プロローグ
いつも通りの仕事帰りの夜
俺はジムでいつもやっているトレーニングを終わらせて帰路の夜道をただただ歩いていた。
いつもと変わらない夜道、道路を走る車や、多くの人達が集まり会話する音
そんな中、俺は一人死んだ魚のような目をして街頭を歩く。
『みんな、人生が楽しそうだよな』
別にその光景を見て自分もああなりたいと思う訳ではない。
ただ、自分はなろうとしても一生なれないものなのだろうと考えると、自分が何の為に生きているのか最近分からなくなる時があるのだ。
目に映る皆の顔は笑顔で目が輝いている
それに比べ、俺の目は会社の上司に覇気が無いと言われてしまうくらい死んでいるらしい
仕方ないじゃないか…俺だってもう三十路のじじいだぜ…
そんな事を考えていたら、あっという間に自分の家にたどり着いてしまった
俺の名前は八重崎 央河
趣味は筋トレであり何処にでもいる一般サラリーマン
俺が一番楽しかった頃の思い出は十数年前の子供の時に格闘技で名を轟かせていた頃の思い出だ。
今じゃ誰も覚えていない名前だが、その経験もあってかそれなりの会社に就けて特に不自由の無い生活が出来ている。
でも…
何なんだろうな、この感覚は
最近妙に孤独と不満足感だけがクッキリと残るようになってしまった、俺も最近働きすぎて鬱病にでもなっちまったのかな…
央河は玄関に入る前に脱いだ靴の土や汚れを取り、足を消毒液付きのタオルで洗い風呂場へと直行した
風呂から上がる頃には時計の針は十時を指していた
『もう十時か…明日の為に備えて寝ないとな…』
ていうか昨日もおとといも同じ事を考えてたよな、まるで毎日が無限に続くループみたいだ
央河はいつも通りの布団に潜りいつもと変わらない天井の景色を見ながらゆっくりと目を閉じた。
あれ、ガスの元栓閉めたっけ、まあいいや、どうせ俺が死んだって…誰もー…
央河は深い眠りについた
一生覚める事の無い唯一無二の死と言う永遠の眠りへと…