17話 花火大会
海で蛸の怪物と遭遇してから数日が経っていた。カイのそのときにあった背中の違和感は消えていた。あのとき蛸から飛びついて来たものを疑問に思いながらも、カイは日常を過ごしていた。
カイは家で夏休みの宿題をしていた。すると電話が掛かってきた。相手はヒバリだった。
「ねぇ、若夏くん。花火大会に行かない?」
ヒバリはカイを花火大会に誘った。毎年この時期に大きな川沿いで花火大会が開かれているのだ。
「いいですね! 行きたいです!」
「それじゃあ一緒に行こう! 集合時間とかはまた後で連絡するね」
「わかりました」
電話を切ったカイは、その場で少しだけはしゃいだ。ヒバリと恋人らしいイベントに参加できるのが嬉しいのだ。
カイはワクワクとした気持ちを抑えきれず、しばらく夏休みの宿題に手がつかなかった。
※
ヒバリのお誘いから数日経ち、週末になり花火大会の日がやって来た。カイはいつものモノトーンの私服で行こうとしたが、ハクロに相談した結果、甚平を着て行くことになった。
甚平を着るのは子供のとき以来だったため、カイは似合っているか不安になっていた。しかしそれ以上にヒバリとの花火大会に胸を踊らせていた。
カイはいつも通り集合時間より早めに待ち合わせ場所に着いた。待ち合わせ場所は人でごった返していた。
カイはそこでヒバリを待った。カイが通りかかる人を眺めていると、浴衣を着たカップルが多かった。
するとヒバリからメッセージが届いた。集合場所に着いたようだった。カイが周りを見渡すと、ヒバリをすぐに見つけた。
ヒバリは黒を基調とした、花柄の入った浴衣を着ていた。髪は結ってあり、いつもと雰囲気が違った。
身長が高くスタイルの良いヒバリは浴衣がとても似合っていた。周りの人もヒバリの浴衣姿に見惚れていた。カイもその一人だった。
ヒバリのいつもと違う大人っぽい雰囲気に、カイは目が離せなかった。そしてそんなカイをヒバリは見つけて、近くに歩いて寄ってきた。
「若夏くん、お待たせ! 浴衣着るのに時間掛かっちゃって」
「いえ、全然大丈夫です!」
ヒバリは遅く来たことを謝った。しかしカイは気にしていなかった。
「ヒバリさん、とても綺麗で素敵ですね!」
「ありがとう! 可愛くて気に入ってるんだ!」
ヒバリはカイに浴衣姿を褒められて笑顔になった。
「若夏くんも、甚平似合ってるよ!」
「ありがとうございます!」
二人はお互いの格好を褒め合うと、手を繋いで歩き始めた。人の波ではぐれないようにするためだ。
「花火まで時間あるから、縁日に行こうよ!」
「いいですね!」
二人は縁日の屋台を巡った。どこも人で行列が出来ていた。それでもカイはヒバリしか目に入っていなかった。
「焼きそば! たこ焼き! 全部食べたいね!」
「二人で分けながら食べましょう」
「そうだね!」
二人は屋台で食べ物を買い、それを分け合った。
「若夏くん、あーん」
「あ、あーん」
カイは恥ずかしがりながらも、ヒバリに食べさせて貰った。恋人らしい行動は気恥ずかしかったが、嬉しくもあった。
(ふふ、若夏くん、可愛い!)
そして二人は出店を楽しんだ。射的にボール掬い、くじ引きなど色々と挑戦した。縁日に満足した二人は、花火の見えそうな位置に移動し始めた。
川辺は見物客で溢れていた。ヒバリとカイはその中に混ざり、花火が始まるのを待った。
そして大きな音と、カラフルな光とともに花火が始まった。花火の他に魔法による光の造形物もあり、見ている人を飽きさせなかった。
カイは毎年友達と見ていた花火だったが、横にいる人によってここまで楽しさが変わるのかと感動していた。
「綺麗だねー」
「そうですね」
「来年も、何なら今年の他の花火も一緒に見ようね!」
「はい!」
カイはヒバリの来年に自分がいることがわかり、嬉しくなった。そしてカイはヒバリの手を少し強く握った。
そして花火も終盤になってきた頃、ヒバリとカイは一足先に帰ろうとした。帰りの混雑を避けるためだ。
二人が花火を背に歩いていると、一人の男が大声で話しかけてきた。
「お、ヒバリじゃん! 久しぶり!」
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