表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/30

18話 目覚め

 ヒバリとカイが花火大会から帰路に着いていると、男が声を掛けてきた。


「お、ヒバリじゃん! 久しぶり」


 ヒバリは男の顔を見ると、眉をしかめ、口元を歪ませて露骨に嫌そうな顔をしていた。それを見てカイはヒバリと男の間に入った。


「何だ、また別の男連れてんのかよ。相変わらずビッチだな」


 男はヒバリ対して無礼な物言いだった。それを聞いたカイは鋭い目つきで男を睨んだ。


「なあ、今から二人でホテルにでも行こうぜ」


 男はカイの姿が見えていないのか、意図的に無視して、ヒバリを誘った。


「はぁ? 絶対ムリ! あんたなんかと行くわけないでしょ!」


 当然ヒバリは断った。いつものヒバリと違い、強い口調での拒絶だった。


「付き合ってたときも、一回も抱かせてくれなかったよな」


 男はヒバリの元彼のようだった。そして男はヒバリの体が目当てだった。


 男は少しイライラしているようだった。ヒバリに拒絶されたのが気にくわなかったのだ。


「若夏くん、こいつは放っておいて、さっさと行こう」


 ヒバリはカイの手を引き、その場からすぐに去ろうとした。すると男は大声でヒバリに罵声を浴びせ始めた。


「ビッチのくせに! お高くとまりやがって! 誰にでも股を開いてるんだろ! どうせお前も捨てられるぞ!」


 カイは男のあまりの物言いに我慢の限界が来た。カイは男に相対すると、怒りの表情を向けた。


「ヒバリさんを悪く言うな!」


 男はカイに言い返されて少し怯んだが、すぐに強気になった。


「お、何だ? やろうってのか?」


 男は杖を取り出した。男は魔法使いだった。男は杖をちらつかせ脅してきた。しかしカイは怯まなかった。


「ヒバリさんに謝れ」


「嫌だね! どうせお前もヒバリの体目当てなんだろ? 俺と一緒だ」


「僕はお前とは違う」


 男はヒバリに謝る気はさらさらないようだった。そして周りの人は喧嘩が始まったのを見て、三人から距離を空けた。


 すると男はヒバリとカイの足下に威嚇のつもりで魔法を撃ってきた。それが足下で爆ぜると、ヒバリは小さく悲鳴を上げた。


 カイの怒りは頂点に達した。男が脅しとは言えヒバリに危害を加えようとしたからだ。


 そのとき、カイに語りかける存在がいた。


「見上げた男だな。気に入った。少し力を貸してやろう」


 どこからか聞こえた声にカイが疑問を持っていると、背中に違和感が生じた。カイは背中から何かが飛び出しそうな感覚がした。


「くっ!」


「若夏くん、大丈夫?」


 ヒバリは苦しそうなカイを心配した。するとカイの背中から何かが飛び出した。それはカイの着ていた甚平を突き破って出てきた。


 それは海で蛸の怪物から出ていた、赤黒い触手だった。突然現れた触手に周りで見ていた人から悲鳴が上がった。


「若夏くん!?」


 ヒバリはカイの突然の変化に驚いた。そしてヒバリはカイの顔を見た。カイは邪悪な笑みを浮かべており、まるで別人のようだった。


 そして赤黒い触手は男に向かって素早く伸びていった。男は魔法を撃つ隙も与えられなかった。触手は男の杖を弾き飛ばし、そのまま男に巻き付いた。


「は、離せっ!」


 男は触手に持ち上げられ、宙に吊されていた。


「いいだろう。望み通り離してやる」


 カイはそう言うと、触手を振りかぶり、男を川の方へ投げ飛ばした。男は川の深いところに着水した。そのため大きな怪我はなかった。


「ふぅ、満足だ。今回はこれで勘弁してやろう」


 すると触手はカイの背中に戻り、体の中に消えていった。触手が消えると、カイの表情も元に戻っていた。


 カイはその場に膝を付いた。ひどく疲労しているようだった。ヒバリはカイを立ち上がらせると、急いでその場を離れた。



          ※



 ある程度離れて、人通りの少ないところまで来ると、ヒバリはカイを介抱した。


「若夏くん、大丈夫?」


「はい、もう大丈夫みたいです」


 カイは疲労していたが怪我などはなく、背中の違和感もすでに消えていた。


「若夏くん、さっきのって、この前の海でのやつだよね」


「そうだと思います……」


 ヒバリはカイから現れた触手が、以前海で戦った蛸のものだと気付いた。


「どうして今になって出てきたんだろう?」


「わからないです。でも声が聞こえたんです。力を貸してやろうって」


 ヒバリとカイは触手が現れた原因を考えたが、何もわからなかった。


「とりあえず、今日はもう帰ろっか」


「そうですね」


 これ以上考えても仕方がないと思った二人は、今日は一度帰ることにした。カイはヒバリを駅まで送った。


「若夏くん、今日はありがとうね。助けてくれて」


「いいんです。僕はヒバリさんが大好きですから!」


「ふふ、ありがとう! それじゃあね!」


 カイからの言葉にヒバリは嬉しくなった。元彼に言われた罵倒も心の中から消えていた。


 そしてヒバリを見送ったカイも家路に着いた。

読んでいただきありがとうございます。

次回更新は2月6日の0時です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ