第5話 必殺
場の空気が凍り付いている。
最初に我に返ったのは女戦士だった。
彼女は驚愕に瞳を染めると、怒気で困惑を塗り潰す。
「あんた……気でも狂ったの!?」
「どうだろうな」
俺は肩をすくめてとぼけて、女戦士に跳びかかる。
横薙ぎに手刀を放つも、咄嗟に構えられた剣に受け止められた。
女戦士は強引に受け流しにかかる。
「くっ」
ぴしり、と音が鳴って剣に亀裂が走る。
女戦士は構わず反撃に転じた。
流れるように刺突を繰り出してきたので、俺は屈んで躱す。
さらに剣の腹に掌底を打って刃を完全に粉砕した。
「なっ!?」
「驚くのはまだ早いぜ」
俺は女騎士の胸倉を掴み、手刀を作った。
それを真上から頭頂部に叩き込む。
肉と骨を断つ感触。
手刀を振り抜くと、女騎士は呆けた顔をしていた。
半開きの口から、ごぽりと血がこぼれる。
「あ」
女騎士の顔はずれていく。
左右に分かれるように赤いラインができて、じわじわとそれが太くなる。
やがて輪郭そのものが大きくずれ始めた。
女騎士の頭部は縦に割れた。
鎖骨まで真っ二つになっていた。
俺は女騎士から手を離して告げる。
「口数が少ない方がモテるぜ。もう少しお淑やかになるべきだ」
頭部の割れた女騎士は、断面から脳漿を垂らしながら倒れた。
土下座のような形で地面に血だまりを広げていく。
【のうきんせんし を たおした!】
【ムカイ は レベル が あがった!】
無意味なファンファーレを聞きながら、俺は女戦士の死体を踏み付ける。
そして割れた頭部に向けてぼやく。
「自分では正常なつもりなんだがね。なあ、狂っていると思うか?」
返事はない。
ただの屍である。
そう、分かっている。
俺がこの手で殺したのだ。
血塗れの片手を見て、自嘲気味の笑い声が出た。




