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14話 ビーチ

 暗い海の底、そこで蠢く何かがいた。うねうねと蠢くそれは、赤黒く細長かった。そしてそれは依り代を求めていた。


 魚はそれを遠巻きに見ていた。本能で近づくことが危険だとわかっていたのだ。そんな危険な何かの近くを蛸が通りかかった。


 蛸は賢い生き物だ。本能より興味が勝ったのだ。蛸は赤黒い何かに近づいた。しかしそれは失敗だった。


 赤黒い何かは近づいて来た蛸に一気に飛びついた。飛びつかれた蛸は墨を吐き、必死に逃げようとした。しかし体にくっついた何かは離れなかった。


 そして蛸に取り付いた何かはそのまま融合を始めた。蛸の体と融合して、一体化した。そして何かは、完全に蛸の体の一部となった。


 蛸は動きを止めていたが、急に動き出した。そして一気に他の魚に近づき、触手に巻き取り、捕食を始めた。


 魚は蛸から逃げようと最高速で泳いだ。しかし蛸の触手から赤黒い何かが伸びた。それは蛸のものではない触手だった。


 その触手は魚を貫いて仕留めた。そうやって蛸は近場の魚を全て捕食した。


 すると蛸の体は生き物を捕食するごとに、どんどんと大きくなっていった。すでに尋常ではない大きさになった蛸は、怪物と呼べるほどになっていた。


 そして怪物となった蛸は次の獲物を求めて、海底を這っていった。蛸の通った場所は大きな這いずり後だけが残り、生き物の気配はなくなっていた。


 蛸はもっと大きな、魔力の豊富な獲物を求めていた。蛸は魔力の反応がたくさんある浅瀬へと向かって行った。


 そちらには人が集まるビーチがあった。



          ※



 最高気温が三十度を超えた真夏日、カイは駅前でヒバリと待ち合わせをしていた。カイはいつも通り少し早く着くように来ていた。


 そこにヒバリがやって来た。ヒバリは今日も露出度が高い服を着ていた。大胆にお腹を出していたセクシーな格好だった。


「おはよう、若夏くん!」


「おはようございます!」


 今日は駅前の大型商業施設で遊ぶわけではなかった。二人は駅から電車に乗り、バスを乗り継いで小樽市にあるビーチへと向かった。


 一時間ほど移動すると、目的地のビーチに到着した。二人は眼前に広がる大きな海に興奮していた。


「やっと着いた! たくさん人がいるね!」


「そうですね!」


 ビーチにはたくさんの人がいて賑わっており、砂に光が反射してキラキラとしていた。


「それじゃあ、着替えたら合流ね」


「はい、わかりました」


 そう言うとヒバリとカイは脱衣所にそれぞれ向かった。カイは白いサーフパンツに着替えた。一足先に着替え終わったカイは、先に砂浜に足を踏み入れた。


 カイはスペースが空いている場所に行くと、そこに借りてきたパラソルを立てて、シートを引いた。そしてそこに荷物を置くと、ちょうどそこにヒバリがやって来た。


「若夏くん、お待たせ!」


 カイはヒバリの声を聞いて振り返った。そこには絶世の美少女が立っていた。カイは思わず息を呑んだ。


 またそれをしたのはカイだけではなかった。砂浜中の視線がヒバリに集まっていた。花柄の入ったビキニを着たヒバリは、とても美しく、そして扇情的だった。


「どうかな? 似合ってる?」


 ヒバリは出るところは出て、引っ込むところは引っ込んでいる理想のスタイルだった。その女神のような美しさに、男は下卑た視線を向けて、女は尊敬のような視線を向けていた。


 カイはたっぷり十秒は固まっていた。


「おーい、若夏くん。大丈夫?」


「は、はい! 大丈夫です! とっても似合ってます! 見惚れちゃいました!」


「嬉しい!」


 ヒバリは手荷物をシートに置くと、バッグからサンオイルを取り出した。綺麗に肌を焼きたいヒバリは、サンオイルを手に出して馴染ませた。


 そしてそれを体に塗っていった。カイはその光景から目が離せなかった。あまりにも艶めかしかったからだ。


 ヒバリはカイの視線に気付いた。


「若夏くん、塗りたいの?」


「い、いえ! そんなことはないです!」


 カイは慌ててヒバリから目を逸らした。ヒバリはカイをからかったのだ。カイの反応にヒバリは可愛らしく思った。


 そしてサンオイルを塗り終わったヒバリは、パラソルの下から出た。ヒバリの白く滑らかな肌に太陽の光が反射した。


 カイは眩しくて、ヒバリを直視出来なかった。ヒバリはそんなカイの手を引き、海へと駆けていった。

読んでいただきありがとうございます。

次回更新は2月2日の0時です。

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