第68話 国王との絆
(これで安全地帯は無くなった。勇者達はどう動く?)
俺はシナリオチャートを確認する。
彼らは依然として闇の魔神の弱体化を進めていたが、現在はそれを中断している。
今度は手配レベルを下げるためのシナリオがスタートしていた。
さっそく冤罪の影響を受けているのだろう。
このままでは不味いと分かったらしい。
俺は彼らが進行させるシナリオの先を念入りにチェックして、ゲームとの齟齬がないかを確かめる。
現状、異世界特有のおかしな点は見当たらなかった。
このまま順当にいけば、二日後くらいには手配レベルが解除されてしまうだろう。
無論、そうなっては俺の苦労が水の泡である。
徹底的に妨害しなければならない。
通りの喧騒を見つつ、黒魔導士は呑気にステーキを切り分ける。
「それにしても、国王が味方なら色々と心強いっすね。コネを使えばやれないことはないでしょうし」
「いや、国王に頼る予定はないぞ」
「もったいなくないです? これ以上の手札はないと思いますが」
黒魔導士は理解できなないとでも言いたげであった。
たぶん国王の権力で好き放題に遊ぶ予定だったに違いない。
それをまさか俺が否定するとは思わなかったのだろう。
「コネを使わないんじゃない。正確には使えないんだ」
「……?」
黒魔導士は首を傾げる。
これだけではやはり理解できないようだ。
俺と彼女では情報量が違う。
魔術面の知識においては専門家の黒魔導士だが、それ以外の分野にはあまり興味がなかった。
俺は自分の注文していた料理を完食すると、まだ食べている黒魔導士を置いて席を立つ。
「よし、少し出かけるよ。すぐに戻ってくる」
「何か嫌な予感がしますが了解っす」
黒魔導士は口の周りをソースで汚しながら敬礼した。
特に反論しない辺り、別に今後の方針にこだわりはないのだろう。
或いは信用されているのかもしれない。
俺は座標移動で再び王城に向かう。
国王は新たな私室で宝石を磨いていた。
威厳も何もない笑みを浮かべながら、至福の表情で没頭している。
俺が渡した宝石類は最高級品ばかりだった。
一国の王でも簡単には入手できない代物である。
よほど嬉しかったのだろう。
俺はこちらの存在に気付かない国王に声をかける。
「やあ、首尾はどうだい?」
「ムカイ殿ではないか。すべて順調に進んでいる。先ほど手配レベルの発令は各国にまで通達された。これで勇者達の汚名は拭えなくない。未来永劫、語り継がれることになるだろう」
「よかったよかった。じゃあ死んでくれ」
俺は気楽に応じながら歩み寄ると、手刀で国王の首を刎ね飛ばした。




