これが“お酒に合う”とゆーことなのか? と悩む。
女性の「ありあまる母性の対象を求めて」なんて発言を聴いたことがある。
甥っ子や姪っ子が可愛くて堪らない未婚の女性タレントが、異常なほどの溺愛だと自分でも自覚していて、自嘲気味に言った発言だったと思う。
これに少し近い心理かも知れない。
若い頃のモテないボクは、プレゼントやらお返しやらに、やたらに凝ることがあった。
日頃そーゆーことをする対象がいないから、機会を得るとやたらに張り切ったのだと思う(笑)
今も変わらずモテないが、若い頃の情熱は無い。
細かい記憶はない。
相手は女性だった。
義理チョコのホワイトデーのお返し……では、ないと思う。
それでは、内容・価格がやや嫌味だからだ。
とにかく細かな設定の記憶はないけど、キョーレツな体験の記憶はあるのだ。
ボクの選び方は、関係性や理由で心理的に負担を掛けないだろう上限の予算設定をして、後はインスピレーションの導くままに、何にするか必死に捜しまくる、というものだった。
思いついたのは、可愛いお酒とお菓子のセット。
走り回って見つけた候補は、以下のようなものだった。
お酒は小瓶のリキュールだったと思う。
小さいけれど1000円ぐらい。
ラベルに『楊貴妃も愛した──』とか何とか、短い蘊蓄が印刷されていたからライチのリキュールかも知れない。
ただ、今、ネットで調べたらライチのリキュールって透明なようだから違うかも知れない。
オレンジ色の瓶だったと思う。
お菓子は近所のちゃんとした洋菓子店に入って、ホワイト生チョコレートのスティックケーキというものを選んだ。
厚めの文庫本の背表紙(本のタイトルが書いてる場所ね)程度の大きさ1本(2本?)で、1000円越えぐらいだったと思う。
どちらも、普段のボクなら呑まない食べないような物。
味が想像できない。
若い頃のボクはバカなほど情熱に満ちていた。
プレゼントとして購入する前に、試食用として自分で食べるために購入した。
よほど気合いが入っていたのかも知れない。
リキュール……。
そーゆー物がこの世にはあると、聴いたことはある。
だが、正直なことを言って、どんな場面でどんな風に飲む物か知らない。
もしかして、本来はカクテルなどの材料に使う物だったのかも知れない。
人間が飲む物とは思えないぐらい濃厚で、頭が痛くなるぐらい甘かった。
ちょっぴり額の奥がキーンとするぐらい。
生チョコスティック。
「これっぽっちで、この値段って……」と半ば呆れながら口にした。
のけ反るぐらい甘かった。
のけ反った後に、うつ向いて無言になるぐらい。
打ちのめされた、って言葉が似合いそうなぐらい、頭が痛くなるぐらい甘い。
こんな物を喰うヤツは、真っ当な神経の人間じゃないと思うほど。
ボクは後悔した。
どちらも一口だけ試飲・試食してて、残りをどーしよーと迷った。
でも、もったいない。
とにかく完食することにしたら……とんでもないことになった(笑)
リキュールの頭の痛さから思考を逸らすかのように、スティックをかじる。
スティックの頭の痛さを忘れるかのように、リキュールを口にする。
これがね、止まらなくなったのだ。
「アッ」「アッ」と頭の痛さに喘ぎながら、あっという間にすべてを胃袋に収め、グラングランに酔っ払った。
強烈な体験だった。
「こーゆーのも、“合う”とか“美味い”って言うべきなのかな……?」と悩むぐらい。
結局、その2品を購入して渡したと思う。
他の誰かにも経験させてみたい、と思うような体験だったのだ。