第一話 織田信長、転生する
1562年6月21日。
本能寺にて。
追い込まれた織田信長は、自らの放った炎で自害した。
謀反を起こした元家臣の明智光秀は、焼け崩れた本能寺で信長の遺体を捜したと記録されている。
しかし、最後まで信長の遺体が見つかることは無く。
信長の最後は、現代でも語られる程の大きな逸話となったのである。
しかし・・・。
なぜ光秀は、信長の遺体を見つけることが出来なかったのでしょうか。
読者の皆様は、タイトルを見た時点でもう察しているのでしょう?
その通りです。
信長は本能寺において炎に包まれて息絶えた・・・のでは無く。
日本とは全く別の「剣」と「魔法」ファンタジーの世界。
「異世界」に転生していたからなのです。
僕の名はハンコック。
剣と魔法の世界「ディラストル」で冒険者をやっている者だ。
性格は人見知りの常識人・・・だと、自分では思っているんだよね。
人見知りの僕は「冒険者の酒場」で馴染めなくって今日も一人!
それでも僕はめげないよ!
今日こそは冒険者の酒場で苦難を共に味わい、喜びを分かち合える。
そんな仲間を見つけるんだ!
織田信長
「オエエエエエエ・・・」
ハンコック
「店の前に、なんかいるうううううう!!!???」
なななななんだ!!あの変なおっさんは!!!
見たことない服!(袴)
見たことない髪型!(ちょんまげ)
見たことないほどの・・・吐き方!(それは個人差だろう)
珍しい獣人とか亜人の一種だろうか・・・?
っていうかなんで「冒険者の酒場」の前にいるんだよ!
店に入れないでしょうが!
通りがかる人全員ビビッてるし・・・明らかな迷惑行為だよ・・・。
織田信長
「オ、オエエエエエエ・・・」
あ、また吐いた。
もしかすると、気分が悪くてずっと吐いてたりするのかな。
通りがかる人たちは、あの男が吐いて出来た「キラキラの泉」を恐れて近づいてないようだった。僕はちょうど、回復薬「ポーション」を持っていた。
ポーションは僕がバイトのお金で買った大切なもの。
手土産として持っていけば「パーティー」に入れて貰えるかもしれない。
そう思って買ったのだけど、酒場の前には「キラキラの泉」が出来ていて。
このままでは通れそうもない。
「キラキラの泉」があるので酒場に入ることはできず、酒場に入れないのでポーションの使い道も無くなってしまった。
・・・それならば。
織田信長
「オ、オエ」
ハンコック
「これ、使ってください」
また吐きそうになっている変なおっさんに、ポーションを渡した。
ハンコック
「薬です。結構いいものなので飲んだら直ぐに治ると思います」
変なおっさんは僕の説明に激しく頷いた後、ポーションを一気に飲み干した。
ハンコック
「・・・それじゃ、お大事に」
一気飲み・・・かぁ。
僕の1か月分の給料が一気飲み・・・トホホ。
織田信長
「待たれよ!そこの若者!」
ハンコック
「はい・・・?」
振り返ると、先ほどまで吐いていた男が、道のド真ん中で仁王立ちしていた。
周囲の目を気にせずドンと構えるその姿は、僕がまだ幼かった頃に憧れた「勇者」にとてもよく似ていて。
織田信長
「余は織田信長である!助けてくれた礼がしたい!余の城まで参られよ!」
僕の人生が大きく変わる。
そんな予感がしたんだ。