第83話 修羅と茨道
その後、俺達三人は研究所で生活し始めた。
作戦会議や休息が主な目的である。
ずっと行動するのは大変なので、ここらで少し休むことにしたのだ。
仲間として加入したばかりの博士も、特に不満ではなさそうだった。
むしろ嬉々として研究に没頭していた。
次々と毒薬のアイデアを膨らませては実験を繰り返した。
俺という無限に使える実験台がいるため、非常に助かると感謝されてしまった。
そんなこんなで一カ月が経過した。
正直、休みすぎた気がしないでもない。
心身共にリフレッシュを済ませた俺達は、勇者の様子を見に行くことに決める。
シナリオチャートによると、愉快なことになっているようだ。
その姿を、是非ともこの目で実際に見てみようと決めたのだった。
俺は座標移動、黒魔導士と博士は魔術のワープで向かう。
シナリオチャートだけではリアルタイムの居場所が分からないが、研究所に搭載された情報収集装置のおかげで勇者の動向は把握していた。
特に問題なく彼の現在へと飛ぶ。
そこは王都近郊の街だった。
傭兵ギルドの本部があり、国内随一の戦力を保有している。
それでいて治安の良い場所だった。
ところが現在、街は壊滅寸前に陥っていた。
辺り一面が火事で、そこら中に死体が落ちている。
事前知識がなければ、まったく違う場所だと勘違いしそうな惨状だった。
博士は汗を拭いながら感心する。
「こいつは修羅場ですな。元の街の面影が無くなってやすぜ」
「滅茶苦茶だよな。みんな死んでいる」
俺は近くにあった死体を蹴り転がす。
背中に大きな斬痕があった。
火事ではなく、この傷が直接の死因だろう。
他の死体も調べたところ、大半が斬り殺されていた。
そこに当てはまらない者も、明らかに他殺されたような痕跡があった。
火事による死人は皆無なのではないか。
俺が調べる一方、黒魔導士は何かを念じるように集中していた。
やがて彼女は一方向を指差して報告する。
「こっちに勇者がいるっすよ。今も殺しまくっているみたいっす」
「よし、急行するぞ。会いに行こうじゃないか」
俺は意気揚々と二人を連れて歩き出す。
街は崩壊した。
この地獄絵図を生み出したのは勇者だ。
いや、ここだけではない。
手配レベルが上がった後に発狂した彼は、王国内の各地で殺戮を開始したのだった。




