第99話 再会の挨拶
俺は片手を上げて気さくに挨拶をする。
「やあ、調子はどうだい」
返事はない。
勇者パーティーはただ黙って俺のことを注視していた。
事前に打ち合わせて反応しないと決めていたのかもしれない。
苦笑いした俺は、煙草に火を点けながら愚痴る。
「無視かよ。これでも一緒に冒険をした仲だろ。リアクションがないのは悲しいな」
軽い挑発を交えるも、やはり誰も応じようとしない。
彼らは静かに臨戦態勢を維持していた。
必要以上に動かず、ただ死闘の始まりを待っている。
(理性的だ。一連の虐殺で狂わなかったのか)
俺は勇者パーティーを見て感心する。
何人かは正気を失っているかと思っていたが、結束して持ち堪えたようだ。
本音を言うなら少し残念であった。
正義を気取る英雄達が発狂する展開なんて悪くないと思っていた。
何事もそう簡単には上手くいかないらしい。
勇者パーティーを狂わせるのは、これでもまだ絶望が足りなかったのだ。
俺は考察と反省を進めながら追加で挑発する。
「ところで、やけに暗い顔じゃないか。もっとリラックスしようぜ。そんなんじゃ魔王なんて――」
「……あんた、よくもそんなことが言えるわね」
怒りに震える声が振り絞るように発せられた。
女戦士だ。
彼女は殺気を滲ませながら前に進み出る。
「あんたのせいで、どれだけの苦労をしたと思っているの。それにたくさんの人が死んだわ」
「半分はそっちのスコアだろ」
「誰が仕組んだと思っているのよ! あんたが滅茶苦茶なことをしなければ、殺そうとはしなかったわ!」
「勘違いするなよ」
冷ややかにそう返すと、女戦士が言葉に詰まった。
俺はそのまま主張を続ける。
「どういった状況であれ、虐殺を選んだのはお前らだ。倫理と目的を天秤にかけて前者を切り捨てた。ただそれだけの話だ」
「で、でも……っ!」
「そんなに虐殺を拒むのなら、別の方法で強くなればよかった。暴れ回る俺達を止めることだってできたはずだ。それをせずに世界を壊し続けたのは誰なんだよ」
俺は語気を強めて糾弾する。
勇者パーティーが殺気立つも、反論の声は上がってこない。
どことなく漂う罪悪感は、こちらの指摘が効いたことを示していた。
俺は彼らを指差して毅然と告げる。
「選択に責任を持て。それができないのなら勝手に死ねばいい」
「見事な棚上げっすね。あたかも正論みたいに言ってますけど」
「旦那の得意技ですな」
後ろに控える黒魔導士と博士が小声で煽ってくる。
別に細かいことはどうでもいい。
その場の空気感を制して、流れを掌握するのが第一だった。




