花ある主役の行方
「結末とは何たるかをあなたは知ってる?」
白妙のワンピースをひるがえす彼女が私に問いを投じる。
ああ勿論、それは『果て』だ、愛別離苦の巡るドラマの行き着く終点、観客から見る登場人物達の物語にピリオドマークを打つ、先の無いもの。
大抵の場合、それは喜劇的な形をしていて、終幕に華やかな紙吹雪を散らす、が、時として悲劇的な形をしていたりする。
そうなると悲惨だ、登場人物はどう抗っても適うことは無し、エンドロールには観客の心に影を落として終わる。
現実主義で残酷で、登場人物を常に見下ろし、迎えることを待っている、姿形を怪物から天女に歪める事の無い、全知全能を持った神でも書き換えられない絶対的なもの、それが結末なのだ。
彼女は私が話終えると、口の両端を持ち上げて、穏やかな調子で語り出した。
違う。
それは、人にもなし得ること
たくさんの嘆きと、後悔と、屍が、苦悩の道半ばで産まれることになるでしょう、それも覚悟で、全て知っていて、この世の因果の鎖に彼女は縛られた
平和な舞台を保つために、今日もあの子は孤独と罪悪の魔女になる。
あなたには、彼女に償う義務がある
花びらを重ねたような艶やかさの滲む女の唇から吐き出される、この世の最たる地獄を勧めるようなおどろおどろしさで私の全身が逆立つ、
「エンディングのない孤独にも、いつか終焉の時はやってくる
大丈夫、貴方が信じてくれるのなら
皆にとって最善の結末になるでしょう」
雲さえ泳がない青さを孕んだ空に、予兆も無く激しい降雨が訪れた、たちまち空から細い線になって重なる冷温は私の毛髪を濡らして
体躯を抱きしめる。
水を飲んで針のようになった髪が私の背中を刺す、前髪は顔との境目の上でうねって離れない。
頭を叩くばかりの雨の中、ふと見上げてみればそこには、地平線まで続く一面のひまわり畑があった。陽光にゆられてきらめいているそれは金色に似ている。
王冠よりも指輪よりももっもとっと綺麗なひまわりによる導きだった。
その黄金の大海に私は無謀にも身を投げた。
『月には星々があるが、太陽はたった一人でそこにいる。ずっと孤独に空にある。』
無数のひまわりの間を駆け抜ける、どこを目指しているのかは分からない、
『太陽の裏側を誰も知らない』
行方の分からない旅をしているのに、自然と進むべき道がわかる。
『行き着く結末は幸なるものか、不幸なるものか』
私は黄金の中に佇む、白亜の肌をした扉にに飛び込んだ。
『ようこそ、21gの世界へ。』