たちは、カイに同情の目を向けた。ヒバリは確かに可愛いが、男関係では良い噂を聞かないからだ。


「まあ、頑張れよ」


「うん! ありがとう!」


 カイはそんな男子たちの本音に気付かず、素直に応援されていると勘違いしていた。



          ※



 授業が終わり、昼休みになるとカイとハクロは購買へ向かった。その途中で中庭を通ったところ、そこでは決闘が行われていた。


 この中庭は決闘の舞台となることが多かったため、さして珍しい光景でもなかった。しかし今日の決闘には何故かギャラリーが多かった。


「今日はやけに野次馬が多いな。ちょっと見てこうぜ」


 ハクロの提案でカイは決闘を見ていくことにした。人混みをかき分けて前に行くと、その中心にいたのは、何とヒバリだった。


(え!? 何でヒバリちゃんが!?)


 決闘はヒバリともう一人の女子生徒によって行われるようだった。カイは集まった野次馬の会話から、ヒバリが決闘する理由を聞いた。


「何か、あの可愛い子が相手の彼氏を取ったらしいぜ」


「そうなの? さいてー」


 どうやらまた男関係でヒバリは問題を起こしたようだった。ヒバリの決闘相手の女子生徒はヒバリに向かって怒りの目を向けていた。


「私の彼氏を取ったこと、土下座して謝ってもらうから!」


「だからもう謝ったじゃない! それに、あっちが告白してきたからオーケーしただけで、あなたが先に彼女だったなんて知らなかったの!」


 ヒバリの言い分を聞くと、相手の彼氏が二股しようとしたのが問題なようだった。しかし女子生徒の怒りはヒバリにのみ向いていた。


「あんたが誘惑したんでしょ!」


「違うから! それに土下座なんて絶対しないから!」


 二人は舌戦が終わると杖を取り出して構えた。そして決闘の見届け人が合図をすると、二人は魔法を撃ち合った。


 二人の間を魔法が飛び交った。ヒバリは相手が上級生であるにも関わらず、一方的に魔法を撃っていた。


 相手の女子生徒は防戦一方だった。女子生徒は防御魔法を張るのが精一杯で、攻撃に転じることが出来なかった。


 ヒバリは容赦なく攻め立てた。そしてヒバリの撃った魔法が女子生徒の杖を弾き飛ばした。


 決闘はヒバリの圧勝で終わった。


「金輪際、あたしに絡まないでくださいね!」


 そう言うとヒバリは杖をしまい、背中を向けてその場を去ろうとした。しかし相手の女子生徒は溜飲が下がっていなかった。


 女子生徒は弾き飛ばされた杖を拾うと、去ろうとするヒバリに向けて杖を構えた。


「このっ!」


 それを見たカイは悲鳴が上がるより早く飛び出していた。カイは駆け出すと、ヒバリと女子生徒の間に割って入った。


 女子生徒はすでにヒバリに向けて魔法を放っていた。その魔法は二人の間に飛び出したカイに当たった。


 魔法が当たったカイは大きく吹き飛ばされ、壁に体を打ち付けられた。


 辺りに悲鳴が響き渡った。女子生徒はすぐに取り押さえられた。カイの元にはハクロとヒバリが急いで駆け寄っていた。


「おい! カイ! 大丈夫か!?」


 カイは気絶していた。

読んでいただきありがとうございます。

次回更新は1月21日の21時です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ